会社設立をするとき、その会社の種類を決めなければなりません。
株式会社にするのか?合同会社にするのか?といった種類のことで、意気揚々と会社を立ち上げよう!と思っても、種類選びに失敗してしまえば目も当てられない状況になってしまいます。
本記事では、この会社の種類について詳しく説明をしていきます。
目次
はじめに:会社設立の今…種類について2006年に動きがあった!?
一昔前であれば、基本的には株式会社と有限会社のどちらにするか?という選択肢でした。正確には、他にも「合資会社」「合名会社」の合計4つから選択することができますが…その流れは今でも変わっておらず4つの種類から選ぶことができます。
ただし、2020年現在、有限会社は選択できません。2006年に会社法が代わり、有限会社は抹消されてしまったからです。その代わりに「合同会社」という種類が選択できるようになったのが、今の会社法です。
(有限会社は2006年に廃止されたため、今現在でも有限会社を名乗っている会社は2006年よりも前に設立された老舗になります)
当然、いずれの会社形態にも一長一短があって異なる特徴を持っています。ここでは、1つ1つの会社形態の特徴やメリット・デメリットを紹介しつつも、メインテーマとして「株式会社と合同会社の違い」について説明をしていきます。
何事もスタートは肝心で、会社形態選びに失敗してしまえば残念な結果にもなりかねないです。したがって、ここでしっかりと理解していただいて、どのような会社形態にするのか?を熟考していただけると幸いです。
ちなみに、メリット・デメリットについては、紹介する4つの会社形態と比較をした場合のお話をしているので、ご注意ください(会社設立と個人事業主を比較をしたメリット・デメリットとはまったく別物となるため、敢えて記載をさせてもらいました)。
4つある会社形態の簡易紹介
2020年7月現在の会社法では「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4つの種類から選んで会社設立が可能となっています。各々の種類について、後ほど詳しく説明をするとして、ここでは簡単に比較表を作って紹介をしていきます。
まずは「こういった違いがあるのだな」と感じていただければ結構です。
株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 | |
出資者の人数 | 1人~ | 1人~ | 2人~ | 1人~ |
出資者の呼び方 | 株主 | 社員 | 社員 | 社員 |
出資者の責任 (※倒産など負うべき責任の範囲 有限責任…出資額を限度の負債負担 無限責任…負債総額の全額負担) |
有限責任 | 有限責任 | 無限責任・有限責任 | 無限責任 |
代表者の呼び方 | 代表取締役 | 代表社員 | 代表社員 | 代表社員 |
世間一般の信頼度・認知度 | 非常に高い (一般的な会社形態となる) |
やや低い (2020年7月現在…世に登場してから間もない) |
低い | 低い |
会社設立時に必要な費用と手続き | 登録免許税…150,000円~ 定款認証…50,000円 印紙…40,000円 |
登録免許税…60,000円~ 定款認証…不要 印紙…40,000円 |
登録免許税…60,000円~ 定款認証…不要 印紙…40,000円 |
登録免許税…60,000円~ 定款認証…不要 印紙…40,000円 |
設立時に必要な最低資本金額 | 1円~ | 1円~ | 規定なし | 規定なし |
役員と任期 | 取締役 (最長10年) |
全社員 (無制限) ※定款に業務執行社員を定めた場合のみ「業務執行社員」 |
全社員 (無制限) ※定款に業務執行社員を定めた場合のみ「業務執行社員」 |
全社員 (無制限) ※定款に業務執行社員を定めた場合のみ「業務執行社員」 |
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員の過半数 | 社員の過半数 | 社員の過半数 |
上場 | 可能 | 不可 | 不可 | 不可 |
決算公告 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
