合同会社は株式会社に似た性質を持ちつつ、設立費用が株式会社に比べて半額以下で作れるLLC(持分会社)の1つです。取締役などの「役員」が存在せず、「社員」という役職が登記されます。
株式会社は株主が株式を所有し、経営は株主が選んだ役員が行うため、役員と株主が分離していますが(所有と経営の分離)、合同会社は株主が存在せず、出資をした社員がそのまま経営に関与することになります。
合同会社は会社を大きくするつもりがない場合に作ることが多いですが、仮に大きくしたくなった場合でも株式会社に移行することができます。今回は合同会社の費用がいくらかかるのか、必要書類が何かを詳しく解説します。
目次
合同会社を設立する際にかかる費用は3つ
合同会社を設立するには大きく分けて以下の3つの費用が必要となります。
- 法定費用
- その他諸費用
- 資本金
法定費用は決まっていますが、諸費用や資本金は会社の形態によって異なります。
法定費用は(6万円~10万円)
法定費用とは合同会社を作る場合に必ず必要となる「登録免許税」と、必要に応じて納める「定款印紙代」のことを指します。
登録免許税6万円+(必要に応じて定款印紙代)4万円=6~10万円
登録免許税に関する費用:6万円
老徳免許税は設立登記申請の際に必ず納める必要があり、登記申請を出す際に収入印紙を購入して、申請書に張り付けて会社の本店所在地管轄の法務局に提出します。
合同会社を設立するときにかかる登録免許税は「資本金×0.7%」ですが、最低金額が6万円となります。857万円を超える資本金の場合は6万円以上の登録免許税になります。
登録免許税の最低金額が15万円の株式会社に比べて半額以下の法定費用になります。
現在ではオンライン申請というものもあり、収入印紙を購入せずにインターネットバンキングで支払うことができます。特に1人会社であれば、オンライン申請の方が簡単である場合もあります。
定款に関する費用:約4万円
定款印紙代は後述する電子定款を作成しない場合に必要となり、印紙税法に定められた「第6号文書」に該当し、4万円の収入印紙を貼らなくてはなりません。
よく勘違いされる方が多いのですが、登記申請に必要となる定款には収入印紙を貼りません。定款は2通作成し、会社保管用の定款に収入印紙を貼ります。
収入印紙4万円を貼った定款は会社で保管し、税務調査などがあった場合に、定款を見せることになるので、紙定款の場合は必ず収入印紙は貼っておきましょう。
電子定款だと印紙代4万円が0円に
紙で作る定款には、末尾に社員の印鑑を押印、割印をして収入印紙を4万円貼る必要があります。
しかし、電子定款の場合は押印の代わりに電子署名を行うことによって、押印や収入印紙が不要になります。そのため設立費用のうち、定款の4万円が不要になります。
電子定款を自分で作る場合に別途費用:5000円~
自分で電子定款を作る場合には、電子署名を行うためのソフトや道具が必要となります。
- Adobe Acrobat DC
- マイナンバーカード
- カードリーダー
- PDFへの署名プラグイン
Adobe Acrobat DC
定款を電子署名するにはAdobe Acrobatが必要になります。Adobe AcrobatといえばPDFを見るための有名なソフトで、無料で利用できますが、PDFを編集、電子署名をするにはAdobe Acrobat DCなどの有料版を購入する必要があります。
Adobe Acrobat DCは月額2000円ほどで使用することができます。
エディション名 | Adobe Acrobat Pro DC | Adobe Acrobat Standard DC |
---|---|---|
月額(税別) | 2,100円 | 1,900円 |
年額(税別) | 22,560円 | 20,160円 |
定款の電子署名のみを行うのであれば、1週間の無料体験版でも可能です。しかし次回から電子署名を行いたいことがあったときは有料版に移行することになります。
PDFへの署名プラグイン(無料)
署名するために必要なプラグインと呼ばれるものがあります。こちらはAdobe Acrobatが入っている前提でインストールする必要があります。
Adobe Acrobatを購入後に登記申請オンラインのサイトからダウンロードしましょう。
カードリーダー(2000円~)
カードリーダーは電子署名を行うために必要であるマイナンバーカードなどを読み込むための機械です。パソコンとUSB接続を行うことにより使用することができます。
法務局が公表しているスマートフォンの機種であればカードリーダー替わりに使うことが可能です。
マイナンバーカード(無料)
現在政府はマイナンバーカードを作ることを推奨していますが、マイナンバーカードは印鑑証明の取得や健康保険証の代わりにもなるので作っておいて損はありません。
通知カードから発効まで1か月ほど時間がかかるので、電子署名を考えている場合は、早めに行動するようにしましょう。
電子定款を専門家に依頼する場合の費用:5000円~
自分で定款に電子署名を付与するのは難しいと思う人もいます。そんな場合には、電子署名のみを専門家に依頼するのも1つの方法です。登記申請まで依頼する場合は司法書士、電子署名のみを依頼するのであれば行政書士が行ってくれます。
電子署名だけであれば5000円から行ってくれることが多く、司法書士に登記申請まで依頼すれば10万円ほどかかります。
その他諸費用は(2万円~)
合同会社を設立するためには登録免許税や定款費用のほかに、様々な費用が必要となります。
会社実印(1万円~)
設立登記に必要となる添付書面には押印する部分があり、会社の実印が必要となります。最近はインターネットで申し込めば翌日に配送してくれる業者もあり、費用は実印・銀行印・角印などがセットになり1万円~2万円ほどです。
代表社員の個人実印(5000円~)
代表社員になる人は印鑑届書に実印を押す必要があります。個人の実印は会社設立以外でも使う場面があるので、100円ショップに売っている三文判など、偽造されやすい印鑑では登録をしないようにしましょう。
作成した個人の実印は住所地管轄の区役所や市役所で印鑑登録を行う必要があり、登録後は印鑑カードが発行されます。
代表社員の印鑑証明書(300円)
代表社員となる人は会社の実印登録に印鑑証明書を添付する必要があります。印鑑証明書は代表社員の住所地管轄の区役所や市役所で請求することができます。
最近ではマイナンバーカードを持っているとコンビニでも発行することができるようになりました。
専門家への報酬(5000円~)
設立登記書類の作成や定款の電子署名など、自分ではできない場合は専門家に依頼をします。その場合は依頼する内容により実費とは別に報酬が発生します。
資本金とは
資本金は皆さんが事業を始めるときに持っている運転資金のことを指します。会社の登記簿謄本にも記載され、他社か会社の規模を判断する1つの目安にもなります。
会社法改正により、現在は資本金を1円から会社を作ることができますが、そのような会社は1円の会社はペーパーカンパニーと間違われてしまうことが多く、銀行や他社からの社会的信用が得にくくなります。
行う業種によって資本金をいくらにするか変わりますが、設立当初は50万円~100万円が妥当です。
また、資本金は高ければよいというわけではなく、例えば1000万円を超える資本金で会社を設立してしまうと、新設会社の特典である約2年間の消費税免税が適用されなくなります。
資本金で準備した資金はそのまま登録免許税など設立にかかる費用に充てることが可能です。そのため、資本金をいくらにするかまずは考えるとよいでしょう。
まとめ
合同会社は社員が有限責任社員しかおらず、会社が万一つぶれてしまった場合でも社員は出資金の範囲内での責任を負うにとどまります。
出資した株式のみしか損をしない株式会社と似ていますが、定款認証が不要で必要書類も少なく、設立費用が安いので、とりあえず会社を早く設立したいという方にはおすすめの方法です。ぜひ検討してください。