アメリカ市場は世界でも最も大きい場所です。ここでビジネスを行うことで各国とのビジネスの足掛かりにできるため、幅広くビジネス展開をしていきたい方に大きなメリットがあります。
ビジネスチャンスが得られるアメリカで起業をしたいけれど、起業のためには何から始めればいいかがわからないかと思います。
そんな方のために、ここではアメリカで会社設立をする流れや企業に必要な費用について解説します。
目次
アメリカでの会社設立の手順は11つ
まずはアメリカで会社設立をする11つの手順について見ていきましょう。
(1)進出形態を決める
起業をするのであれば会社形態を決定しておく必要があります。
アメリカでの進出形態には複数の物がありますので、それぞれを解説しましょう。
現地法人
アメリカでの会社設立で最も一般的な事業形態と言われているのが現地法人です。現地法人は一般的な「Corporation(株式会社)」と小規模事業である「LLC」の2つに分けられます。
株式会社は日本と同様、株主と経営者が分離しており、出資は「株主」、経営は「取締役などの役員」が行います。また、株を自由に譲渡できる特徴があります。
LLCは日本のLLC(合同会社)とは少し異なり、その一番の特徴が「パススルー課税」と呼ばれるものです。
アメリカでは、株式会社のように法人税と株主が利益をえたら所得税を別個支払う(2重課税)に対して、LLCは法人が稼いだ利益出資者である社員に配分され、課税されず、社員の所得税のみ課税されます(これがパススルー課税です)。
株式会社にも「S-Corporation」と呼ばれる小規模会社があり、こちらはパススルー課税を行えますが、こちらは株式会社に比べて制約が多くアメリカに住んでいない者は設立することができません。
また、LLCは会社を永久に存続させることができず、期間を設ける必要があるため、日本人がアメリカを会社を設立する際にはほぼ選ばれません。
結果的に日本人がもっとも選択する会社形態は「Corporation」ということになります。
支店
すでにアメリカのひとつの州で経営をしており、違う州での経営を考えている場合は支店を選択します。
また日本で会社を設立しており、アメリカにさらなる店舗を置く場合も支店を選びましょう。支店は現地法人を設けてから新たに作るもので、違う州に店舗を出す場合は州外登録手続きが必要です。
駐在員事務所
駐在員事務所は正確には会社ではなく、市場調査を行う際に選ばれる事業形態です。そのため設立登記もありません。
海外で起業をする際はその土地にどんな需要があるかを確認しておくことが重要です。
駐在員事務所は州に届け出をする必要がないため手続きが比較的楽な形態ですが、事業活動を行うとなると駐在員事務所ではなく他の会社形態を選択しなければなりません。初期の市場調査を行うときはこの形態を選択しましょう。
GEO
GEO(Global Employment Outsourcing)は2006年にアメリカで始まった新しい事業形態で、現地法人を設立せずに現地の人材を雇用できるというビジネスモデルです。
GEOは現地のGEO提供サービス会社と契約を結び、サービス会社が事業に適している現地の人材を雇い、事業活動を行ってもらうことになるため、事業主本人はアメリカに出向かずとも事業を開始できるのが特徴です。
現地法人の設立には最低でも数か月の期間が必要となりますが、GEOなら最短1週間での事業を始めることが可能です。
コストも安く済むため、会社設立のタイミングによってはこの方法での起業が望ましいです。
(2)州を決める
会社形態を決めたら、次はどの州で起業をするかを決めます。アメリカには50もの州があり、州によって税金の優遇制度や設立手順などが異なります。
そのため会社設立を行う場所決めは非常に重要な過程です。その州の経済状況などを確認し、ビジネスチャンスが得られるところを選びましょう。
テラウェア州がオススメの理由
アメリカのデラウェア州はアメリカの中でも2番目に小さい州ですが、法人にとって有利なポイントがいくつも揃っており、googleやAmazonをはじめとする大手外資系企業が多く存在しています。
- 設立が容易
- 最低資本規制度がない
- 税金面の優遇がある
- 法整備がしっかりしている
デラウェア州が人気のある理由として、会社の設立が容易であることが挙げれます。資本金ゼロから会社設立ができ、事務所の設置が不要で設立費用がアメリカの州の中でも最も安価です。
次に大きいメリットが税金です。デラウェア州では州内で事業を行わなければ、州内の法人所得税がかからず、代わりに手数料Corporationなら50ドル、LLCなら100ドル払うのみです。
またビジネス上で万が一裁判に発展した際は、法人に有利な判決が下されやすいとも言われています。
デラウェア州には多数の法人が存在しているため、会社法に詳しい裁判官も多数存在します。そのことから法人に有利な判決になりやすいため、トラブル時にも安心です。
(3)会社名を決める
ビジネスを行っていくうえで重要な会社名を決定しましょう社名は必ずしも第一候補が通るわけではありませんので、複数の候補を考えておくことをおすすめします。
候補に優先順位を付けて提出しておくことで、順位の高い方から優先して決められる社名の調査を行ってもらえます。
会社名を決めるには以下のルールを守りましょう。
