会社を作ろうか悩んでしまう理由の1つが「資金調達」です。金融機関から融資を受けるつもりで会社を設立したとしても審査が通らなければ意味がありません。
しかし、起業したばかりでも融資を受けることは十分可能です。融資は事業内容や資金力など、いくつもの条件や内容を審査したうえで融資をするか決めています。
今回は会社を設立したばかりでも融資を受けることができる方法や創業融資の手続きの流れを説明します。
ちょっとしたミスで審査が落ちてしまうこともあるのでしっかりと読んで理解をしましょう。
目次
(1)会社設立で必要な資本金は融資で調達してはいけない
まず初めに会社のステータスを決める判断として「資本金」があります。
資本金が高いと、その会社はそれなりに儲かっている、経営状態が良いという判断を受けやすくなります。
それではその資本金を融資で補填してもよいのでしょうか?結論から言えば絶対に「ダメ」です。
その理由は「見せ金」に該当する可能性が高いためです。見せ金というのは、発起人が金融機関などから融資を受け、それをあたかも自己資金として資本金に組み入れることをいいます。
これは債権者を欺く行為なので、完全な「違法行為」となります。この見せ金に関しては、会社法第52条の2でも定められています。
会社法第52条の2発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。
一 第34条第1項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
※見せ金が見つかった場合はその金額すべてを支払わなくてはなりません。
ほかにも友達から払込証明書を作るために通帳に記帳する一瞬だけ現金を手渡して借りて、入金し、記帳後すぐにおろして返す行為も「見せ金」です。
見せ金は会社登記簿謄本にあたかも資本金があるように見せる行為なので、「公文書偽造」の罪に問われる可能性があります。
そのため、資本金に関しては自己資金で出資するようにしましょう。
(2)会社設立直後は銀行は融資してくれない
融資先の候補の1つに銀行がありますが、銀行は設立したばかりの会社にはなかなか融資をしてくれません。
会社設立直後だと貸してくれないワケ
銀行が設立したばかりの会社に融資をしてくれない大きな理由は「大口取引ではない」という理由があります。
銀行は全国に600社以上ありますが、特にみずほ銀行や三井住友銀行などのメガバンクと呼ばれる銀行は原則「大口取引」しか受け付けていないので、設立したばかりの会社はほぼ融資が通りません。
各金融機関ごとにみる融資の難易度
メガバンクは融資が下りないと説明しましたが、銀行や金融機関の中で創業融資の審査が厳しい順番に並べてみました。
難易度(高):都市銀行(みずほ銀行やりそな銀行などの大手銀行)
先ほども説明しましたが、大口取引メインなので、話すら聞いてくれないことが多いです。
難易度(中):地方銀行(横浜銀行・きらぼし銀行・足利銀行など)
地方銀行とは各都道府県に本店を構えており、地方のお客さんをメインに取引をしている銀行です。
都市銀行よりは難易度が低く、門前払いはされません。しかし、それでも会社として一度も確定申告を終えていない会社は審査が通らないと思っていいでしょう。
難易度(中):ネット銀行(楽天銀行・住信SBIネット銀行など)
地方銀行とほぼ変わらないのがインターネット専用銀行です。これらの銀行は一応ビジネスローンという事業者向けの融資は用意してありますが、創業して間もない会社の場合は審査が厳しいです。
難易度(小):信用金庫・信用組合(横浜信用金庫・城南信用金庫など)
信用金庫・信用組合は営業地域が一定の地域に限定されていて、借入をするためには出資をして会員になる必要があります。
銀行のような利益を審査基準にするわけではなく、地域の活性化を目的としているため、会社の近所の信用金庫などに一度相談に行くのもよいでしょう。
(3)会社設立直後に頼れるのは「日本政策金融公庫」と「信用保証協会」
銀行や信用金庫などの金融機関をご紹介しましたが、創業融資としてはどこも審査が厳しく、融資を受けることが厳しいです。
