作成日:2020.10.22  /  最終更新日:2020.12.11

【5社を比較検証】会社設立を行政書士に依頼した場合の費用相場

自分で会社の設立書類を作成するのは結構難しく、そんなときは行政書士や司法書士といった専門家に設立代行を依頼するのがおすすめです。

ところで、会社を設立する手続きの内容によって各士業のできる手続きが変わってくるのはご存じでしょうか。

例えば行政書士は会社設立の手続きをすべて行うことができません。しかし、依頼する内容によっては行政書士に依頼することで値段が安くなったり、ほかの手続きが円滑に行うことができたりすることがあります。

今回は行政書士に会社の設立をお願いした場合に、どこまでやってもらえるのか、実際に依頼をした場合に費用がどのくらいかかるのか詳しく解説します。

行政書士に会社設立した場合の費用(報酬)相場

会社の設立に必要な手続きや費用は、依頼する内容によって異なります。行政書士に依頼をする場合は、主に以下のサービスに分かれており、それぞれの目安となる費用をご紹介します。

会社設立代行の相場

設立フルサポート 10万~20万円
書類作成のみ 510万円
電子定款・認証のみ 1万円~5万円

また、行政書士事務所によって書類を作成する内容も変わってくるので、気になる場合は問い合わせをしましょう。

行政書士が会社設立でできること・できないこと

では行政書士は会社の設立やそれに付随する手続きの何ができるのでしょうか。

行政書士は書類作成のプロです。会社の設立に関する書類の作成はすべて行うことができます。また、会社の事業内容によっては行政書士にしかできないこともあるので、詳しく見ていきましょう。

行政書士にできること

許認可申請

許認可とはその業務を行う場合に事前に行政(国や都道府県)に許可や認可を得ることをいいます。

例えば不動産業者を経営するために会社を設立する場合は、宅建業の許可申請を行い、審査を通さなくてはなりません。

宅建業など許認可の申請は要件が厳しく、書類がとても多いです。知識がない人が書類を作ろうとすると、会社の設立よりも多くの時間と手間を要します。

このように許認可が必要な事業を行いたい場合は、行政書士に依頼することによって会社設立後の手続きも円滑に行うことができます。ほかにも建設業や夜のバー、飲食店の経営なども許認可が必要です。

設立書類作成

行政書士は会社の設立登記を行うことはできませんが、設立にかかる書類を作成することは可能です。

どれも重要な書類ですが、例えば会社のルールブックである「定款」は日付を1つ間違えるだけで再度電子署名を行わなくてはならず、株式会社であれば、再度定款認証を行うため、約5万円を二重に支払わなくてはなりません。

こちらを専門家に作成してもらうのはとても安心感があります。

設立相談業務

行政書士は会社を設立するための資金調達の方法や、税金面で困った場合の税理士を紹介など、様々な企業法務の相談に乗ってくれます。

報酬形態にあるフルサポートは会社設立後も会社を継続していくための企業法務や契約書類の相談を書類作成や設立にかかる相談も受け付けていることが多いです。

定款認証(電子署名)

株式会社を作るときは公証役場にて定款認証を行います。その手続きを行政書士は行うことができます。

定款認証には書面による紙定款とCD-ROMに入れる電子定款に分かれ、電子定款の場合は、電子署名まで行ってくれます。

持分会社を設立する場合は公証役場での定款認証が不要なので、電子署名のみ行うことになります。

行政書士ができないこと

次は行政書士が会社設立の手続きにおいてできない業務をご紹介します。

設立登記業務

登記業務は司法書士法に定められた司法書士の独占業務です。そのため、会社を設立する最後の手続きである「登記」だけは行政書士は行うことができません。

会社設立を請け負う行政書士事務所は多くの場合は、連携している司法書士に依頼をするか、事務所所属の司法書士が登記申請のみ行っています。
連携している司法書士に依頼する事務所は報酬が少し高くなっていることがあります。

間違っても相談の際に司法書士という名前が出てこない行政書士事務所には注意をしてください。

行政書士は自分の名前で登記申請を出すことができないため、「本人申請」を行う場合があります。

本人申請というのは、登記まで依頼を受けながら、申請人を皆さんのままで登記申請を行うことで、報酬は登記まで含んだ値段にしていることがあるので注意してください。

各行政書士事務所の会社設立代行サービスの費用

それでは行政書士に会社設立を依頼した場合に具体的な費用がいくらになるのか、各事務所のサービスを取り上げながら比較していきましょう。

費用は登録免許税や定款認証手数料、行政書士の報酬をすべて含んだ金額となっています。

『行政書士 伊東綜合事務所』の費用

伊東綜合事務所の株式会社設立代行サービスは「完全代行」「書類作成のみ」「定款認証のみ」の3つに分かれます。また、対応可能な地域は東京都・神奈川県の限定となっています。

