会社設立というと、凄く大変でリスキーと、ネガティブなイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。
当然、会社設立まで、いろいろな作業をしないといけないため、大変であることは間違いありません。
ですが、それ以上に多くのメリットがあるのも事実です。
ということで、ここでは会社設立のメリットについてまとめていきます。
思っている以上に大きなメリットがあるので、会社設立を悩んでいる人は、ぜひ熟読して欲しいと思います。
ちなみに、本記事のタイトルに「法人成り」という言葉が入っています。
簡単に説明をしておくと…法人成りとは、個人事業主として行っていた事業を新会社を設立して、その事業を引き継いで行っていくことを言います。
会社設立する場合と踏むステップが異なりますが、最終的に行き着く先は一緒です。
なので、本記事では「会社設立」と「法人成り」を一緒くたにしてメリットを紹介してくわけですね。
余談はこれくらいにして、本題のメリットについて説明をしていきましょう。
目次
会社設立(法人成り)のメリットは5つ
会社設立や法人成りをしたときに得られるメリットは大きく5つあります。さらに、その5つを細かく分けていくと、最終的には…11個ものメリットを得ることができます。
これだけのメリットがあれば、多少の苦労があったとしてもチャレンジしてみようかなと思う人も多いのではないでしょうか。
ということで、早速、会社設立のメリット、法人成りのメリットを紹介していきましょう。
税制面の優遇
会社設立、法人成りのメリットで真っ先に紹介したいのは、やはり税制面で優遇されることです。
冒頭でも記載した通り…ハードルが高いイメージが強いため敬遠しがちですが、税制面で大きなメリットがあるため一考する価値はあるはずです。
消費税が最大2年間免除される
創業してから2年間は消費税が基本的に免除されます。このメリットの嬉しいところは「個人事業主」と「法人」が免除の対象となっていることです。
というのも、個人事業主として創業したときから2年間は消費税が免除されるわけですが、個人事業主から法人化してからの2年間も免除されるからです。
見出しには2年間免除されると記載してありますが、上記のようにケースによって最大で4年間も免除することが可能となっています。
もちろん例外ケースがあって、免除されないケースもあることは覚えておきましょうね。例外となるケースは3つで…以下の通りになっています。
- 資本金の額が1,000万円以上の場合
- 特定期間の課税売上高が1,000万円以上、および給与等(給与や賞与などの給与所得になる支払い)が1,000万円以上になった場合
- 大企業が出資した法人の場合です。
考え方としては、小規模であれば消費税が厳しいから免除してあげますといった制度です。
では、何を持って小規模と判断しているのか?ですが…「1,000万円」という数字になります。
したがって、実際に会社設立や法人成りをした場合は、1,000万円という数字に注意しながら運営をしていくと節税することができるはずです。
所得税の税率が低くなる
会社設立をすることで所得税の税率を下げることができる…そんな夢のような話があるのか!と驚いた人もいらっしゃるかもしれません。
厳密には「会社設立をすることで法人税となり税率が一定になるため所得が多くなればなるほど節税ができる」ということです。
個人事業の場合は、あくまでも所得に対する累進課税になるため、得られるお金が増えれば増えるほど税率が上がっていきます。
噛み砕いて言えば「普通の所得税と一緒のようなモノ」ということです。
最大で45%となるため所得の半分以上が課税されてしまうことに…1億円稼いだら、4,500万円が所得税として徴収されてしまうため、その負担の大きさを容易に理解できますよね。
しかし、法人税は最大で23.2%となっているため、所得税の最大税率との差は22%ほど。かなりの節税になるため、会社設立・法人成りのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
ただ…ご存知の通り、所得税の最低税率は「5%」です。したがって、この場合は法人化せずに個人事業の方がお得ではあります。
では、法人税の方がお得になる23.2%を超えてくる所得金額はいかほどか?と気になるところですよね。ズバリ900万円超えになります。
900万円以下の場合は23%で、ギリギリ個人事業の方がお得で…
900万円超えとなると所得税率は税率は33%で一気に段違いの数字になります。
ちなみに、ここで説明している税率は2020年7月現在の数字で、法律が変われば税率も変わってくるため、都度、税率は確認するようにして “お得ライン” を見極めてください。
また、説明を分かりやすくするため、単純計算をしていることもご承知おきください。本来であれば、もっと複雑な計算がなされることになります。
給与所得控除が使える
会社設立や法人成りをすると…会社から給与を出せるようになります。当たり前のことですが、実は非常に大きなメリットになるのです。
