不動産業は新しく始めるのはそれなりに資金が必要ですが、1回の取引で大きな利益を得ることができるため、独立開業に向いています。
しかし、不動産業を立ち上げたいと考えているけれど、開業資金が具体的にいくら必要なのが分からないという人は多いのではないでしょうか。
本記事では不動産業を始めるための会社の設立の方法や手順、費用がいくら必要なのか解説します。また、できるだけ少ない資金で開業できる方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産業として会社設立するには最低300万円必要
不動産業を行うために必要な資金は大きく分けて「必要資金」と「運転資金」の2つに分けて考える必要があります。
運転資金は会社の規模によって変わりますが、半年分を目安にすると必要な資金は合計で「300万円~500万円」程度かかります。
必要資金(200万円) | 株式会社設立費用 保証協会入会金 宅地建物取引業免許費用 |
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運転資金(100万~300万円) | 光熱費 備品等の消耗品税理士弁護士等の顧問料人件費広告・宣伝費事務所家賃 |
宅建業免許の取得には事務所の設置が条件
宅建業を営業することにおいて、事務所の存在というのは大変重要な意味を持ちます。
免許審査を行う各都道府県の担当は、事務所の一般的な解釈として、「事務所は宅建業の業務を継続的に行うことができ、社会通念上も事務所として認識される程度の独立した形態を備えていることが必要」と規定しています。
例えば、テント張りやホテルの1室は認められず、1つの部屋で共同で使用する場合も原則は認められていません。(こちらは例外があります)。
実際に宅建業の免許申請を行う際には、事務所内の写真を5~8枚程度撮り、申請書に貼り付ける必要があります。
事務所の設置・入居費用は0円~100万円
借りるオフィスビルの初期費用は様々ですが、事務所を借りるには、「保証金」「前家賃」「仲介手数料」「保証会社保証料」「火災保険料」などの費用がかかります。
また、地域によっても大きく異なります。都内の土地が高いところで借りれば、100万円を超え、地域密着として、地方で事務所を構えるのであれば、20万~30万でも借りることができます。
自宅やレンタルオフィスを利用すれば費用を抑えられる
事務所の費用をできる限り抑えたいという場合は、自宅やレンタルオフィスを借りるのがおすすめです。自宅であれば0円で事務所を構えることができ、レンタルオフィスであれば月々5万円から、都心でも10万円かからず借りることができます。
しかし、注意点として、自宅やレンタルオフィスを事務所として構えるには、宅建業を営業するための事務所の規定をクリアする必要があります。
宅建業を営業するために必要なことの1つに「お客さんが出入りできなければならない」という決まりがあります。
自宅が事務所であれば問題ありませんが、レンタルオフィスの場合、規約の中に外部の人間を出入り不可にしている場合があります。その場合はレンタルオフィスを使えないので、そのような規定がないレンタルオフィスを利用しましょう。
2つ目は自宅で開業する場合は、「玄関と別の入り口を設けなくてはならない」という点です。これは宅建業を自宅と切り離し、独立した事務所として機能しなくてはならないという理由から決められています。
免許申請の申請書には、事務所の間取りを作図する必要がありますが、自宅の場合はしっかりと玄関とは別に入り口があることを書かなくてはなりません。
会社設立の手続き:費用は6万円~20万円
宅建業は個人事業主でも開業することができますが、社会的信用や節税などの観点から会社を設立するのがおすすめです。会社を設立するための費用は会社の種類によって6万円~20万円かかります。
株式会社なら法定費用は20万円
株式会社を一番安い方法で設立した場合にかかる費用は「定款認証代約5万円」、「登録免許税15万円」で合計20万円です。
合同会社なら法定費用は6万円
合同会社の場合、定款認証が不要であるため「登録免許税6万円」のみで設立することができます。
これらはあくまで必ず支払わなくてはならない「法定費用」のみで、これ以外にも会社の実印や会社の体裁保つためにまとまったお金である「資本金」が必要になります。
電子定款にすると4万円が節約可能
先ほど説明した会社設立の費用は電子定款を採用した金額となっています。電子定款は定款を電子化し、CD-ROMなどに入れたものを言います。
電子定款ではなく、紙による定款を作成した場合には、4万円分の収入印紙が必要になるため、設立の費用は10万円~24万円になります。
宅地建物取引業免許の申請:費用は3万3千円
宅地建物取引業免許を取得するには、会社の本店所在地管轄の地方整備局に申請する必要があり、その際に払う費用は3万3千円です。
なお、異なる2つの都道府県で宅建業を営業する場合は9万円かかります。
宅地建物取引業免許が必要になるワケ
宅建業を営業するためには必ず「宅地建物取引業免許」が必要になります。これは「宅建業法12条」で規定されており、免許がないものが宅建業を営んでいた場合は1番罪が重い「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処す」と規定されています。(宅建業法79条)
宅地建物取引業免許の費用と支払い方法
宅地建物取引業免許の申請書を地方整備局に持参すると、その場で誤字脱字をチェックされます。
