作成日:2020.10.28  /  最終更新日:2020.12.11

FX投資用に会社設立するメリット【25倍以上のレバレッジも可】

「FX投資用に会社設立するメリットが知りたい」

「メリットだけでなく、会社設立に伴うデメリットも把握したい」

「法人化すると25倍以上のレバレッジで取引できるって本当?」

当記事では、そのように思っている方向けに会社設立のメリット・デメリットについて解説します。

FX取引で安定的に利益が出せるようになると、「個人のまま取引を続けても良いだろうか…」と思われるかもしれません。

「今後も利益を出し続ければ高額な税金がかかるかもしれない、法人にする方が節税効果を見込めるのでは?」と考えるのは自然です。

実際、法人化によって節税効果を期待できますし、25倍以上のレバレッジで取引できるメリットもあります。

ただし会社設立に伴うデメリットも存在しますので、これから詳しく解説していきます。

当記事を読むことで、FX投資用に会社設立するメリット・デメリットだけでなく、いつどのようなタイミングで法人化すれば良いかが分かるでしょう。

FX投資用に会社設立する4つのメリット

まずはFX投資用に会社設立するメリットについて解説します。具体的には以下4つのメリットがあります。

  • 損益通算できる
  • 最大9年間損失を繰り越せる
  • 所得分散でき税金を押さえられる
  • 25倍以上のレバレッジで取引できる

それぞれ見ていきましょう。

損益通算できる

会社設立によって損益通算が可能になります。

損益通算とは、黒字の所得から赤字の所得を差し引くことを意味します。

所得の種類には事業所得や不動産所得などがありますが、個人事業主としてFX取引を行う場合は損益通算ができません。

一方、法人は損益通算できるので、FXで発生した赤字分を他の所得から差し引くことが可能です。

たとえば、法人のFX取引で100万円の赤字があり、不動産投資で200万円の黒字が出ている場合、200万円-100万円=100万円まで利益を圧縮できるということです。

結果的に差し引き後の100万円にのみ税金がかかることになります。

同じケースで個人は損益通算できないため、200万円の黒字に対して税金がかかります。

このような損益通算によるメリットを会社設立によって享受できます。

最大9年間損失を繰り越せる

会社を設立すれば最大9年間、損失を繰り越すことができます。

安定的にFX取引を行うことが大切ですが、取引高の急増などで大きな損失を被るリスクもあるのではないでしょうか。

その場合、個人で繰り越せる期間は最長3年ですが、法人は9年間の繰り越しが可能です。

初年度に900万円の赤字が発生した場合、翌年度から100万円ずつ黒字が続いても、9年間は差し引ける(利益を0にできる)ということです。

所得分散でき税金を抑えられる

所得の分散によって税金を抑えられるのも法人のメリットです。

たとえば自身を代表取締役、妻を取締役に入れて役員報酬を払えば、自分1人だけに役員報酬を支払うよりも税金を低くできます(役員報酬は経費に算入できます)。

妻以外に自分の両親や、妻の両親を役員に加えることができれば、さらに節税効果を見込めます。

役員を増やすことで社会保険料が増えるのは注意点ですし、両親が年金を受給していれば、役員報酬との調整で年金が減るリスクはあります。

実際に役員構成を考える場合は、事前に税理士や社労士に相談すると良いですが、所得分散によって税金を抑えられるのは会社設立の大きなメリットでしょう。

25倍以上のレバレッジで取引できる

日本の法律によって、個人でFX取引を行う場合のレバレッジは25倍までと決められています。

25倍以上のレバレッジで取引するには、海外FX会社で個人口座を開設するか、もしくは法人口座が必要になります。

「法人は面倒だから海外で個人口座を開設しよう」と考える方もいますが、詐欺的な運営を行っている海外FX会社もあるのでリスクが高いでしょう。

インターネットで情報収集しても、本当に安全な海外FX会社なのかどうかは分かりません。

そのため25倍以上のレバレッジでFX取引を行うには、国内FX会社で法人口座を開設するのが現実的です。

国内のFX会社は金融庁の管轄下にあるので、問題が生じた際は金融庁に相談できますし、海外で個人口座を開設するよりも安全でしょう。

法人口座に適用される2020年10月23日 16:30時点のレバレッジは下記のとおりです。

通貨ペア 適用開始日 2020/11/2 適用開始日 2020/10/26
USD/JPY 98.03(倍) 98.03(倍)
EUR/JPY 81.3(倍) 81.3(倍)
GBP/JPY 64.51(倍) 64.93(倍)
AUD/JPY 56.17(倍) 56.17(倍)
NZD/JPY 59.17(倍) 58.82(倍)
CAD/JPY 71.94(倍) 71.94(倍)
CHF/JPY 95.23(倍) 95.23(倍)
ZAR/JPY 37.45(倍) 37.45(倍)

