台湾はアジアの中でも随一の親日国で、日本統治50年の歴史から日本文化と共通する部分も多く、日本語を話せる人材も確保しやすいため、事業をするにはおすすめの国です。
外務省が調査した「海外進出日系企業実態調査」によると、2017年10月1日時点で台湾に進出している日系企業は1,179社もあり、2020年現在、ビジネス環境ランキングでは15位と安定しています。
今回は台湾で会社を設立する方法や費用について詳しく解説します。
目次
台湾で会社設立するとかかる費用
台湾で会社を設立するには様々な費用が掛かります。
また、日本人が台湾で会社を設立する場合、1人で行うのは非常に困難であり、多くの場合は代行業者に依頼をするため、その際の費用も併せてご紹介します。
なお、台湾での通貨の通称は「台湾元」「ニュー台湾ドル」「TWD」「NTD」「NT$」と様々な言葉で言われていますが、すべて同じ通貨です。
(1)資本金
以前は台湾の法律で最低資本金額が決められていましたが、現在その条項は削除されています。
しかし、「資本金は会社設立に直接必要な費用以上でなくてはならない」とされており、ビザの関係上、実際は1台湾元で会社を設立するということはできません。
資本金50万台湾元必要な場合
新しく設立する会社の責任者として就労許可を取る場合、資本金が50万台湾元(約200万円)以上必要です。
具体的な審査基準は公開されていませんが、資本金が少ないと初回の就労許可期間が短くなる可能性があり、資本金を多くすれば就労許可期間が長くなる傾向があります。
台湾の銀行から外国人が借入を行うことは非常に困難ですので、資本金はできるだけ多く準備しておかなくてはなりません。
ほかにも、旅行業など一部の業種では最低資本金として300万台湾元が必要で、高額の最低資本金額が決められているケースがあります。
自分の計画している事業に最低資本金がないかどうか事前に確認をしましょう。
<ポイント>
今まで駐在員や現地採用者など、現在の勤務先が招聘する形で就労許可を取られている方は「個人で就労許可を持っている場合」には該当しないため、設立の際に取得する必要があります。
(2)オフィス賃料
台湾の地域は大きく分けて「信義(シンイー)区」「中正(ジョンジョン)区」「士林(シーリン)区」の3つに分かれます。
その中でもオフィスとして多く賃貸されているのは「信義区」、次に「中正区」となります。建築年数や階数、立地などにも左右されるため、借りたい地域がどこにあるか確認しましょう。
信義(シンイー)区
信義区は台北の南東に位置する台湾でも独自の個性をもつ観光エリアです。
流行の発信地となっており、都市間の移動が便利なバスターミナルや、台湾最多の海外ブランドが集まる阪急、三越などの日系デパート、国際的な知名度を誇る台北101ビルが立ち並んでいます。
家賃の相場は大体5万~8万台湾元(約18万~~29万円)と香港内では高い家賃です。
中正(ジョンジョン)区
台北の中枢である中正区は駅から近い場所にホテルがあり、人気の観光スポットへも歩いていくことができます。
また、台北駅からは公共交通機関での移動が楽で、予算や目的に合わせてホテルを選べばフットワークの良いビジネスを可能にしてくれます。
そんな中正区のオフィスの賃料の相場は2万~5万台湾元(約7万~18万円)となります。
オフィスの賃料が高いと感じる場合は、一室を共同で使うシェアオフィスや、登記のための住所のみを借りるバーチャルオフィス、コンドミニアムなど、自宅と兼用して使う方法もあります。
その場合は約5,000~1万台湾元(約2万~3万5,000円)と半額になります。
(3)会社設立登記料
会社を設立するために必要な費用は大きく分けて以下の通りです。
- オンラインで会社名の提出 150~300台湾元(約550~1,100円)
- 会社の登記書類提出や登記 1,000台湾元(約3,600円)
- 外国人の労働許可書類費用 500台湾元(約2,000円)
- 外国人の居留証 1,000台湾元(約3,600円)
- 資本の審査証明書 2,000台湾元(約7,200円)
設立代行業者依頼する場合は、サポートの範囲によって費用が変わりますが、おおよそ3万~6万 台湾元(約10万~20万円)が加算されます。
(4)法人税
台湾の法人税は「営利事業所得税」と呼ばれ、税率はここ数年で何度か変わっています。
2018年2月7日までは17%でしたが、2020年現在では20%となり、売上が「12万台湾元(約45万円)」未満の場合は非課税となります。
また、以前は未処分利益(保留金)に対して追加税が10%ありましたが、2019年以降は廃止されました。
<ポイント>
売上が12万台湾元未満の場合は非課税と説明しましたが、こちらには罠があります。
日本人が現地法人を作る場合、1年間または3年間で平均300万台湾元(約1,000万円)の売上がないと居留ビザの更新ができません。
そのため、20%の課税は必須となり、特に個人で出資をして台湾で会社を設立する場合は多くの人がこの壁にぶつかります。