利益の配分 | 出資額に比例して配分される | 自由に決定可能 ※定款にて決める必要あり |
自由に決定可能 ※定款にて決める必要あり |
自由に決定可能 ※定款にて決める必要あり |
上記の表を見てもらえば分かる通り、株式会社は異質な存在となっていますが、合同会社・合資会社・合名会社は似たりよったりだということが分かります。
その結果、会社設立をする場合は「株式会社」or「合同会社」のような図式が成り立って、会社の発起人は「どちらにするのか?」を選択する形が多いわけですね。
(なぜ合資会社と合名会社は選択されないのか?は後ほど紹介するメリット・デメリットで明らかになります)
ちなみに、合同会社、合資会社、合名会社は、いわゆる持分会社に分類される会社形態となります。
株式会社とは?特徴とメリット・デメリットを紹介
株式会社とは
世の中にある会社形態の中でも、もっとも一般的な会社が「株式会社」となります。株式と呼ばれる証書を発行し、その株式を投資家に購入をしてもらって、購入資金として得たお金を事業に充てて活動する会社のことを言います。
株式を購入してもらった投資家のことを「株主」といいます。会社側は、お金を提供してくれた株主に対して、当然、お礼をしないといけません。それが「配当金」や「株主優待」です。
このように、会社は株主から資金を、株主は投資した会社から特典(配当金・株主優待)をもらって、Win-Winの関係を築きながら事業展開をしていくわけです。
今さら聞けない株式会社の「株式」とは?
株式とは、株式会社がお金をだしてもらった投資家に対して発行する証券のことを指します。そして、この株式は…会社設立時に、1株あたりの価値と、発行可能数を決めます。
したがって、株式とは数の限りがあり、無限に発行できるものではないということが理解できますね。また1枚あたりの価値は、資本金を株式発行数で割った金額になります。
例えば、資本金を1,000万円とし、発行数を500株とした場合、1株の価値は「2万円(1,000万円÷500株)」となります。
これを踏まえ、さらに会社自体が発行できる株式の上限を決定します(これが発行可能数となる)。基本的に何株でも発行することが可能ですが、あまりにも多くしたり少なくしたりと極端すぎると経営が立ち行かない状況になるリスクがあります。
バランス良く株式発行数を決めることが重要なポイントになるわけですね。
株式会社の特徴は「資本と経営の分離」
株式会社の最大の特徴の1つとして挙げられるのが「資本と経営の分離」をしていることです。企業の所有と経営を分離した考え方…と、言ったほうが理解できるかもしれませんね。
株式会社を語る上で「会社とは誰の所有物なのか?」と議論されますが…基本的には「株主」です。したがって、企業の所有者は株主になります。
この株主と経営者を分離することで客観性を保ち、健全な会社運営を図ることができるのが株式会社のよいところです。なので、最高意思決定機関は株主であって経営者ではないのです。
ちなみに、持分会社の場合は、このような分離をすることはできないので客観性が保てなくなることがよくあります。
株式会社のメリット
社会的に認められ信頼度が高い
信頼度という点で、他の会社形態と比較した場合、やはり圧倒的に高いのが株式会社となります。信頼度が高くなる理由は大きく2つで「守るべき法律が多い」「単純に知名度が高い」からです。
1つ目の「守るべき法律が多い」は、合同会社などの持分会社よりも、厳しい法律を守らないといけないことが多いため「悪いことがしにくい」と言い換えることができます。
言わずもがな、悪いことがしにくい会社形態の方が、信頼度が高くなることは当然です。法の穴をかいくぐってグレーゾーンを利用した会社運営をする可能性が低いですからね。
2つ目の「単純に知名度が高い」は、言葉通りの意味です。まったく同じ事業をしているにも関わらず、○○株式会社です!と紹介された場合と、○○合同会社です!と紹介された場合、やはり前者の株式会社の方が安心できますよね。
知名度が高いからこその直感的な安心感の差は思っている以上に大きなモノなので、大きなメリットと言えるのです。
