会社設立をする場合、もっとも悩んでしまうと言っても過言ではないのが「商号の決定」です。会社の顔になるモノであり、将来の行く末を左右することになるため、当然といえます。
ということで、本記事にて「商号の決め方」や「商号のルール」について説明をしていきます。
目次
基本中の基本「商号とは?」について学ぶ
商号とは、いわゆる会社名のことを指します。ただ会社名と言っても、商号は正式な会社名のことで、略称だったり、ニックネーム的なモノではありません。
例えば、日本が世界に誇る大企業である「トヨタ」の場合は…トヨタ自動車株式会社が商号になります。正直なところ、トヨタでも通じますが、商号というお話になった場合は、トヨタ自動車株式会社が正解になるわけです。
登記される正式な会社名のこと
商号は、結局のところ…登記される正式なフルネームの会社名です。このように “登記” されるわけですから、法的にも認められた名前になります。
したがって、法的な効力が発揮するような契約書などは、この商号を使わないといけません。
ここに略称だったりニックネーム的な会社名を使ってしまったら、最悪のケースとして「契約書として認められない」となることも…注意したいところですね。
店名は商号とは別物
飲食店のように複数のお店を展開している場合、○○店、○○支店のように、会社名にプラスして地域名が入っていることがあります。
これは、あくまでも店名であって商号ではないことを理解しておきましょう。つまり、どこの地域の店舗や支社、支店であろうが、商号はただ1つだということですね。
例えば…2020年現在、ホンダのディーラーといえばHonda Carsであり、さまざまな支店がありますよ。
したがって、商号は「HondaCars ○○支店」となりそうですが…正解は「本田技研工業株式会社」です。
このように、意外と知らいない人も多く、商号と店名、そして社名はイコールではないことを理解しておきましょう。
商号を決めるときの4つのルール
法的に認められる会社名になるため、言わずもがな「ルール」というモノが存在します。好き勝手に決められてしまえば、無法地帯になってしまう可能性もあって、収集がつかない状況になってしまいますからね。
ただ…基本的には、一般的な常識で決めればルール違反になることはないので、身構える必要はなく、とりあえずは普通に考えてもらえれば結構です。ということで、以下より、商号の4つのルールについて説明をしていきましょう。
会社形態を必ず入れる
商号は、株式会社や合同会社など、会社形態を必ず含めなければなりません。含める場所は、先頭か末尾で、間には入れることはできません。
○○株式会社 or 株式会社○○といったイメージで、○○株式会社△△のような形はNGというわけです。よく耳にする「前株」「後株」は、このルールがあるからこそ、できた言葉なのかもしれませんね。
使える文字が決まっている
特殊な文字は利用できないと思ってください。また記号も使えるものは限られており、くわえて使い方も制限されています。
結局のところ、誰もが読める常識的な文字を使えば問題がないと理解いただければ結構です。
【使える文字】
- 《文字》漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット(大文字・小文字)、アラビア数字(1,2,3…)
- 《符号》&(アンパサンド)、(アポストロフィー)、,(コンマ)、-(ハイフン)、.(ピリオド)、・(中点)
符号に関しては、商号の先頭や末尾に使用することはできません。あくまでも、字句を区切りたいときに利用できる文字となっています。
この区切り文字の中でも特殊な存在となっているのが「スペース(空白)」です。ローマ字を使って複数の単語を表記するときだけで、単語の間として区切るときのみ可能としています。
例えば…Bike King株式会社はOKですが、バイク キング株式会社はNGだということです。ともあれ、あまりにも特殊な符号は、基本的に使用できないと思ってください。
特定の語句・名称は使うことができない
商号に「株式会社文部省」のように公的機関の名称や、支店、出張所、事業部など、組織を表すような語句・名称も使うことはできません。
他にも、「○○銀行株式会社」「○○保険株式会社」のように誤認されるようなケースも使用することができません。法律で定められているので、例外はありません。
当然、犯罪を連想する言葉だったり、卑猥な言葉だったり、普通に考えて会社名にしないような語句もNGです。ちなみに、商標権登録されている語句を使用することも避けた方がよいです。
ルール化されているわけではありませんが、商標権登録をしている側から法的な措置を取られてしまうケースもあるからです。分かりやすい例だと、先程も登場してもらった「TOYOTA」です。
TOYOTA株式会社という会社を設立した場合、当然、「トヨタ自動車株式会社の関連会社かな?」と勝手に思ってしまいますよね。
しかも、詐欺まがいレベルのサービスを提供されてしまったら、本家のトヨタの信頼度も落ちてしまって、大きな損害にもなりかねません。
当然、本家トヨタ側からしたら、不愉快極まりないことは火を見るよりも明らかで…本気で対抗策を講じてくることは容易に想像できます。
具体例を挙げると…マリカー訴訟も記憶に新しいところで、こういったあからさまな商号はトラブルに発展しやすいことは間違いありません。
同一住所に同じ商号は使えない
実は、商号は唯一無二のモノではありません。世の中には、まったく同じ商号の会社はいくつもあるため、「同じ商号はNG」というルールは基本的にはありません。
ただし、例外として同一住所に、まったく同じ商号を使うことはできません。普通に考えれば当然ですが…ちょっとしたイジワルな問題を出させてください。
「大きな商業ビルに同一の商号はOKか?NGか?」答えはOKですが、同一のフロア(階数・部屋番号まで一緒ということ)の場合はNGになります。
商業ビルとなれば、同じ住所になるため…一見するとNGと思いますが「階が違う」「部屋が違う」と、同じ住所でも、このような違いがあれば問題はありません。
少々、ややこしいですが、そう滅多にあることではないため、あまり気にしないでもよいルールです。
会社法では定められているので、紹介させていただきました。1つ頭に入れておきたいことは「既に登記されている商号と同じにする、または似たような商号にすることは避ける」ことです。
特にダメと会社法でルール化されているわけではありませんが、ケースによっては不正競争防止法の方で訴えられてしまうこともあるからです。
例えば、ゲームを開発・販売する会社を設立するとき商号を「NIINTENDO株式会社」とした場合、限りなくグレーで非常に危険な匂いがします。
何故か?は言わずもがなですね。したがって、同じ商号はもちろんのこと、似たような商号になっていないか?を十分にチェックすることも大切です。
(どうしても同じ商号や似たような商号になる場合は、正当で、かつまっとうな理由をもつことが大切になってきます)
どうやって商号を決めればいいの?4つのコツを伝授!