(5)ビザ申請手数料
許可なしで就業すると、不法就労となり労働者も雇用者も罰せられます。罰金(約3万~15万台湾ドル)や強制国外退去が命じられることがありますので、必ず就労ビザの申請を行ってください。
日本にいる間に取得するほうが早く発行され、費用は約7,000円となります。
(6)会社運営費用
現地で台湾人を雇用する場合、人件費が必要になります。
台湾の最低賃金審議員会の発表によると、2020年現在で月額2万3800台湾元(約8万5000円)、時給は158台湾元(約560円)となります。
また、2021年からはそれぞれ2万4000台湾元(8万6000円)、160台湾元(約570円)に引き上げると発表しました。
しかし、こちらの金額はあくまで最低賃金で、経歴や年齢によって金額は変わります。
- 大学新卒・・2万6000台湾元~
- 事務職・・・2万6000台湾元~
- 管理職・技術職(30歳~40歳以上)・・・4万5000台湾元~
また、台湾は風習として、旧正月などの節句にご祝儀としてボーナスを支払うことがあります。金額は企業の業績にも左右されますが、一般的には給料の1~2か月分となります。
台湾で会社設立する際の手続きと必要書類
台湾で会社を設立するための手順を説明します。日本の会社と比べて行うことが多いため、前もって行動するようにしましょう。
社名・営業項目の決定(約1日)
日本ではすでにある会社名でも、全く同じ住所でなければ使うことが可能ですが、台湾では同じ商号を使うことができません。
まず、使用したい会社名が台湾に存在しないかを事前に経済部中部弁公室に予備審査してもらう必要があります。
また、会社名のルールは「中国語表記のみ」となり、注意点として、日本にある会社の支店や駐在員事務所を作る場合は、日本にある会社名と同じにしなければなりません。
次に、営業項目の決定を行います。
こちらは日本でいう定款の「目的」に該当する部分で、どんな事業を行うかによって記載する内容が変わります。項目が外資投資禁止または制限項目に該当しないか注意しましょう。
そして、営業項目の中には、内容によって最低資本金が必要となる場合があります。例えば、旅行会社を運営したい場合は300万台湾元(約1,000万円)が資本金として必要となります。
会社名称および営業項目調査申請表はこちらからダウンロードすることができます。
<ポイント>
注意事項として、訂正などをする際に、保留期間は6か月となっており、延長申請は1か月を上限として、1回だけ可能です。また、予備審査は弁護士や公認会計士に限らず代理申請ができます。
外国人投資申請を行う(3~5日)
台湾において外国法人及び外国個人の身分で投資して設立された現地法人をFIA法人(=Foreign Investment Approval)といいます。
外国人投資条例に基づいて、経済部投資審議会による許可が必要となります。外国人投資のネガティブ・リストにある「禁止事業」及び「制限事業」が含まれない業種は基本的に全て認可されます。
<禁止事業・制限事業の例>
- 化学原料製造業
- パスやタクシーなどの陸上運送業
- 郵便および配達業
- ラジオやテレビなどの放送業
- 金融業
- 法律および会計サービス業
- 娯楽やレジャーサービス業
- 農業・林業・漁業
禁止事業に関してはそもそも事業を行うことができないため、含まれた事業項目を提出してしまうと許可がおりません。制限事業の場合は審査された後、問題なければ許可がおります。
必要書類
外国人投資申請に必要な書類は以下の通りです。
- 外資投資申請書(Form A)
- 申請者身分証明
- 代理人委任状
- 代理人身分証明
- 会社名称および営業項目調査申請表
外資投資申請書はこちらからダウンロードすることができます。
銀行口座開設
登記をまだしていないため、正式な会社の銀行口座は開設できませんが、登記のために資本金が十分あることを証明するために、準備口座として法人の口座を開設することができます。
この時、口座は中国語の会社名及び会社の責任者の名前を使用し、代表者が自ら現地に出向く必要があります。
開設すべき銀行ですが、台湾では日本の都市銀行(みずほ銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行)の支店があり、日本から資本金などの送金を行うには都市銀行の支店で開設するのがおすすめです。
出資金の入金~審査(約1週間)
出資金 (大抵の場合資本金 50万台湾元) を準備口座に送金する際、きちんと代表責任者の名前が振込先の銀行通帳に記入されている必要があります。
その後、資本金が確実に送金されているかの確認を経済部投資審議委員会が審査します。
必要書類
外国人投資申請に必要な書類は以下の通りです。
- 投資額査定申請書(Form C)
- 台湾の銀行の入金通知書
- 為替メモ(Foreign Exchange Memo)
- 銀行通帳のコピー
投資額査定申請書はこちらからダウンロードすることができます。
英語
中国語