資金調達が他会社形態よりもしやすい
株式会社の場合、他会社形態よりも資金調達ができる方法が多いメリットを持っています。そもそも株式を購入してもらって資金調達ができるので、魅力ある会社にすることができれば大きな額を手にできるチャンスすらあります。
持分会社では、このチャンスがないため、大きな差が出ることになるのです。資金調達の面で、もう1つ…「銀行からの融資を受けやすい」という大きなメリットが挙げられます。
当然、融資というモノは “信頼できる会社” ということが最低条件。持分会社と比較したとき、信頼度が高い株式会社の方が「融資とされやすい」と言えるのです。
株式会社のデメリット
決算公告を必ずしなければならない
正直なところ…デメリットとして挙げていいのかが難しいところですが、株式会社は「決算公告」をする義務があります。決算公告とは、株主などに対して会社の財務情報を開示することをいいます。
株主たちのお金を活用して会社運営をしているわけですから、当然の義務ですよね。とはいえ、正確な数字を出す作業というのは面倒であることは間違いのでデメリットとして挙げられるわけです。
イニシャルコスト・ランニングコストがそれなりに必要となる
先で紹介した表でも分かる通り、株式会社だけイニシャルコストが高くなっています。べらぼうに高くなっているわけではありませんが、やはり気には留めておきたいところです。
また、会社設立後も、株式会社特有のランニングコストも発生します。例えば、株主総会の開催費用だったり、決済公告をするための人件費だったりです。
持分会社と比較をすると、コストが多くなるデメリットはあります。
合同会社とは?特徴とメリット・デメリットを紹介
合同会社とは
2006年に施行された会社法で新設され、有限会社に変わる会社形態となります。さまざまなメリットがあるため、新設されて以降、高い注目を浴びている状況です。
というのも、抜群の知名度を誇っている「アマゾンジャパン」「アップルジャパン」「グーグル」「クロックス」など大手が合同会社として事業展開をしているからです。
ここからも合同会社は魅力がある何よりの証拠といえるのではないでしょうか。
合同会社のメリット
持分会社の中で唯一「有限責任」で設立が可能
合同会社の最大のメリットと言っても過言ではないのが「有限責任」で会社設立することが可能なことです。持分会社の中で唯一持っているメリットで、受ける恩恵はかなり大きいといえます。
その結果、昨今では持分会社の中でも、合資会社でもなく、合名会社でもなく、合同会社を選ぶ人が多くなっているのです。(本記事でも最終的に比較対象は「株式会社」or「合同会社」にしているのも、これに起因しています)
自由に会社経営ができる
株式会社とは違い、出資者が会社の運営をしていくことになります。したがって、出資者のみで会社経営が可能なため、自由にいろいろなことにチャレンジすることができます。
もし出資者が1人であれば、自分自身で好きなように運営ができるわけですから、より自由度の高い経営が可能です。誰からも縛られずに挑戦ができることは、思っている以上に大きなメリットと言えるでしょう。
株式会社よりも小回りがきく
何か新しいチャレンジをしたいとき、株式会社の場合は、出資者と経営者に許可を得ないといけません。つまり、何をするにでも手続きが面倒で、どうしてもスピード感がなくなってしまうことになります。
業種によっては、このスピード感が重要になることもあるので、この小回りが効くことは大きなメリットになるはずです。
合同会社のデメリット
株式会社と比較をすると資金調達が難しい
株式会社を比較をすると、どうしても信頼度が低いため、銀行など金融会社からの融資が難しくなります。しっかりとした経営ビジョンがあって説明することができれば問題ありませんが…。
それでも、やはり株式会社と比較をすると、どうしてもハードルが高くなる部分です。となると、社員たちの資金力が重要になってきますが…なかなかどうして上手くいかないことも多いことでしょう。
結果、資金調達ができないので、やりたかったこともできない本末転倒な状況になってしまうリスクがあります。
客観的な意見を求める場を自分で作らないといけない
