作成日:2020.12.09  /  最終更新日:2020.12.28

【会社設立するなら知りたい】事務所の取得費用と安くする4つの方法

会社設立を行う上で、自宅兼事務所より、専用の事務所・店舗を利用したいと思う人は少なくないかと思います。

自宅と事務所を分けることは、純粋に仕事とプライベートの切り替えにも繋がりますし、それ以上に、事務所・店舗ををきちんと構えているということで、信用の面でも大きなプラスにつながるでしょう。

とはいえ、会社設立時から事務所を借り受けるとなると、費用面が気になる方は多いと思います。

ただでさえ会社設立で費用を多く投じている中で、事務所にも資金を入れるとなると、「費用負担が重い」と考える方もいらっしゃるかと思います。

そこで、当記事では、事務所の取得費用の相場と、諸費用を安くするための4つの方法に関して触れていきます。

会社設立における事務所の初期費用は約200万円~500万円、それ以上も

会社設立における事務所の初期費用は、地域により大きく異なります。

立地・業態・建物の築年数・必要であれば改装・その他の初期費用など様々な要素が重なりますが、確実に言えるのは数百万円単位で費用がかかるということです。(業務使用も可能なマンションなどの場合は、ある程度安価になります)

いずれにせよ、事務所を構えるということは、相当な初期投資、加えて毎月のランニングコストがかかってくるということを踏まえる必要があります。

事務所の取得費用:100万円以上

これは事務所の所在地、大きさなど様々な要素を踏まえて検討する必要がありますが、一例として、営業使用が可能な1Rマンションでを、12万円(管理費を考慮に入れない)で借りるという最低限の条件で考えます。

費目 費用
礼金 120,000円
仲介手数料 120,000円
敷金・保証金 720,000円
家賃(前払い分) 120,000円
合計 1,080,000円

と、都内の中で相当控えめにに見た金額で仮定しても、家賃等だけで100万円単位の出費となります。

これが、店舗用物件や好立地の物件になると、取得費用だけで数百万円単位になるものと考えておく必要があります。

それぞれの費目について紹介していきます。

仲介手数料

仲介手数料に関しては、家賃の半月から1ヶ月分が相場となっています。

仲介事業者によっては、仲介手数料無料を謳うところもありますが、その場合でも何らかの形で収益が入るような仕組みになっていますので、単純に「仲介手数料無料!」という文言にそのまま飛びつくのではなく、「なぜ仲介手数料が無料なのか?」の裏側を考える必要があります。

敷金・保証金

業務・営業用途で不動産を借りる場合は、一般的な賃貸より敷金・保証料が高くなる傾向があります。

不動産業者・家主側としても、物件が様々な用途で使われ、人の出入りが増えることだけでなく、不測の事態(家賃滞納・経営破綻・夜逃げなど)に備え、個人の賃貸における敷金・保証金より大きな額を預かるのは、致し方ないといえます。

目安としては、基本的には6ヶ月、多いところでは1年分の家賃を預かるケースもあるとして想定しておく必要があります。

初回賃料

初回賃料に関しては、先払いするのが一般的です。管理費や駐車場費なども、借り受ける場合は別途かかってくると考えた方が良いでしょう。

礼金

これは地域差があるかもしれませんが、多くの物件では、賃料の1ヶ月分の礼金がかかります。礼金に関しては、物件入居時に、大家さんに支払う費用そのものと考えてください。

なお、京阪神、特に京都では、礼金が2ヶ月以上など大きくなる傾向があるようです。その他の地域でも地域差はありますので、入居する地域の事情をよく調べておく必要があります。

入居に伴うその他の費用:100万円以上から数百万円、1千万円単位まで

入居に伴うその他の費用として、内装工事の費用やオフィス用品・店舗備品の購入費用を踏まえる必要があります。

内装工事やオフィス用品・備品の購入費用だけを考えても、通常のオフィスか店舗か・居抜きか、スケルトンか・備品は最新のものを買うか、中古で済ますかなどで、相当総額は変わります。

