作成日:2020.10.26  /  最終更新日:2020.12.11

【5社を比較検証】会社設立を司法書士に依頼した場合の費用相場

会社を設立するときに依頼する専門家としておすすめなのが司法書士です。会社の設立は書類をすべてそろえた後に「登記」を行う必要がありますが、司法書士はその登記のプロフェッショナルです。

自分で会社の設立の手続きを行うことは可能ですが、書類の作成の手間や時間を考えたときに、本当に自分で行うことがよいのかよく考えることが大切です。

しかし、今まで登記を行ったことがない人からすれば司法書士がどういう存在なのか分からないかもしれません。

今回は司法書士に会社の設立の手続きを依頼したときにどのくらいの費用がかかるのか、そして司法書士が行うことができる業務について詳しく解説します。

司法書士は会社設立のプロフェッショナル

まず司法書士について簡単に説明します。

司法書士と聞いてもあまり聞きなれないかもしれませんが、司法書士は登記手続きのプロフェッショナルです。弁護士が大きな病院であれば、司法書士は町のお医者さんというイメージです。

会社の設立登記というのは簡単に言うと「会社を第三者に認識させる」手続きというイメージを持ってください。

例えば土地や家を購入したときに、不動産登記を行いますが、これは「この土地は購入者のものなので、ほかの人が勝手に使ってはだめですよ」ということを周りに公示することを指します。

会社も同じく、設立登記を行うことで初めて法人格を持つことができます。法人格を持てば、会社名義で様々な契約することができ、例えば会社名義の銀行口座を作ることが可能になります。

このような登記手続きを専門に行っているのが司法書士です。

司法書士に会社設立した場合の費用(報酬)相場

司法書士に会社の設立の手続きを依頼した場合の報酬の目安は以下の通りです。司法書士は報酬を自由に決めることができるので、各事務所の報酬や業務内容(サービス)を詳しく調べることが大切です。

株式会社と合同会社を例に、一般的な報酬の目安は以下の通りです。

株式会社 5万~15万円
合同会社 3万~10万円

会社ときくと「株式会社」というイメージがあるかもしれませんが、会社には多くの種類があり、合同会社はそのうちの1つです。株式会社の小さい版という認識で構いません。

それぞれに実費として登録免許税(株式会社であれば最低15万円、合同会社であれば最低6万円)と定款認証費用(株式会社のみ)の5万円がかかります。

ほかにも一般財団法人やNPO法人といった少し特殊な法人は書類や役員(理事)の人数規定も厳格になるので、報酬が高くなることがあります。

司法書士が会社設立でできること・できないこと

まず、司法書士は会社の設立の手続きに関してできないことはありません。

しかし、設立「後」に行う事業の種類によって、後日に別の届出や許可申請を行う必要があります。こちらでは会社の設立関係で司法書士ができることとできないことをご説明します。

できること

会社の設立登記申請

会社ができるまでの手順は以下の通りです。

  • ①作りたい会社の内容をヒアリング
  • ②ヒアリングにのっとった書類を作成
  • ③各書類に押印(印鑑証明書などを渡す)
  • ④公証役場にて定款認証
  • ⑤資本金の払込
  • ⑥登記申請
  • ⑦登記完了(会社設立)

※登記申請してからおよそ3日以内で登記完了します。
※ちなみに、会社の設立日は完了した日ではなく、登記の申請が受理された日になりなります。

司法書士はこの一連の流れをすべて行うことができます。比較対象として、同じ法律の専門家である行政書士は④の定款認証まで行うことができます。

原則登記は申請してから10~14日後に登記が完了します。しかし、平成30年3月12日から株式会社及び合同会社の設立のみ、登記処理のファストトラック化が発表されました。

ファストトラック化とは、ほかの登記業務よりも優先的に処理を行うという意味で、登記所の繁忙期にもよりますが、原則申請してから3日以内に処理を行うようになりました。

設立書類作成

司法書士は会社設立登記に関する書類をすべて一括して作成することができます。設立に必要な書類は主に以下の通りです。

  • 定款
  • 払い込みを証する書面
  • 就任承諾書
  • 印鑑届出書および印鑑カード交付申請書
  • 発起人決定書

 司法書士は会社の設立登記に関してはどの法律の専門家よりも詳しく、書類作成能力が長けています。

特に登記というのは、登記簿謄本と呼ばれる誰もが閲覧できる資料に情報が載ってしまうため、少しでも間違えると、法務局が申請を通してくれません。

また、申請内容に問題がなくても、皆さんの希望内容や誤字で申請が通ってしまった場合、無かったことにすることができません。

(例えば資本金が100万円のはずが10万円で登記されてしまった場合、手続き自体には不備がないため、そのまま会社の登記簿謄本には10万円と記載されてしまいます。修正は可能ですが、下線が引かれて、その下に修正後の内容が載ってしまうので、登記簿謄本が汚れてしまいます)

