会社を立ち上げようと思っている起業家のほとんどは初めて会社を設立します。そのためどこに相談すればいいのか、どのような手続きを行えばよいのかわかりません。
そんな時に相談できる窓口の1つが「弁護士」です。弁護士の良いところは、会社の設立の手続きだけではなく、その先の企業法務などのサポートも行ってくれる点です。
今回は弁護士に会社の設立の手続きを依頼した場合の費用の相場をご紹介します。税理士や司法書士との違いや弁護士ならではのメリット、デメリットも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
弁護士の報酬形態は?
弁護士事務所のホームページを見ていると料金表がわかりづらいことがあります。弁護士の報酬形態は大きく分けて「着手金」「成功報酬」「手数料」「顧問料」の4つに分かれます。
着手金 | 訴訟などの事件の時にかかる報酬です。成功、不成功の結果にかかわらず払います。 |
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成功報酬 | 事件の結果、成功の度合いに応じて支払う費用です。 |
手数料 | 1回で終わる手続きにかかる費用です。会社の設立のはこの手数料に該当します。 |
顧問料 | 顧問契約を結んだときに会社の担当者や役員と法律相談を行います。費用は相談回数などによって変わります。 |
会社の設立手続きの場合に関係してくるのは「手数料」と「顧問料」です。
顧問とは、企業と交わした契約の範囲内で法的問題の解決やコンプライアンス強化をします。
昔は顧問契約を大企業しか採用しておらず、顧問料も20万~30万と高額でしたが、近年はコンプライアンス強化の観点から中小企業でも取り入れることが増えました。
あまり法律相談をしないという中小企業向けに3~5万程度で提供している弁護士も多く、金額的には月に数時間の相談料を同じ費用となっています。
弁護士に会社設立した場合の費用相場
会社の設立代行を弁護士に依頼した場合の費用は株式会社やそのほかの会社を問わず、おおよそ「10万円前後」です。
これは同じ登記業務を担当している司法書士に比べると同じか少し安いくらいですが、弁護士のメイン業務は登記申請の後の企業法務などのサポートです。
いわゆる「顧問弁護士」となって、毎月の顧問料を支払っていくことにより、報酬を得ていく仕組みとなっています。
弁護士が会社設立でできること・できないこと
まず結論からいうと、会社の設立の手続きで弁護士が行えない業務はありません。
特に登記業務や許認可申請はそれぞれ司法書士、行政書士にしかできないように思えますが、それは間違いです。
弁護士は司法書士、行政書士、税理士のすべての業務を行うことができると弁護士法3条の「その他一般の法律事務」によって定められています。
つまり、弁護士は設立に必要な登記業務も建設業を営むために必要となる許認可も権限のもと申請することができます。
そもそも弁護士になると、必然的に「行政書士」「税理士」の資格がついてきます。
そのため、行政書士や税理士に行うことができる業務で弁護士に行うことができない業務というのはありません。
苦手な分野もある
弁護士はすべての法律業務を行うことができると説明しましたが、だからといって、弁護士が会社設立の手続きが詳しいというわけではありません。
確かに弁護士は登記業務や許認可申請も職務の範囲として取り扱うことができますが、「特化した業務」ではないので、一部の業務を司法書士や行政書士に依頼することもあります。
弁護士の主な業務は紛争解決、企業の契約書作成などであるため、紛争が解決した後の登記手続きや難しい許認可申請は提携している司法書士、行政書士に依頼することがあります。
例えば、離婚事件があった場合、離婚成立後の不動産の財産分与の登記は司法書士に依頼します。
弁護士ができる会社設立手続き
弁護士が行うことができる会社設立に必要である手続きはこちらです。
設立書類作成
設立に必要な書類は主に以下の通りです。
- 定款
- 払い込みを証する書面
- 就任承諾書
- 印鑑届出書および印鑑カード交付申請書
- 発起人決定書
これらの書類を1人で調べて作るのはなかなか大変です。
インターネットで調べれば書式などは配布されていますが、自分の会社に合うようにカスタマイズするのは、結局専門家の意見を聞かないと分かりません。