内装工事や備品は、こだわると青天井になり、すぐに数百万、1千万、それ以上という費用がかかります。

投資する分を回収する自信がある場合はさておき、通常の場合は、できるだけ費用を抑える方向で用意をした方が良いでしょう。

内装工事費用

内装工事費用は、業態や、来店型店舗か否か、スケルトン・居抜き物件かで相当異なりますが、抑えて坪単価15万円~、上は50万円、それ以上もあります。

理想的なのは、居抜き物件で、前の内装を活用して、最小限の手間とコストで工事できることですが、様々な事情を勘案して、物件選びと内装工事を考える必要があります。

オフィス用品の購入費用

オフィス用品の購入費用に関しても、業種・業態により千差万別です。仮に、事務所で事務員1名を雇用、最低限の仕事の環境と仮定します。

物品 費用
机・イス 100,000円
ビジネスインクジェットプリンタ 30,000円
パソコン2台 300,000円
Office等ビジネスソフトのサブスクリプション 毎月3,000円程度
ビジネス用電話回線・光回線・無線LANルーター 100,000円前後
各種文具類・紙類・食器類など 40,000円前後
来客用応接テーブル・ソファ 100,000円前後
パーティションなどその他備品 50,000円前後
金庫・監視カメラなどセキュリティ用品 100,000円前後
合計 823,000円

机・イスに関しては業務効率のためにも、ぐらぐらしないある程度しっかりしたものが必要です。

また、パソコンに関しても、一定のスペックを備えたものでないと、作業の度に時間がかかり、それが積み重なりイライラの原因になります。

加えて、来客用の応接テーブル/ソファなど、現在はWebでの打ち合わせが増えているとはいえ、せっかくきてくれた来客に失礼の無いように、しっかりとした品質のものを用意する必要があります…。

と色々と積み上げていくと、備品もまた相当な費用になります。率直な所、備品に関しても、節約して数十万、あれもこれもとやって行くとすぐに数百万になります。

会社設立で事務所の維持費用は月間約20万円から

さらに、事務所の維持費用に関しても、かけようとすると青天井でかかります。これまで挙げてきた内容の条件を流用して考えると、

家賃 120,000円
水道光熱費 約20,000円
電気代・通信費 約30,000円
各種サブスクリプション費用 約3,000円
その他雑費 約30,000円~
合計 203,000円~

以上の通り、大まかに必要なものをざっと見積もっただけでも、月に20万円~30万円のコストはかかってくると考えた方が良いでしょう。

さらに、後ほど述べる年間単位の更新料なども含めて考える必要があります。

賃料

賃料に関しては、店舗物件か通常の事務所か、都内・首都圏や名阪・地方の主要都市・地方などで相当異なるため一概に言えませんが、毎月数万円~数十万円の費用がかかることは心得ておく必要があります。

水道光熱費・電気代・通信費

水道光熱費も、営業形態などにより大きく異なります。飲食店など、電気・水道を多く使う業務形態であれば、相当な費用が必要となってくるでしょう。一方、事務所などネット回線・電話代を多く使うケースでは、通信費がかかることを想定しておく必要があります。

更新料

物件の更新料に関しても、全国で多種多様です。一般的なパターンであれば、1年~2年に1回、1ヶ月分の賃料を更新料として支払うケースが想定されますが、地域性や物件の人気、有名店舗内のテナントであるかなどでかなり違ってくるでしょう。

会社設立後に事務所移転を行う場合の費用

会社設立時に事務所移転を行う場合、当然ですがかなりのまとまった各種費用がかかります。新しいオフィスを借りる費用に加え、現在のオフィスを解約するための各種費用が必要となるためです。