資本と経営の分離がされていないため、外からの意見を取り入れにくい環境がどうしても作らてしまいます。したがって、柔軟な考えで行動することができず、経営が立ち行かなくなるケースも…。
株式会社の場合、さまざまな手続きを踏むことで、客観的な意見を聞けるようになっているため進むべき道を正すことも可能です。これが、合同会社と株式会社の大きな違いといえるでしょう。
もし、合同会社でも、これを防ぎたいのであれば、経営者自身が積極的に意見を求める場を設けて、耳を傾けるしかありません。
ワンマン会社になるリスクが高い
株式会社でもワンマン会社になるケースは多々ありますが、合同会社を始めとした持分会社は、より可能性が高いです。有能な人のワンマン会社であれば何の問題はありませんが…必ずしもそうとは限りません。
この場合、株式会社であれば株主総会などで、さまざまな要求が可能なので、ある程度の歯止めができます。合同会社では、この抑止力もないため、より高いリスクがつきまといます。
複数人で会社を立ち上げた場合…仲違いしたときの影響が大きい
合同会社の場合は、出資額に関係なく出資者が持つ議決権は平等です。意見の対立が起きた場合、折り合いが付きにくく、経営が停滞してしまう恐れがあります。
人生を懸けて設立した会社の経営となれば、激しい言い合いになることもあることでしょう。合同会社がゆえに収拾がつかなくなる可能性が少なくなりません。
合資会社とは?特徴とメリット・デメリットを紹介
合資会社とは
会社に債務が発生してしまった場合、無制限に責任を負うことになる「無限責任社員」と、出資額までの責任を負うことになる「有限責任社員」で構成される会社のことを指します。
合同会社と同じ持分会社に分類される会社ではありますが、実際に合資会社として活動している企業は少ないです。
余談ですが…2006年まで存在していた有限会社よりも、簡単に会社設立ができるメリットを持っていたのが、この合資会社です。
したがって、2006年までは、それなりに合資会社を設立する人も存在しました。
ですが…有限会社の代わりに新設された合同会社が思っている以上に簡単に会社設立ができるため、敢えて合資会社を選択することがなくなっていっているのが現状です。
そもそも「無限責任社員」を立てリスクを負わないといけない合資会社と、「有限責任社員」のみで会社設立ができる合同会社…どちらを選択するのか?と問われれば、やはり後者を選択しますよね。
結果、自然の流れとして、合資会社は減っていく一方になっているのです。
合資会社のメリット
合同会社の「自由に会社経営ができる」「株式会社よりも小回りがきく」と同様の内容になるため、そちらを参考にしてください。
合資会社のデメリット
合同会社と同じデメリットになるため、そちらを参考にしてください。ただ、合資会社特有のデメリットが2つあるので、以下で説明をします。
無限責任と有限責任が混在している
昔の名残が今に残っているといったところでしょうか…合資会社を設立する場合は、無限責任を負う出資者と有限責任を負う出資者が必要となります。
しかも、リスクの大きさが段違いとなるため、設立時に「どちらが、どのような責任を負う社員になるのか?」という精神的な消耗も…。
これが原因で大きなケンカになることもあるため、なかなか難しい面があるといえるでしょう。そもそも、敢えてリスクの押し付け合いをするような会社形態を選択する必要はないともいえます。
会社設立をするために2人以上が必要となる
株式会社、合同会社、合名会社は1人からでも会社設立することが可能です。先に説明した通り、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の2人が必要となります。
そのため、なぜか最低でも2人必要となり、手軽に設立できる会社ではないデメリットを持っています。
合名会社とは?特徴とメリット・デメリットを紹介
合名会社とは
会社形態の中で、もっとも古い形とされるのが合名会社で、現在ある会社の礎となっていると言ってもいいでしょう。
イメージとしては、個人事業主たちが同じ志しをもち、協力しあって事業展開をしていく会社形態です。合名会社の社員は、自らが出資をして業務を進めていくことが特徴で、いわゆる「機能資本家」となります。