例えば会社のルールブックである「定款」は間違えると電子署名や印紙の貼り直しになってしまう重要な書類の1つですが、弁護士が監修をしてくれるのであれば、安心できます。
法律相談(特に企業法務)
弁護士は法律のスペシャリストです。特に弁護に相談する最大のメリットは、企業内で紛争が起こった時にすぐに対応ができるという点です。
例えば、契約会社と報酬の受け取りでのトラブルや、個人との取引でドタキャンによる損害賠償請求の方法など、自分ではなかなかできない示段交渉も可能です。
実は行政書士や司法書士は紛争がない法律相談は問題なくできますが、紛争が起こった場合の相手方への交渉などの法律相談業務は行うことができません。
会社を作った後にも親身になって継続的に相談できるというのは弁護士の強みです。
定款認証(電子署名)
株式会社を作るときは公証役場にて定款認証を行います。その手続きを弁護士は行うことができます。
定款認証には書面による紙定款とCD-ROMに入れる電子定款に分かれ、電子定款の場合は、電子署名まで行ってくれます。
紙定款の場合は定款認証の際に、定款に4万円分の収入印紙を貼らなくてはいけないと印紙税法に定められています。
自分で電子定款を作ることは可能ですが、国が認めているソフトウェアやカードリーダーなどの機材が必要であるため、おすすめできません。
弁護士事務所は電子定款の作成に必要な機材やソフトウェアを持っていることが多いため、安く済ませることができます。
(必要に応じて)許認可申請
例えば建設業や宅建業、飲食店などを行う場合は事前に国や都道府県に届出や許可申請を行わなければなりません。これを許認可といいます。
許認可と聞くと行政書士のイメージが強いですが、弁護士でも行うことができます。
しかし、特殊で細かい許認可申請に関しては、事務所内行政書士や提携している専門の行政書士にお願いすることもがあります。
設立後の税務書類の提出
会社を設立した後は税務署に様々な書類を提出する必要があります。税務署関連といえば税理士のイメージがありますが、弁護士も当然業務として行います。
例えば法人設立届出書は会社の設立の日から2か月以内に行う必要があり、自分で忘れてしまいそうな書類も代行して提出してくれます。
このように司法書士や行政書士、税理士が各パートで担当している業務を弁護士はすべて網羅しています。
形式的な手続きだけではなく、会社設立後のサポートもしっかりと行ってくれるので、ぜひ味方にしましょう。
各弁護士事務所の会社設立代行サービスの費用
ここでは実際に弁護士事務所の代行サービスの内容と事務所に支払う費用(報酬)を比較してみます。「どんなサービスでいくらかかるのか」といったことがざっくりとイメージしましょう。
『みお 綜合法律事務所』の費用
みお 総合法律事務所は大阪・京都・兵庫に3事務所を構えている弁護士事務所です。
驚くべきサービスは設立登記手続きの手数料を「0円」で行っている点です。設立前は税理士、設立後は弁護士が法律サポートを行ってくれます。
定款作成(認証込) | 〇 |
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登記手続書類 | 〇 |
登記申請書類 | 〇 |
おすすめポイント | ・税理士相談無料 ・弁護士相談(5万円分の相談チケット込) |
報酬 | 0円 |
会社設立後に必要に応じて、許認可や助成金の申請サポート、設立後の労務・税務問題への改善相談、各種士業によるサポートを有料で用意してくれます。
対応可能な士業
- 税理士
- 弁護士
- 行政書士
- 司法書士
- 社会保険労務士
顧問料(任意)
法人・個人(月額) | 30,000円プラン |
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50,000円プラン | |
100,000円プラン |
名前 | みお 綜合法律事務所 |
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代表 | 澤田 有紀 |
区分 | 弁護士 |
住所 | 大阪:大阪府大阪市北区梅田3丁目1番3号ノースゲートビルオフィスタワー14階 |
京都:京都府京都市下京区烏丸七条下ル東塩小路町735-1 京阪京都ビル4階 | |