というのも、役員報酬として会社から給与をもらうことができれば、売上から必要経費を控除できるようになるからです。
さらに、この控除した金額から給与所得控除も使えることになります。一言で言ってしまえば「課税される所得を小さくすることができる」という裏技的なことができるのです。
もう少し掘り下げて説明をしていきましょう。個人事業の場合は、総収入金額から必要経費を差し引いた金額が所得となり、ここに課税されることになります。
しかし、会社設立や法人成りをすると、会社から役員へ報酬として給与が支払われます。当然、会社としては必要経費のため控除することが可能です。
さらに、支払われた役員報酬は給与所得控除が適用するわけですね。ざっくりとした計算ですが…例えば、個人事業主として働いたとき800万円の利益があった場合、この800万円に対して課税されます。
結果、税金は約188万円になります。しかし、法人化して給与として支払われる場合、同じ800万円の利益であっても、給与所得控除が適用され約600万円まで課税対象金額を下げることができるのです。
この場合は、所得が600万円となり、これに課税されるため…126万円の税金になります。約60万円の差になるため、凄く大きな差になって会社設立のメリットは凄いと理解できるのではないでしょうか。
経費の幅が増える
個人事業主のときよりも経費として扱えるアイテムが多くなるメリットがあります。経費で計上することができれば、課税対象が外れる…つまり所得の節税がしやすくなるメリットです。
会社とは、事業を展開し利益を挙げていくまでに、さまざまな多くの費用が必ず発生します。そこに税金をかけてしまえば大きな反発があることは容易に想像できますよね。
純粋に「必要なモノに対してお金を支払っているだけ」の話ですから…。ちなみに、経費として扱える代表例を挙げると…賃貸の自宅を事務所として扱っていた場合のお話ですが…賃料が経費として計上することができます。
いわゆる「会社事務所の賃料」のような位置づけになるため、必要経費になります。平たくいえば、普通の商業ビルのフロアを借りている状況と同様だということ。違いは、そこに住んでいるのか?住んでいないのか?という点です。
他にも、自動車(サービス提供のために移動するなど)、生命保険料、退職金なども経費として扱えます。
欠損金を10年間繰越できる
会社経営をしていくと、時として「赤字」を出してしまうことがあります。その赤字を翌年度以降の所得で相殺することが可能です。これを「欠損金の繰越控除」といいます。
会社の場合、最大10年間に渡って繰り越すことができます。個人事業主の場合は、3年間までとなっているため、その差の大きさは言うまでもありません。
家族への給与
会社運営をするために労働した家族に対して給与を支払うことができます。個人事業主の場合は、家族への給与は認められていません(例外的に青色事業者専従給与の届け出を出していれば例外的に認められています)。
会社設立をした場合、このような手間を一切かけずに支払うことができるメリットがあるわけです。家族に給与を支払うことできると、所得分散をすることができるため、所得税や住民税の負担も軽減することもできます。
対外的なメリット
会社設立、法人成りをした場合、税制面で有利になる以外にも多くのメリットがあります。節税ができる!のような目に見える効果とは違った間接的な効果が期待できます。
残念ながら目に見えない部分でありますが…無視できないほどの大きなメリットとなっているので、ぜひ頭に入れておいてください。
取引先や仕入先から信頼を得やすい
とあるお客様に…個人事業主として飛び込み営業をかけた場合と、会社役員として飛び込み営業をかけた場合、どちらのほうが信頼できますか?
シビアな話ではありますが、やはり後者の方が相対的に信頼度は高くなります。直感的に「会社に属している人」の方が、どうしても「いい」と感じてしまうので致し方がないところです。
では、なぜ、直感的に会社に属している人を信用できるのか?が気になりますよね。答えは意外と単純です。会社設立するためには、商号、住所、代表者、資本金、役員などを登記しなければなりません。
明確に登録される内容が個人事業主と比較すると圧倒的に多いので「身分を明かしてくれている」と理解するわけです。その結果、会社の方が直感的に信頼できると判断されやすくなるのです。
さらにシビアな話をすると…常日頃から大活躍している大手企業にもなってくると…。「ものすごい実績がある個人事業主であったとしても仕事を一緒にしない」と決めているケースも少なくありません。
また、名刺交換をしたとき株式会社の名があるだけで、印象は大きく異なります。「これが現実」といったところなので仕方がない部分もあるわけで、だからこそ会社設立・法人成りをして少しでも信頼を勝ち得たいところです。
採用の幅が広がる
先程の「取引先と仕入先から信頼を得やすい」と根本は同じ理由で「株式会社の方が信頼度が高くなるので採用の幅が広がる」というメリットもあります。
例えば、心機一転ということで転職をする場合、個人事業主が出した求人と株式会社が出した求人のどちらを選択するのか?と問われると、やはり株式会社の方を選びたくなってしまいますよね。
