作成日:2020.11.30  /  最終更新日:2020.12.11

役員報酬とは?決め方と注意点

役員報酬 決め方 注意点

会社設立をするとき、さまざまな決め事をしなければなりません。その中に、役員、そして役員報酬も含まれます。簡単にサクッと決めたいところですが、なかなかどうして上手くいかないこともあります。

そこで、ここでは「そもそも役員とは?」「報酬を決めるときの注意事項」などを中心に説明するので、ぜひ参考にしてください。

役員とは

役員とは?と質問をされたとき、漠然と「なんか偉い人」とイメージすることはできます。他にも「会社経営をする人」「大きな権限を持っている人」のようなイメージする人もいるかもしれませんね。

いずれも何も間違っておらず正解です!結局はそういうことなので…(厳密に言うと違いますがザックリとしたイメージでは問題ないです)。

ちなみにですが、法人税法では「取締役」「執行役」「監査役」「会計参与」が役員と示されています。

意思決定・業務執行をする「取締役」

株式会社を設立する場合、必ず設置をしないといけない機関のことを指します。また、その機関に属する構成メンバーのことも含んでいることもポイントの1つです。

主な役割は、意思決定。その意思決定をするときに開かれるのが「取締役会」で、構成メンバーが参加して議論をすることになるわけですね。

そして、業務執行の役割を担う人のことを「代表取締役」です。代表取締役は、会社を代表する立場も担っているため、大役なポジションということが容易に理解できます。

指名委員会等設置会社のとき設置される「執行役」

指名委員会等設置会社のみに置くことになっている機関です。会社法上では、これに該当する場合は、執行役を置かないといけないと定められています。取締役会で取締役が執行役を選出・解任をする間柄になります。

そもそも指名委員会等設置会社とは?ですが…。誤解を恐れずに噛み砕いて説明をすると「外部の人間に不正などがないか?をチェックしてもらう委員会」です。

ちなみに「執行役員」と呼ばれる人がいますが、執行役とは厳密には一線を画する存在です。というのも、あくまでも執行役員とは会社の1つの役職であり従業員になります。つまり…指名委員会等設置会社ではなくとも、置くことができるわけですね。

取締役たちをチェックする「監査役」

そもそも、監査とは「社内規定」を始め、ルールを守って運営をしているか?を確認することを言います。したがって、その監査をする人という位置づけとなるため、会社自体が法令違反をしていないか?社内規定違反をしていないか?を確認する人になるわけです。

ただ、社員一人ひとりの確認をするのではなく、あくまでも、取締役の職務の内容をチェックしたり、会計周りのお金の流れをチェックすることが中心となります。

計算書を取締役と作成ができる「会計参与」

「かいけいさんよ」と読みます。公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人のいずれかでないとできないポジションです。具体的には…取締役などと一緒に計算書類などの作成すると同時に、それを会社とは別に備え置きすることが可能となる権限を持っています。

その備え置きをした書類は、会社の株主だったり、債権者が求めれば、応じて開示することも可能です。平たく言えば「取締役と一緒に計算書を作成する」といったところです。

法人税法で定められた役員の範囲

役員について説明をしているとき「法人税法上で定めらている」ということで4つの役員について説明をさせてもらいました。ですが…会社によっては「役員ではないけど、役員レベルの仕事をしている」という状況にあるケースもあります。それが、自分の意志なのか、はたまた会社の意思なのかは、別問題として…。

では、このような仕事をしている人は「役員とは言わないのか?」と気になります。ということを、念頭に法人税法として定められている「役員とは?」について、さらに掘り下げて説明をしていきます。

実質的に経営者並の業務を担っている

先程、触れた「役員ではないけど、役員レベルの仕事をしている」という状況ですが…。これは「役員」と判断されることになります。見出しに記載した通り、経営者並の業務を担ってこなしてしまえば、これは経営者と同等の意味です。

したがって、登記上、役員として名前が記載されていなくとも、関係なく役員と判断されるので、念頭に置いておきましょう。

単独で重要な取引相手の意思決定の権限がある

会社を経営していく中で、非常に重要な位置づけになる取引相手というものが、必ず出現してくるものです。いわゆるお得意先ですね。このお得意先の会社から「取引はやめます」と言い渡されたら、一気に会社経営が傾いてしまうケースもあることでしょう。

会社経営が左右されるような重要な取引相手に対して、決裁権を持っている人といえば…当然、役員クラスですよね。しかし、世の中の会社には、役員クラスでなくても、この重要な取引相手に対して決裁権を持っている社員も存在します。このような社員は、法人税法上は「役員と同等」と判断されることになります。

