法人登記後に必要になる手続きの一つに法人設立届出書があります。今回はこの届出書の書き方と添付書類についてお伝えします。初めて会社を設立する場合、税務署などに法人設立届出書を提出することになりますが、書き方が分からなければ時間がかかりますし、ミスをすれば修正も必要になるでしょう。作成自体は決して難しくない書類ですが、書き方や添付書類に注意点がありますので、当記事でしっかり解説していきます。法人設立届出書をスムーズに作成するために、ぜひ当記事をお読み頂ければと思います。
目次
法人設立届出書とは
株式会社などを新たに設立した場合、国に法人税を納める必要があります。そのためにはまず、会社を設立した旨と会社の概要を税務署に伝えなければなりません。
その役割を担うのが法人設立届出書で、提出することにより、税務署から税金関係の書類が送られてくるようになります。
法人設立届出書は法人税法第148条、法人税法施行規則第63条で規定された提出が義務づけられている書類です。
提出先には税務署の他に都道府県と市町村があり、提出期限は税務署の場合で法人設立から2ヶ月以内、提出方法には持参と郵送があります。
申請用紙は国税庁や各都道府県のホームページからダウンロードできますので、税務署に取りに行く必要はありません。
用紙をダウンロードした後、以下のような必要事項を記入します。
- 法人名
- 本店又は主たる事務所の所在地
- 事業年度
- 設立年月日
- 資本金または出資金の額
- 事業の目的
登記簿謄本や定款を見ながら記入する必要はありますが、内容的にそこまで難しい書類ではありません。
法人設立届出書の提出先
法人設立届出書の提出先は以下になります。
- 会社の本店所在地を管轄する税務署
- 都道府県の税事務所の法人事業税・住民税課
- 市町村の法人住民税を取り扱う部署
税務署だけでなく、都道府県と市町村にも提出する、ということがポイントです。
ただし各都道府県によって対応が異なることもありますので、管轄の税務署、都道府県の税事務所、市町村の部署で確認して下さい。
管轄の税務署が分からない場合は、国税庁のホームページで検索が可能です。
法人設立届出書の提出期限
税務署に法人設立届出書を提出する期限は、法人の設立日から2ヶ月以内です。
法人の設立日は登記簿謄本の「会社設立の年月日」という欄で確認できます。
会社設立の年月日が6月1日の場合 | 7月31日が提出期限 |
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会社設立の年月日が7月20日の場合 | 9月19日が提出期限 |
税務署の閉庁日である(土曜日・日曜日・祝日)は受付けていませんが、郵送または時間外収受箱に投函して提出できます。
作成に不安がある場合は、平日8時30分~17時の間に税務署に行けば相談に乗ってもらえるでしょう。
次に都道府県と市町村の提出期限ですが、各自治体によって異なります。
都税事務所の提出期限は15日以内ですが、お住まいの地域の都道府県、市町村に確認して下さい。
基本的には税務署の提出期限よりも、都道府県と市町村の方が早いので注意が必要です。
期限を過ぎても罰則はない
法人設立届出書の提出期限を過ぎても罰則はありませんが、「まだ提出していない」と気付いた時点ですぐに提出しましょう。
提出しなければ税務署からの案内書類が届きませんし、税制が改正された場合のお知らせも不達になります。
そうなれば税金処理に支障が生じかねないので、忘れずに提出して下さい。
中には「罰則がないなら、利益が出てから法人設立届出書を提出しても良いのでは?」と思われる方がいるかもしれません。
しかし会社設立の事実は登記簿によって明らかなので、税務署から逃れることはできません。
税への意識が薄いと、後々大きなトラブルに発展しかねないので、法人設立届出書をはじめとした届出はしっかりと行いましょう。
税務署の提出期限が過ぎている場合、都道府県と市町村も遅れている可能性が高いです。その場合は税務署と共に、都道府県、市町村にも法人設立届出書を提出します。
遅れて税務署に提出したからといって、税務署から都道府県と市町村に連絡がいくわけではないので注意して下さい。
法人設立届出書の書き方(記載例)
法人設立届出書の書き方、記載例を説明します。記載例を把握することで、作成がスムーズになりますから、ぜひ概要を抑えて頂ければと思います。
提出年月日の記載例
令和○年のような「和暦」で提出日を記入します。空欄のままでも提出時に受付印を押してもらえますが、提出日が分かる場合は記入する方が良いでしょう。
記載例1 | 令和2年7月20日 |
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記載例2 | 令和2年9月12日 |
○○税務署長殿の記載例
本店所在地を管轄する税務署の名称を記入します。都道府県によっては、区内に複数の税務署が存在するので注意して下さい。
記載例1 | 渋谷税務署長殿 |
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記載例2 | 名古屋東税務署長殿 |
整理番号の記載例
記載する必要はありません。
法人名の記載例
設立した法人名とフリガナを記入します。
株式会社や合同会社も含めた正式名称を登記簿どおりに記載して下さい。
記載例1 | 株式会社 ○○コーポレーション |
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記載例2 | 合同会社 ○○企画 |
本店又は主たる事務所の所在地の記載例
法人の本店所在地を登記簿どおりに記入します。郵便番号と電話番号も必要ですが、固定電話を引いていない場合は携帯番号でも問題ありません。
記載例 | 〒065-0015 北海道札幌市東区北○条東○丁目○番○号 電話(011)999-9999 |