株式会社に就職すれば、晴れて正社員になるわけですから、その肩書は大きな意味を持ち社会的な信頼度も高めてくれます。
その結果、より多くの人が応募をしてくれる可能性が高くなることに繋がり「採用の幅が広がる」と言えるのです。
もちろん個人事業主のもとで働いた場合、自由度も高く上手くことが運べば給与も多くもらえる可能性があることは否定はできません。
したがって、個人事業主のもとで働く場合でも魅力があることは事実です。
しかし、絶対的なものではなく大きなリスクが伴うことも否定はできません。
決算月を自由に決められる
地味に嬉しいメリットが「会社の場合、決算月を自由に決めることができる」です。個人事業の場合は、1月~12月と事業年度として決められています。
対して、法人化をしている場合は4月~翌年3月のように事業年度を決めることができます。これが意味することは、会社として忙しくない時期を決算月にして事務作業に専念できる時間を作ることができるということです。
事務作業に専念できるということは、時間をかけて「節税対策ができる」ことにもつながってくることもあって効果は非常に大きいです。
相続税がかからない
そもそも相続税とは故人の財産を相続するときに発生する税金のことを指します。つまり、会社は故人の所有物ではないため、相続する以前の話になるわけです。
平たく言えば「会社は相続することができない。なぜなら会社は個人のモノではないから。」です。ただし、会社の株式を所有していた場合、これは「個人の所有物」になるため、課税対象となるため注意が必要となります。
個人事業主の場合、利益はすべて個人の財産になるため、相続対象となって相続税が発生するのです。このような背景があるため、不動産を所有している個人の方々は、管理会社を設立して節税対策をしているわけですね。
個人資産が差押えを受けない
個人事業主として事業を頑張って展開していたとしても、どうしても立ち行かなくなるケースが残念ながらあります。
そのときに、借入金があったり、仕入先に未払金があったりと「お金がなくなってしまった」ときには、個人資産の差し押さえが実施されることになります。
当然、事業主の資産は個人資産とイコールという図式が成り立っているため致し方がないところです。自家用や不動産を持っていたりすれば、差し押さえられてしまう可能性が高いです。
しかし、会社の場合は、相続税のお話と同様で「個人の資産」ではありません。その結果、自分自身が持っている資産自体は差し押さえ対象にならないのです。
借入金や未払金があった状態で会社が倒産してしまえば、それまでの話になってきて、形式的なモノではありますが、個人自身に返済する義務は発生しません。
このようにリスクマネジメントをする意味でも会社設立、法人成りのメリットは大きいのです。た
だし、中小企業の場合、扱う額の大きさによっては会社役員自体が連帯保証人になるケースもあるため、倒産してしまったとき返済義務が発生することもあります。
会社設立(法人成り)のデメリットは5つ
何事にもメリットとデメリットがあり、会社設立、法人成りも例外ではありません。会社設立、法人成りにもデメリットもあるため、設立する前にしっかりと理解しましょう。
会社を経営していく上でも必要な知識でもあるので、必ず頭に入れて上手く事業展開できるようにしてください。
身構える必要もなく、工夫次第で対処できるケースもあるかもしれないので、常に知恵を絞って効率的な会社運営ができるところを目標にするとよいかもしれません。
コストがかかる
個人事業主として事業展開しているケースでもコストは掛かりますが、会社設立をして運営する場合は、また違ったコストが発生します。
大きく2つのコストが掛かることになり、1つがイニシャルコスト、もう1つがランニングコストです。いずれも避けては通れないコスト道なので、しっかりと理解をしていきましょう。
イニシャルコスト(設立時の費用)
イニシャルコストとは、いわゆる最初に必要になってくる費用のことを指します(イニシャルとは「初期」「初めの」「最初の」という意味です)。
つまり、会社設立、法人成りをするとき、一番最初に発生する費用というわけですね。状況によりますが、登記費用を始めとした様々な費用が発生します。
株式会社なら最終的に25万円前後のお金が必要となってくることが多いです。個人事業主の場合は、このイニシャルコストは少なく簡単に立ち上げることが可能です。
ランニングコスト(設立後の費用)
イニシャルコストが「会社設立・法人成りをする最初のコスト」とすると、ランニングコストは「設立した・法人成りした後のコスト」になります。
つまり会社の維持費だったり、管理費用だったり、会社を運営している間は必ず発生する費用のことを指します。具体例としては「税金」が挙げられます。
会社設立をすると、法人住民税と呼ばれる税金が発生します。属する自治体によって金額は変わってきますが、毎年支払わないといけません。
例えば、赤字であっても必ず支払わなければならない税金ですので、節税もしようがありません。
社会保険への加入義務
会社設立をすると社会保険へ必ず加入をしなければなりません。これは義務となっているため、回避する方法はありません。
