会社を設立して運営していくにおいて大切なもの1つが会社の財源である「資本金」です。
また、会社を運営していくにつれて、利益と資本金の額のバランスを考えるようになりますが、その時に考えなくてはならないのが「資本準備金」と「資本剰余金」です。
この「資本金」「資本準備金」「資本剰余金」というのはどのような関係で、どのようなときに使っていくのでしょうか。今回は会社の「資本」について詳しく解説します。
意味合いをしっかり理解して、起業者として一歩先へ進みましょう。
目次
会社設立するなら知りたい「資本金」の意味と用途
資本金と聞くと、多くの人は「会社の財産」という印象だけもっているのではないでしょうか。
もちろん会社の財産ではありますが、経営を考えているのであれば資本金の意味をもう少し詳しく理解しましょう。
意味:出資者が払ったお金のこと
まず、資本金について規定してある会社法の条文はこちらです。
会社法445条
1 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となるものが当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする
会社法の内容からすると、資本金は会社の設立や新たに株主を募集したときに、払い込まれる金額という意味になります。
資本金は会社法かつ登記(会社法991条3項5号)及び貸借対照表を通じて第三者に公開される額として、少なくともその金額に相当する財産を株式会社が確保し、維持しているということを証明しています。
株式会社の株主は払い込んだ出資金のみ責任を負うに過ぎないため(間接有限責任)、会社の債権者が引当てとして期待できるのは会社の財産のみです。
会社がどのくらいの資産をもっているのか、最低限資本金に書かれた金額は債権者にとって重要な情報となります。
つまり、資本金とは会社の債権者を保護して、株式会社の信頼を確保するためその担保ということになります。
そしてもう1つの意味があり、それは株主に対しての利益の指標です。
株主は出資をしている以上、会社に利益が出れば、金額に応じて配当を受けることができます。
しかし、どのくらい利益が出れば配当を受けることができるかわからないため、会社の財政状況を把握することが大切になってきます。
そこで資本金のもう1つの意味は「これ以上の資産がない限り株主に配当しません」という”株式会社の器”を株主に表しています。
<さらに詳しく>
資本金には「資本不変の原則」というものがあります。
資本不変の原則とは、一度定めた資本金の額を自由に減少することを禁止するという原則のことをいいます。
文字だけ見ると、資本金の額を変えてはならないように思えますが、資本金の額を増加することは、会社財産を確保するための基準となる金額が増加することであって会社債権者にとって有利であるため認められます。
これに対して資本金の額を自由に減少してもよいことになると、本来剰余金の配当が出ていない場合でも、資本金の額を減少することによって配当できてしまうことになり、会社財産を確保できなくなってしまいます。
そのため、資本金の額の減少を行うためには、法定の厳格な手続きが必要になります。(簡単に言えば会社債権者の許可が必要になるということです)
用途:運転資金などに当てられる
資本金はその事業を始める元手となります。金融機関からの借入金などと併用して、交通費や機材などの運転費用に充てることができます。
会社のためのお金なので社長が個人の利用のために引き出すことは認められていません。
<ポイント>
※金融機関からの借入金と併用と書きましたが、資本金は借り入れたお金を組みことができません。
資本金というのは会社の財産であって、返済しなくてはならないお金では、財産という担保は成り立たないからです。
会社設立するなら知りたい「資本準備金」の意味と用途
次は資本準備金について説明しまします。まずは条文を見てみましょう。
会社法445条
2 前項(設立又は株式の発行時)の払込みまたは給付に係る額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことができる
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない
資本剰余金の1つで資本金の1/2未満で万が一に備えるお金
株式発行の際に払込・給付額の2分の1までの額を資本金として計上しないこととし、資本準備金として計上することが会社法445条2項と3項で認められています。
資本金の額が高くなると、株主に配当するのが難しくなるといった理由により、払込・給付額のすべてを資本金に計上したくない株式会社もあるためです。
用途:節税対策と万が一の備えで使える
資本準備金の最大のメリットといえるのは節税対策と万が一の補填のために手軽に切り崩せるという点です。
資本金が減るため節税できる
資本金を減らし、資本準備金に組み入れるメリットの1つが節税です。
例えば消費税は原則どんな会社でも支払う義務がありますが、無条件で「資本金が1,000万円未満の会社は1年間免除」という規定があります。
なお、売上高を抑え、従業員に支払う給与も調整することによりさらに1年消費税の支払いを免除することができます。
赤字の補填として使える
例えば今期の売上が芳しくなく、赤字決算になってしまう可能性が出てきた場合に、資本金を切り崩すのは、手続きが煩雑で、登記も必要になります。
しかし、資本準備金を使えば、欠損部分を補填するという形で赤字を解消することができ、取引相手や金融機関への信用を保つことができます。
資本金を上げ、企業の信頼を得やすくなる
例えば近いうちに金融機関から融資を受けたいと思っているときに、資本金を上げることによって、信用が得やすくなります。
また、対企業からみても、取引相手として問題ないかの判断を資本金で判断することがあるため、資本金を増やす手段として、資本準備金を用意しておくことは有効です。
会社設立するなら知りたい「資本剰余金」の意味と用途
最後に資本剰余金の説明をします。
資本金と資本準備金とはまた異なった性質をもつ資本剰余金ですが、こちらもイメージをつかめば難しくありません。
意味:資本金として払込しなかったお金のこと
まずは会社法のこちらの条文を見てみましょう。
第453条 株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。
資本剰余金とは、会社設立時や株主から集めた資金等のなかで、資本金や資本準備金とされなかった資金のことです。
配当金の原資として使える
資本金と資本準備金との大きな違いは、株主に分配する配当金の源資となる点です。
資本剰余金として株主に配当する場合は、資本金と資本準備金を取り崩し、資本剰余金を増額させて行うことも可能です。
まとめ
資本金という言葉は聞いたことがあっても、資本準備金や資本剰余金という言葉はあまりなじみがなかったのではないでしょうか。
会社を経営していくうえで、これらの用語は意味を理解することはとても大切になります。この3つの簡単な定義をまとめると以下のようになります。
- 資本金・・・債権者及び株主のための会社の財源の指標
- 資本準備金・・・会社に何かあった時の補填金、節税対策が可能
- 資本剰余金・・・株主に配当することができる会社の利益
今後会社を設立するのであれば、「資本金」に関する話は会計上たくさん見ると思いますので、今回の内容をぜひ参考にしてください。