作成日:2020.12.13  /  最終更新日:2020.12.11

フィリピンの会社設立にかかる費用・必要書類を徹底解説

フィリピンは現在人口が1億人を突破し、東南アジアの中でも高い経済成長率を誇っています。

将来性も十分に見込まれるフィリピンは世界から投資家が集まり、フィリピン語だけでなく、英語も話せる人が多いため、コミュニケーションが取りやすいです。

フィリピンで会社を設立するにはきちんとした手順を踏む必要があります。また設立が海外ともなればさらに入念な準備が必要になるため、設立の知識を身に付けておきましょう。

今回はフィリピンで会社設立をする際の費用や必要になる書類について詳しくご紹介します。

どのくらいの費用を用意すべきかがわかりますので、会社設立を考えている方はぜひ参考にしてください。

フィリピンで会社設立するとかかる費用

フィリピンで会社を設立するためには様々な費用が掛かります。

(1)資本金

資本金とは創業者の自己資金のことです。出資者や自身の他に株を所有している人がいて、創業時に出資を受けた場合はそのお金も資本金に分類されます。

日本では2006年の会社法改正後、資本金1円からでも会社を設立できるようになっていますが、フィリピンでは法律が少し異なります。

フィリピンで会社を設立する場合の資本金は、設立する会社によって変わります。

先端技術を使用せずに50人以上の直接雇用をしない場合は20万USドル(日本円で約2000万円)、先端技術を使用して50人以上の直接雇用をする場合は10万USドル(日本円で約1000万円)です。

この金額は最低資本金です。先端技術の有無や直接雇用の人数からどれくらいの費用が必要かを知っておき、設立前に全額準備しておきましょう。

(2)オフィス賃料

フィリピンで会社を設立するのであれば、会社を置くオフィスが必要です。そのためオフィスの賃貸料についても考慮しておきましょう。

オフィスを借りる際は賃貸料の他に保証金も用意しておかなければなりません。保証金はどこのオフィスを借りるかもよりますが、オフィスの賃貸料数か月分となることが多くなっています。

オフィスを借りる場合は現地の不動産に仲介を依頼するかと思いますが、不動産を介して借りる場合は仲介手数料も発生します。

オフィスを借りるのであれば現地に出向いてからになるかと思います。早めに借りるつもりならおおよそのオフィス賃貸料と保証金、仲介手数料を前もって準備しておくと良いでしょう。

フィリピンの首都であるマニラは世界の最先端グローバル都市の中でも特にオフィス賃料が安い都市と言われています。相場は以下の通りです。

  • 個室 51,500ペソ~/月(日本円で約11万円)
  • シェアオフィス 15,000ペソ~/月(日本円で約3万円)
  • バーチャルオフィス 5,500ペソ~/月(日本円で約1万円)

立地が非常に良い場所であっても低価格であるオフィスが多いため、オフィス賃料を抑えたい方でも好立地のオフィスを見つけられるでしょう。

(3)会社設立登記料

会社設立の登録費用として100ペソ(日本円で約200円)が必要です。登録の前に商号の予約手続きを行い、商号確認書を受け取っておきます。

商号確認書には有効期限があり、有効期限が30日の場合は100ペソが必要になります。

証券取引委員会に登録する場合の登録料も必要です。登録料は授権資本額の1%の10分の1にその20%をプラスした費用です。

授権資本額とは会社で定められている発行できる株式の総数のことなので、登録料は会社によって異なります。その他に調査手数料として登録手数料の1%、付属定款の手数料210ペソ(日本円で約450円))が必要です。

