会社を設立し、建設業として一定規模以上の工事を受注する場合は、建設業許可の取得が必要になります。
建設業許可を未取得でも、軽微な工事を受注することはできますが、後ほど説明する「一定規模以上の工事」を行う場合は、建設業許可が必要となります。
この際に注意するのが、建設業許可の取得に関しては、人やお金(資本)に関する要件が必須であり、要件を満たさないと、建設業許可は取得できないということです。
具体的な金額としては、一般建設業で500万円以上の資本金(もしくは自己資本)、特定建設業で2,000万円以上の資本金と4,000万円以上の自己資本が必要となります。
会社設立をして始める場合は、一般建設業からスタートすることが多いと思いますが、それでも500万円という資本金は大きな金額と言えます。
そのため、建設業の会社設立を行う前に、建設業許可の取得を前提に資本金を十分に用意しておく必要があります。
また、建設業許可取得に関しては、手続きの流れ、人に関する様々な要件もありますが、当記事では「資本金」の部分に絞り紹介します。
建設業許可の取得に必要な資本金額などの詳細、一般建設業許可と特定建設業許可の違いなどをまとめ、「資本金」という観点から建設業許可の取得要件を説明します。
目次
建設業として会社を設立する場合「建設業許可」の取得が必要
会社を設立した際、一定の業種は、国や地方自治体へ「許認可・届出」を行う必要があります。
具体的には「この業種の仕事に携わっていいですよ、認めますよ」という「許可・認可」や「この仕事をしますので届出ます、書類を受け取って下さい」という「届出」(内容や要件に問題があれば、却下され受理してもらえない)を行う必要があります。
そもそも建設業を始め、多くの業種では、なぜ許認可・届出などの、一見手間のかかる手続きが必要なのでしょうか。
それは、扱う内容が生活・環境・安全・生命・お金など重要なものであるためです。
許認可・届出の必要な業種で主なものを挙げると「建設業許可」「産業廃棄物収集運搬業及び処分業」、「宅地建物取引業」「食品営業許可申請」など、人々の生活の根幹に関わる業種は、たいてい許認可・届出が必要となります。
また、悪質な業者が出ることを規制するために、「探偵業」「債権回収業(サービサー)」「貸金業」など厳しい規制を加えている業種もあります。
上記のような、許認可・届出が必要な業種では、その業種に応じた一定の要件を満たす会社でないと、依頼者・第三者が不利益を被る可能性があります。
例えば、建設業で考えてみましょう。
建設業の経験のない、またお金もない会社に依頼して、結果として「工事ができませんでした、お金も戻ってきません」となってしまっては、依頼した側にとって損害になります。
このような事態を防ぐため、建設業を始めるためには、国土交通省や都道府県から、「この事業者が建設業を行って良いか、技術はあるのかという審査を受け、許可を得るという「建設業許可の取得」手続きが必要になるのです。
建設業許可とは
では、建設業許可とは何かについて、東京都の建設業許可の手引を元に解説します。
建設業の定義は、「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負うこと」とされています。
つまり、一般的な建設工事に関わる場合、「原則として」建設業許可を取得しないといけません。
ただし、「例外」として、
- 建築一式工事以外の建設工事で、1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税、材料費、運送費等込み)
- 建築一式工事で「1件の請負代金が1,500万円未満の工事(消費税、材料費、運送費等込み)」か「請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積が150平方メートル未満の工事 (主要構造部が木造で、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するもの)」に該当
上記に当てはまる場合は、「軽微な建設工事」扱いとなり、許可を受けなくてもできます。
しかし、軽微な建設工事となると、扱える範囲が非常に限られてしまいます。
そのため、建設業を行う上では、事実上建設業許可の取得が不可欠になるといえます。
建設業許可は、一般建設業と特定建設業に別れており、下請金額の制限、許可を受けるための要件等が異なります。
建設業許可の種類や資本金以外の要件など、詳細に関して書いていくと複雑になるので、今回は「一般建設業許可と特定建設業許可の、できること及び必要な資本金の面における違い」に絞って説明します。
一般建設業許可とは
一般建設業許可の場合は、先ほど述べた軽微な工事以外の建設工事全般を受注することができます。
ただし、後ほど説明する特定建設業と異なり、下請契約の締結に関して制限が付く点は留意する必要があります。
具体的には、発注者から直接請け負う工事1件につき、4,000万円(建築工事業の場合は6,000万円)に満たない下請契約を締結することが可能です。
上記の金額を超える下請契約を締結する場合は、特定建設業許可を取得する事が必要となります。
特定建設業許可とは
特定建設業許可は、一般建設業許可の特徴に加え、下請契約に関する金額の制限がないというメリットがあります。
建設業の業態だと、下請の事業者に依頼して工事を行うことは一般的な慣習となっています。
下請金額の制限がないということは、大きな工事を受注する上で強みになります。
また、特定建設業許可を取得していることで、「技術・財産面の基盤もしっかりしている」として、より信頼を得やすくなります。
建設業で会社設立する場合に必要な資本金
建設業で会社設立をする場合に必要な資本金は、一般建設業・特定建設業で大きく異なります。
それぞれのケースについて説明します。
一般建設業許可の場合
一般建設業許可の場合は、最低500万円以上の資本金が必要となります。(もしくは、取引金融機関発行が発行して1ヶ月以内の、500万円以上の預金残高証明書など、500万円以上の資金調達能力があること)
一般的には、建設業を一から創業する場合、一般建設業許可からスタートし、事業の成長にあわせて特定建設業許可に移行するケースが多いと想定されます。
特定建設業許可の場合
特定建設業許可の場合は、資本金が2,000万円以上かつ、自己資本が4,000万円と要件が厳しくなっています。
いきなり2,000万円の資本金を用意するということは、高いハードルになります。
さらに、自己資本として、(期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)-事業主貸勘定+利益留保性の引当金+準備金が4,000万円以上であることが求められます。
このように、特定建設業許可は、多額の資本金と自己資金が必要です。
前述の通り、一般建設業許可からスタートし、事業の拡大や取引先の要請などに応じ、特定建設業許可の取得を図るという形が自然といえます。
まとめ
今回は、資本金・自己資本などの観点から、一般建設業許可・特定建設業許可の要件を見てきました。
建設業許可は、資本金以外の面でも、今回詳細な説明を略したヒトの点でも厳密な要件があります。
建設業許可の取得の手続きは、経営者自身でも行うことは可能はあります。
しかし、書類の作成は非常に複雑であるため、実際の申請手続は行政書士が扱うケースが多いです。
建設業許可で怖いのは、会社を作る手続きに入ってから、「実は、資本金他の要件で、許可基準に該当しない部分があった…」という事態です。
資本金に関しては、一般建設業許可のレベルであれば、後から調達することはできます。
しかし、ヒトの部分で欠格要件に当てはまってしまうと、会社を設立したのに建設業としてできることが大きく限られてしまうことになりかねません。
この点も含め、会社設立前から専門家の力を借りた事前相談と計画が重要と言えましょう。