これも、最低限かつ都内の安価な物件という一般的なパターンで見ていきましょう。

費目 最低限想定される費用
原状回復工事費用 30万~
中途解約費用 0円~。物件により相当異なり、徴求しないところから、賃料の数ヶ月分~1年分を徴求するところなど様々
オフィスの引っ越し費用や不要品の処分費用 10万円程度~オフィス規模・距離、不要品の処分量に応じ相当異なる
新オフィスの初期費用 100万円程度~
事務所移転にかかる登記費用・会社の住所印の再作成費用など雑費 10万円前後
合計 最低150万円程度~

このように、新オフィスの賃料に、過去のオフィスの退去にかかる各種費用がかかるため、出て行く分にも相当なコストがかかります。(かなり少なめに見積もった金額でこれです)

それぞれのケースで、費用が相当異なります。

上記の記載はあくまで最低限の一例ということで、実態と異なるケースも考えられますので、その点はご留意下さい。

原状回復工事費用

物件の原状回復工事に関しては、物件を退去する以上借主側が全額負担する必要があります。

内装・外装等含め元の状況にして返却する必要があるため、原状回復にはどう少なく見積もっても30万円~数百万円の大きな費用が必要になります。

一方、入居時に敷金を納めていますので、数ヶ月分のまとまった敷金を納めている場合は、ある程度の敷金が後で返ってくるものと想定されます。

中途解約費用

通常の個人向け賃貸用物件は、よほど早期の解約でない限り、中途解約の費用はかからないケースが一般的です。

ある会社の賃貸契約では、入居後6ヶ月以内の解約は、賃料1ヶ月分を違約金として徴求されるものの、それ以降は特にかからないなど、「個人は転勤や進学などで引っ越しをするものだ」という前提をもっているケースが多いです。

これが、店舗・オフィス向け物件になると一気に変わります。

物件によっては、中途解約費用を取らないものもあるようですが、人気の物件や都市部にある物件ほど、賃料の12ヶ月分や次の契約更新までの賃料全部など、高額な中途解約費用を設定している物件も多いです。

引越し費用

こちらも、業態・荷物の量・距離などにより大きく異なることが想定されます。加えて、オフィスの引っ越しの際に、「これは不要」というゴミ・産業廃棄物も一定量出てくるでしょう。

その廃棄物処分費用も、量によっては数万~数十万単位の費用になりますので、引っ越しでの荷物運搬以外にもかかる費用があるということも念頭に置いておきましょう。

新オフィスの初期費用

新オフィスの初期費用に関しては、一般的にこれまでのオフィスより広く、利便性の良い場所に移るケースが多いでしょう。

もちろん、現在の条件より良いオフィスに移転するケースが大半でしょうから、過去の賃貸物件借り受け時費用より大きな費用がかかることが見込まれます。

事務所移転にかかる登記費用・会社の住所印の再作成費用など雑費

事務所を移転する上では、「法務局に登記した住所が市区町村までで、同じ市区町村への移転」というケースを除き、法務局へ新しい事務所の変更登記が必要になります。

郵便局で行う郵便物の転送届と異なり、手続が専門的ですので、司法書士に依頼することが一般的ですが、自社で行うことも可能です。

条件 想定費用
自社で法務局の管轄区域内にて移転手続 30,000円
自社で法務局の管轄区域外に移転 60,000円
司法書士に管轄区域内での移転の申請を依頼 約60,000円~
司法書士に管轄区域外での移転の申請を依頼 約100,000円~

加えて、会社の所在地の印鑑・会社の封筒の再作成などの費用もかかることを留意しておく必要があります。

会社設立前に知るべき事務所の初期費用を抑える4つのコツ

ここまで読んでいただくとわかる通り、会社の事務所の借り受け・移転には、数百万円単位での費用がかかります。

店舗を借りないと営業できない、飲食店などの形態であれば仕方ないところはあります。

ただ、初期費用、そして毎月かかるランニングコストのことを考えると、いかに費用をかけない方法を考えるかが重要になります。

保証金・礼金など初期費用が安い物件を探す

保証金・礼金など初期費用が安い物件を探すことは、初期費用を抑える上で重要な要素です。保証金は後で返ってくる性質のものですが、礼金はそのまま家主に納めることになります。