株式会社の場合

完全代行サービス 書類作成のみ 定款認証のみ
定款作成(認証込)
登記手続書類 ×
登記申請書類 × ×
報酬 128,000 68,000 28,000

持分会社の場合

  完全代行サービス 書類作成のみ 定款作成のみ
定款作成
登記手続書類 ×
登記申請書類 × ×
報酬 98,000 78,000 28,000

ほかの事務所の代行サービスの中では少し高めですが、その代わり完全代行サービスを依頼した場合には、以下の特典が付きます。

  • 設立後1年間無料相談サービス
  • 会社設立後の資金調達の相談が可能
  • 司法書士、税理士、社労士などのほかの士業の紹介
  • 許認可など他の依頼をするときに10%割引サービス

行政書士 伊東綜合事務所の概要

名前 行政書士 伊東綜合事務所
代表 伊東良之
区分 行政書士
住所 東京都千代田区神田神保町1-1 倉田ビル6
電話番号 03-3233-8013

『はやみず 綜合事務所』の費用

はやみず 綜合事務所は代表が司法書士の資格をもっているため、設立登記申請まで全てこちらの事務所で請け負ってくれます。

行政書士に依頼というよりは、司法書士に依頼という形になるので、設立書類の作成のみ・電子定款の作成のみといったサービスはありません。

  株式会社 持分会社
定款作成(認証込)
登記手続書類
登記申請書類
報酬 78,000 75,000

はやみず綜合事務所の概要

名前 はやみず 綜合事務所
代表 速水陶冶
区分 行政書士・司法書士
住所 東京都新宿区高田馬場2-14-27 花富士ビル3
電話番号 03-5155-9195

『米井行政書士事務所』の費用

米井行政書士事務所では会社設立サポートだけでなく、資金調達や許認可、経理代行などもサポートしてくれるため、設立後でも親身に相談に乗ってくれます。

株式会社の場合

  完全代行サービス 書類作成のみ 定款認証のみ
定款作成(認証込)
登記手続書類 ×
登記申請書類 × ×
合計(実費込み) 70,000 40,000 30,000

持分会社の場合

  完全代行サービス 書類作成のみ 定款認証のみ
定款作成
登記手続書類 ×
登記申請書類 × ×
合計(実費込み) 50,000 30,000 20,000

米井行政書士事務所の概要

名前 米井行政書士事務所
代表 磯貝正徳
区分 行政書士
住所 東京都中央区銀座5-6-12みゆきビル6
電話番号 03-5155-9195

『特定行政書士 磯谷法務事務所』の費用

磯谷法務事務所は企業における法律実務が経験豊富な代表が「予防法務」として、企業法務・コンプライアンス等をサポートしてくれます。

株式会社の場合

  完全代行サービス 書類作成のみ 定款認証のみ
定款作成(認証込)
登記手続書類 ×
登記申請書類 × ×
合計(実費込み) 250,000 100,000 70,000

そのほかの特典

  • 会社印鑑3点セットプレゼント
  • 会社設立後の経営法務コンサルタント支援
  • 助成金・補助金の情報提供
  • 許認可など他の依頼をするときに10%割引サービス

磯谷法務事務所の概要

名前 磯谷法務事務所
区分 行政書士
住所 東京都新宿区高田馬場2-14-27 花富士ビル3
電話番号 03-5155-9195

行政書士みのり事務所は兵庫県にある事務所です。出張相談も兵庫県近郊(神戸市内・阪神間・明石・三木・小野)であれば可能です。

株式会社のみ

  完全代行サービス 定款作成 定款認証のみ
定款作成(認証込)
登記手続書類 × ×
登記申請書類 × ×
合計(実費込み) 100,000円※ 50,000 10,000

みのり事務所の概要

名前 行政書士みのり事務所
代表 山田美紀
区分 行政書士
住所 兵庫県神戸市中央区栄町通6丁目1-18 ライオンズスクエア神戸元町オフィス棟201
電話番号 078-335-8414

比較で判明!行政書士の会社設立費用は任せる範囲で変わる

各行政書士事務所の会社設立のプランや費用をご紹介しましたがプランを比較してもらうとわかる通り、プランによって金額が大きく異なります。

それぞれのプランの詳しい内容を確認していきましょう。

費用が一番高いのは「フルサポート」

一番費用が掛かるのが、定款作成から登記申請まで会社設立のための手続きをすべて行ってくれる「フルサポートプラン」です。

各事務所で大きく費用が異なるのは、会社設立後のサポートの有無や提携司法書士による報酬の違いに差があるためです。

費用がそこそこかかるのは「書類作成」

書類作成のみ行ってくれる行政書士も多くいます。

行政書士は登記手続きを行うことができないため、登記申請書を作成しない(できない)ことが多いです。

しかし、設立で一番重要である定款や書類のみであれば大半の行政書士は作ることが可能なので、自分で申請を行うことが前提で登記に必要な書類を作成します。

また、後述の電子定款を合わせて、定款のみ作成する行政書士もいます。

費用が安く済むのは「電子定款の作成・認証」

一番費用が安いのは、自分で作ってきた定款を電子定款に変換し、電子認証を行うこちらのプランです。

行政書士が定款を作る手間を省くため、PDFした定款を電子署名し、株式会社であれば公証役場に認証するだけになります。また、電子署名のみであれば、数千円で受ける行政書士もいます。