昨今では株式会社や合同会社が頭角を現していることもあって、会社設立時に敢えて合名会社を選択する人は、合資会社と同様の理由で皆無な状況となっています。
ちなみに、2006年に会社法の中身が変わり新たに施行されていますが…合名会社の法律も大きく変わることになります。もともと合名会社は複数人の社員がいなければ会社設立することができませんでした。
(個人事業主たちが協力しあって事業展開することが目的のため複数人いて当たり前ですからね)
しかし、新会社法では「一人のみでも認める」と変更されたため、個人事業主が法人成りがしやすい状況を国が作ってくれたわけですが…。
ただ、先にも記載した通り、合同会社は無限責任を負うリスクもあって、なかなか一歩を踏み出すことはできません。であれば、同じ一人でも立ち上げることができ、かつ有限責任となる「合同会社」を選択する方がよいに決まっていますよね。
これが世の流れであり、合同会社を選択する人が皆無になっている理由といえます。
合名会社のメリット
合同会社の「自由に会社経営ができる」「株式会社よりも小回りがきく」と同様の内容になるため、そちらを参考にしてください。
合名会社のデメリット
合同会社と同じデメリットになるため、そちらを参考にしてください。ただ、合名会社特有のデメリットが1つあるので、以下で説明をします。
無限責任しか選択できないためリスクがある
見出しに記載したとおりです。言わずもがな…無駄にリスクを負うことになるため、非常に大きなデメリットであり、敢えて選択することもないと言えます。
株式会社と合同会社の違いをまとめてみた
ここからは「株式会社」と、持分会社の代表「合同会社」の違いについてまとめていきます。「合資会社」と「合名会社」は、昨今の状況からみても設立する人は…まずいないだろうと判断して除外させてもらいました。
株式会社・合同会社の比較表
項目 | 株式会社 | 合同会社 | 備考 | |||
内容 | 評価 | 内容 | 評価 | |||
商号 | ○○株式会社 | ○ | ○○合同会社 | △ | 株式会社の方が信頼度が高い | |
登記費用 | 定款認証手数料 | 50,000円 | × | 0円 | ○ | 合同会社は不要 |
定款謄本交付手数料[*1] | 2,000円 | × | 0円 | ○ | 合同会社は不要 | |
登録免許税 | 150,000円 | × | 60,000円 | ○ | 合同会社の方が安い | |
(会社)実印[*2] | 10,000円 | - | 10,000円 | - | ||
(会社)印鑑証明書 | 450円 | - | 450円 | - | ||
(個人)実印[*2] | 10,000円 | - | 10,000円 | - | ||
(個人)印鑑登録[*3] | 500円 | - | 500円 | - | ||
(個人)印鑑証明書 | 400円 | - | 400円 | - | ||
資本金[*4] | 1円~ | - | 1円~ | - | ||
代行業者手数料[*5] | 20,000円 | - | 20,000円 | - | ||
登記費用の合計 | 243,351円 | × | 101,351円 | ○ | 登記費用は合同会社の方が安い | |
資本金出資者 | 株主(発起人が出資額に応じて) | - | 社員(出資者全員) | - | ||
株式公開 | 任意 | - | なし | - | ||
代表者 | 代表取締役 | ○ | 代表社員 | × | 合同会社は代表取締役を名乗れない | |
役員任期 | 2年 or 10年[*6] | × | 任期なし | ○ | 合同会社は任期がないため | |
節税 | できる | - | できる | - | ||
社会保険加入 | 義務 | - | 義務 | - | ||
社員数 | 無制限 | - | 無制限 | - | ||
決算公告義務 | あり | - | なし | - | どちらも一長一短がある | |
重要事項決定方法 | 株主総会 | - | 社員総会 | - |