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納税地の記載例
基本的に「本店又は主たる事務所の所在地」と同じ内容を記入します。「同上」と記してもかまいません。
記載例 | 同上 |
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代表者氏名の記載例
法人代表者の氏名とフリガナを記入します。印のしるしの箇所には、法人の実印を押印します。
記載例 | 山田太郎(ヤマダタロウ) |
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代表者住所の記載例
法人代表者の住所と電話番号を記入します。固定電話を引いていない場合は携帯番号でも問題ありません。
本店所在地と代表者の住所が同じ場合は、同一の内容を記入してください。
記載例 | 〒065-0015 北海道札幌市東区北○条東○丁目○番○号 電話(011)999-9999 |
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設立年月日の記載例
登記簿の「会社設立の年月日」を記入します。
記載例 | 令和2年7月24日 |
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事業年度の記載例
定款の「会計期間(会計年度)」を記入します。
記載例 | 4月1日~3月31日 |
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資本金又は出資金の額の記載例
登記簿の「資本金の額」を記入します。
記載例 | 10,000,000円 |
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消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日の記載例
資本金の額が1,000万円以上の場合は設立年月日を記入します。1,000万円未満は空白でかまいません。
記載例 | 令和2年7月24日 |
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事業の目的(定款等に記載しているもの)の記載例
定款の「事業の目的」を記入します。事業の目的が多い場合は、主なものを書きます。
定款等に記載しているもの | 経営コンサルティング業、セミナー業 |
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現に営んでいる又は営む予定のもの | 同上 |
支店・出張所・工場等の記載例
会社設立の段階で支店、出張時、工場などがあれば記入します。なければ空欄のままでかまいません。
名称 | 新宿出張所 |
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所在地 | 東京都新宿区神楽坂○-○ |
設立の形態の記載例
以下の中から、設立形態に合ったものを丸で囲みます。
- 1 個人事業を法人組織とした法人である場合
- 2 合併により設立した法人である場合
- 3 新設分割により設立した法人である場合
- 4 現物出資により設立した法人である場合
- 5 その他
個人事業が法人成りした場合は1になります。新しく法人を設立した場合は5を丸で囲み、カッコ内に「新設法人」などと記入します。
設立の形態が1~4である場合の設立前の個人企業、合併により消滅した法人、分割法人又は出資者の状況の記載例
設立の形態で1を丸にした場合に記入します。
事業主の氏名、合併により消滅した法人の名称、分割法人の名称又は出資者の氏名、名称 | 山田太郎 |
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納税地 | 北海道札幌市東区北21条東8丁目○番○号 |
事業内容等 | 経営コンサルティング業 |
設立の形態が2~4である場合の適格区分の記載例
設立の形態で2~4を丸にした場合に「適格」または「その他」を選びます。
事業開始(見込み)年月日の記載例
事業の開始日を記入します。基本的に設立年月日と同じになりますが、事業開始が将来になる場合は見込み年月日を記載しましょう。
記載例 | 令和2年10月1日 |
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「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無の記載例
基本的に「有」を丸で囲みますが、自分や社員に給料を払う予定がなければ、「無」を囲むこともあります。
関与税理士の記載例
顧問税理士、関与税理士が決まっていれば、税理士の氏名と住所、電話番号を記入します。
決まっていない場合は空欄でかまいません。
記載例 | なし |
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添付書類等の記載例
法人設立届出書に添付する書類を丸で囲みます。通常は以下を添付することが多いようです。
- 1.定款等の写し
- 2.登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 3.株主等の名簿
- 5.設立時の貸借対照表
設立した法人が連結子会社である場合の記載例
該当する場合は法人名、納税地、電話番号を記入します。該当しなければ空欄でかまいません。
税理士署名押印の記載例
税理士に法人設立届出書を作成してもらった場合は、その税理士本人の署名、押印が必要です。
税務署処理欄の記載例
空欄でかまいません。
法人設立届出書の提出でよくあるミス
法人設立届出書の提出でよくあるミスを解説します。