代行サービスの選び方

各行政書士事務所が提案しているプラント費用が分かったところで、自分はいったいどのプランを選べばいいのか悩んでしまいますよね。

そこで、自分が選ぶべきプランの目安をご紹介します。

どのプランでも必ず自分で行う必要があるもの

  • 印鑑証明書
  • 書類への押印
  • 資本金の払い込み

フルサポートプラン

書類の作成や登記申請まで、会社設立の手続きのすべてを代行してほしい人はフルサポートプランがおすすめです。

フルサポートプランは行政書士または司法書士が用意した書類に会社実印や個人実印を押印するだけであとはすべて行ってくれます。

会社設立の書類や登記書類を自分が作るのは手間や時間がかかるので、すべてを代行する資金がある人はフルサポートを利用しましょう。

定款作成又は書類作成プラン

行政書士が作成する設立書類というのは、主に以下の書類です。

  • 定款
  • 払込を証する書面
  • 就任承諾書
  • 印鑑届出書および印鑑カード交付申請書
  • 発起人決定書

この書類の中で、行政書士に「定款のみを作成してもらう」か「登記申請書以外のすべての書類を作成してもらう」のか分かれるプランです。

会社の種類によって作成する設立書類は変わりますが、これらの書類を個人で作成するのは少し難しく感じます。

登記申請書は法務局のホームページからダウンロードができ、見本も見ることができるため、自分で申請書を作り、法務局にもっていくことが手間ではない人におすすめです。

自分で登記申請だけを行うことで約10万円を節約することができるので、フルサポートが高いと感じた人はこちらの書類作成プランを依頼して、自分で登記申請の準備を行ってみましょう。

電子定款の作成・認証プラン

最後は電子定款の作成・認証のみのプランです。

行政書士によっては定款から作成してくれる場合と、自分で作って持ち込んだ定款をチェックし、認証のみしてくれる場合の2つに分かれます。

定款を持ち込むことによって、電子署名、電子定款の作成だけであれば数千円でやってくれる行政書士もいるので、費用を大幅に削減することができます。

設立に必要な書類の書式もインターネットで調べればダウンロードすることができ、先ほどご紹介した法務局のホームページでも見本が公開されています。起業したばかりで資金がなく、時間がかかっても自分で書類を作成したいという方は電子定款のみ依頼するようにしましょう。

電子定款・認証も個人で行うことが可能ですが、いろいろな機材やソフトウェアなどが必要になる場合があります。難しい電子定款は行政書士に依頼するほうが手間も費用も節約できるので、電子定款・認証は行政書士に依頼しましょう。

各業種の許認可申請の費用(報酬)相場

行政書士はほかの士業では行えない許認可申請があります。もし以下の業種を行うつもりであれば、のちに行政書士に依頼することになるので、費用も併せて確認しましょう。

※報酬は日本行政書士連合会が発表した「報酬額統計」に基づいています。

建設業許可申請 10万~15万円
農地法許可申請 3条3万~5万円 4条5万~6万円
宅地建物取引業者免許申請 7.5万~20万
建築士事務所登録申請 1万~3万円
解体工事業者登録 2.5万~7.5万円
飲食店営業許可申請 5万~10万
道路占用許可申請 2万~6万円
タクシー経営許可申請 20万~40万
レンタカー事業許可申請 5万~15万円
風俗営業許可申請 1~6号10万~30万 7号20万~40万円
古物商許可申請 4万~10万円
介護保険施設開設許可申請 20万~40万円
医療法人設立認可申請 40万~80万円
産業廃棄物業許可申請 10万~50万円
旅館営業許可申請 10万~40万円
一般労働者派遣事業者許可 15万~20万円
学校法人設立認可申請 40万~50万円
宗教法人設立 50万~70万円
酒類販売業免許申請 10万~20万円
在留資格取得許可申請 20万~40万円
帰化許可申請 20万~30万円
永住許可申請 5万~10万円

まとめ

行政書士は本来、相続や許認可等、行政手続きの専門家ですが、会社設立に関する手続きを行ってくれる行政書士は会社に関する知識を網羅しています。

そのため、資金調達の方法など、ほかの士業でも分からない部分を相談することができます。

司法書士に依頼をすると基本的に書類の作成から登記まですべて行うことになるので、資金を抑えたいという方は書類作成、電子定款の作成のみを行ってくれる行政書士を選びましょう。

またその際は、ほかの士業と結びついていることと会社に関する法務を理解している行政書士を選ぶようにし、会社設立後も相談できるようにしましょう。