FX投資用に会社設立する6つのデメリット

ここからFX投資用に会社設立するデメリットについて解説します。具体的には以下6つのデメリットがあります。

  • 会社設立に費用がかかる
  • 社会保険の加入義務が生じる
  • 赤字が出ても法人税7万円がかかる
  • 自由にお金を使うことができない
  • 含み益でも課税される
  • 決算申告が必要になる

それぞれ見ていきましょう。

会社設立に費用がかかる

法人設立に伴って費用が発生するのはデメリットと言えるでしょう。

主な法人に株式会社と合同会社がありますが、株式会社で約30万円、合同会社で約20万円の実費がかかります。

実費には、定款の認証手数料・定款の謄本手数料・設立にかかる登録免許税・収入印紙代などがありますし、会社の実印も必要です。

スムーズに会社を設立するには、司法書士や行政書士のような専門家に依頼することになりますが、その場合は専門家への費用(10万円~)が追加でかかります。

そのため、総額で株式会社40万円、合同会社30万円は必要になるでしょう。

一方、個人事業はスタート時に費用がかかりません。税務署に開業届を提出すれば始めることができますので、同じイメージで会社設立すると費用に驚くかもしれません。

社会保険の加入義務が生じる

社会保険の加入義務が生じるのもデメリットの1つです。

社会保険には健康保険と厚生年金保険がありますが、社長1人の会社でも加入が必要です。

「従業員がいないから社会保険は必要ない」と思っても、法律で加入は義務付けられています。そして社会保険の保険料は、個人時代の国民健康保険・国民年金よりも高額になります。

健康保険と国民健康保険はそこまで保険料に差がないかもしれませんが、厚生年金保険は国民年金よりも確実に高くなります。と言うのも、厚生年金保険への加入=国民年金の第2号被保険者にもなるからです。