よくあるミス(1):控えを取らずに提出してしまう
法人設立届出書は必ず2部、作成してください。署名押印した原本をコピーする形でもかまいませんが、1部だけ作成して提出すると控えが残りません。
窓口に提出する際は2部とも持参し、控えに受付印を押してもらいましょう。
郵送の場合も2部用意するとともに、「受付印をお願いします」といったメモ書き、および切手を貼った返信用封筒を同封することで、受付印が押された控えが返送されてきます。
受付印がある控えは、年金事務所(社会保険の手続き)や法人の口座開設で必要なケースがあります。控えがなければ手続きが行われないこともあるので注意してください。
中には「税務署から法人設立届出書の再発行してもらうのは簡単ではない」という情報も見られましたので、忘れずに控えを用意しましょう。
よくあるミス(2):税務署だけに提出してしまう
法人設立届出書は都道府県と市町村にも提出する必要があります。税務署に提出するだけで安心せず、他の関係役所にも提出してください。
よくあるミス(3):法人設立届出書の添付書類を忘れる
法人設立届出書には定款のような添付書類が必要です。他にも状況に応じて添付書類が必要になので、しっかり用意した上で提出を行ってください。
自分で法人設立届出書を提出する場合は、添付書類のチェックシートを作ると良いでしょう。
税理士や社労士、行政書士のような士業事務所では通常、書類提出前にチェックシートで添付書類を確認します。
自分では用意した気になっても、実際は添付書類が足りなかった、という事態は往々にして起こるものです。
また、用意していても「窓口に提出する際に忘れた、郵送の封筒に入れ忘れた」ということも起こり得るので注意して下さい。
よくあるミス(4):法人設立届出書以外に提出する書類を忘れる
法人設立届出書以外にも、税務署に提出する書類には下記があります。
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税納金特例の承認に関する申請書
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 減価償却資産の償却方法の届出書
必ずしも全て必要とは限りませんが、一緒に提出する書類を忘れないようにしましょう。
特に青色申告の承認申請書に関しては、法人設立日から3ヶ月以内に提出しないと自動的に白色申告になります。
青色申告の方が税制上の優遇処置を受けやすいので、忘れずに提出して下さい。
ミスを防ぐ方法としては「よくあるミスの(3)」と同じく、チェックシートの活用がおすすめです。
他にも、信頼できる人にダブルチェックをお願いする方法があります。
やはり士業の事務所(特に規模の大きな事務所)では、チェックシートと共に、書類のダブルチェックを職員同士で行うことが多いです。
どれだけ書類作成に慣れていても、添付書類や必要書類、記入事項のミスは起こる可能性があるので、1人ではなく2人、重要な書類はさらに人数を増やして対応することがあります。
法人設立届出書をはじめ、青色申告の承認申請書や給与支払事務所等の開設届出書は誰にでも簡単に見せられるものではありませんが、周囲に信頼する人がいれば、その方にダブルチェックをお願いすることで、事前のミスを防ぎやすくなるでしょう。
法人設立届出書のミスを訂正する方法
法人設立届出書にミスがあった場合、提出先の税務署、都道府県、市町村から連絡が来るのが一般的なので、関係役所の指示に従って訂正して下さい。
ただし税務署がミスに気付かないこともあるようです。たとえば下記のようなケースです。
「設立の形態で5の『その他』が正しいにもかかわらず、誤って1の「個人事業を法人組織とした法人である場合」を選んでしまった」
この場合に、税務署からの連絡がないまま数年が経過した、という体験談が見られました。
実務上の支障がないため訂正の指示がなかった、という理由も考えられますが、後からミスに気付いた場合は税務署に問合せると良いでしょう。
法人設立届出書の添付書類
法人設立届出書の添付書類に下記があります。
- 定款の写し(コピー)
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 株主名簿
- 会社設立時の賃貸対照表
添付書類(1):定款の写し(コピー)
法人設立時に公証役場の認証を受けた定款を全頁コピーして添付します。通常は1部ですが、資本金が1億円以上の場合は2部、添付する必要があるので注意して下さい。
添付書類(2):登記事項証明書(登記簿謄本)
法務局で取得した登記事項証明書(登記簿謄本)を添付します。現在事項証明書ではなく、履歴事項全部証明書を添付して下さい。
添付書類(3):株主名簿
株主名簿とは、会社の株主について記載された書類です。
- 氏名
- 住所
- 所有株式数
- 金額
- 役職名等
上記を記載して添付します。
添付書類(4):会社設立時の賃貸対照表
法人を設立した時点の貸借対照表を添付します。
貸借対照表に決まった様式はありませんが、会社の資産や負債についての記載が必要です。
設立時点の貸借対照表なので、現物出資はなく金銭出資になります。資本金の全額が出資の場合は、資本金と現金預金で構成されます。
まとめ
法人設立届出書は法律に規定されている書類で、税務署や都道府県、市町村に提出する必要があります。
税務署への提出期限は法人設立日から2ヶ月以内ですが、遅れても罰則はありません。
記載が必要な項目には、法人の情報や、法人代表者の情報があります。作成する際は添付書類である定款や、登記簿謄本を用意すると良いでしょう。
よくあるミスには、控えの取り忘れや提出のし忘れがあります。提出前にチェックシートやダブルチェックを活用することでミスを防ぎやすくなります。
法人設立届出書の作成自体は難しくないので、ひとつひとつ確認しながら、丁寧に作成し、忘れずに提出を行ってください。