(4)法人税

会社を経営する場合は法人税についても考えておかなければなりません。法人税は国内法人・居住外国法人・非居住外国法人のどれに該当するかによって異なります。

居住外国法人とは、その地に1年以上住んでいる生活拠点を持つ海外国籍の人が経営している会社を指します。

非居住外国法人とはその地に生活拠点を持たない、または生活拠点はあるけれど住んで1年未満の海外国籍の人が経営している会社を指します。

自身の状況によってどれに該当するか、また法人税も異なりますので法人税を支払う時期になった時の状況から税額を計算しましょう。

(5)ビザ申請手数料

日本国籍の人がフィリピンで会社を経営する場合、フィリピンで仕事をすることになります。

海外国籍の人が海外で仕事をする場合は現地にて外国人雇用許可の申請をしなければなりません。申請をしておかないと不法就労となるため注意が必要です。

初めて申請する場合は9,000ペソ(日本円で約2万円)が必要になります。

有効期限は1年間となっており、1年を超過して仕事をする場合は有効期限が切れる前に再度申請しておかなければなりません。

次年度からは有効期限1年で4,000ペソ(日本円で約8,600円)にまで下がります。

フィリピンで会社設立後は数年間滞在して働くという方も多いと思います。数年滞在するのであれば年度毎のビザ更新を忘れずに行いましょう。

更新を忘れてしまった場合、申請すれば何の問題もなく更新が行える状態であれば入国管理局にて相談が可能です。

(6)会社運営費用

会社を設立した後は現地にて従業員の雇用を行うかと思います。雇用をする場合は従業員に支払う賃金やボーナスなどの会社運営費用がかかります。

どのくらいの人数を雇うのかをおおよそ決めておくことで事前に給与分のお金も用意しておけるでしょう。

フィリピンの最低賃金は場所によって異なりますが、首都であるマニラは日給454ペソ(日本円で約982円)です。

月に20日ほど働いた場合、最低日給で雇うなら一人当たり月19,640円の給与が発生します。

ただしこれは最低日給で働いたケースの場合です。日本と同じように職種によって給与が異なり、SEや公認会計士、IT関係といった職業は高額の給与を受け取っています。

人によっては月65,000ペソ(日本円で約14万円)の所得がある人もいます。

どんな職種の会社を設立するかによって従業員に支払う給与が異なりますので、職種別の平均給与をチェックしておくと良いでしょう。

ボーナスは基本給の1.95か月分が平均となっていますので、平均額で考えておきます。

従業員を雇う場合は社会保障制度や健康保険公社への支払いも事業主がある程度は負担しなければなりません。負担する額は支払額の8.62%+100ペソ(日本円で約216円)です。

この他に残業をする場合は残業代も支給する必要があります。またフィリピンは祝祭日が多いため、会社が休みとなる日も多くなります。

会社の都合上休日出勤もあり得るかと思いますが、休日出勤をさせる場合は基本の日給比で最大200%の給与が発生します。

日本では休日出勤の割増し手当は0~35%ですが、フィリピンは200%なので大きく差が出ます。しかし支払いは雇用者側に課せられる義務なので、支払いは免れません。

休日出勤をさせる際はこの点を考慮した上で、何人出勤させるかなどを慎重に検討しましょう。

(7)その他手続き費用

ここまで紹介してきた費用が会社設立にかかる主な費用ですが、これらの他に印紙税も発生します。印紙税は株式を発行する際にかかる費用です。

200ペソにつき1ペソの印紙税がかかります。どれくらいの株式を発行するかによって費用も異なりますので、200ペソにつき1ペソの印紙税が発生するということを覚えておきましょう。

印紙税は株式を発行してからすぐに支払わなければならないものではありません。株式を発行した月の翌月5日までが期限となっています。

フィリピンで会社設立する際の手続きと必要書類

次はフィリピンで会社を設立する手続きをご紹介します。

証券取引委員会への登録

フィリピンに会社を設立する際に必須の手続きとして、SEC(証券取引委員会)への登録作業があります。

登録をするには事業開始申請書をSECのホームページからダウンロードし、必要事項を記入します。その後提出して登録完了すればOKです。

事業開始申請書の提出の際には以下の6つの書類を添付する必要があります。

  • 社名確認書
  • 登録情報シート
  • 定款
  • 付属定款
  • 送金証明書と預金証明書
  • 財務役宣誓書

社名確認書は設立する会社名が確認できる書類のことです。こちらは事前にSECに商号の予約をしておかなければなりません。

予約後、社名の申請が許可されると社名確認書が発行されるので、その書類を事業開始申請書に添付しましょう。

注意しておきたいのは事前に予約をしておく必要があることです。予約を忘れてしまうと事業開始申請書の記入が終わってからすぐに登録できません。

社名が決まったら早めに商号の予約を取っておきましょう。

定款とは法人の目的や活動内容、構成員、基本の規約と規則などを記録したものです。定款は紙に記録するものだけでなく、電子媒体もあります。

会社内部の様々な情報を記入しておく必要がありますが、2つの内容を必ず記載するようSECが求めています。

1つ目は事業を行う場所の詳細な住所についてです。事業所がある場所の通りの名前や番地、建物内の一室を借りている場合は建物の名前も正確に記入しなければなりません。

2つ目は発起人・株主・取締役・受託者かパートナーの詳細な住所です。発起人や株主の住所は一般情報表に記入します。

一般情報表はSECのホームページからダウンロードできますので、事業開始申請書と一緒に取得しておきましょう。

付属定款とは株主総会や取締役会、会社役員などに関する規定について書かれているものです。定款と一緒に作成し、提出しましょう。

定款と付属定款についてはSECのホームページに定型フォーマットが用意されています。一から全て作り上げるのは大変なので、フォーマットを活用して記入していくと良いでしょう。

