会社設立をするまでに、さまざまな手順を踏んで、さまざまな書類を用意しなければならないことは、ご存知の通りです。
そんな会社設立までの道のりを…とあるサイトでは「簡単にできますよ!」と表現し、とあるサイトでは「面倒だから司法書士など専門家に任せましょう!」と表現し…言っていることが違うことが多いです。
人それぞれ、サイトそれぞれの考え方があるため、いたって普通のことではありますが…調べている側にとっては「どっちだよ!」とついついツッコミを入れたくなってしまいますよね。
ただ…最終的に「大変か?」「大変ではないのか?」の判断は、実際に会社設立をする人の価値観やモチベーションで大きく異なるため、どっちかは分かりませんというのが正直な結論です。
ということで…どっちなのか?を判断をするために、会社設立までに必要となる書類について “ただただ” まとめていきます。
これを見れば会社設立までの全体像も見えてくるかと思うので、司法書士など専門家や代行業者を頼るのか?それとも、自分自身ですべて行うのか?の判断をしていただけると幸いです。
目次
会社設立に必要な書類と基礎知識
会社を設立する場合、どのような会社形態にするのか?をまず決めなければなりません。というのも、その会社形態によって必要となる書類や、その書類に記載する内容が変わってくるからです。
会社形態は「株式会社」と「合同会社」…どちらにするのか?という判断をすることが昨今では多いようです。ちなみに、合同会社とは…いわゆる持分会社の一種です。
他にも合資会社などが挙げられますが、特にこちらを選ぶメリットもないため「持分会社=合同会社」というイメージになっています。(2020年現在、有限会社を選択することができないので、合わせて覚えておくとよいでしょう)
株式会社と合同会社は形態が異なるため必要書類の内容などが変わる
繰り返しになりますが、株式会社と合同会社は、同じ会社であっても、その形態は異なるものになります。そのため…登記するための手順は同様ではありますが、必要書類の中身などが変わってきます。
この違いが顕著に現れるのは「定款」です。定款は、自然と株式に関する内容を記載することが多いです。しかも、その内容はなかなかのボリュームで作成するだけでも一苦労です。
ですが…言わずもがな、合同会社は株式の概念はまったくないため記載する必要はありません。その結果、どちらの会社形態なのか?を十分に理解した上で必要書類を準備していくことが大切になるわけですね。
法人登記に必要な書類は12種類
法人登記をするときに必要となる書類は全部で12種類となります。ただし、勘違いしてはいけないのは…「この12種類に添付する書類も必要となる」ということです。
大きくは12種類ではありますが、最終的には、さらに多くの書類を用意しないといけないと理解していただければよいです。例えば、定款が必要書類の1つになりますが…この定款は3冊用意する必要があります。
この場合は、単純に電子ファイルからプリントアウトするときに3部と設定するだけなので大して手間にはなりませんが…。
このように、事細かく見ていくと「え?そんなものも用意しないといけないの?」「そんなに用意しておかないといけないの?」と思ってしまうこともしばしば。
特に登記申請書は、添付書類や必要な情報を集めるときに、いろいろと時間がかかってしまうこともあります。ともあれ、以下に必要書類12種をまとめます。
- 登記申請書
- 定款
- 発起人の同意書
- 代表取締役を決めたことを証明する書面
- 「代表取締役」「取締役」「監査役」就任承諾書
- 代表取締役の印鑑証明書
- 「取締役」「監査役」の本人確認証明書
- 会社設立時の取締役および監査役の調査報告書と附属書類
- 払込を証明する書面
- 資本金の額の計上に関する会社設立したときの代表取締役の証明書
- 委任状
- 印鑑届出書
必要な書類を用意する前に印鑑を準備しておくこと!