しかし、中には起業者を応援している金融機関が2つあり、1つ目は「日本政策金融公庫」、2つ目は「信用保証協会」です。
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫は政府が100%出資をしており、民間事業である銀行のように利益を優先しません。
特に創業したばかりで中々資金を調達できない事業者に向けて全国15か所で創業支援セミナーを定期的に開催しており、創業者向けの融資制度を積極的に提供しています。
銀行などのほかの金融機関と異なり、事業計画がしっかりしていれば自己資金が少なくても融資が可能で、「無担保」「無保証人」で最大3,000万円まで融資を受けることができます。
設立後で資金が一番少ないときでも本当に頼れる金融機関です。
信用保証協会
信用保証協会とは、信用保証協会法に基づいて作られた中小企業や小規模事業者に向けて資金調達の援助をしてくれる公的機関です。
こちらは信用保証協会が直接融資をしてくれるわけではなく、信用保証協会を介してほかの金融機関からの融資を受けるというものです。
万が一返済が滞った場合でも、信用保証協会が代わりに金融機関に借入金を弁済します。
また、日本政策金融公庫と同じく原則無担保無保証人で借りることができます。
(4)創業時の融資でオススメなのは「新創業融資制度」と「制度融資」
創業者の融資支援として、日本政策金融公庫と信用保証協会をご紹介しました。
次はそれぞれの融資サービスの中で創業者向けのおすすめ制度があり、それが「新創業融資制度」と「制度融資」です。
「新創業融資制度」とは
新創業融資制度は日本政策金融公庫が取り扱っている融資制度の1つで起業したばかりの創業者におすすめのプランです。
利用できる人 | 1.創業してから2期を終えていない 2.融資等を受けて事業を始めようと考えている 3.自己資金要件として1期目の人は自己資金が創業資金総額の10分の1持っている※ |
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融資資金の使い道 | 新たに始める事業の設備資金や運転資金 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
返済期間 | 運転資金7年以内設備資金20年以内 |
利率 | 2.01~2.80%の間 |
担保・保証人 | 原則不要 |
※前の勤務先から独立して同じ事業を始めようとしている場合は、10分の1の自己資金要件が不要になります。
「制度融資」とは
制度融資とは、信用保証協会が提供している政府系の融資制度です。制度融資の最大のメリットは一般の銀行からの直接融資よりもはるかに審査のハードルが低いという点です。
それもそのはず、信用保証協会が創業者の借入金の保証人のようなものになっているため、銀行からすれば、貸し倒れの心配がなくなるためです。
次に金利がとても安く、1.0~3.0%で設定されています。
(5)融資の審査では会社設立以前の行動も見られてしまう
日本政策金融公庫や信用保証協会の審査が比較的緩いとはいえ、審査に落ちる人もいます。その原因の1つとして、起業する前の行動に問題がある可能性があります。
「面接のときにしっかり話していればいいのでは?」と思う人もいるかと思います。確かに事業の内容をしっかりと説明できない場合は心証が悪くなってしまうこともあります。
しかし、印象よりも審査を通すか判断基準に影響してします行動を過去に行っているかもしれません。
日本政策金融公庫の審査を行う場合、個人の信用情報を必ず調査されます。無担保・無保証人でも融資を受けられるわけですから、当然とも言えます。
その時にたとえば銀行でのカードローンの残債務が残っている・過去のキャッシングでうっかり1~2回入金の忘れによって滞納扱いされていた場合、審査響きます。
借り入れだけではありません。口座の引き落としではなく、納付書による公共料金や住民税などの税金をつい払い損ねてしまっていたことはないでしょうか。
このように支払いの遅延があることは審査の際に提出する通帳や数か月の支払明細書から金融公庫側は把握することができます。