神戸:兵庫県神戸市中央区磯上通8丁目3番10号 井門三宮ビル10階 | |
電話番号 | 大阪:06-6348-3055 |
京都:075-353-9901 | |
神戸:078-242-3041 |
『弁護士法人 クレア法律事務所』の費用
クレア法律事務所は株式会社からNPO法人まで幅広い設立準備と設立後のサポートを提供してくれる弁護士事務所です。
また、自分で設立手続きを少しでも行いたと考えている人に向けてホームページに設立書類などのひな型を載せています。
書類を見て、自分だけで作るのは難しいと感じるのであれば、こちらに相談してみましょう。
定款作成(認証込) | 〇 |
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登記手続書類 | 〇 |
登記申請書類 | 〇 |
おすすめポイント | 依頼後おおよそ14日以内に登記完了 |
報酬 | 200,000円 |
顧問料(任意)
法人・個人(月額) | 月額50,000円~ |
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名前 | 弁護士法人 クレア法律事務所 |
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代表 | 古田 利雄 |
区分 | 弁護士 |
住所 | 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館3階 |
電話番号 | 03-6273-4517 |
『新橋虎ノ門法律事務所』の費用
新橋虎ノ門法律事務所新しくベンチャー企業を立ち上げたいと考えている人に向けて法的サポートを行っています。
なぜ個人から法人にするのか、株式会社で問題ないのかなど、起業するメリットからどのような種類の法人にするかまでしっかりと話し合うことができます。
定款作成(認証込) | 〇 |
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登記手続書類 | 〇 |
登記申請書類 | 〇 |
おすすめポイント | ・商標登録 ・許認可の積極的アドバイス |
報酬 | 80,000円(財団法人等は12万円~) |
名前 | 新橋虎ノ門法律事務所 |
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代表 | 武山 茂樹 |
区分 | 弁護士 |
住所 | 東京都港区西新橋1-6-12 アイオス802 |
電話番号 | 03-6206-6801 |
弁護士法人 淀屋橋・山上合同』の費用
淀屋橋・山上合同は大阪と東京に事務所を構えている、所属弁護士が総勢60名を超える大きな事務所です。
定款作成(認証込) | 〇 | |
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登記手続書類 | 〇 | |
登記申請書類 | 〇 | |
おすすめポイント | 幅広い企業法務の取り扱い | |
報酬 | 1,000万円以下の場合 | 4% |
1,000万円を超え2,000万円以下の場合 | 3%+100,000円 | |
2,000万円を超え1億円以下の場合 | 2%+300,000円 | |
1億円を超え2億円以下の場合 | 1%+1,300,000円 | |
2億円を超え20億円以下の場合 | 0.5%+2,300,000円 | |
20億円を超える場合 | 0.3%+6,300,000円 |
※例えば資本金が100万円の場合は4万円となります。
顧問料(任意)
法人(月額) | 月額50,000円~ |
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個人(月額) | 月額30,000円~ |
名前 | 弁護士法人 淀屋橋・山上合同(大阪) |
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代表 | 山上 和則 |
区分 | 弁護士 |
住所 | 大阪:大阪市中央区平野町4丁目2番3号 オービック御堂筋ビル9階 |
東京:東京都千代田区丸の内2丁目3番2号 郵船ビルディング4階 | |
電話番号 | 大阪:06-6202-3355 |