2020年10月現在…総理大臣が変わり「印鑑文化にメスが入る可能性がある」という状況です。ただ、昔から印鑑をなくそう!という動きははあちこちであり、常々議論が交わされておりました。
結局のところ、根強い日本の文化ということで改革には至っていない状況ではありますが…。今後、どうなるのか?は注視していく必要があります。恐縮ながら個人的な意見を言わせてもらうと「残すべき」が考えです。
単純に印鑑を押す作業が好きということも大きな理由ですが、やはり「重要な場面なんだな」と直感で頭の中のスイッチを入れることができるので有効な手段かなと思うわけです…。
ともあれ、現状は「印鑑は必要なモノ」なので、会社設立をする際にも用意しておく必要があります。さて、本題に戻って…必要書類を用意する前に、次の4つの印鑑を用意しておきましょう。
- 法人実印
- 銀行印
- 社印
- ゴム印
ここで伝えたいのは「きっちりと会社設立前に用意しておきましょう」ということです。というのも、実際に会社設立を開始すると、何かと忙しくなってしまって印鑑を作りにいって登録する作業がなかなかできなくなることもあるからです。
その結果、期首が遅れてしまって思ったように会社経営の起動に乗せることができなかった…となる可能性も。また、実印を専門店に作ってもらうと、それなりの時間を要してしまうこともあるため、余裕を持って事前に作成しておくことを強くおすすめします。
言うまでもありませんが、発起人が複数人いる場合は、全員の実印登録も済ませて、印鑑証明書を何枚か手元に持っておくと安心です。
公証人役場に提出する書類
ここからは、実際に必要となってくる書類について説明をしていきます。最初に紹介するのは、公証人役場へ提出する資料です。提出する必要書類は大きく2つで「定款」と「株主全員の印鑑証明」となります。
一見すると「2つだけだから楽勝!」と思ってしまいますが、定款は非常に重要な役割を担う書類となるため、作成自体が大変な作業になることも多いので注意をしておきましょう。
また「定款認証」という視野でお話をした場合、他にもちょっとした書類も用意しないといけません。こちらも合わせて紹介をしておきます。(定款認証とは、言葉通りで作成した定款を公証人役場で認証してもらうことを言います)
定款
定款(ていかん)は、いわゆる設立する会社の法律(ルール)を記載したものになります。これを公証人役場へ提出し認証してもらう流れです。記載する内容は大きく3つに分類することができ、必要に応じて内容を決めていきます。
- 《絶対的記載事項》必ず記載しないといけない内容。目的、商号、本店の所在地など。
- 《相対的記載事項》定款に記載しなくてもよいですが記載をしておいた方がいい内容。株式の譲渡制限、取締役の任期の伸長など。
- 《任意的記載事項》自主的に「記載しておいた方がよいな」と思える内容を記載。株主総会に関する但し書きなど。
基本的には「絶対的記載事項」に関して対応していけば法律上は問題ありませんが、会社設立後のことを考えていくと、以下のことは最低限記載をしておきたいところです。
- 設立日
- 商号(会社名)
- 事業の目的
- 本店の所在地
- 公告方法
- 発行可能株式総数
- 株式の譲渡制限
- 取締役員数
- 取締役任期
- 事業年度
- 会社設立時に出資する財産価額
- 最初の事業年度
- 会社設立時の役員
- 発起人(会社設立したときの株主)
株主全員の印鑑証明書
公証人役場には、発起人の印鑑証明書を用意して提出することになります。発起人が複数人いる場合は、一人ひとりの印鑑証明書が必要となるため注意ください。
印鑑証明書は2通用意しておくといい!
余談ですが、取締役にも就任する場合は、法務局に印鑑証明書を提出することになるため、合わせて取得しておくと余計な面倒がありません。したがって、発起人の中に実印の登録をしていない場合は、公証人役場へ足を運ぶ前に必ず用意をしておきましょう。
発起人が公証人役場に行けないときの対処法は?
ちなみに、発起人がどうしても公証人役場へ行けない場合は、代理人が対応することになります。そのさい、委任状を定款の表紙に付けて行けない人の実印をもらっておかなければなりません。
もし、それも難しい場合は、行けない発起人の印鑑証明証を持参することで対応することは可能です。
定款認証のやり方は簡単!合わせて認証時の必要書類も紹介!