保証金に関しても、退去するまでは預けたままという形になりますので、できるだけ最初の時期は保証金の安い物件を選んだ方がよいでしょう。

家賃や保証金の条件交渉を行う

家賃・保証金の条件交渉を行うことも重要です。特に現在は、新型コロナウイルスの影響もあり、テレワーク化によるオフィスの縮小・撤退・地方移転なども出始めています。

そのため、家主側としても、家賃・保証料などをある程度減額してでも、物件に入居してもらいたいという事情があります。ただし、無条件に賃料を減額して下さいと言っても、受け入れられるとは限りません。

他の物件と比較した上で、迷っていることなど伝え、賃料を少し減額してくれれば検討するなど、何かの理由付け、丁寧な減額依頼が必要となります。

相見積もりで内装工事を抑える

内装工事費を抑える上で、相見積もりを取る事は重要です。複数の内装業者から、相見積もりを取れるサイトもあるので、そのようなサイトを活用することも重要でしょう。

ただし、相見積もりを検討する上で注意する点があります。それは、「見積もりの範囲でどこまでやってくれるのか」という点です。

いくら当初の見積費用が安価でも、廃棄物の引き取り・処分料が書かれていなかったり、見積もりの内容に、他社と比べて欠けている物がある(原則として、見積もりに書かれていないものは対象外である)場合は、その点を考慮すると共に、あまりに安い・もしくは高い事業者は避けた方が良いでしょう。

様々な業者を比較して、選ぶという観点が大切です。

レンタルオフィス・バーチャルオフィス・間借り・自宅の利用を考える

店舗を構える必要の無い事業であり、かつ許認可・届出で独立したオフィスを要しない事業であれば、レンタルオフィス・バーチャルオフィス・間借り・自宅などの活用も検討するとよいでしょう。

ただし、宅地建物取引業(宅建業)など、一部の業種では独立したオフィスを許認可・届出の要件とするケースもあります。そのため、自身の開業する業種で、許認可・届出が必要な場合、オフィスに関する規定があるかどうかを事前に確認する必要があります。

もし独立したオフィスが必要であれば、レンタルオフィスなど、他社とスペースを共有する形態や、バーチャルオフィスなどオフィスの名目上の所在地と実際の業務が行われている場所が異なる場合、自宅開業などでは許認可・届出を受理されない事になります。

加えて、多くの賃貸物件では、自宅を事務所に使うことを禁じたり、許可を取った上で、業務に応じ認めるというケースが一般的です。

自宅開業で賃貸物件の場合は、会社の所在地として使ってよいかを確認する必要があります。

あわせて、先輩経営者がオフィスを構えていて、「余っているスペースがあるから使っていいぞ」と言ってくれる場合は、間借りも選択肢の一つです。

こちらも、完全に独立したオフィスが許認可・届出の関係で必要な業種や、人の出入りが頻繁でない業種以外は、一つのコストを大きく抑える選択肢として検討の余地があります。

まとめ

以上のように、オフィスを借りることは相当なコストがかかることに留意する必要があります。さらに、初期費用だけでなく、毎月の負担が大きい点も考慮しなければいけません。

創業当初から、きちんと売上を挙げることができる見込みがあれば別ですし、店舗の賃貸が必要な業種は、店舗を借り受けることが必要です。

ただ、お金を最初にかけ過ぎて資金ショートしては意味がないので、できることなら最初はコストをできるだけ抑え、安価に開業できるようにしていくことを検討するのが望ましいと言えましょう。

改めて強調しますが、事務所の借り受け・移転にかかる費用は、様々な条件で千差万別です。税理士や中小企業診断士などとの相談なども含め、事務所開設・移転の必要性、費用の妥当性などをしっかりと検討することが重要です。