東京:03-6267-1200 |
『新生綜合法律事務所』の費用
新生綜合法律事務所は昭和60年から続く事務所です。祝日を除く土日も営業しているので、会社帰りや平日に相談できない場合も便利です。
定款作成(認証込) | 〇 | |
---|---|---|
登記手続書類 | 〇 | |
登記申請書類 | 〇 | |
おすすめポイント | 幅広い企業法務の取り扱い | |
報酬 | 1000万円以下の場合 | 4% |
1000万円を超え2000万円以下の場合 | 3%+ 10万円 | |
2000万円を超え1億円以下の場合 | 2%+30万円 | |
1億円を超え2億円以下の場合 | 1%+130万円<\td> | |
2億円を超え20億円以下の場合 | 0.5%+230万円 | |
20億円以上の場合 | 0.3%+630万円 |
※例えば資本金が100万円の場合は4万円となります。
顧問料(任意)
法人(月額) | 月額50,000円~ |
---|---|
個人(月額) | 月額5,000円~ |
名前 | 新生綜合法律事務所 |
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代表 | 西本 恭彦 |
区分 | 弁護士 |
住所 | 東京都千代田区麹町 4-3-29 VORT紀尾井坂 5階 |
電話番号 | 03-3222-0701 |
弁護士が行う会社設立代行サービスの特徴
弁護士の会社設立代行サービスにはほかの士業にはない特徴があります。良い点もあればコスト面で悪い点もあるので、理解したうえで依頼しましょう。
特徴(1):設立後のサポートがついてくる
弁護士に会社設立を依頼する一番のメリットは設立後のサポートです。
経営をしていくなかで起こる法的トラブルを迅速に解決していくためには弁護士の存在はとても心強いです。
会社を作る前から関与している弁護士であれば、自分の会社の性質やどんなトラブルが起こりやすいかを把握しているため、事前に解決策を講じてくれます。
今後顧問契約を結ぶことになったときでも全く知らない弁護士にお願いするよりは情報交換もスムーズに行うことができ、株主総会の運営、株主リストの整理なども対応してくれます。
弁護士が行ってくれるサポートは幅広く、ほかにも以下のものがあります。
- 従業員を雇用する際の手続き(社会保険労務士業務)
- 特許・商標等の取得(弁理士業務)
自分の会社が大きくなり、様々な事業を展開するつもりであれば、このような業務を一括して請け負ってくれる弁護士は助かります。
特徴(2):手続きのみの代行は少なく費用は高め
行政書士や税理士などのほかの士業が提供している会社設立代行サービスでは、会社設立の手続きすべてを行うだけでなく、個人の費用に合わせて「定款認証のみ」や「書類作成のみ」といったプランがあります。
しかし弁護士が提供している会社設立代行サービスは、原則設立登記まで受ける一括サービスしかありません。それは弁護士という職業柄、設立後に繋げるためです。
そのため費用を安く済ませたいという人は、設立手続きがほかの士業で安く済ませ、法律相談などが多くありそうなのであれば、その都度顧問契約を結ぶほうがコストは安く済みます。
弁護士は幅広い法律相談ができる反面、月々のランニングコストが発生してしまうことや、弁護士特有の相談料(タイムチャージ)といった時間で決められた費用が発生します。
自分が会社を経営していくうえで何を重視しているのかを明確にしましょう。
まとめ
今回は弁護士の会社設立代行サービスの費用や特徴をご紹介しました。
コストを考え、自分でなんとか会社を設立したとしても、いざ事業を始めようとしたときに「事業に必要な許認可をとっていなかった」「作成した定款では、事業を行うことができない」等の問題が発生し、会社設立後に余計な手間がかかってしまい、なかなか事業に専念することができないということも少なくありません。
弁護士は法律全般のプロフェッショナルなので、会社設立前から長く付き合っていきたいと思っているのであれば、最初から弁護士を利用するのがおすすめです。
起業したばかりで右も左もわからない状態でも弁護士が後ろ盾にいるというだけで、気持ちが楽になることがあります。
しかし、弁護士に支払う報酬はどうしても高くなってしまうため、会社の資本と相談し、必要に応じて身近な弁護士を確保していきましょう。