国民年金保険料と共に厚生年金保険も支払う必要がある、とイメージすると良いでしょう。

サラリーマンやOLは勤務先の社会保険に入ると、会社と自分で保険料を折半しますが、社長1人の会社は全額自己負担です。

一昔前なら「1人社長は社会保険に加入しなくても指摘されない」と言われましたが、マイナンバー制度の現在は加入が厳しくなっています。

また社会保険に加入するには、社会保険新規適用届を年金事務所に提出する必要があります。

会社設立ほど複雑な手続きではありませんが、書類作成と共に添付書類を揃える必要がありますので、手続きに慣れていなければ時間がかかります。

その場合は社会保険労務士(社労士)に依頼するのが一般的ですが、依頼することで新たな費用がかかるのもデメリットでしょう。

赤字が出ても法人税7万円がかかる

会社設立すると赤字でも法人税の均等割が約7万円かかります。

個人事業では黒字にしか税金がかからないので、赤字でも課税されるのはデメリットと言えるでしょう。

自由にお金を使うことができない

FX取引で資金が増加しても、法人は自由にお金を引き出すことができません。法人と個人は別々な存在として認識されるからです。

資金の移動は役員報酬などに限られますし、どうしてもお金が必要な場合は法人から個人に貸し付ける形になります。

あくまでも貸付なので返済する義務があるので、ほぼ意味がない行為と言えるでしょう。

一方、個人事業は役員報酬という概念がないため、FX取引で利益が出れば、その分を簡単に引き出すことができます。

個人事業は口座も1つで良いですが、法人の場合は法人口座と別枠で考える必要がありますから、その点はデメリットではないでしょうか。

含み益でも課税される

法人化すると含み益にも税金が発生します。含み益とは、まだ利益になっていないものの、売却によって見込める利益を指します。

資産の販売などの含み益には税金がかかりませんが、金融資産の短期売買は課税されるため、株式だけでなくFX取引の含み益にも税金が発生します。

決算申告が必要になる

会社設立によって決算申告が必要になります。

決算申告の具体的な流れは会計ソフトによっても変わりますが、共通しているのは非常に複雑ということです。

総勘定元帳の勘定科目を集計して仕分ミスを確認する必要がありますし、試算表の作成や財産の調査、減価償却などの決算事項をまとめなければなりません。

その後に清算表・決算書を作成しますが、貸借対照表や損益計算書の知識がなければ難しいでしょう。

個人事業主の白色申告だけでなく、青色申告と比較しても、法人の決算申告は複雑です。

少々簿記の知識があっても、自分1人で決算申告を行うのは困難ではないでしょうか。

たとえ書類作成が可能でも、ミスがあれば致命傷になりかねません。

間違って税金を多く申告しても、基本的に税務署は指摘してくれないので、申告したとおりの税額を支払うことになります。

逆に少なく申告した場合、税務署の指摘によって修正が必要になりますし、悪質と判断されれば追徴課税が発生するリスクもあります。

本業のFX取引を行いながら、税務関係の書類まで作成するのは非現実的ですから、税理士事務所に相談すると良いでしょう。

税理士のサポートを視野に

税理士事務所のサポートを視野に入れることで、スムーズに決算申告が進みますが、事前に顧問契約を結ぶ方が効率的です。

決算申告の直前に慌てて税理士を探しても、日々の帳簿付けがベースになければ時間がかかります。

決算とは、収益と費用、資産と負債を計算した上で、損益と財産を確認する手続きですから、余裕を持った準備が大切です。

たとえ決算申告のみ税理士に依頼する場合も、「どのような会計ソフトを利用すれば良いのか」や「会計ソフトの注意点には何があるのか」は早めに確認しましょう。

税理士に依頼するとコストはかかりますが、税金関係の手続きを任せることで本業に集中できるのは大きなメリットではないでしょうか。

また、余談になりますが、税理士事務所に手続きを依頼しても、実務を税理士資格者が行うとは限りません。

事務所によっては税理士資格者が所長のみ、もしくは所長以下数名で、大半が無資格者というケースがあります。

それでも手続きに慣れた優秀な職員が書類作成を行うでしょうし、最終的にはその事務所の税理士のハンコが必要になりますから、大きな問題ではないでしょう。

しかし「税理士事務所に依頼すれば、全て税理士が書類を作成してくれる」というイメージでいると、担当者が資格者でない場合にギャップを感じることになりかねないので注意してください。

このことは税理士に限らず、司法書士・行政書士・社会保険労務士の事務所に依頼しても同様です。

FX投資で会社設立しても良い人の特徴

会社設立のメリット・デメリットを解説しましたが、それを踏まえて会社設立しても良い人の特徴をお伝えします。

設立に伴う費用を賄える利益を出せる

まずは設立に伴う費用を賄える利益を出せるかどうかが重要です。

前述したように株式会社も合同会社も設立するだけでコストがかかります。

設立後も役員報酬・社会保険料・法人税・税理士報酬など様々な費用がかかりますし、赤字の年度でも7万円の法人税を払わなければなりません。

そのようなコストを負担するためには、FX取引で安定した利益を確保する必要があるでしょう。

個人の時よりもFXの利益が下回るようなら、法人を維持できない可能性が高くなります。

実際、株式会社を設立したものの、赤字が続いて個人に戻る方もいますが、法人の精算手続きは設立同様に費用がかかります。

そのため、自身のFX取引を冷静に判断して、「今後も安定した利益を出せるかどうか」を考えてみてください。

そして個人よりも法人化の方が良い、会社を続けられる自信もある、という場合は前向きに法人設立を検討すると良いでしょう。

元手の資金を用意できる

会社設立には一定額の資本金が必要な時代もありましたが、現在は資本金1円で法人化できます。しかし現実的に資本金1円では維持ができないでしょう。

同じ投資でも、不動産投資の場合は所有物件を担保に入れて融資を受けられる可能性がありますが、FXで設立初年度から融資を受けるのは現実的ではありません

そのため元手の資金を用意する必要がありますし、そもそもFX取引を行うには口座に一定の資金を入れる必要があるでしょう。

個人の場合はすぐに資金調達しなくても維持費用がかかりませんが、法人はコストが掛かるため、最初から十分な資金を用意することが大切です。

まとめ

以上、当記事ではFX投資用に会社設立するメリット・デメリットを解説しました。

会社を設立することによって、損益通算・最大9年間の損失繰り越し・所得分散・25倍以上のレバレッジというメリットがあります。

損益通算と損失繰り越し、所得の分散は全て節税効果を期待できるメリットですし、法人口座の開設によって高レバレッジで取引できるのも魅力でしょう。

一方で会社設立の費用・社会保険の加入義務・赤字でも法人税・含み益でも課税・決算申告が必要なのはデメリットです。

どのデメリットも全てコストが関係しますが、特に大きいのが設立費用・社会保険・含み益の課税ではないでしょうか。決算申告を税理士事務所に依頼すれば、さらに費用が発生します。

事業内容や担保によっては金融機関から融資を受けることもできますが、FX投資会社が公的な金融機関から融資を受けるのは現実的ではありません。

そのため設立費用を自分で用意する必要がありますし、設立後のランニングコストについても余裕を持った準備が必要になるでしょう。

FX取引で安定した利益を見込めない場合や、そもそも大きな利益にならないようなら、個人事業を維持する方が無難かもしれません。

しかし取引量と利益が大きかったり、客観的に今後も安定した取引が可能なら、FX投資用に会社設立する方がメリットは大きいのではないでしょうか。

大切なのはメリットとデメリットを比較して、自身にとってどのような選択肢が最適かを考えることです。

そのための情報を当記事ではお伝えしましたが、税金面は税理士、社会保険は社会保険労務士のような専門家と相談しながら、法人化を考えてみてください。