作成日:2020.12.05  /  最終更新日:2020.12.11

会社設立後に資本金は利用できる?【メリットや注意点を解説】

会社設立時に、「資本金」を用意することが必要なことは、多くの方がおわかりかと思います。

しかし、この「資本金」を「どう扱うか」は意外と迷う人が多いかもしれません。

口座の中にずっと保存しておく必要があるのか、それと使っていいのか、また、使うのならいつから使っていいのか、どんな使途に使って良いのかなど・・。

また、口座に入れた資本金って、0円になっても大丈夫なの?という疑問を持つ人もいるかもしれません。

今回の記事では、会社設立時に出した資本金を事業に使えるかや、資本金の使い方に関して、知らないと怖い落とし穴など、基本的な部分を説明いたします。

資本金は、会社設立後であれば使えるが、事業に関することのみ利用できる

大原則として、抑えておいていただきたいことがあります。

それは、

  • 資本金は、会社設立が完了していれば、引き出しは自由
  • ただし、資本金は事業に関することにのみ利用できる
  • 社長が個人的な用途で会社のお金を使ってはいけない

ということです。

会社設立後は、資本金を事業のために使うのであれば自由に行って良いのですが、社長(役員)が個人的な事に使ったな、と思われる支出をしないように、注意する必要があります。

資本金を事業外に使うことがなぜまずいのか

仮に、事業以外の使途で資本金を用いてしまった場合、社長に対する貸付金を「役員貸付金」という名目で扱う形となります。

社長が個人的に行った支出については、いくら自身が100%出資した会社であろうと、経費にならず、社長への貸付金扱いとなってしまいます。

これは税金として社長個人に課税されたり、後で会社に返済しないといけないという問題があります。

さらに問題なのが、「融資を受けようとした場合、金融機関がどう見るか」です。

意外と見落とされがちですが、ぜひ設立までに知っておいていただきたい重要な事を書きます。

役員貸付金は、いろんな意味で金融機関から問題視される

この「役員貸付金」は、「金融機関」が快く思わない費目です。

金融機関(ノンバンクも含め)は、自金融機関が融資したお金を、資金使途と異なる事に使われることを、強く問題視します。

個人事業の場合であれば、事業主借入に関して、まだそこまで厳しい目では見られません。

実態として、個人事業の資金≓個人のお金という状況があるからです。

金融機関も、資金使途を具体的に指定していない限りは、まだそこまで厳しくは見ないケース、まあいいだろうとするケースもあります。

しかし、法人となると、話は違います。

個人と法人は別人格です。

金融機関からすると、「法人の会社運営のために貸したお金なのに、なぜ社長(役員)が個人で借り入れているのか?事業の為に貸したお金なのに」と思われてしまいます。

そのため、金融機関から指摘を受けたり、場合によっては融資条件の変更や今後の借入NGなどということも、場合によっては生じる可能性があります。

また、様々な形で会社の決算書を外部の人が見た場合、「社長(役員)が公私混同をしている会社」という印象も受けます。

経営者保証に関するガイドラインという観点でも不利になるおそれ

「経営者保証に関するガイドライン」という制度があります。

これは、「法人と個人が明確に分離されていること」を前提に、

  • 経営者の個人保証を求めない
  • 多額の個人保証を行っていたとしても、早期に事業再生をした場合は、一定の生活費の確保や華美でない自宅に住み続けることが可能
  • 自己破産・民事再生など一般的な法的整理と異なり、経営者本人の信用情報に傷が付かない

という利点があります。

ですが、役員貸付金がある(特に多額な)場合、「法人と個人が一緒になっている」と見られ、経営者保証に関するガイドラインが活用できない可能性が出てきます。

そのため、「社長に対する貸付金」を作ってしまうということは「税金・融資・資本と経営の分離など様々な意味でマイナスに見られる」という事は留意しておくべきです。

事業に関するお金・プライベートなお金の区別はどこで行うのか

一言で言うと、「これは仕事のために使ったお金です」と明確に説明できるかどうかです。

例えば、取引相手との会食であれば、仕事に使った物とみなされますが、家族との食事であれば、当然プライベートな支出になります。

また、行う事業が何かによっても、事業に関するお金か、プライベートに関するお金かは異なります。

例えば、eスポーツにかかる事業を行う会社であれば、ゲーム機、ゲーミングPCなども仕事に関わる物ですので、事業に関するお金として扱われる可能性が高いです。

(ただ、個別具体的なケースでどうなるかは、税理士・税務署に相談することが重要です。自分で迷う場合は、必ず税理士・税務署へ確認しましょう

いずれにしても、「仕事のためと説明が付くかどうか」は重要なポイントとなります。

資本金は会社設立後にいつでも引き出せる

最初のところで、資本金は会社設立後は引き出し自由と書いています。

ただし、一つだけ注意点があります。

預金口座に資本金が振り込まれた記録がある通帳のコピー(もしくはネットバンクの取引記録を印刷した物)、そして設立時に発起人が発行する払込証明書は残しておく必要があるということです。

言い換えると、「会社設立が完了する前であっても、通帳のコピーをしておけば、引き出して、業務のために使って良い」という点は知っておくと良いでしょう。

資本金を使い果たして0円になった場合

資本金に関する疑問で意外と多いのは、「資本金を使い果たし、手元のお金が0円になった場合はどうなるのか?」という問題です。

結論から言うと、支払い等が直近でなければ、0円でも問題はありません。

資本金は、あくまで「設立時に出資がありましたよ」という、「設立時のお金の問題」や、経営途中で資本を増資・減資したときの資本の問題でしかありません。

そのため、株主が追加出資する、もしくは金融機関から融資を受けるなどして、外部から調達をすれば大丈夫です。(ただし、支払いができない、手形を発行して不渡りを発生させる等はNG)

また、資本金がゼロになっている場合でも、きちんと活動している会社であれば、未収の売掛金やその他の資産が存在します。

売掛金の入金があったり、資産を売却すれば現金化できるので、一時的に資本金が0になる分には問題はありません。

まとめ

ここまで書いてきたとおり、いつから資本金を利用して良いのか、どのように資本金を利用して良いのかなど、「資本金の使い方」は一般の人にとっては難しい問題と言えます。

また、文中でも述べた「経営者保証に関するガイドライン」に関しては、経営者保証を受けられる経営体制を構築するプロセスで、認定支援機関である税理士や公認会計士・中小企業診断士のアドバイス、債務整理時には弁護士のアドバイスが必要になります。

このように、専門家、特に資本金の活用の場合は税理士に気軽に相談できる体制を整え、「これはうちの会社の業務内容を踏まえて、事業用として使って良いのか」が確認できる体制があることが重要と言えます。

その中で、最初のうちから税理士に依頼し、「資本金の事業目的外使用」などボタンのかけ間違えのない体制を構築する事が大切と言えます。

個人事業と異なり、法人の場合は様々な意味で、税理士他プロフェッショナルの活用が重要になります。

初期のうちから、税理士など専門家と緊密に連携し、適切な会社の体制作りを行っていきましょう。