FXや株で利益を得ている個人投資家が資産管理会社を設立するメリットには何があるのでしょうか。
具体的なメリットが分かれば法人化を前向きに考えられるでしょう。
しかしメリットだけでなく、デメリットも正確に把握することが大切です。メリットとデメリットを比較することで、会社設立を具体的に検討することができます。
利益をできる限り確保するためにも、資産管理会社のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
目次
個人投資家が資産管理会社を設立する6つのメリット
資産管理会社を設立することで次の6つのメリットが見込めます。
- 損益通算できる
- 最大9年間損失を繰り越せる
- 利益にかかる税率を下げられる
- 経費で落としやすくなる
- 法人と個人で株主優待が受けられる
- 法人と個人でIPOを申し込める
それぞれ解説していきます。
損益通算できる
資産管理会社の設立によって損益通算できる範囲が広がります。
個人の場合、「FXで稼いだ損益」と「株で稼いだ損益」は別扱いとなるため、損益通算ができません。
つまり、株で利益を出してFXで損失があっても、お互いを相殺できないため、株の利益で生じた税金を減らすことができないのです。
同じケースで資産管理会社の場合は、損益通算によって相殺できるので、株の利益で生じた税金を減らせます。
最大9年間損失を繰り越せる
資産管理会社は最長で9年間、FXや株の損失を繰り越すことができます。
たとえばFXで100万円の損失があれば、翌年と翌々年に50万円の利益があっても税金はかかりません。
損失額がある限り、このような繰り越しが最大9年間、可能ということです。
個人の場合は株で3年間の繰り越しが可能ですが、FXは認められていません。
利益にかかる税率を下げられる
資産管理会社は利益にかかる税率を下げることができます。利益が出た分を経費で調整できるからです。
このような節税対策を最大のメリットに考える方もいます。
経費で落としやすくなる
管理資産会社で落としやすい経費には下記があります。
- 自身に支払う給与
- 家族の役員報酬
- 会社で加入した生命保険
- 法人契約した携帯電話
- 法人名義の社宅
どこまで経費として認められるかは税理士との打ち合わせが必要ですが、個人の時代よりも範囲が広いのは間違いないでしょう。
個人事業主が経費として認められるのは、資産運用に関わるものだけです。
法人と個人で株主優待が受けられる
法人と個人で株を保有していれば、両方で株主優待を受けられるのもメリットです。
たとえば1,000株以上で優待を受けられる株式を個人が2,000株持っていても、同じ優待しか受けることができません。
しかし個人と法人で1,000株ずつ持っていれば、ダブルで優待を受けることができます。
法人と個人でIPOを申し込める
法人と個人の両方でIPOを申し込めることもメリットです。
IPO株は公開後に値上がりが期待できるため、抽選になるケースが多いですが、法人と個人で申し込めば当選率がアップします。
個人投資家が資産管理会社を設立する4つのデメリット
次に資産管理会社を設立する4つのデメリットを解説します。
- 会社設立に費用がかかる
- 社会保険の加入義務が生じる
- 評価益にも課税される
- 決算申告が必要になる
会社設立に費用がかかる
会社を設立すると費用がかかるのはデメリットでしょう。
株式会社で約30万円、合同会社で約20万円の実費が必要ですし、司法書士や行政書士に依頼すれば、実費プラス最低10万円は見込む必要があります。
また、設立後に会社を維持する費用もかかります。
株式会社・合同会社ともに、利益が発生しなくても毎年約7万円の住民税(均等割)が発生しますし、顧問税理士への報酬として年間10万円~50万円かかります。
社会保険の加入義務が生じる
資産管理会社を設立すると社会保険の加入義務が生じます。
従業員を雇用しない場合も、健康保険・厚生年金保険には入らなければなりません。法律でそのように決められています。
個人時代の国民健康保険・国民年金よりも社会保険料は高くなりますが、その分、老後の年金額が増えるというメリットもあります。
評価益にも課税される
個人事業で株やFXに課税されるのは譲渡益ですが、法人では評価益も対象になります。
つまり、株やFXを買った時点よりも決算期に価値が上がっていれば、売買しなくても税金がかかるということです。
決算申告が必要になる
法人の決算申告は複雑で手間がかかります。
個人事業の青色申告は独力で行えるかもしれませんが、会社の決算を自分1人で行うのは現実的ではありません。
決算業務には次のような工程があります。
- 1.各種帳簿を締める
- 2.試算表を作成する
- 3.財産・債務の実地調査を行う
- 4.決算整理事項をまとめる
- 5.清算表・決算書を作成する
それぞれの工程における作業も複雑です。
たとえば各種帳簿を締めるには、総勘定元帳の各勘定項目を集計する必要がありますし、精算書・決算書を作成するには、賃借対照表・損益計算書の理解が不可欠です。
個人事業の確定申告は会計ソフトを利用すれば何とかなるかもしれませんが、法人の決算申告は難易度が高いので、税理士のサポートを視野に入れてください。
税理士のサポートを視野に
税理士に決算報告を依頼すれば複雑な手続きを任せられますし、その間も本業の株やFXに集中できるでしょう。
資産管理会社にメリットを感じて設立しても、余計な手間が増えて本業がおろそかになれば本末転倒ですから、素直に税理士に任せる方が良いです。
税理士は税金のプロですし、税理士事務所に所属する職員もしっかりサポートしてくれるでしょう。
資産管理会社を作るタイミングは課税所得900万円以上
最後に、資産管理会社を作るタイミングについてお伝えします。まずは以下の図をご覧ください。
個人に課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円以上330万円以下 | 10% |
330万円以上695万円以下 | 20% |
695万円以上900万円以下 | 23% |
900万円以上1800万円以下 | 33% |
1800万円以上4000万円以下 | 40% |
4000万円超 | 45% |
法人に課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
400万円以下 | 21% |
400万円以上800万円以下 | 23% |
800万円超 | 33% |
このように個人と法人では課税される所得金額が異なります。
個人で1,800万円以上稼ぐと税率40%となり、法人の最高税率33%を超えるので、1,800万円を法人化の目安に考えるかもしれません。
しかし900万円以上稼げるようであれば(個人・法人ともに33%の税率でも)、資産管理会社を検討すると良いでしょう。
当記事でお伝えしたように、会社設立によって損益通算や赤字の繰り越しなど様々なメリットがあるからです。
まとめ
当記事では個人投資家が資産管理会社を設立するメリット・デメリットを詳しく解説を行いました。
資産管理会社を設立するメリットには下記があります。
- 損益通算できる
- 最大9年間損失を繰り越せる
- 利益にかかる税率を下げられる
- 経費で落としやすくなる
- 法人と個人で株主優待が受けられる
- 法人と個人でIPOを申し込める
一方、デメリットは次の4点です。
- 会社設立に費用がかかる
- 社会保険の加入義務が生じる
- 評価益にも課税される
- 決算申告が必要になる
デメリットよりもメリットの方が多いですが、節税面を重視するなら、年間900万円以上稼げる場合に法人化を検討すると良いでしょう。
その場合は税理士にサポートしてもらうとスムーズに進みます。
逆に900万円以下しか売上が見込めないようであれば、デメリットが上回る可能性が高いので、法人化は見合わせた方が良いかもしれません。