香港で会社設立する場合のメリット・デメリットについて解説します。
メリットを理解すれば香港への進出を具体的に考えられますし、デメリットが分かればリスクを避けやすくなるでしょう。
そのためにもまずは香港の基本情報を知ってください。香港には政治的な問題もありますので、最初にご説明します。
その後にメリット・デメリットを知ることで、双方を比較した上で香港への進出を検討して頂ければと思います。
目次
香港の基本情報
香港の面積は東京の半分ほどで、人口は約750万人です。日本では愛知県とほぼ同数の人口です。
香港の代名詞に「100万ドルの夜景」がありますが、高層ビルが多数建ち並ぶ金融と貿易が発展した都市が香港です。
そんな香港には日本人が多数住んでいて、2018年10月時点で2万5000以上と世界的に見てもトップクラスとなっています。
香港に進出している日本企業も多く、「最初に駐在した国が香港だった」というビジネスマンも多いようです。
他にも、日本の農林水産物の輸出額や、香港から日本への旅行者が多いという特徴があります。
治安
香港は治安が非常に良い都市として知られています。その背景には長年イギリスが統治してきたという影響もあるそうです。
穏やかな性格の市民が多く、人前で泥酔することに抵抗があり、高度な教育を受けた方は喫煙も避ける傾向にあります。
また、香港は地震のリスクが低い都市と言われています。日本は地震と隣り合わせですから、その点だけ考えてもメリットではないでしょうか。
慣習
香港の特徴的な慣習に「ゴミのポイ捨てが多い」があります。街中にゴミ箱が多いのも、ポイ捨てと無関係ではないようです。
日本の場合、テロ対策などが理由でゴミ箱が減っているので、香港とは状況が異なるでしょう。
他にも香港には「クーラーが効いている場所が多い」という特徴があります。時に湿度100%になる環境のため、室内でクーラーを効かせているそうです。
そのため、香港で会社を設立し、現地でスタッフを雇用する場合は、クーラーを効かせる必要があるかもしれませんね。
政治的なリスク
香港の政治的なリスクに中国との関係があります。1997年にイギリスから中国に返還されたのが香港ですが、2047年までの50年間は一国二制度が取られています。
一国二制度とは、社会主義国の中国にありながらも「高度な自治」が認められている制度です。
しかし香港と中国の関係は複雑で、今までに国家安全条例に反対する50万人デモや、愛国教育必修化への抗議活動、雨傘運動など様々なことが起こっています。
そして2020年6月、香港国家安全維持法案というものが中国で可決されたことにより、現在は中国の睨みが効きやすくなっている状況にあります。
このような政治的なリスクがビジネスに与える影響には、海外企業が手掛けるサービスが使えなくなる、という懸念があります。
たとえば中国ではTwitterやFacebookのようなSNSが利用できません。LINEに関しても使用が制限されていますし、YahooやGoogleも使えません。
香港では利用できますが、中国の締め付けが年々厳しくなっていますので、将来的に利用できなくなる可能性は高いです。
「香港で日本と同じITサービスを利用できない」というリスクは、ビジネスを進める上でデメリットになり得るのではないでしょうか。
香港で会社設立するメリット
香港で会社設立するメリットには下記があります。
- 法人税率が低い
- 資本金規制がないに等しい
- 代表者が日本にいても香港法人を設立できる
- 中国進出への足がかりになる
それぞれ解説します。
法人税率が低い
香港の法人税率は16.5%と非常に低く設定されています。
税制的に恵まれている国で知名度が高いのはシンガポールですが、シンガポールの法人税率は17%ですから、香港はそれよりも低い税率です。
ただし日本にはタックスヘイブン税制がありますので、税率20%未満の国で会社を設立すると日本の税率が適用されます。
結果的に日本の本社と合算して課税されるようですから、節税対策として香港で会社設立を考えている場合は注意が必要です。
香港に限らず、海外の税金面に関しては、事前に税理士のような専門家に相談すると良いでしょう。
資本金規制がないに等しい
香港で会社設立する場合、最低資本金が1香港(HK)ドルしかかかりません。1香港(HK)ドルは日本円で13円前後ですから、資本金の規制はないに等しいでしょう。
法人設立は様々な費用を見込む必要はありますが、資本金の送金が必要ないため、資金繰りに合わせたビジネス展開が可能になります。
他にも香港は「許認可が不要なビジネスが大半」というメリットもあります。
代表者が日本にいても香港法人を設立できる
香港では1名以上の株主および役員で法人を設立できます。外国人でも問題ないので、日本在住の日本人が代表になっても大丈夫です。
会社設立の際に香港へ行く必要もないですし、事業方針が決まるまではペーパーカンパニーも認められています。
日本にいながら香港で会社設立できるのは大きなメリットでしょう。
中国進出への足がかりになる
中国進出を考えている企業にとって、香港は最適なマーケットです。
政治的なリスクでお伝えしたように、中国との結び付きが強い分、中国でのビジネス展開を考えやすいのではないでしょうか。
実際、多数の中国企業が香港に進出し、中国から香港への観光客も多い状況です。
最初から中国で会社設立するという選択肢もありますが、香港の銀行や会計士の方が設立に慣れているため、手続きが比較的スムーズに進むとも言われています。
他にも香港の港湾設備は優れていますし、アジアの主要都市に飛行機で3~4時間で行けるという魅力もありますので、アジア全域をターゲットにビジネス展開しやすいと言えるでしょう。
香港で会社設立するデメリット
次に、香港で会社設立するデメリットについても解説します。
オフィス賃料が高い
香港のオフィス賃料は世界でもトップクラスです。その原因に不動産投資による高騰が挙げられますが、立地条件が良いオフィスを借りる場合は注意しましょう。
事業形態や社員数によっても変わりますが、香港で会社を維持するには、多額の出費を覚悟する必要があるかもしれません。
特に広い物件を借りたり、多数の駐在員を日本から派遣したり、現地でスタッフを雇用する場合は賃料がかさむ可能性があるので、事前にコスト面のシミュレーションを重ねる必要があるのではないでしょうか。
まとめ
以上、当記事では香港で会社設立するメリット・デメリットについて解説しました。
香港の人口は決して多くないものの、金融と貿易が発達した都市として知られています。治安も良い都市ではありますが、中国との関係には注意が必要かもしれません。
将来的に香港でSNSやGoogleが使えなくなる、というデメリットは可能性が高いようです。
他のデメリットにはオフィス賃料の高さがあります。特に立地条件が良い場所でオフィスを賃貸する場合は出費を覚悟しましょう。
一方、香港で会社設立するメリットに下記があります。
- 法人税率が低い
- 資本金規制がないに等しい
- 代表者が日本にいても香港法人を設立できる
- 中国進出への足がかりになる
法人税率の低さ、資本金規制がないに等しいというメリットでコストをおさえやすくなりますし、日本にいながら香港で法人を設立できるのもメリットです。
中国進出、アジア進出の拠点にもなり得るのが香港なので、メリット・デメリットを比較した上で、会社設立を検討してみてはどうでしょうか。