作成日:2020.12.13  /  最終更新日:2020.12.28

【会社設立するなら知りたい】資本金1円でも会社設立はできる?

会社設立・起業の手続きについて調べると、「資本金1円でも会社設立はできる!」という言葉をたまに聞くことがあるかと思います。

ごくまれにあるケースとして、「ほとんど費用がかからず会社設立ができるんだ!」と誤解されることもあります。

しかし、「資本金1円での会社設立」は制度上は可能ですが、実際問題としてマイナスの部分も多いことや、会社設立自体に20万~30万円の費用がかかりますので、「ほとんど無料で会社を設立できる」というわけではありません。

また、会社設立を考えているけれども、現在は手元にお金がないというケースもあるでしょう。

ネット上には、「無料で法人を設立できます」と謳うサービスもありますが、専門家との長期の顧問契約や、紹介事業者の紹介サービスを使うことが前提ですので、純粋な意味での「無料」ではないことにも注意する必要があります。

このような、「資本金1円で会社設立」というワードに生じがちな誤解について、いろいろと解説をしていきます。

制度上では資本金1円で会社設立は可能

制度上においては、2006年5月の新会社法という法律で、資本金1円にて会社設立ができるようになりました。

ただ、これはあくまで、「政府が起業を促進するために、これまで存在した、株式会社の場合最低1,000万円の資本金、有限会社の場合最低300万円の資本金を撤廃した」ということが主と言えます。

会社の資本金は、会社の運営資金という意味合いも持ちます。運営資金が1円しかない会社を設立したところで、代表者他誰かがお金を入れないと、すぐに資金ショートしてしまいます。

資本金が1円の会社であっては、信用を得ることは相当厳しいと考えて良いでしょう。

また、資本金がいくらかというのは、誰でも法務局で会社の全部事項証明書を取得すればすぐ確認できますし、ネットで全部事項証明書を取得することも可能です。

最低20万円~30万円程度の会社設立費用が必要

会社設立の手続き費用としては、法人の形態(株式会社か合同会社か)・実費・専門家に依頼する手数料を含め、概ね最低20万円~30万円程度の会社設立費用が必要となります。

設立にかかった資金は、会社の設立費に含めるのですが、資本金を1円にした場合は、形式として社長(代表取締役)が費用を立て替えることとなります。

この時点で、債務超過の会社ということになってしまいます。では、その他の費用に関して見ていきましょう。

登録免許税

会社設立時には、登録免許税として、法務局の窓口で所定額の印紙を購入し納める必要があります。一般的なケースでは、株式会社が15万円から、合同会社が6万円からとなっています。

定款認証・印紙貼付

株式会社の場合は、公証人役場での定款認証が必要になります。費用として、概ね5万2千円が必要になります。また、紙の定款の場合は、4万円の収入印紙を定款に貼付する必要があります。

定款が電子化してあれば、4万円の収入印紙の貼付は不要となりますが、ただワープロソフトで定款のデータを作成しただけでは、電子定款として認められません。

行政書士などの専門家に依頼し、PDFに電子署名を付与してもらって初めて、電子定款として認められます。そのため、専門家に頼むと高く付くように見えますが、専門家に依頼することでこの4万円の印紙代が浮きます。

よって、最初から専門家に依頼する方が、時間もかからず、コストも自分でやるケースとそこまで変わりません。

また、専門家の場合、車やパソコンなどの固定資産を現物出資することで資本金に組み込むなど、現金の用意以外で資本金を手厚くする方法も理解していますので、手元の資本金を現金以外の方法で手厚くしたい場合は、相談してみましょう。

法人用の印鑑

法人の場合は、実印(法務局に登録する重要な印鑑)・銀行印(銀行取引に使う印鑑)・角印(文書などに押す印鑑)の印鑑3点セットが必須です。また、ゴム型の社判も必要になります。

この費用でも、概ね2万円~3万円はかかると考えておいた方が良いです。以上のように、会社の「資本金」は1円でもとりあえずはできるけれども、会社設立の手続きは、諸費用含め20万~40万円程度かかると留意しておく必要があります。

加えて、「資本金1円」という状況が、信用を得る上でいかにマイナスかを考察します。

資本金1円だと銀行や企業から信用してもらえない

「資本金1円」というのは、様々な意味で、信用を得にくいです。会社の運営のためのお金が1円しかない、ということを個人に置き換えてみましょう。「個人の財布に1円しかない」人に、何かお願いしたり、融資をしても大丈夫か?となってしまいます。

銀行から融資を受けにくい

銀行や日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、法人の資本金が記載されている全部事項証明書も提出します。

その中に、「資本金 1円」という文字があったら、事業に対する姿勢を疑われると共に、資本力の乏しさが伝わり、融資を受けることは相当厳しくなるでしょう。

企業との取引が上手くいかない

企業が新規で法人と取引をする際には、相手の全部事項証明書を取得したり、信用調査会社などに依頼し、相手の情報を調査するケースも少なくありません。

その際に、「資本金1円」という情報があれば、まず多くの会社は取引を躊躇するでしょう。

採用活動が難航する

人を採用する上でも、「資本金1円」では採用が難航します。単純に、自分が「資本金1円」の会社に入りたいかと聞かれたら、よほどの理由がない限り、入社をためらうのではないでしょうか。

資本金1円で会社設立がオススメな人

ケースとしては限られますが、資本金1円、もしくは少額の資本金でも問題ないケースもまれにあります。例を挙げてみると、

  • 既に個人事業をしており、個人として信用はあるが、節税目的で株式会社・合同会社などの法人化をする
  • 自身が不動産を管理しており、不動産管理会社として法人を設立する
  • Youtuberが増えている現在、動画コンテンツ配信や動画編集の受託を目的に法人を設立する
  • アフィリエイト・Webライターなど、ネットを通した事業で、元手がさほどかからず、取引相手が資本金を重く見ない場合の法人設立
  • 資産管理会社として合同会社を設立する

このように、節税・お金を借りる必要がないし、取引先に、資本金を気にする企業がいなければ、資本金1円でも会社設立は可能ではあります。

ただ、この場合でも、事業が拡大するのに合わせて、増資を行う必要性が出てくる可能性は高いです。再度増資を行うと、司法書士に依頼し手続きを行う必要があり、その費用もかかります。

結論:資本金1円で会社設立は可能だが現実的ではない

ここまで、「資本金1円」での会社設立に関して見てきました。形式上、「資本金1円」での会社設立はできても、運営に関しては実質的に難しいということがおわかりいただけたかと思います。

また、資本金1円の場合は、よほどの事がない限り、開業費等も含め、設立直後に債務超過に陥ってしまいます。資本金をしっかり用意し、ある程度財務面をきちんとした上で、会社設立をする事がベターです。

「資本金1円の会社設立」というのは、よほどの理由がない限りお勧めしづらいです。「資本金1円」というのは、信用面・財務面で相当にハンディを負うので、ぜひある程度の資本を用意した上での起業・会社設立をお勧めします。