しかも、厄介ことがあります…それが「とにかく保険料が高い」ということ。基本的に、社員と会社側で支払う保険料は折半になりますが、それでも高額なので、大きなデメリットと言えるでしょう。
例えば、所得が月40万円だった場合、健康保険料が約4万円で、厚生年金保険料が6万円となるため、合計で10万円もの保険料が発生してしまいます。
個人事業主の場合は、国民健康保険料が5万円程度で、国民年金保険料が1万5千円となるため、合計で6万5千円となり、差額は3万5千にもなります。
比較をしてしまうと…より一層高額の保険料を支払うことになることが理解できますよね。また、従業員数が多くなればなるほど、比例して支払う保険料が多くなることは言うまでもありません。
ちなみにですが、従業員数が一人の会社の場合であっても、例外はなく必ず社会保険へ加入することになります。唯一の救いは、保険料には厚生年金の支払いも含まれていることでしょうか。
「老後にもらえる年金」になるわけですが…国民年金よりも断然多くもらえるので、凄く損をしているわけではありません。
事務負担の増加
個人事業主であったとしても確定申告などで事務作業は必ず発生します。これが非常に面倒ですが…会社設立すると、より事務作業が多くなってしまい負担が大きくなります。
会社運営をしていく中で、経費として計上するものだったり、従業員に支払う給料だったり、とにかく多くの事務作業をこなすことになるからです。
加えて、法人税の申告も複雑になります。資金的に余裕がある会社ですと、税理士や公認会計士を雇って対応をするケースも多いですが、それはそれで高い費用が発生してしまいます。
手間のかかる事務作業ですが、個人事業主よりも監査が入る確率が高いため、常日頃からきっちりとした事務処理をしていく必要があります。
会社のお金を自由に使えない
会社は個人の所有物ではないため、当然ですが…会社所有のお金を自由に使えません。一方、個人事業主の場合は、得たお金というのは事業主個人が自由に使うことが可能です。
そのため、個人事業主と比べると「お金の使い勝手は悪い」と言わざるを得ません。従業員が一人の会社であっても例外はありません。
基本的に、法人化することで会社が持つ財産と、個人が持つ財産は、きっちりと区分けされることになります。仮に会社の財産を勝手に使えば大きな問題に発展します。
脱税が疑われたり、粉飾を疑われたり、お金の横流しを疑われたりと、それこそ法律違反になる可能性も出てきます。
ちなみに、会社からお金を借りて自由なお金を手に入れようとする人もいますが…従業員が一人の会社であっても金銭消費貸借契約書を作って利息を設定していく必要があります。
事業の廃止に費用がかかる
大きなデメリットというわけではありませんが、紆余曲折があって会社をたたむとなったときにも費用が発生します。具体的には、解散登記が必要となり、これが「30,000円」です。
さらに、精算結了登記とよばれる登記が「2,000円」で、合計32,000円は必要です。状況によっては、他にもさまざまな細かい費用が発生する可能性もあります。
もちろん、税金の滞納があったり、借金の残債がある場合も、精算していく必要がでてきて、費用が発生することは言うまでもありません。
まとめ
会社設立のメリット、法人成りのメリットについて紹介をしてきましたが、節税効果以外にも多くのメリットがあることを知ってもらえたと思います。また、デメリットもあることも理解いただけたかと。
言うまでもなく、個人事業主には個人事業主のメリットとデメリットがあり、会社設立・法人成りには会社設立・法人成りのメリットとデメリットがあります。
これらを十分に理解して選択していくとよいでしょう。1つの目安となるのが「個人事業主として事業展開した場合の利益の大きさ」です。
利益が大きくなればなるほど、大きな税金が発生するため、見極めが大切になります。その境界線が「所得税率が法人税率を超えたとき」です。
地方自治体を始め、細かい状況によって異なるため、各自で詳しく調べてみてください。最後、以下に会社設立・法人成りのメリットとデメリットを簡単に箇条書きしておくので復習して頂ければ幸いです。
メリットは…
- 消費税が最大2年間(上手に利用すれば最長4年間)も免除される
- 所得税の税率が低くなる(法人税の方が安くなる境界線がある)
- 給与所得控除を利用することができる
- 経費で計上できる対象が多くなる
- 欠損金を10年も繰越することができる
- 家族へ給与を支払うことができ所得税や住民税の分散ができる
- 決済月を自分自身で決められる
- 会社の財産となるため相続税は発生しない
- 会社に赤字があったとしても個人資産が差し押さえられることはない
デメリットは…
- イニシャルコストとランニングコストがどうしても発生してしまう
- 高額な保険料となる社会保険に加入しなければならない
- 事務作業の負担が増す(税理士に代理してもらう場合にも費用がかかる)
- 会社のお金になるため従業員が一人であっても自由に使うことはできない
- 会社をたたむときには登記関係で多少の費用が発生する
以上となります。