株式会社を設立する際には作成した定款を公証役場と呼ばれる役所で内容をチェックしてもらう必要があります。これを「定款認証」といいます。
このチェックがないと、株式会社を設立することができません。定款認証は会社の本店所在地管轄の都道府県の公証役場であればどこでも行うことができ、認証を行う際には定款を紙で作るか電子で作るかによってそれぞれで費用が変わります。
また、公証人も事前に誤字は確認しますが、万が一ミスがあったとしても、多少の誤字であれば、後々修正することが可能です。
しかし、形式的に間違いがなければ、修正することができず、再認証になれば費用が余計にかかってしまいます。
今回は定款認証の仕組みや費用について詳しく解説します。
目次
会社設立の定款認証でかかる費用の早見表
定款認証でかかる費用は以下の通りです。
費用 | 約9万2000円 |
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内訳 | 公証役場手数料:5万円 収入印紙代:4万円 定款謄本代:約2000円 |
公証役場の手数料は法律で決められており、一律5万円です。また、紙で定款を作成する場合は、4万円分の収入印紙を定款に貼る必要があります。
定款は紙でも電子でも認証した定款の謄本を発行してもらえ、1枚につき250円ほどかかります。こちらは定款の枚数により左右します。
電子定款にすると印紙代4万円の費用が不要に
定款を紙ではなく、電子で作った場合、収入印紙代を削減することができます。その理由は、紙で定款を作ると、印紙税法の第6号文書というものに該当し、収入印紙を書面(定款)に貼らなくてはなりません。
しかし、定款を電子で作成すれば、「紙」ではないので、第6号文書には該当せず、収入印紙代がかかりません。
簡単に言うと、電子定款はCD-ROMなどに入れるので、収入印紙を貼る場所がないということです。
例えば5万円以上の買い物をして、経費で落とすために発行した領収証は第17号文書というものに該当するため、収入印紙を貼ります。
印紙代は不要だが別途費用が必要になるので注意
収入印紙がかからないのであれば、自分で手続きをするときも電子定款にすれば良いと思うかもしれませんが、実はそこに落とし穴があります。
電子署名や電子定款を作るには、様々な機材や手間がかかるため、自分で電子定款を作ることはおすすめしません。
別途費用(1):Adobe Acrobat DC
Adobe Acrobat DC
Adobe AcrobatといえばPDFを見るための有名なソフトで、無料で利用できますが、PDFを編集、電子署名をするにはAdobe Acrobat DCなどの有料版を購入する必要があります。
Adobe Acrobat DCは月額2000円ほどで使用することができます。
エディション名 | 月額(税別) | 年額(税別) |
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Adobe Acrobat Pro DC | 2,100円 | 22,560円 |
Adobe Acrobat Standard DC | 1,900円 | 20,160円 |
定款の電子署名のみを行うのであれば、1週間の無料体験版でも可能です。しかし次回から電子署名を行いたいことがあったときは有料版に移行することになります。
別途費用(2):ICリーダー
ICリーダーは電子署名を行うために必要であるマイナンバーカードなどを読み込むための機械です。パソコンとUSB接続を行うことにより使用することができます。
安いものであれば、2000円ほどで購入することができます。また、法務局が公表しているスマートフォンの機種であればカードリーダー替わりに使うことが可能です。
個人事業主や会社を1人で経営をやっていくのであれば、確定申告の際に、電子申請がとても便利なので、定款認証のためではなくとも、ICリーダーは持っておくと便利です。
その他用意するもの
PDFへの署名プラグイン(無料)
署名するために必要なプラグインと呼ばれるものがあります。こちらはAdobe Acrobatが入っている前提でインストールする必要があります。
Adobe Acrobatを購入後に登記申請オンラインのサイトからダウンロードしましょう。
マイナンバーカード(無料)
現在政府はマイナンバーカードを作ることを推奨していますが、マイナンバーカードは印鑑証明の取得や健康保険証の代わりにもなるので作っておいて損はありません。
通知カードから発効まで1か月ほど時間がかかるので、電子署名を考えている場合は、早めに行動するようにしましょう。
定款認証の手順
定款認証は事前に予約が必要です。まずは本店所在地管轄の都道府県の公証役場に電話またはメールで定款認証の予約を行います。その際に、PDFにした定款と発起人全員の印鑑証明書を送ります。
〇〇公証役場ご担当者様
お世話になります。この度は株式会社〇〇の定款認証をお願いしたいと思っております。公証人の先生にご指定はございません。認証の日付は令和2年〇月〇日の13時からを希望しております。つきましては定款及び発起人の印鑑証明書の写しをお送りいたします。
氏名、電話番号
しばらくしてから公証役場から電話がきます。スムーズな公証役場であれば、電話の前に公証人から定款のチェックが入り、訂正があれば指摘され、あとは当日定款を持っていくだけで定款認証が完了します。
必要書類
- 定款
- 発効から3か月以内の印鑑証明書
- 発起人が全員うかがえない場合は委任状
- 実質的支配者となるべきものの申告書
会社設立の定款認証を代行した場合の費用は4万円以内
定款認証を代行してもらう場合、定款を1から作ってもらうプランでも4万円以下でお願いすることができます。また、定款を自分で用意し、チェックのみをお願いすればさらにコストを削減することができます。
代行した場合は電子定款で行われるケースが多い
定款認証の代行が自分で電子認証するのとほぼ同じ値段の理由は、代行する法律事務所のほとんどが「電子定款」を採用しているためです。
多くの事務所は皆さんが紙で定款を作る際に必要である収入印紙代を節約して、その分の費用を報酬として代行しています。
その結果、自分で作る定款認証と同じ費用で専門家がチェックした定款を出来るということになります。
格安業者に依頼する際は「セット契約」に注意
中には定款認証代が0円、さらに、登記申請まで報酬が0円という税理士事務所などがあります。
無報酬で定款認証を行ってくれる分けではなく、この話の裏には、「顧問契約」とセットになっていることが基本です。
数万円で定款認証を行い、仮に顧問契約を結べば支払った報酬をキャッシュバックするという仕組みになっています。
税理士事務所からすれば、数か月顧問契約を結べば定款認証の報酬以上の顧問料を取ることができるので、設立費用を格安で提供することができます。
このセットプランがおかしいというわけではありませんが、初期費用を削減するためだけにこのようなセットプランを選ぶと、後々の費用がかさんでしまうので、注意してください。
今後いろいろな税務相談や会計処理を依頼するつもりで最初から税理士を利用する人であれば、税理士のセット割を利用しましょう。
電子定款で行うなら専門家に依頼が賢い選択
今までの説明からもわかりますが、電子定款を利用するのであれば、専門家に依頼するのがおすすめです。
自分で電子認証をする場合、いろいろなソフトウェアや機材が必要で、マイナンバーカードを作っていない場合は1か月以上先になってしまいます。
専門家に依頼をすると、自分で紙定款を作って認証するのとほぼ同じ値段でミスのない、正確な定款と認証を行ってくれるのでおすすめです。
まとめ
今回は定款認証の方法と費用について説明しました。定款認証を自分で行う場合、紙定款であれば、そこまで苦労はしませんが、電子定款は時間と労力を消費します。
専門家に依頼すれば、自分が紙定款を用意するのと同じ費用で正確な定款を作ることができるので、自分で調べて定款を作る時間を、専門家に依頼して、会社の経営のほうに専念してください。
なお、株式会社の定款認証が高いという人は、定款認証が不要である合同会社を検討してみるのも1つの方法です。