[*1]あくまでも参考値です。定款の内容によって金額が変わります。
[*2]実印用の印鑑はピンきりですので、購入したモノによって金額が変わります。個人の実印をすでに持っているのであれば0円です。
[*3]個人の実印を所有しており印鑑登録がされていれば0円です。
[*4]最低金額が1円となっています。
[*5]登記を代行業者に依頼した場合の値段で参考値となっています。業者によって、登記内容によって大きく値段が変わってきます。
[*6]基本的には2年ですが、株式譲渡制限がある場合は最大で10年までとなっています。
比較項目の簡易説明
〈商号〉
株式会社でも合同会社でも、会社名の前か後ろかに必ず入れます。例えば、会社名がABCだった場合、株式会社ABC、またはABC株式会社となるわけですね。
合同会社も同様で、合同会社ABC、またはABC合同会社となります。
〈登記費用〉
広く公にするために会社を立ち上げた場合は、必ず登記することになります。このとき、株式会社と合同会社とでは登記する内容が異なるため費用も必然的に変わってきます。
以下からは、特に説明が不要なモノを除き、以下に登記費用の中でも知っておきたいポイントの説明です。
定款
「ていかん」と読みます。定款とは、組織や活動について定めた根本規則です。平たく言えば、会社の法律書といったところでしょうか。
株式会社の場合、この定款を「登記時、一緒に提出しないといけない」ことになっています。「うちの会社はこのルールで運営していきますよ!」と公示するわけですね。
それを提出するときに、登記費用として手数料などが徴収されてしまうのです。ちなみに、合同会社の場合でも定款を作ることになりますが、登記時の提出は不要です。
定款認証手数料は50,000円となっていますが、謄本交付手数料は状況によって値段は変わってきます。とういうのも、定款1枚に対して250円が発生するため、ページ数が多くなればなるほど高くなっていくことになるからです。
登録免許税
“税”と言っているぐらいなの、国へ納める税金になります。登記するわけですから「こういう会社を設立しますね!」と一般公開することになります。
そのときに発生する手数料みたいなものと理解頂ければ結構です。合同会社であろうが、株式会社であろうが…会社設立をするだけで税金が発生するのも、なかなかどうしてと思ってしまうところですが…法で決まっているため致し方がないところです。
ちなみに、ここでは「150,000円」が株式会社、「60,000円」が合同会社と紹介しましたが…実は設立時の資本金によって値段は変わってきます。その境界線が「2,143万円」です。
2,143万円未満であれば150,000円ですが、2,143万円以上になると資本金の0.7%が登録免許税になります。したがって、5,000万円が資本金として登記した場合は「5,000万円x0.7%=35万円」となって、なかなかの金額になってしまいます。
資本金
上記の表では1円~としていますが、あくまでも最低1円から会社設立することが可能と言っているだけです。実際に、資本金1円で始める場合、いくつも注意点があるので覚えておきましょう。
もちろんメリットもあるので、ここでは資本金1円のメリット・デメリットを簡単に紹介をしておきます。
■メリット
- とにかくお金がなくても「会社」を始めることができる
- 会社に貸し付けることができる
■デメリット
- 銀行が口座を作ってくれない可能性がある
- 融資が受けれない可能性がある
- 一般的に信用度が低く「怪しい会社」と認識されやすい
- 社員を募集したくとも資本金1円を見て応募をやめてしまう人が多数いる
このようにデメリットの影響が大きすぎるため、ある程度は資本金は用意しておくことをおすすめします。ただ逆に1,000万円を超えるような金額に設定すると、節税効果が薄くなるなどのデメリットも。
したがって、会社設立時の資本金は、しっかりと考えて用意・設定することを強くおすすめします。
代行業者手数料
登記するには専門知識がいろいろと必要となります。したがって、代行業者に依頼するケースも多いですが、業者によって手数料は大きく異なります。