資本金の額 金10万円
金100万円 令和2年9月30日 変更

こちらは会社の登記謄本のうち、資本金の額の記載を抜粋したものですが、「金10万円」に下線が引かれています。

登記というのは、削除した部分に下線を引き、その下に変更事項が記載されるのですが、この下線の部分はそのまま登記簿に残ります。

ミスが多い登記簿謄本のことを登記簿が汚れているといわれることがありますが、ただのミスで登記簿謄本が汚れてしまうのは残念なことです。

確かに自分だけで設立登記を準備することはできないことではありません。インターネットで調べれば書式などは配布されています。

しかし、書式を自分の会社に合うようにカスタマイズするのは、簡単な話ではありません。書類の内容を理解していないと、必要ではない書類があったり、逆に必要書類が足りなかったりします。

会社の登記相談

役員の変更や住所の移転、資本金の額の変更など、会社の内容に変化があった場合は変更があった時から2週間以内(場合によっては長いことも短いこともあります)。に登記を行う必要があります。

登記をしないまま放っておくと、「登記懈怠」になり、罰金を請求されてしまいます。この場合、会社の設立当初から司法書士とつながっていると、すぐに連絡をとることができ、簡単な登記であれば即日登記申請を行うことができます。

例えば、役員の任期は最長で10年ですが、最後に登記を行ったのがいつかついつい忘れてしまいます。気が付いたら登記懈怠だった。なんてことも結構あります。

司法書士は担当した法人の任期を把握していることが多いため、登記懈怠を防ぐことができます。

ほかにも家族で会社を経営したいと考えている時に、株主を誰にすればよいか、親族間での争いが起こりそうな場合に、株式の発行についての相談や、株主の相続が起こってしまったときにも司法書士に相談することでスムーズに解決できます。

定款認証(電子署名)

基本的に司法書士は会社設立の手続きのすべてを行います。定款認証は業務の1つですが、株式会社を作るときは公証役場にて定款認証が必要です。

会社のルールブックである「定款」は作った日付を間違えると電子署名や印紙の貼り直しになってしまう可能性がある重要な書類の1つです。

定款認証には書面による紙定款とCD-ROMに入れる電子定款に分かれ、電子定款の場合は、電子署名まで行ってくれます。

「自分で電子署名を行えばもっと安くできるのでは?」と思うかもしれませんが、その電子署名に必要な機材が安くないため、1から揃えるのであれば司法書士にお願いするほうが安く済みます。

できないこと

会社を設立した後に、計画している事業によっては国や市区町村の許可を得ないとできない業務があります。これを「許認可」と言います。

例えば家を建てる「建設業」のうち建設業法に定められた工事を行う場合には、許認可を得ずに業務を行うと行政処分を受けてしまいます。

ほかにも司法書士は不動産業者と関わり合いが強いですが、不動産を扱う宅建業も許認可申請の1つです。

許認可申請は、司法書士が業務として行うことができません。もし許認可に該当する事業を行おうとする場合は行政書士に依頼をしましょう。

多くの司法書士は提携している行政書士がいるので、そのまま行政書士を紹介してもらうことができ、中には行政書士とダブルライセンスを取得してる司法書士もいるので、その場合は一括してお願いしましょう。

各司法書士事務所の会社設立代行サービスの費用

ここでは実際に司法書士事務所の代行サービスの内容と事務所に支払う費用(報酬)を比較してみます。「どんなサービスでいくらかかるのか」といったことがざっくりとイメージしましょう。

『なかむら司法オフィス』の費用

なかむら司法オフィスは500社を超える設立経験を持つエキスパートです。プランが3つあり、自分の費用に合ったプランや内容を選びましょう。

なかむら司法オフィスは会社設立の手続きをすべて代行しているだけでなく、会社の実印の作成も代行してくれます。

株式会社の場合

  エコノミープラン スタンダードプラン プラチナプラン
設立までの期間 4週間ほど 3週間ほど 3日以内
報酬 50,000円 78,000円 150,000円
出張面談 なし 要相談 あり
サービスの特徴   ・会社謄本、印鑑証明書取得 ・会社謄本、印鑑証明書取得
・特殊な登記も追加料金なし

LCC(持分会社の場合)

  エコノミープラン スタンダードプラン プラチナプラン
設立までの期間 4週間ほど 3週間ほど 3日以内
報酬 50,000円 68,000円 100,000円
出張面談 なし 要相談 あり
サービスの特徴   ・会社謄本、印鑑証明書取得 ・会社謄本、印鑑証明書取得
・特殊な登記も追加料金なし

なかむら司法オフィスの概要

名前 なかむら司法オフィス
代表 中村昌樹
区分 司法書士
住所 東京都千代田区神田神保町1-1 倉田ビル6階
電話番号 0120-940-617

『若林司法書士事務所』の費用

若林司法書士事務所は会社勤務で土日祝日しか時間が取れない人のために、土日祝日も無料相談を受け付けています。

対応地域は関東近郊としており、それ以外の地域でも相談によっては面談することが可能です。

株式会社の場合

報酬 38,000円
サービスの特徴 ・会社謄本、印鑑証明書取得
・特殊な登記も追加料金なし
・無料税務相談付き

LCC(持分会社の場合)