これらの行動は審査基準1つでしかありませんが、支払いに関する遅延と、債務が残っている状態というのは審査に響きます。
(6)融資を受ける場合、自分で自己資金を用意しないといけない
先ほど説明した日本政策金融公庫の自己資金要件の例外(前職と同じ事業を行う)に該当しない場合は融資希望額の10分の1の自己資金を用意しなければなりません。
1,000万円の融資を受けたくとも自己資金が100万円すぐに用意できないのであれば、半年~1年前から毎月少しずつ起業資金を貯めましょう。
起業資金を少しでも貯める方法はいくつかあります。融資を受けなくても良いくらい貯められるのであればそれが1番ですが、少しでも融資が通りやすくするために貯金をしましょう。
独立前から先取貯金をする
まず大前提として、自己資金が全くない状態で脱サラして起業をするのは絶対にやめましょう。
融資が絶対に通る保証もなく、生活資金を減らすことになって、万が一審査に落ちてしまったら成す術もありません。
ま将来的に独立するといくビジョンがあるのであれば、給料を先取貯金しましょう。
先取貯金とは、給料をもらった瞬間にあらかじめ決めておいた1か月やりくりするためのお金以外をすべて別の口座に移し、触らないようにすることです。
貯金ができない人の典型的なパターンとして、給料を月末までに数万円残して、貯金しようと考えていることです。このような発想の人は貯金できないない人が多いです。
タンス貯金はダメ
昔によくいわれていた「タンス貯金」はつまり、銀行口座にお金を入金せず、現金で手元に持っているパターンです。
いざ融資を受けるために一括して現金を口座に入金したり、ありえないと思いますが、ためたお金を持ち出して現金をみせたりする行為はやめましょう。
タンス貯金は皆さんが一生懸命貯めたお金かもしれませんが、審査をする側からすれば、どこから出てきたのかわからないお金です。
いわゆる「見せ金」の可能性を考えられてしまいます。自己資金がこれだけあると説明しても、審査の担当者は融資を受けるために一時知り合いから借りたのではないかと感じてしまします。
お金を貯める場合はたとえ面倒でも自己資金用の口座に毎月少しずつ入金しましょう。
ある程度資金がある人は再就職手当を利用する
少しずつ貯金をして、あともう少しで自己資金が貯まるという人は、最後の後押しとして「再就職手当」をもらいましょう。
再就職手当とは今の仕事を退職した後に、失業保険の給付を受けつつ、再就職(開業も含む)をすることで、半年ほど普及される予定だった失業保険の給付金を一括して受け取ることができます。
例えば失業保険の基本日当手当は8,000円の場合で給付日数が残り60日あれば、「8,000×60日×0.6=288,000円」の金額を一括して受け取ることができます。約1か月分の給料ほどですが、自己資金の足しにしてください。
(7)「新創業融資制度」と「制度融資」に落ちたら他の融資はほぼムリ
この2つの融資制度は本記事でおすすめしている通り、起業者が1番融資を受けやすい制度です。
返済能力や営業を重視するほかの金融機関よりもはるかに審査に通りやすいため、万が一こちらの2つの融資に落ちてしまった場合、ほかの融資は受けられないと思ってください。
審査に落ちる原因
審査に落ちる原因のいくつかは先ほど説明しました。残債務が残っている場合は、毎月しっかりと返済していることと、残債務が残り半年ほどで完済できるまでは頑張りましょう。
税金や公共料金を滞納するのはもってのほかです。支払い能力はあるのにうっかり遅延してしまった場合はその生活態度から改めましょう。うっかりのミスで将来の事業ができなくなるのはもったいないことです。
ほかに審査に落ちる理由としては「事業計画があいまい」である場合です。窓口に融資希望の旨を伝えると、申し込むための手引きや事業計画書のテンプレートをもらうことができるので、融資の使い道と返済ビジョンをしっかりと考えましょう。
融資の話が進んでいくと、担当者と面談を行いますが、その時に自分の事業を丁寧にかつ正確に伝えることが必要です。