- Corporation・・・「Inc.」「Corp.」「Corporation」「Co.,Ltd.」「Limited」のいずれかをつける
- LLC・・・「LLC」「L.L.C.」「LC」などをつける
- すでに存在する会社名は使用不可
(4)定款を登録する
会社の基本定款を登録する手続きを行います。
定款を作成したら公証役場に提出し、内容を確認してもらいます。内容に不備がなければそのまま登録されますが、不備があった場合は訂正して再度提出しなければなりません。
提出は公証役場に出向いても良いですが、インターネットから電子申請をすることも可能です。
(5)取締役の選任と第一回取締役会の開催
会社の代表となる取締役を選任し、初回の取締役会を開催します。
取締役会の内容としては株式申込みについての審議と受諾・株式の発行・付属定款のコーポレートシールの認証などがあります。
会社によって話しておかなければならない内容が異なりますので、設立において重要な項目は初回の取締役会で話しておきましょう。
(6)連邦雇用者番号 (EIN) を取得する
アメリカでの法人確定申告や税金の支払いなどにおいて重要な連邦雇用者番号を取得します。この番号はアメリカで起業するほとんどのケースで必要となります。
(7)ビジネスライセンスを取得する
アメリカでビジネスを行うなら、営業許可となるビジネスライセンスも取得しておきましょう。どんな事業を立ち上げるかによってはビジネスライセンス以外のライセンスも必要です。
例えば、酒類の提供を行う場合は「リカーライセンス」、本屋や服屋を営む場合は商品が盗品でないことを証明する「ポリスライセンス」などがあります。事業内容によって必要なライセンスを確認しておきましょう。
(8)Statement of Information を申請する
定款登録をした後、SOS(Secretary of State Office)から申請用紙が送られてきますので、それに会社の住所や取締役の名前などを記入して返送しましょう。
申請用紙は記入して返送でも構いませんが、インターネットから電子申請を行うことも可能です。
(9)株式を発行する
株式発行の手続きを行います。手続きは以下の手順にて行いましょう。
- 1.取締役会にて一株の金額や株式を売却する相手や数を決定する
- 2.書面に決定事項を記入しておく
- 3. 株式引受契約書に株を受け取る人の名前や金額、購入する株の数を記入する
- 4. Department of Corporationsへ株式発行の届け出を行う
- 5.会社の口座に出資金を入金する
- 6.法律事務所から株式が発行される
(10)州雇用者番号を取得する(雇用する場合)
現地で従業員を雇用する場合は州雇用者番号を取得しておかなければなりません。
雇用者は従業員の失業保険・傷害保険の掛け金を支払う義務を負います。その支払いには州雇用者番号が必須なので、従業員を雇う場合は雇用開発局(EDD)にて番号を取得しておきましょう。
(11)アメリカ商務省経済統計局に必要書類を提出する
日本法人がアメリカでビジネスを行い、10%以上の議決権を持っている場合はアメリカ商務省経済統計局に会社の財務状況の届け出を行わなければなりません。
さらに総資産価値が300万ドル以下、200エーカー以下の土地を所有している場合は別の書類を提出することになります。
財務状況の届け出を行う場合はBE-13を、総資産価値が300万ドル以下で200エーカー以下の土地を所有している場合はBE-13書類提出免除を提出しましょう。
アメリカでの会社設立で必要になる書類
アメリカで会社設立をする際はいくつもの書類を準備しておかなければなりません。必要な書類は以下です。
- 定款細則
- 定款細則の証明書
- 発起人決定書
- 株主の同意書
- 株式売買契約書
- 第一回取締役会同意書
- 保証契約書
- ストックオプション契約書
従業員を雇用する場合は雇用契約書も用意しておかなければなりません。書類を用意することが難しければ、現地の代行サポートに依頼することもおすすめです。
代行会社が書類作成のサポートを行ってくれるため、不備なく手続きを進められます。
アメリカで会社設立する際の費用
アメリカで会社設立をする際には以下の費用がかかります。
- 法人設立費用
- 税務番号の取得費用
- ソーシャルセキュリティ番号の取得費用
- オフィス賃貸料
税務番号とは納税者別にあてられる番号のことです。この番号があれば所得や納税の状況などをすぐに把握できるため、納税できる年齢の者に対して割り当てられています。
ソーシャルセキュリティ番号とはアメリカの社会保障番号のことです。アメリカ国民でない人がアメリカで働く場合に、申請をすることで与えられます。
これらの費用総額は約2,000ドル(約20万6,000円)です。
まとめ
アメリカにはいくつもの州があり、州によって起業環境が異なります。それぞれの州で起業に最適な条件を整えていますが、中でもデラウェア州は理想的な環境がある場所だといえます。
ほかにもアメリカには様々な州が存在するので、自分に合った場所を選んでみるのも面白いかもしれません。
起業の際にはここで解説した設立までの手順を参考に進めていくことがおすすめです。世界一の市場を持つアメリカで大きなビジネスチャンスを得ましょう。