報酬 35,000円
サービスの特徴 ・会社謄本、印鑑証明書取得
・特殊な登記も追加料金なし
・無料税務相談付き

一般財団法人の場合

報酬 38,000円
サービスの特徴 ・会社謄本、印鑑証明書取得
・特殊な登記も追加料金なし
・無料税務相談付き

※資本金を現金ではなく、車などの現物出資が必要である場合は報酬が6万円上乗せされます。

若林司法書士事務所の概要

名前 若林司法書士事務所
代表 若林正昭
区分 司法書士
住所 東京都千代田区二番町5−2 麹町駅プラザ901
電話番号 03-6303-7811

『汐留司法書士事務所』の費用

汐留司法書士事務所は税理士法人や社会保険労務士法人などを束ねる汐留パートナーズの組織の1つです。

また、難しい特殊な法人の設立も安心して依頼できるのが特徴です。

株式会社の場合

設立までの期間 4日以上
報酬 110,000円
サービスの特徴(有料) ・会社謄本、印鑑証明書取得
・商号調査

LCC(持分会社の場合)

設立までの期間 4日以上
報酬 88,000円
サービスの特徴
(有料)
・会社謄本、印鑑証明書取得
・商号調査

一般財団法人の場合

設立までの期間 4日以上
報酬 110,000円
サービスの特徴(有料) ・会社謄本、印鑑証明書取得
・商号調査

汐留司法書士事務所の概要

名前 汐留司法書士事務所
代表 石川宗徳
区分 司法書士
住所 東京都中央区銀座七丁目13番8号 第2丸高ビル4階
電話番号 03-6264-2820

『司法書士法人 ふらっと』の費用

司法書士法人 ふらっとは千葉県内(成田・富里・佐倉等)を中心に会社の設立の手続きを行っている司法書士事務所です。事前予約をすれば土曜日も相談を受け付けてくれます。

株式会社の場合

  なっ得サポートプラン スピード設立プラン
設立までの期間 4週間ほど 3日以内
報酬 46,000円 61,000円
出張面談 要相談 要相談

司法書士法人 ふらっとの概要

名前 司法書士法人 ふらっと
代表 菊地 裕文
区分 司法書士
住所 四街道事務所:千葉県成田市郷部1252番地
成田事務所:千葉県四街道市鹿渡934番地25
電話番号 四街道事務所:0120-222-612
成田事務所:0120-054-489

『佐藤卓哉司法書士事務所』の費用

佐藤卓哉司法書士事務所は練馬区大泉学園駅から徒歩3分の場所にある司法書士事務所です。

株式会社の場合

設立までの期間 1週間
報酬 108,000円
出張面談 あり

LCC(持分会社の場合)

設立までの期間 1週間
出張面談 あり
報酬 108,000円

佐藤卓哉司法書士事務所の概要

名前 佐藤卓哉司法書士事務所
代表 佐藤 卓哉
区分 司法書士
住所 東京都練馬区東大泉1-34-8 本橋ビル202
電話番号 03-5935-9851

司法書士に払う会社設立費用相場の5万円~15万円は安い

司法書士の報酬は自由に決めてよいため、各事務所で金額が大きく変わります。会社設立の平均的な報酬は5万円~15万円ですが、報酬だけを見ると高く感じるかもしれません。

また、行政書士や税理士のように会社設立の一部しな行えないというわけではないので、原則書類作成から登記申請まですべて一括して行います。

「自分で申請はしたい」「定款のみ作ってほしい」といったサービスが基本的に受け付けていないのが特徴です。

しかし、前提として、自分で設立の手続きをするときに電子定款を作成するのは難しいため、紙定款をつくった場合は収入印紙が4万円かかります。

司法書士に依頼すれば当然電子定款になるため、4万円が安くなります。仮に報酬が5万円だとすればたった1万円でミスの無い書類と申請書が出来上がってくると考えることができます。

また、自分で手続きを行おうとすると、どうしても調べる時間が必要になります。会社の経営者であれば、司法書士に頼める仕事を自分で行うのは得策ではありません。

確かに自分で手続きを行うよりは初期費用が高くなってしまいますが 、その時間があるのであれば、人脈づくりや資金調達のために動くほうが会社の将来に大きく役に立ちます。

まとめ

今回は会社の設立のプロである司法書士がどのような業務ができるのか、手続きにかかる費用がどのくらいなのかご紹介しました。

専門家に頼むと、当然自分で会社を作るよりも初期費用が高くなってしまいますが、それでも数万円の差です。

そして皆さんにとって大切なことは会社の設立手続きではなく、「本業に専念する」ということです。起業する段階の時間は会社が今後大きくなるために必要で、とても貴重なのは言うまでもありません。

仮にその時間を会社の設立手続きに費やし、一生懸命書類を作ったとしても1つのミスで法務局に出向くはめになってしまうのは本当にもったいないことです。

ぜひ会社の設立手続きを司法書士に代行し、自分の時間を大切にしてください。