定款認証のやり方自体は簡単です。発起人が定款を始め認証に必要な書類一式を持って公証人役場へ行って、認証のお願いをするだけです。書類に不備などがあれば、対応して認証されるまで繰り返すことになります。
この定款認証は、昨今では「定款の電子認証も可能となっている」ため、会社設立自体の敷居は低くなってきているともいえます。どちらがよいのか?はいずれも一長一短があるため好みの問題ではありますが…。
つまるところ、2020年10月現在…「どちらでもいいですよ」という回答になります。定款認証に必要な書類を以下に紹介をしておくので、ぜひ参考にしてみてください。(多少、先の説明とかぶる部分もありますが、定款認証という視点で紹介をします)
- 《定款》会社保管用、公証人役場の保管用、設立登記の申請用の3通の定款が必要となります。
- 《印鑑証明書》発起人全員の印鑑証明が1枚ずつ必要です。
- 《収入印紙》40,000円分の収入印紙が必要となり、公証人役場保管用の定款に貼ります。
- 《認証手数料》50,000円が必要となります。定款認証をするための手数料です。
- 《謄本手数料》謄本が必要となるため、その書類取得の手数料となります。定款1冊に1つ必要となるためか「x3」の手数料が発生します。
- 《委任状》定款認証を発起人ではなく代理人が行う場合は委任状も必要書類となります。この委任状には、発起人全員が記名をし実印も押した状態にしなければなりません。
法務局に提出する書類
続いて紹介するのは「法務局に提出する必要書類」で、いわゆる登記関係に関する書類が中心です。具体的には「こんな感じ会社を設立するから問題ない?なければ法務局として承認してね!」といった内容の手続きになります。
登記申請書
「会社設立のため登記したいので、よろしくお願いします!」と依頼をする書類です。申請書に記載する内容は以下の8項目になります。
- 商号
- 本店の所在地
- 登記の事由
- 登記すべき事項
- 課税標準金額
- 登録免許税
- 添付書類一覧
- 収入印紙貼付台紙
定款(認証済み定款)
公証人役場にて認証された定款を提出する必要があります。会社設立関係のサイトを見ていると…よく「定款は登記される」と紹介されることが多いですよね。まさにこのことで、法務局へ定款を提出することを指しているのです。
提出用の定款を作成するとき、いくつかの注意点があるため、後術する「申請書類作成のポイントや注意点」内の「定款」を参考にしてください。意外と知らない人も多いため、余計な手間にならないように注意をしてくださいね。
取締役・代表取締役・監査役の就任承諾書
会社設立時、または役員変更時に提出する書類です。役員が選定された後、その役員自身が「問題ないですよ」と就任を承諾した書類…言葉のままですね。
記載する内容も単純明快で、就任を承諾した旨の一文を付け、日付、選定された役員の住所、名前、会社名も合わせて記載します。そして印鑑にて押印しますが…これは認印でも問題ないとされています。
ただし、役員の種類によって、印鑑証明書や本人確認証明書などの添付書類を用意しなければなりません。
発起人の決定書
発起人で決定した内容を記した書類です。記載する内容はさまざまで、本店の住所だったり、電子公告にする場合は、そのサイトのURLだったり…。
とにかく、発起人が決定した事項として残しておかないものを記載していきます。以下、よく記載されるものをいくつか紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
- 商号
- 目的
- 本店所在地
- 発行可能株式総数
- 設立時発行株式の数
- 設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
上記以外にも、設立費用は発起人が負担する場合は「決定書」として残すこともあります。
登録免許税分の収入印紙を貼り付けた書面
会社設立時は、登録免許税を支払わなければなりません。その税金を収入印紙で納付することになるため、購入した収入印紙を台紙に貼り付け書面として提出します。
台紙に関しては、A4版の白紙が使えますが、登記申請書の次に綴り、さらにその綴り目には、申請書で使った印鑑で1箇所契印する必要があります。契印を意外と忘れてしまうこともあるため、しっかりと覚えておいてください。