送金証明書とは資本金を送金したということを証明する書類です。前述したように資本金は約1,000万~2,000万円が必要になります。

最低額であっても高額な費用となるため、送金したことを証明する書類が必要になるのです。この書類は銀行から発行してもらえます。

資本金の支払いは銀行で法人口座を開設し、そこから行われます。支払いが完了したらその銀行で送金証明書を発行してもらいましょう。

預金証明書は指定口座にどれほどの預金があるかを証明する書類です。預金がきちんとあると証明することで問題なく会社が経営できるという証になります。

財務役宣誓書とは財務を任された人間が記入する宣誓書です。会社の資金の運営を任されている旨と資本金の支払いが完了していることを記入します。

この宣誓書はただ書いて提出すればいいだけではありません。フィリピンの公証役場で認証を受ける必要があるため、記入後は公証役場に出向きましょう。

SECへの登録前に必要な書類を全て揃えておきましょう。

事業許可証の取得

SECへの登録が終わったら次は事業許可証の取得を行います。事業許可証にはバランガイと地方自治体で取得する2種類があります。

バランガイとは年を構成する地方自治体のことで、後者の地方自治体は市町村の物です。異なるものなのでそれぞれから許可証を取得しましょう。

まずバランガイの事業許可証の取得方法をご紹介します。事業を行うオフィスがある住所を管轄するバランガイに行き、許可証の申請を行います。

手続き方法は申請するバランガイによって異なりますので、自治体で指示を仰ぎましょう。申請にはSECの登録証書とオフィスの賃貸契約書のコピーが必要になります。

次に市町村の地方自治体から取得する事業許可証についてです。こちらも事業を行うオフィスがある住所を管轄する自治体に出向きます。

申請に必要な書類数がバランガイより多いため、漏れのないよう注意しましょう。申請に必要な書類は以下です。

  • 賃貸契約書
  • SEC登録証書
  • 所定申請書
  • 定款
  • 付属定款

自治体によっては賃貸契約書だけでなく、オフィス占有許可証の提出が求められる場合もあります。念のため持って行くと二度手間にならずに済みます。

これらの書類の他に、申請時に申請手数料と地方事業税を支払わなければなりません。地方事業税とはオフィスがある都市が課す税金のことです。

このふたつの費用はどこの自治体に申請するかによって異なります。申請に行く際は多めにお金を持って行くと安心です。

事業許可証は一度取得すればその後は何もせずに済むというものではありません。毎年事業許可証の更新が必要なので、更新時期になったら忘れずに地方自治体に行くようにしましょう。

BIR登録

フィリピンで会社を設立し利益を得るのであれば、フィリピンで納税をしなければなりません。納税をするにはフィリピン内国歳入庁(BIR)への登録が必要です。

内国歳入庁とは納税者に質の高いサービスを提供するなどの目的で徴税を行っている庁です。ではBIRへの登録方法をご紹介していきましょう。

BIRへの登録前に納税者識別番号の取得を行います。この番号の取得は事業を行うオフィスがある住所を管轄する税務署でできます。

納税者識別番号の取得申請をするときはSEC登録証明書が必要になりますので、申請時に持って行くようにしましょう。

会社の登記手続きを簡素化して済ませる場合は税務署で納税者識別番号の取得を行う必要はありません。

SECに登録をする際に一緒に納税者識別番号も付与されます。納税者識別番号の取得が完了したらBIRへの登録を行います。

登録のための申請書にはフォーマットがあり、フォーマットは証券取引委員会のホームページからダウンロードが可能です。申請書をダウンロードし、記入事項を書いておきましょう。

申請時には登録申請書の他に以下の書類が必要です。

  • 事業許可証
  • オフィスの賃貸契約書
  • SEC登録証明書
  • 定款
  • 付属定款
  • 会計帳簿

事業許可証はバランガイのものと市町村の地方自治体で取得する2種類があります。賃貸契約書はオフィスの賃貸契約を結んだ際にもらえますので、忘れずに用意しておきましょう。

定款と付属定款はSECに登録をする際に作るかと思いますので、このふたつとSEC登録証明書も用意しておきます。

会計帳簿とは会社の毎日の取引を記録したもので、会社の資産や経営状況を把握できます。

この帳簿は会社法によって作成が義務付けられているので、設立後も必ず必要となりますので登録前に作成しておきましょう。

これらの書類と共に登録時に発生する手数料も必要です。

まとめ

手続きの際には登録手数料などの費用も発生します。設立準備時にかかる費用のまとめは以下です。

  • 資本金
  • オフィス賃貸料と保証金
  • 会社設立登記費用
  • SEC(証券取引委員会)への登録手数料
  • ビザ申請手数料
  • 株式発行にかかる印紙税
  • BIR(フィリピン内国歳入庁)への登録手数料

設立に必要な手続きはとても多く、4~6か月ほどの期間を要します。時間がかかりますので設立を思い立ったら早めに準備を進めましょう。

準備期間が短いと手続きに漏れがあったり、費用の用意をし忘れたりする恐れもあります。

余裕を持って進めていくことで着実に設立へと進めて行けますので、早い段階から準備を始めフィリピンでの事業立ち上げを成功させましょう。