「相見積もり」や「相性」を見極めて決めることが大切なことは言うまでもありませんね。
〈資本金出資者〉
合同会社の場合、資本金の出資者は「社員」と呼び、株式会社の場合は「株主」と呼びます。株式会社は発起人が資本金を出資しつつも、必ず1株以上を引き受けなければならないため、会社の株主に自動的になります。
ちなみに、合同会社として設立したとき、雇った人はどのように呼べばいいのか?と迷うところです。「社員」とは、あくまでも資本金出資者のことを指すため、社員と呼称してしまえば混乱してしまいます。
基本的に、呼び方に関しては法律で定められているわけではないので、自由に呼んで構いませんが…「スタッフ」「職員」のように明確に分けているケースもあります。
〈株式公開〉
合同会社は、株式を発行するわけではないため、公開うんぬんの話はありません。あくまでも株式会社の話で…公開株にするのか?は任意です。
もちろん、非公開するのであれば非公開にするためのルールがあり、公開するのであれば公開するルールがあります。いずれも一長一短があるため、どうするか?はしっかりと見極めていく必要があります。
〈代表者〉
合同会社の場合、代表者は「代表社員」となります。もちろん、社長だったり、CEOだったり、異なる呼び方をしても何の問題もありません。
ただし「代表取締役」は名乗れないので注意したいところです。というのも、株式会社の代表者だけが「代表取締役」を名乗れるようになっているためです。
〈役員任期〉
株式会社の場合は、最長で10年まで、または2年までと定められており、どちらになるのか?の切り分けは「株式譲渡制限のあり・なし」によって決まります。株式譲渡制限がある場合に10年、ない場合に2年です。
対して、合同会社の場合は、任期はないため出資者が退社するまで役員として職務を遂行することが可能です。余談ですが…合同会社で業務執行役員が退社した場合、2週間以内に登記変更をする必要があります。
役員であっても、業務執行役員でなければ登記変更する必要はありません。
〈節税〉
株式会社も合同会社も同じように節税をすることができます。個人事業主と比較をした場合、一定の所得が超えたときに法人成りをすることで、上手に節税ができます。
具体的には、法人税率が所得税率よりも低い、経費の適用範囲が広くなる、給与を経費として扱えある、給与所得控除が適用できるといったところです。他にも「消費税」が免除も可能となっています。
〈社会保険加入〉
株式会社も合同会社も、社会保険に加入する義務があります。したがって、ここに差はありません。
〈社員数〉
株式会社、合同会社とも社員数に制限はありません。1人以上から何人でもオッケーです。
〈決算公告義務〉
株式会社の場合は、法で「決算公告をしなさい」と定められています。そもそも法で定められていなくても…株主の協力があってこその会社運営となるため、協力を頂いている人たちに「今年は決算はこうなった!」と、周知する義務があると考えます。
逆に合同会社は義務はなく、特に決算公告をする必要はありません。
合同会社の決算公告について
また、1つ声を大にして伝えておきたいことがあります。
それが、合同会社は決算公告する必要がないメリットを持っている!と紹介されることがありますが…一概にもそうとは言えないということです。
確かに決算公告のような面倒な作業を省けることになるので嬉しいですが…ただ、決算公告ができるのであればしておいた方がよいからです。
というのも、外部からみたら「皆に知ってもらいたいのだな」「しっかりとしている会社だな」「自信を持って事業展開をしているのだな」のようなポジティブに理解してもらえて信頼度を勝ち取る可能性もあるからです。
〈重要事項決定方法〉
株式会社の場合、重要事項決定事項は基本的に「株主」が行います。いわゆる「株主総会」が最高決定機関になるわけですね。
ただ…注意しておきたい点は、会社によって「取締役会」があり、こちらも会社経営についての最高決定機関になることです。
では、何が違うのか?ですが…単純な話で「役割」が異なります。株主総会では、会社の基本方針を決定、取締役会は業務遂行に関する意思決定をしていくイメージです。