印鑑届出書
所定の届出書に必要事項を記載、そして届出をする印鑑で押印をした状態で提出します。記載する内容は、商号、本店の住所、印鑑を提出する人の情報などになります。
特に難しいことを記載するわけではないので、指示に従って記載と押印をすれば問題ありません。ちなみに、改印をする場合にも同様の届出書で対応ができます。
さらに、委任状も同じ印鑑届出書内に枠が用意されており、委任する場合は、委任する人物の情報を記載すればよいだけです。
代表取締役・取締役個人の印鑑証明
公証人役場のときには「株主の印鑑証明書」を準備しましたが…法務局の場合は代表取締役、取締役各々の印鑑証明書1つが必要となります。したがって、役員になる予定の人で、印鑑登録をしていない場合は、法務局へ届出をする前までに準備をしておきましょう。
登記すべき事項を保存した電磁的記録媒体
登記すべき事項について申請書に記載すべきことに代わって電磁的記録媒体で提出することが実は可能です。この電磁的記録媒体が申請書となるため、いちいち印刷して提出する必要がないため、非常に楽に書類提出ができるわけです。
「ん?いきなりなんのこと?」と思われてしまったかもしれませんが…単純に書類を用意せずともデータで渡せますよ!ということです。ちなみに「電磁的記録媒体」とは、CD-Rだったり、DVD-Rだったり、電子データを記録できるメディアのことを指します。
ただし、電子データが記録できるメディアであれば何でもよいというわけではありません。法務省では「日本工業規格X0606形式、又はX0610形式に適合する120mm光ディスク」と、メディアをきっちりと定めています。
小難しく記載してありますが、端的にいえば「CD-R」「DVD-R」などにあたるわけですね。少し前までは「FD(フロッピーディスク)」も可としていましたが、現在は、上記のように定められているため断られるケースもあります。
(そもそも2020年現在、FDを扱えるPCが少ないため、普通にCD-Rなどを使っていただければと思います)
委任状
会社設立をするための必要書類など、この手の書類で申請をするとき、代理人に依頼をすることもあるかと思います。この場合は、言わずもがな…委任状が必要となります。
具体的には、会社設立を司法書士などに依頼するときですが…商業・法人登記に関しては、司法書士、または弁護士が代理人として申請することが多いです。ただし、登記や役員変更登記などの代理申請は「司法書士」のみ可能となっています。
したがって、弁護士に委任した場合、登記だけは弁護士から、さらに依頼された司法書士が対応することになるわけです。委任状に関しては、代理人の住所と氏名、委任する申請内容、委任した日、委任する側の情報と印鑑(法人実印)での押印が一般的な内容です。
資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
会社設立の手続きをするとき、現物出資、または資本準備金がある場合に、必要となってくる証明です。この証明書は、会社設立をするときに、代表取締役が作成をして…提出することになっています。ただし、出資が「現金」だけの場合は不要となります。
逆に資本準備金が「1円」でもある場合は必要です。証明書に記載する内容は、払込を受けた金銭の額、給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財産の価額、そして両者を足した金額が基本となります。
最後に、証明している一文を載せ、日付と商号、本社所在地住所、代表取締役の名前と印鑑を押印して完了です。
法人登記の提出書類のセット方法
最後、用意した必要書類をどのようにしてまとめていくか?を説明をしていきますね。
そもそも登記作業という「公的なモノにするための大切な作業」ということで、きっちりとルール化されており、当然、事業者側は、これを守っていかなければなりません。以下に、その順序を記載するため、参考にしてください。
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙または領収書を貼り付けた用紙
- 公証人役場で認証を得た定款
- 資本金の払込証明書と通帳をコピーしたもの
- 代表取締役・取締役の就任承諾書と印鑑証明書など
- 監査役の就任承諾書と本人確認書類