単独で金融機関から融資などの決裁権がある

融資を受けるということは、金融機関に対して会社が「借金」をすることを意味します。当然、額が大きくなることも多いわけですが…ただの一般社員が「決済権」を持っていることは、普通に考えてありえませんよね。

つまり、このような「融資などを受けるときに自分の判断で決めることができる」という立場は、役員レベルの権力を持っていることになります。であれば、法人税上としては、役員と同レベルと定義して辻褄が合うようにしているわけですね。

みなし役員について

以下の2つに該当する場合は、みなし役員となり、法人税上、役員として扱われることになります。1つ目が、取締役など役員として登記はされていないけど、会長・相談役・顧問という肩書で経営に携わっている人間。2つ目が、株式所有割合の要件を満たし、かつ経営に携わっている人間。

いずれも、役員としては登記されていないですが、大きな発言力を持っているようなポジションにいる社員は、法人税上、役員とみなされるのです。

役員報酬とは

役員報酬とは、役員に支払われる報酬のことです。まさに言葉通りではあるのですが…実は「給与」とはまったく異なるモノです。本章では、役員報酬とは?について、説明をしていきます。

役員報酬と給与は…根本的に考え方が違う!

両者の違いを一言で言えば「根本的に考え方が違う」といったところでしょうか。というのも、税務上のルールの話で…会社の損益に対して報酬を変えて調整できないように工夫がされているからです。

この説明だけでは「ん?どういうこと?」と頭の中はクエッションマーク状態かと思いますので、以下より掘り下げて説明をしていきましょう。

役員報酬は損金算入できないようになっている

「損金算入ができる」イコール…「課税対象の金額を減らすことができる」となります。従業員に支払っている、いわゆる給与は、常識的な範疇を超えないような金額であれば、その全額を損金算入に入れることができます。つまり、課税対象の金額を減るということです。

対して、役員報酬は、この仕組みが悪用されないように、「役員報酬は損金算入できない」と制限がかけられているわけです。どうして悪用されてしまうのか?例えば、会社の利益がべらぼうに良かった場合、当然、課税対象の金額は大きくなって税金を多く支払うことになります。

損金算入ができると仮定したら、役員報酬を多く支払うことで、課税対象となるはずだった大きな利益をウヤムヤにできるようになってしまいます。もちろん、簡単に役員報酬を変更することはできませんが、規模の小さな会社であればあるほど簡単にできる事実もあります。

であれば…いろいろと悪巧みができてしまうため「役員報酬は損金算入はNG」となっているのです。ここに大きな給与と役員報酬の違いがあります。

役員報酬を決めるには “株主総会” の決議が必須

会社法には、役員報酬は「株主総会の決議によって定める」とされています。したがって、役員報酬の総枠については、株主総会の承認を得ないといけないことになり、勝手にホイホイと変更できるものではありません。また、この株主総会で決まったことを、しっかりと議事録に残しておくことが重要となります。

というのも、税務調査が実施される場合、この議事録がないと…役員報酬の損金算入が認められないことになりかねないからです。ある程度の規模の会社であれば、言わずもがな議事録を作成することは当然のため、問題はないかと思いますが…。

特に注意が必要となるのは「役員・株主・社長」がすべて同一人物の「1人会社」のケースです。このケースであっても、必ず「いつ株主総会をして、いつ決めたのか?」を残すようにしてください。

役員報酬は「雇用保険料」が徴収されない…

見出しに記載した通りで、役員報酬として支払われた報酬から雇用保険料は徴収されません。「ラッキーじゃん!」とつい思ってしまうところですが、逆の言い方をすれば、保険料を支払っていないわけですから、雇用保険が適用されることはありません。

役員はどうして雇用保険の対象外になってしまうのか?ですが、単純に「労働者」として見なされないからです。雇用保険とは、あくまでも労働者をターゲットにしているため、当然のお話になるとなります。

ちなみに…労働者とは「会社・上司の監督のもと労働する者を指す」、役員は会社・上司の監督のもと労働する者ではないため、労働者ではないという位置づけになります。

役員報酬から徴収される税金は給与と同じ計算式

給与をもらったときは、所得税、住民税のような税金、さらに、厚生年金といった社会保険料が徴収されますよね。いつも、徴収される額の大きさにがっかりしてしまうところですが…。

実は、役員報酬も、まったく同じ計算方法で徴収されることになります。当然、役員報酬の方が額が大きいため、徴収される額も大きくなってきます。

役員報酬の勘定科目

役員報酬を支給した場合、一般的には、販売費及び一般管理費として勘定科目に計上します。”一般的には”と表現したぐらいなので…例外もあります。

それが、製造原価報告書を作成しているような会社の場合です。具体的には、製造担当の役員にターゲットにした報酬支給の場合は「製造原価」の役員報酬という位置づけになります。