会社登記申請を行う(10日~14日)
出資金の審査が通るといよいよ登記申請を行います。
申請場所は、払込済資本金が 5 億台湾元以上の場合は「経済部商業司」へ、払込済資本金が 5 億台湾元未満の場合は以下の各所在地管轄の局に申請します。
- 台北市政府
- 新北市政府
- 台中市政府
- 台南市政府
- 高雄市政府
- 桃園市政府または経済部中部弁公室
※所在地が加工出口区、科学工業園区、農業サイエンスパーク、自由貿易港区内にある場合は、「各管理処または管理局」に申請します。
必要書類
株式会社設立のために必要な書類をご紹介します。登記に必要な書類は経済部商業司のサイトからダウンロードすることができます。
なお、代理人が代行する場合は委任状が必要で、代理人は弁護士か公認会計士に限ります。
- 法人株主の登記簿謄本(写し)1部
- 法人株主のFIA申請手続委任状(台湾で申請手続する代理人用)(原本)1部
- 外資資格声明書(写し)1部※
※中国の法人・人民及び団体等による申請人への直接及び間接の出資額が30%を上回っていないこと、或いは、実際に重要な影響を与えることができないことを証明する文書。
- 発起人名簿(写し)1部
- 法人株主の代表者任命書(写し)1部
- 株主総会(取締役会)議事録(写し)1部
- 新設法人の各役員のパスポート(写し)
- 新設法人の代表取締役(董事長)、取締役(董事)、監査役(監査人)就任同意書(写し、中国語書式)各1部
- 新設法人の定款(写し)1部
- 登記住所として使用する事務所の賃貸契約書または建物の登記簿謄本(写し)1部
- 登記住所として使用する事務所の建物税金(房屋税)の直近年度分納付証明書または建物の登記簿謄本(写し)1部
- 公認会計士による資本金のチェック証明書(原本)1部
有限会社の場合は、以下の書類が変わります。
- 発起人名簿→株主の同意書
- 株主総会議事録→代表取締役(董事長)の選任に係る取締役(董事)同意書
税籍登記申請を行う
設立登記の完了後、次は所轄税務署での税籍登記(営業登記)を行います。
管轄税務当局へ税籍登記申請を行い、税籍番号が決定された後は、統一発票を購入し、正式に営業開始ができるようになります。
税籍番号は台湾での会計処理(税金を納める)に使う重要な番号です。
- 申請書
- 設立事項表
- 代表者の身分証明
申請書はこちらからダウンロードすることができます。
英語
中国語
英字会社名称審査を行う(1~2日)
外国人が作った会社は外資会社に該当するため、英語表記を決める必要があります。
例えば日本の企業であるパナソニックは台湾で「パナソニック」という漢字がないため、旧会社名である「松下電器」という名前を使っています。
しかし、はたから見ると、「パナソニック」と「松下電器」に名前の関連性はないため、英語表記の登録が必要となります。パナソニックは英語表記では「Panasonic Taiwan Co., Ltd.」です。
このように日系企業の場合は英字も決める必要があり、こちらも同一商号がないかどうかを貿易サービス部で審査をします。早ければ1日で完了します。
英文会社名称調査申請表(申請書)はこちらからダウンロードできます。
銀行開設
会社が設立すると、法人名義の銀行口座を作ることができます。準備口座から正式な会社の口座への切り替えを行いましょう。
資本金の証明が承認され、登記も完了したら再度銀行へ赴き、準備口座を正式な口座へ切り替える手続きをします。
貿易をするならさらに許可を
貿易をするためには、貿易資格の申請が必要です。申請をして資格を取得してないと輸出・輸入はできません。
しかし、申請自体は難しくなく、すぐに取得可能ですが、最近は税関の審査は大変厳しいものになっています。
輸出輸入には海外との売買契約書、ネットオーダーの証明書、双方のメールのやり取りなど、必要に応じて税関からエビデンスの提出を求められます。
まとめ
今回台湾で会社を設立するために必要な金額のまとめは以下の通りです。
- 資本金(ビザを取得する場合)50万台湾元~
- 会社設立手続き 約5,000台湾元+代行費用10万~20万台湾元
- オフィス賃料 5000~5万台湾元
- ビザ手数料(約7000円)
- 会社運営費(人件費)2万6000台湾元(約9万5,000円)~
総額で約65万~80万台湾元、日本円で約300万円かかります。
1台湾元でも法律上は可能ですが、外国人が設立をし、就労ビザを取得するのであれば、最低50万台湾元が必要です。
旅行業などは日本でも基準額が数百万円から数千万円と決められているので、台湾でも例外ではありません。
また、先ほど説明した通り、就労ビザの更新では日本円で約1,000万円の基準に注意が必要です。
ペーパーカンパニーは当然厳しく、きちんとビジネスを考えていても、収益のめどがしっかり立っているビジネスモデルを考える必要があります。
それでも台湾は日本人にとって過ごしやすく、ビジネスを行いやすい国なので、台湾でジネスを展開しようと考えている方はしっかり準備を行い、チャレンジをしてください。