事業内容に自信がなく、心配されるようでは話になりません。印象をよくするために自信をもって話すことが大切です。
ほかにも事業計画書を埋めた後におすすめなのが、PowerPointやWordなどでプレゼン資料を作っていくことです。
言葉ではうまく伝えられなかったとしても資料をしっかり作っていれば担当者はどんな事業を行おうとしているか明確に理解することができます。
再申請は最低半年後
クレジットカードと同じで審査に落ちてしまってもすぐに再申請を行わないようにしてください。
審査に落ちる人は大体どこが悪かったのか、実感できていないことがあります。借入も支払い遅延もしていない場合は明らかに事業計画書の内容です。
もし自分で判断がつかない場合は友人などに聞いてもらうのも1つの方法です。半年という期間は短いようで長いです。創業したばかりの事業者からすれば半年の営業実績は融資担当からすれば再審査の大きな判断材料になります。
一度落ちてしまった場合は、実際に事業を行って利益が十分出ていることを証明しましょう。
会社設立後に活用できる「新創業融資制度」と「制度融資」の流れ
最後に創業者向けの2つの制度の手続きを説明します。融資を受けたい方はぜひ参考にしてください。
「新創業融資制度」の申込みの流れ
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の手続きをご紹介します。
申し込みセットを請求する
まずはお近くの日本政策金融公庫の窓口に行くか、日本政策金融公庫のホームページからダウンロードしましょう。
必要書類に記入し送付
借入申込書と創業計画書を記入例に沿って記入します。創業計画書は提出すると返却されないので、コピーをするか、Excelで入力してデータを保存してください。
創業計画書の内容は面接で必ず聞かれますので、面談までの期間に設備資金と運転資金、返済計画の金額をしっかりと説明できるようにします。
面談
この段階ではよっぽどのことがない限り面談は行います。身なりを整えて、落ち着いて担当の方と話しましょう。
聞かれることは事業計画書の内容と、実際にどのように収益を稼いでいくかを自分の言葉で説明します。
審査結果
融資が下りると担当者から電話がきます。融資の金額と初日の振込日をうかがって借用書や入金口座などを記載する書類が送付されるので、間違えずに記入しましょう。
融資
書類が日本政策金融公庫に到着してから数日で指定口座に融資金額が振り込まれます。ここまでのかかった日数は大体1か月ほどです。事業資金として将来のために運用してください。
「制度融資」の申込みの流れ
信用保証協会の制度融資は直接融資ではないため少し手続きが変わります。
申し込みセットを請求する
制度融資を利用するには、①住んでいる自治体からの紹介②金融機関に依頼③信用保証協会に依頼の3つのパターンがあります。
おすすめは①か③ですが、特に①は自治体からの紹介なので審査が通りやすいというメリットがあります。
その方法にするかは一度信用保証協会に問い合わせて話を聞いてから選びましょう。
必要書類に記入し送付
依頼方法によって書類は変わりますが、必要書類を整えて申請をします。
面談
信用保証協会の面談で一番詳しく聞かれるのは、事業内容をしっかりと理解し、説明できるのかということです。これは事業を理解し、収益を得るために行動できるのかを判断しています。
審査結果
審査が通ると保証協会は銀行に対して、「保証します」という承諾書を送ります。銀行はこの書類を担保に融資を受け付けてくれます。
銀行からの契約書
融資を実行するために金融機関から契約書が届きます。指定の箇所に署名、押印をして書類を送り返します。
融資
書類が金融機関に到着してから数日で指定口座に融資金額が振り込まれます。大体ここまでで2~3か月かかります。
まとめ:会社設立したら「新創業融資制度」と「制度融資」を利用しよう
今回は起業してすぐの人でも受けられる融資制度をご紹介しました。
何度も確認しますが、融資を受けたいと思った半年以上前から自分の行動に問題がないかをもう一度見直してみましょう。
またなぜ融資が必要なのか、事業の内容をしっかりと確認し、自信をもって相談に行ってください。