役員報酬の種類

役員報酬とは?ということで、いろいろと説明をしてきましたが…1つ、ここで基本を改めて抑えておきましょう。それが「役員報酬の種類について」です。一言で、役員報酬と言っても、大きく3つの種類に分けることができます。

1) 定期同額給与

最初に紹介する種類が「定期同額給与」です。言葉から察することができる通り、毎月一定額が支払われる報酬です。具体的には、1ヶ月以内の期間ごとに支払われる給与であり、役員報酬を決定するときに残してある議事録で決めた額を1年間払い続ける報酬のことになります。

特徴としては…税務署に定期同額給与について届け出をする必要がなく、かつ経費として扱うことができます。

2)事前確定届出給与

決められた時期に、決められた額の報酬を支払う種類となります。

特徴としては、税務署に届け出をしないといけないことです。これが意味することは、損金として扱うことができるメリットがあるということ。非常に大きな魅力ではありますが…反面、会社経営が赤字になったとしても、その金額を支払わないといけないデメリットがあります。

くわえて、事業年度ごとに届け出をしないといけない面倒さがあるため…実際に、この形で報酬を支払っている会社は少ないと言われています。

3)利益連動給与

言葉から察することができる通り、会社の利益に連動して役員報酬が変わる仕組みとなります。

最大の特徴は、報酬として支払った金額を経費として扱うことができるというものです。ただし、さまざまな条件をクリアしないといけないデメリットを持っています。最たる例は「同族会社は認められない」ということです。

他にも、支給金額がどのように算定したいのか?などもあります。結果、事務手続きが複雑で大きな負担になることも多いことから、中小企業の場合は、この方法で報酬を支払うことは少ないです。

役員報酬の決め方

「どうやって役員報酬を決めたらいいのか?」と、一番の素朴な疑問点かもしれませんね。当然、注意するべき点というのはあって、思いつきでサクッと決めることはできません。ということで、ここからは、実際に役員報酬の決め方のルールやコツについて説明をしていきます。

役員報酬を決めるときのルール

毎月の役員報酬額は “期首から3ヵ月以降に変更しない” ルールがある

「損金算入の観点」というスタンスでのお話になりますが…期首(期の始まり)から、3ヶ月を過ぎてから役員報酬を変更しないことが重要になります。というのも、期首から4ヶ月が経過した後に、役員報酬を変更してしまうと、変更した分の損金への算入ができなくなってしまうことがあるからです。

気になる点は「どうして認められないことがあるのか?」ということ。単純に、役員報酬を増減させて利益の操作を防ぐためです。やむを得ない状態であれば、認められる可能性はありますが…基本的には否認されてしまうことは理解しておきましょう。

役員賞与に関しては必ず事前に届け出をしないといけない

役員に対しても賞与を支給することが可能です。先に説明をした…いわゆる「事前確定届出給与」のことで税務署に届け出が必要となってきます。

具体的には、以下の2つのうち、早い方の日までに、支給日と支給額を税務署に届け出をするルールです。1つ目が、株主総会によって役員の賞与に関して決議した日から1ヶ月後に支払う。2つ目が、事業年度の期首から4ヶ月後に支払う。

この事前確定届出給与が認められると、損金算入することが可能となるわけですが…当然、この裏には「利益操作を防ぐため」という目的があります。

役員報酬を決めるときのちょっとしたコツ

税金や社会保険料とのバランスを考慮する

役員報酬を増やすと…「会社の利益が減ることになって法人税や社会保険料が安くなる」となります。その反面、役員個人としては「所得税や社会保険料が高くなる」というデメリットが生まれます。

このように、こっちを立てればあっちは立たず、あっちを立てればこっちは立たずという状況になるわけです。ただ逆の言い方をすれば、きっちりと試算をすれば、ちょうどよいバランスを取ることができる点が分かります。

同業種・同規模の他社との比較をして決める

他社と比較をしたときに、あまりにも報酬が高すぎる場合は、役員報酬の損金算入を税務署が「NG」とする可能性がでてきます。したがって、「相場」というモノをしっかりと見極めて決めることも1つのコツになるわけです。

もし、損金算入の否認されてしまうと…否認された分に対して、法人税が掛かることになりますし、個人所得税が発生することになります。結果、税金を二重に支払うことになるため、気をつけないといけないのです。

役員報酬を損金算入させるためにはどうしたらよいの?