内容に問題がなければ、近くにある手数料収納機と呼ばれる自販機で3万3千円とかかれたシールを現金で購入し、担当の人に渡します。
引用:東京都宅地建物取引業免許申請の手引き
免許取得を行政書士に代行してもらう場合は5万円~
宅地建物取引業免許は許認可申請なので、行政書士に代行してもらうことができます。
行政書士は委任状を作成し、申請書の1ページ目に行政書士事務所の社判を押すことによって、書類の作成から申請、訂正を行います。
行政書士に依頼をした場合の報酬の相場は「5万円~10万円」です。
保証協会への加入
免許の審査が通ると、本店所在地あてに「免許通知」と呼ばれるはがきが届きます。この免許通知が届いてから3か月以内に営業保証金の供託または保証協会に加入し弁済業務保証金の納付をする手続きを行う必要があります。
宅建業を行うほとんどの業者は保証協会に加入します。
保証協会の加入が必要なワケ
保証協会は国土交通大臣から指定を受けている公益社団法人で、「全国宅地建物取引業保証協会」と「全日本不動産保証協会」の2つがあり、どちらに加入しても問題ありません。
保証協会に加入するメリットは、1つ目は供託金がとても安いという点です。保証協会に加入せず、営業保証金を供託する場合は「1000万円(支店追加は+500万円)」を用意しなくてはなりません。
それに比べて保証協会に加入した場合は、この保証金が「60万円(支店追加は+30万円)」の納付で済むため、資金を用意することがとても楽になります。
2つ目は「レインズ」を利用できる点です。レインズとは、保証協会に加入している業者のみが使うことができる、全国の不動産情報が載っているホームページです。
※SUUMOやHOMESなどのポータルサイトのさらに大きいバージョンだと思ってください。
保証協会の加入費用は150万円
保証協会への加入にかかる費用は「約150万円」です。2つの保証協会の費用を比較してみましょう。
全宅保証協会:東京 | 全日保証協会:東京 | |
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宅建業協会入会金 | 500,000円 | 390,000円 |
年会費 | 48,000円 | 45,000円 |
保証協会入会金 | 200,000円 | 130,000円 |
年会費 | 6,000円 | 15,000円 |
弁済業務保証金 | 600,000円 | 600,000円 |
その他諸費用 | 98,000円 | 62,800円 |
合計金額 | 1,452,000円 | 1,242,800円 |
※入会金や年会費は各都道府県で異なります。こちらの金額は東京都の保証協会の金額になります。
また、時期によっても金額が変わり、各保証協会ともに減額キャンペーンを行っているので、それぞれの保証協会のホームページを参照してください。
不動産業として会社設立後にかかる費用一覧
会社を設立した後は会社を維持していくために様々な費用がかかります。
税金
会社の税金は以下の通りです。
利益に対してかかる税金 | 法人税 法人事業税 法人住民税(税割) |
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利益にかかわらず支払う税金 | 消費税 法人住民税(均等割) |
利益にかかる税金は「赤字」であれば払う必要はありませんが、消費税や均等割りの法人住民税は赤字でも関係なく支払わなくてはなりません。
節税対策:資本金は1000万円以下にする
税金は当然支払わなくてはならないものですが、できるだけ節税したいです。そこで簡単にできる節税対策として、消費税を2年間免税する方法があります。
それは「資本金を1,000万円以下にする」というものです。
資本金が1,000万円以下の場合、初年度は消費税が免税となり、2年目も売り上げが1,000万円以下の場合は免税になります。
節税対策:経費計上で課税所得を下げる
会社は個人事業主に比べて経費の計上が厳しいです。しかし、それでも様々な費用を経費にすることができ、計上した経費は売上から差し引くことができます。
売り上げから差し引かれるということは、法人税など、利益にかかる税金が減ることになります。
社会保険
会社を設立すると必ず加入しなければならないのが社会保険です。代表者が1人でも入る必要がありますが、できる限り社会保険料を減らす方法をご紹介します。
節約方法:一人社長なら役割報酬を下げる
社会保険証は所得に対して課税させるので、役員報酬をゼロにすることによって社会保険の負担がなくなります。その際には、会社に利益が残るため、法人税とのバランスを調整してください。
専門家への報酬
会計処理を税理士に依頼している場合は顧問料や決算費用がかかります。各税理士事務所によって変わりますが、相場は「顧問料が2万円」、「決算報酬が15万円」かかります。
毎月数万円の顧問料を取られるため、税理士が本当に必要なのかどうかよく考えてみましょう。
その他かかる費用
会社を維持していくうえで必要な費用はまだまだあります。
- 光熱費
- 備品等の消耗品
- 税理士・弁護士等の顧問料
- 人件費料
- 広告・宣伝費
- 事務所家賃
開業資金は営業を始めるまでの費用とこのように運転資金も考える必要があります。
まとめ:不動産業として会社設立するなら最低300万円は必要
今回は新規で宅建業を営業するために必要な資金をご紹介しました。300万円を超える資金を貯めるのはなかなか厳しいですが、一般的には半額は自己資金で残りは銀行で融資を受けることが多いです。
宅建業は独立しやすい業種なので、資金を貯められるようであればぜひ検討してください。