上記をまとめたら、左側に二箇所をホチキスで留めます。そこから、登記申請書と登録免許税分の収入印紙または領収書を貼り付けた台紙に法人実印を押印して完成となります。
注意点としては、印鑑届出書と登記事項を記載した用紙、または磁気ディスクに関しては、別途提出するため、1つにまとめないようにしてください。
税務署に提出する書類
最後に紹介するのは「税務署へ提出する必要書類」です。法務局と同様、会社経営をしていく中で、税務署も長い付き合いになります。
特に、納税の義務を果たさなければならないため、ここで紹介する必要書類が用意できなければ「法を犯す」という状況にもなりかねません。
会社経営をしていけば、知っていて当たり前のことなので、普通に必要書類を提出すれば問題はありませんが、重要度は高ということは認識しておいて欲しいです。
法人設立届出書
会社設立のために作成した定款へ記載をした「本店所在地」を管轄している税務署に対して「法人を設立しますよ!」と届出をする書類です。記載する内容は、基本的な法人情報となるため難しいことはまったくないので安心してくださいね。
当然、定款と食い違うような記載はNGです。注意点としては、定款のコピーと履歴事項全部証明書を添付して提出する必要があります。くわえて、設立した日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
給与支払事務所等の開設届出書
給与を支払う場合に提出する書類です。会社設立時はもちろんのこと、移転や廃止した場合も同様の書類の届出が必要となります。事業所開設者、開設日、給与の支払いを開始する年月日、届出の内容・事由、給与支払事務所の基本的な情報を記載するだけです。
特に難しい項目はないため、簡単に作成できます。先に説明をした法人設立届出書よりも1ヶ月期日が短い1ヶ月以内となっているため注意してくださいね。
青色申告の承認申請書
青色申告をすることを承認してもらうための書類です。会社設立日から3ヶ月以内に提出しないといけません。上記と比較して、期日的には余裕がありますが…必ず前倒しをして対応していくようにしましょう。
基本的には「任意」のため、絶対に提出しないといけない書類ではないのですが、確実に提出しておくことを強くおすすめします。というのも、大きく節税することができるからです。
ここでは詳しく説明はしませんが…白色申告と比較して面倒な部分はありますが、その面倒さを凌駕するぐらいの大きな差がでます。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
こちらも、先の「青色申告の承認申請書」と同様で任意の書類ではありますが…提出することを強くおすすめします。
というのも、給料の支払いが発生した場合に、源泉所得税を天引きして事業者側が代理で納税することになるのですが…この納税する期日を延ばすことができるからです。毎月10日に納税しないといけないところ、半年に1回ですむからです。
ただし、労働者が10人以下の会社のみという条件付きであることは理解しておきましょう。だからこその「特例」ですので。ともあれ、申請しておいては損のない特例であることは間違いありません(納税業務の負担が軽減でき人件費の低減が可能になるため)。
申請書類作成のポイントや注意点
必要となる書類を説明させてもらいましたが「こんなに多いの?」と感じた人もいらっしゃることでしょう。そして、難しそうと感じた人も多くいるかと思います。
ということで、以下よりは、この不安を少しでも和らげるためにも、必要となる書類の作成ポイントなどを紹介していきます。雛形を無料でダウンロードできるケースもあるので、こういったサービスを上手に活用したいところです。
少し話は逸れますが…それでもやはり面倒な作業が多いことは間違いありません。となってくると「他に作業をしてくれる人はいないのか?」と、ふと頭をよぎります。そこで登場してくるのが、司法書士などの専門家です。
専門家に代行してもらうことが可能なので、本当に面倒な部分をお願いしてみるのも1つの手です。
設立登記申請の方法・期限
設立登記の申請方法は、本店所在地がある法務局へ登記申請書を作成し提出します。合わせて登録免許税を納税しないといけないため、資金を事前に用意をしておきましょう。