役員報酬の一番のポイントになるのが「損金算入するためにはどうしたらいいのか?」ではないでしょうか。その手続方法を以下より説明していきますが、先の説明でも軽く触れているため、すでに察している人もいるかもしれませんね。

大きく2つの手続方法があって、1つが定期同額給与として扱って手続きを行う方法と、事前確定届出給与として扱って手続きする方法になります。

その1.「定期同額給与」として手続きを行う方法

1つ目は、役員報酬を定期同額給与として取り扱うということで、以下の2ステップを踏んで手続きを進める方法となります。ステップ1は、株主総会にて役員報酬の額を決議することですステップ2は、その決議した内容を議事録として残すことです。

非常に簡単で、かつこちらの手続きでは、税務署への届け出はしなくてもよい特徴を持っています。

「株主総会にて役員報酬の額を決議する」とは?

役員報酬は株主総会にて決議する必要があります。これは、会社法で定められているため、例外はありません。さらに、定期同額給与の変更は年度始め…つまり期首から3ヶ月以内と定められています。したがって、定時株主総会がなければ臨時の株主総会を起こして決議することになります。

「決議した内容を議事録として残す」とは?

議事録は非常に重要な意味を持ちます。というのも、税務調査が入った場合に、この議事録がないと説得力がないため、損金算入が否認されてしまう可能性があるからです。

1人会社の場合で、役員も株主も、そして社長も1人というケースであっても、必ず議事録を作成して備えることを強くおすすめします。

その2.「事前確定届出給与」として手続を行う方法

2つ目は、役員賞与として、事前確定届出給与の手続きの仕方です。こちらも、株主総会で役員賞与について決議をすることが、第一歩になります。次のステップで、先に説明をした定期同額給与と異なる部分になるのですが…それが税務署へ届け出をしないといけない点です。

しかも、届け出するタイミング(期限)はきっちりと定められており、以下の2つのうち早い方となっています。1つ目が…株主総会で決議した日から1ヶ月。2つ目は…事業年度の期首から4ヶ月後。

上記のように決められていますが、1日でも遅れてしまうと受理されないので、細心の注意を払って手続きを進めるようにしましょう。

平成29年度(2017年度)の税制改正で変わったこと

税金関係の法律は、よく改正されるため、重大なことが埋もれてしまうこともしばしばあります。ということで、平成29年度に施行された役員報酬に関する税制改正について見ていきましょう。大きく2つの見直しがされています。

定期同額給与について見直しが行われた

見直しされた点は…手取り額が一定金額となるものも定期同額給与として認められるようになったことです。

手取り額とは、いわゆる源泉徴収などをした後の金額のことを指します。今までは、役員報酬の画角面が一定金額のもののみが認められていただけなので、大きな見直しと言えるでしょう。

インセンティブ報酬等についても見直しされた

2つ目は、インセンティブ報酬について、一定要件を満たせば損金算入ができることになりました。

もともと、インセンティブ報酬は、支給の仕方によって、損金算入ができるのか?という点が異なっていました。したがって、余計なことを考えず、要件を満たすだけで損金算入ができるわけですから、こちらも大きな見直しとなっています。

くわえて、ストックオプションや退職給与についても、役員報酬の枠組みには入っていなかったシロモノでしたが、整理が行われております。

役員報酬を増減するには

残念ながら、役員報酬は好きなタイミングでサクッと変更することはできません。できない理由は単純で、利益操作ができてしまうからです。

これを防ぐために、役員報酬を増減するためには以下のポイントを抑える必要があります。1つ目は…定時株主総会にて増減させる決議をすること。2つ目は…毎年同じ時期で役員報酬の増減(改訂)すること

となりますが、特に難しいことをするわけではないので、会社の利益など総合的に判断をして調整していけばよいかと思います。ただし、上記のような手順を踏まないと増減することはできませんが、例外があります。それが、役員の変更があった場合や会社の経営状況がものすごく悪化してしまったなど…やむを得ない状況の場合は、臨時改訂として増減することは可能です。

まとめ

役員報酬について、いろいろと記載をしてきましたが、知っておかないといけないことが多くあることが理解できたかと思います。それくらい重要なことと理解していただければ幸いです。その中で、念頭においてほしいことは「きっちりと理解する」ということです。

会社規模に関わらず、役員として振る舞いをするのであればなおさらで…ここで失敗をしてしまうと税金を余分に払わないといけないなど、トラブルに発展することも否定できません。

もし自信がなければ「問題ないか?」などプロにお願いするのも1つの手です。こちらも視野にいれて会社経営をしてほしいなと思います。

また、税制改正は頻繁に行われることは、先に説明をしたとおりです。知らなかったでは済まされないこともあるため、こちらもしっかりと情報収集をして対応するようにしておきましょう。

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