お互いの最高決定機関がバランスを取って会社運営に努めることになります。対して、合同会社の場合は、定款に定められた方法で実施していくことになります。
したがって、定款を作り込むときに「重要事項決定方法はどうするのか?」をきっちりとまとめていくわけですね。
基本的に、この定款は出資者…つまり社員全員に権利が発生するため、ある意味では「出資者全員で重要事項決定を行う」となります。
株式会社と合同会社…どちらにするか?迷ったときのチェックポイント
なかなか難しい決断をしないといけないのですが、会社を経営していくことになった場合、このような状況はたくさん出てきます。
したがって、経営トップとしての最初の大きな決断と腹をくくって決めていただければと思います。とはいえ、何かしらの判断材料は欲しいですよね。
1つの方法として挙げられるのが、会社のロードマップを考えることです。そのロードマップと、会社形態がマッチするものを選択するとよいです。
つまり…最終的に「会社をどうしたいのか?」と、しっかりと未来をイメージするわけですね。株式会社は、長い年月をかけて、さまざまなことにチャレンジする場合に相性がよい会社形態になります。
融資も受けやすいですし、株主など、多角的な意見が入ってきやすいからです。逆に、小回りがきいて自分の好きなことを仕事にしたい場合は、やはり合同会社の方が相性がよいといえるでしょう。
と…言葉を並べてもピンとこないと思うので、以下にチェックポイントを箇条書きにするので、ぜひ参考にしてみてください。
■株式会社に向いている
- 資金調達を充てにして早く会社を成長させたい
- いずれは株式上場をして会社を飛躍的に大きくしたい
- 信頼度を高くして社会的な地位を手にしたい
■合同会社に向いている
- 単純に節税をしたいだけで会社を大きくしたいわけではない
- 資金調達をしなくても会社運営ができてしまうような業種
- フラットなメンバーだけで会社経営をしたい
- 地域貢献をするために共通の会社を立ち上げたい(商店街の町おこしなど)
ちなみにですが…会社設立費用を抑えたい!という理由だけで、合同会社を選択することは、正直なところ、あまりおすすめしません。確かに合同会社の方が安く設立することができますが、その差額はたかだか150,000円程度です。
長い将来を見たとき、スタートの150,000円の差というのは、さほど大きな問題ではないはずですからね。
どうしても甲乙つけがたいという状況で差がなく決めきれない場合のみ「まぁ…強いて言えばイニシャルコストが安い方を選ぼうか」という程度に留めることをおすすめします。
将来を左右するからこそ熟考が必要だけど…決めたらやるしかない
2020年現在、合同会社という存在は徐々にではありますが、知名度は高くなってきています。したがって、近い将来、株式会社のメリットであった「信頼度」という点は、合同会社にも同じことが言える世の中になる可能性は十分にあります。
また、融資の面でも、しっかりとした経営ビジョンがあって、毎年、収支も残して黒字にしておけば、問題なく銀行も事業展開のお手伝いをしてくれるはずです。
だからこそ、お互いのメリットとデメリットを、その都度、確認をして「どちらの会社で設立をするのか?」を決めることが重要となるわけです。
先に記載した「信頼度」というステータスが良い例と言えるでしょう。正直なところ、本当に難しい判断になることは間違いありません。
現実問題として「株式会社→合同会社」「合同会社→株式会社」のようにコロコロと変えることは厳しいので…。
ただ、どちらに選んだとしても、「サービスを提供して利益を得る」のように会社として行うことは一緒です。
あくまでも、イニシャルコストが異なったり、持分比率が違ったりと、細かい部分の相違点はあるだけの話で、慣れれば何の問題もないことも多いです。
したがって、熟考する必要はあるものの、ある程度の余裕を持って決めるのも1つの手かもしれませんね。
最後に伝えておきたいことは、兎にも角にも「どちらを選んだとしても、決めたらやるしかない!だから、熟考後、勇気を持って決断をしよう!」ということです。
当たり前のことですが、このような初心を意外と忘れてしまうことも多いので、最後のまとめとして記載させていただきました。