申請書というぐらいなので雛形が用意されており、法務局の公式サイトから「商業・法人登記の申請書様式」にてダウンロードすることができます。
期限は2週間と定められていますが、これを過ぎてしまうと100万円以下の過料に処せられることになるため、きっちりと申請をしておきましょう。
では、いつから2週間なのか?ですが、会社法で定められており、以下のうち最も遅い日から2週間以内と設定されています。
発起設立の登記申請期間
- 設立時取締役等の調査が終了した日(変態設立事項などに関する調査)
- 設立時取締役から設立時代表執行役に通知した日(※委員会設置会社のみ)
- 発起人が定めた日
募集設立の登記申請期間
- 創立総会終結の日
- 会社法84条の種類創立総会の決議をした日(拒否権付種類株式)
- 会社法97条の創立総会の決議をした日から2週間を経過した日(変態設立事項に関する変更決議)
- 会社法100条1項の種類創立総会の決議をした日から2週間を経過した日(定款を変更してある種類の株式に、譲渡制限又は全部取得条項を設ける場合)
- 会社法101条1項の種類創立総会の決議をした日(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき)
登記すべき事項
- 商号
- 目的
- 本店の所在地
- 資本金の額
- 発行可能株式総数
- 発行済みの株式総数
- 取締役の名前
- 代表取締役の名前と住所
- 公告方法
以下は、株式会社の設立時の一例を紹介します。というのも、設立する会社形態、会社規模などによって登記すべき事項は細かく変わってくるからです。ただ、以下の内容を読んでいただいて「こういうことを書かないといけない」と感じていただけると幸いです。
- 株式の譲渡について会社の承認を得る旨
- 発行する株式の内容、くわえて発行可能種類株式総数
- 単元株式数
- 株券発行会社である旨
- 取締役会が設置してある会社の旨
- 会社参与が設置してある会社の旨
- 監査役の設置会社
- 会計監査人の設置会社
- 決算公告を電子公告行う場合のURL
- 公告を電子公告する場合のURL
法務局へ定款を提出するときの注意点
定款の作成に関するポイントについて語り始めると、それこそちょっとした本1冊分になるぐらいのお話になります。したがって、ここでは「法務局へ定款を登記してもらうとき」の必要書類作成のポイント・注意点に特化して記載するので、ご承知おきください。
全文を提出すること
必ず定款の全文を提出するようにしてください。登記に関係ないと思った発起人が、抜粋をした定款を提出したことによって受理されなかったケースも実例としてあるので。
むしろ全文を提出した方が楽(変に抜粋した方が作業的に面倒)なため「そういうルールだ」と理解してもらえれば結構です。
必ず割印(契印)をすること
定款を法務局へ提出する場合、意外と忘れてしまうのが「割印(契印)」です。割印は、各ページの綴り目に法人実印で行っておくことが重要です。これがないと、受理されず補正対象となります。
単純に押印するだけなので、手間にならないのでサクッと押してしまっておけば問題ありません。
定款原本と相違ないことを宣言すること
法務局へ提出する定款は「原本」ではありません。あくまでもコピーとなります。となると、コピー作成後に原本と違った内容(ちょっと手書きで追記してみたり…など)になる可能性も無きにしもあらずです。
そのため、定款の最後の空いたスペースに、年月日と「この定款は原本と相違ない」という旨を記載します。当然ではありますが、例によって「商号」と「代表取締役の名称」も記載する必要があります。
払込証明書
発起人設立の場合は非常に簡単です。単純に、発起人の口座に必要な金額を入れて、その通帳のコピーをとって提出するだけです。ただし、募集設立の場合は、このような簡単な方法ではないことが注意点となります。
募集設立の場合は、昔ながらの方法である「払込金保管証明証」が必要です。これは、金融機関が「確かに資本金を満たすだけのお金をの出資金の払込を受けたよ!」と証明するモノ。
したがって、払込後、会社設立の登記が完了するまで、お金は保管されるため使うことができませんでした。加えて、認証を受けた定款のコピーだったり、払込事務取扱委託書、発起人会議事録を始め、いくつもの添付書類も用意しないといけません。