これだけルールがあると、なかなか決めにくいと感じてしまいますよね。そこで、ここでは商号の決め方のコツ4つを伝授したいと思うので、ぜひ参考にしてみてください。
商号に自社の由来を持たせてみる
「なぜ、会社設立に至ったのか?」「どのような会社にしたいのか?」「どのようなサービスを提供する会社なのか?」と、会社の由来をもたせる方法です。
スタンダードな方法ではありますが、非常に高い効果を発揮してくれます。覚えやすいですし、連想もしやすく、大きなメリットがあります。
大手企業も会社の由来から商号を決めていることも多いので、さまざまな例を参考にするとよいでしょう。
ドメイン取得も可能か?を確かめる
ネットが普及し、さらにはスマホが普及し、今やネット環境がなくてはならない世の中になっています。したがって、会社設立後は、合わせて公式サイトの作成もしていかなければなりません。
そこで重要になってくるのが「ドメイン」です。会社の公式サイトともなれば、専用のドメインを用意するのが普通です(無料のドメインだと信用度も低く、セキュリティがガバガバになる可能性もあるため)。
しかし、似たような商号が既に登記されている場合は、ドメイン名がかぶってしまう可能性があるわけです。
基本的に「商号」と「ドメイン名」は、イコールにしたほうが良いため、事前にチェックをしておくことが重要です。
無料で簡単にチェックしてくれるサイトがあるので活用をすれば、直ぐにかぶっていないか?を確認できます。
ちなみに、英語を使った商号の場合、ドメイン名が被る確率が高くなります。理由はスゴく単純で、英語圏の国もターゲットになるからです。
少しでも確率を下げたいのであれば、こういった英語に関する部分も気にしておく必要があるわけです。
SEO的に有利になるような商号にする
ネットで情報発信をする以上、SEO対策をする必要がでてきます。そのため、SEO的に有利な商号にすることも1つの手です。似たような商号だとライバルが多く、なかなか上位表示させることは難しいです。
であれば、誰も使っていないような世の中には存在していない文字を作って、簡単に上位表示させるなどの作戦を立てることも可能になります。他にも、同じ意味だけど違う言葉を使ってみるのも面白い方法です。
例えば、バイクを扱う業者の場合、バイクを取り入れた商号は既にたくさんありますが…自動二輪車を使った商号は少ないです。
くわえて、検索エンジンは非常に賢いため、自動二輪車株式会社とネット上に公開したとしても「バイク株式会社」で検索HITしてくれるようになっています。
この例は極端なお話ですが、こういったことも考えるのもコツの1つです。
実際の商号を参考にして選択肢を増やす
結局のところ実例を参考にすることが手っ取り早いといえば手っ取り早いです。良さそうな商号をいくつかピックアップして、気に入ったワードを切り取って繋げてみたりすることも可能です。
先に説明した通り、そのまま盗用してしまうのはマズいので、十分に注意はしてくださいね。
商号は変更可能だけど甘えないこと!
商号は登記した後でも変更が可能です。ただし、さまざまな手続きを行うことは言うまでもありませんが…。これを踏まえ「商号は変更できるので身構えず、サクッと決めちゃいましょう!」という意見が散見できます。
実際に、パナソニックなど大企業でも商号変更をしているため説得力がある言葉かもしれません。ただ、変えないことが理想であることは間違いありませんので、ここを履き違えないように注意をしましょう。
株式会社ミクシィも商号を変更しており、もともとは株式会社イー・マーキュリーでした。これは、サービス名称の知名度が高くなりすぎてしまって、こちらの名前にした方が会社的にも「得」と判断した場合や…。
それこそ、パナソニックのように時代の流れにマッチした名前に敢えて変更したなど、正当な理由があってこその商号変更です。
「サクッと決めた名前が気に入らないから商号変更しよう!」というノリではないことは重々理解をしておく必要があります。
まとめ:熟考を重ねて最後はズバッと決める!
商号のルールは、細かく定められているものの、一般常識に沿って決めれば何の問題もありません。そして、決めるコツは、単純に実用性を始め、利用者に覚えてもらいやすく、さらに会社の業種が連想できるようなものがベストです。
ただ、ポップな商号にして覚えやすさを重視するのも1つの手です。基本的には、このようなことを熟考して、最後は「これだ!」というモノを見つけてズバッと決めるだけです。
結局のところ、自分自身が後悔しないように決めることが重要というだけのお話ではありますが…。ともあれ、これらのルールとコツを念頭に後悔のないように決めていただければ幸いです。