非常に面倒となるため、どうしてもミスが出てしまうことに。こちらの方法を選択した場合は、しっかりと丁寧にこなしていきたいところですね。
就任承諾書
会社の役員に選定され就任することを承諾したことを証明する書類です。実はこれ…この承諾書を作成しなくてもよいケースがあります。
定款に設立するときの取締役、代表取締役の選任・選定の記載がありますが…これらの役員が「発起人」でもある場合が作成不要のパターンとなります。
ただし、法務局には登記申請書の「設立時取締役及び設立時代表取締役の就任承諾書」に対して「設立時取締役及び設立時代表取締役の就任承諾書は定款の記載を援用する」と記載する必要があります。
取締役の印鑑証明書
印鑑証明書には有効期限があるケースがあります。
- 代表取締役が印鑑届書を提出するケース
- 株式会社の設立時における定款認証
上記の場合は、発行した日から3ヶ月が有効期限となるため注意が必要です。逆に以下の場合は、有効期限がないケースとなります。
- 取締役の就任承諾書
- 代表取締役の就任承諾書
- 不動産登記における利益相反決議
当然ではありますが、印鑑証明書に記載されている住所と現在住所が同じになっているなど、異なっていないことが前提です。このように取締役の印鑑証明書は、有効期限がある場合とない場合があるため、注意しておきましょう。
印鑑届書・印鑑カード交付申請書
印鑑カードを作成するための申請書になりますが…法人の印鑑証明書を発行してもらうために必須となるカードです。したがって、会社設立の登記をする前には用意をしておきたいことが注意点となります。
発行自体は、様式にしたがって、法人名や氏名、本店の住所、印鑑での押印だけなので、難しいことは一切ありません。サクッと終わらせておくことを強くおすすめします。
発起人の決定書
発起人の決定書は定款の内容によって、記載する内容も変わるため、状況をしっかりと理解しておくことが作成時の注意ポイントになります。定款に記載されていない内容を追記する形で提出する場合もあれば、会社に出資した金額の証明書とする場合もあります。
例えば、定款に本店の所在地が最小行政区画までしか記載していない場合は、この発起人の決定書にて、番地まで含んだ住所を記載して決定する必要があります。
後者の出資した金額の証明書はそのままの意味で、発起人が複数人いれば、全員の署名と押印が必要となるため注意ください。
署名捺印と使用する印鑑
署名捺印とは、契約書を始めさまざまな書類に対して「署名した後に印鑑を押すこと」を言います。ちなみに、記名捺印という言葉もありますが…こちらは、その人の署名ではなく、代筆だったり、ゴム印やワープロで名前を表示した後に印鑑を押すことをいいます。
どちらの方が法的な効力や証拠能力があるのか?と言われると、当然、後者になります。したがって、書類の重要度によって、署名捺印をするのか?記名捺印にするのか?を見極めていかなければなりません。
当然、ここで紹介しているような登記に必要となる書類たちは、基本的には署名捺印となります。ただし、使用する印鑑は、状況によりけりです。印鑑登録されている実印だったり、法人実印だったり、それこそシャチハタでも問題がないケースもあります。
こちらも、書類の重要度によって異なってきます。都度都度、使い分けていくことが注意ポイントになります。
まとめ
かなりの長文になってしまいましたが…いかがでしたか?あまりの多さにびっくりしてしまった人も多いかと思いますし、げんなりしてしまった人もいることでしょう。
いくら「会社設立しやすい時代になった」と言われてはいますが、面倒な部分は面倒だということですね。冒頭で記載した通り、中には「専門家に依頼する」という選択を考えているかもしれません。
だからといって、上記で記載した内容をまったく知らない状況は避けましょう。会社設立をした以上、どのようなことをして、どんな責務を果たさないといけないのか?など、事業者側としては理解しておく責任があります。
それを理解して始めて、従業員を雇うこと始め会社を運営することができるからです(深く理解しろということではなく「こういうことをしないといけない」程度の理解でよいですが)。
文字だけでは理解できない部分もあるかと思うので「やりながら覚える」ということも念頭に会社設立を進めてもらえれば幸いです。