作成日:2020.12.10  /  最終更新日:2020.12.28

【会社設立する上で知るべき】資本金の調達で借入NGの理由と他の集め方

会社設立を検討する上で、資本金がある程度必要だけれども、手元の資金が十分ではない、という人もいらっしゃるかもしれません。

その場合、金融機関からの借金で資本金を用意したり、友人・知人・家族などから借りてしまおうか、と考えるケースも出てくるでしょう。

しかし、資本金を借金で用意することは問題があります。

理由として、

  • 金融機関は資本金を使途としたお金を貸さない
  • 金融機関は融資したお金を使途と異なる使い方を、固く禁じている
  • 借りたお金を資本金として会社を設立すると、詐欺となる可能性や、期限の利益を喪失し一括弁済(借りるときの約束を破ったため、全額すぐに、まとめて返すこと)を求められる可能性がある

という点があるためです。

では、「お金が限られる場合、どうやって資本金を調達するのか」という課題が出てきます。

対処法などについて、検討していきます。

会社設立の基本「借入で資本金を調達はNG」

会社設立の基本原則として、「借入を行い、資本金を調達することは厳禁である」ということをぜひ覚えて下さい。

これは、金融機関からの借入だけではなく、親族・知人からの借入もですし、資金使途自由としている融資、カードローン・キャッシングでも同じです。

なぜ借入で資本金を調達してはいけないのかについて、詳しく説明します。

<h3>借入で資本金を調達した場合のリスク</h3>

まず、ほぼ大半の個人向け融資・カードローン・キャッシングに関しては、資金使途を定めるか「資金使途は自由」という文章のあとに、「ただし事業性資金は除く」と書いてあります。

「事業性資金は除く」、つまり、事業のためや事業の資本金として使ってはいけないということなのです。

もし、金融機関が、貸したお金を資金使途と異なる用途で使ったことを知った場合、「期限の利益喪失」事項に該当することとなってしまいます。

「期限の利益喪失」をかみ砕いていうと、「当初は約束した期間までに返す約束だったけど、今回あなたはお金を貸す上の重要な契約条項を破ったので、今すぐお金を全額返してください。」と金融機関から請求されることです。

もちろん、今後その金融機関との取引は、ほぼ無理となるでしょう。

また、親族・知人から借りた場合でも、特に創業融資の際に、「このお金はどこから出たのか」という点をしっかりと見られます。

創業融資では、「元手となる資本を、きちんと本人がコツコツ貯めてきたか」を見ます。

創業前6ヶ月から1年の、原則全ての通帳(資本金を借りてきた通帳、公共料金の出入りがわかる通帳)の原本もしくは写しを、金融機関に提出することが必要になるケースもあります。(特に、日本政策金融公庫)

通帳を確認する中で、1年以内の時期に大きなお金の入金があった場合、「それはどこから来たのか」ということをかなり具体的に尋ねられる可能性があります。

そこで、金融機関や親族・知人などから借りたお金であることが判明すると、融資は極めて高い確率でNGになるでしょう。

会社設立の基本「出資で資本金を調達はOK」

ここまで、親族・知人から借りたお金や、金融機関で借りたお金を資本金にあてるのは、厳禁であると書きました。

ただ、親族・知人から出資してもらうことは、問題ありません。

そのため、親族・知人(もしくは法人)から「出資」という形で資本金を調達することはできるのです。

ただし、出資には注意点もありますので、後ほど詳しく説明します。

出資と借入の違い

出資と借入の違いを書くと、以下のようになります。

出資 借入
返済義務 原則なしだが、出資を引き上げるという場合は、一括で返す必要があるケースも 所定の利息をつけ、約束した期間に応じて返す必要あり
資本構成 出資者が出資割合に応じ議決権を確保する(株式会社の場合) 貸借対照表に、「借入」という項目ができる

上記の表を見ていただくと、出資の場合は、相手が出資を返してというまでは返済義務がありません。

しかし、突然出資者の状況や関係悪化などにより、出資分を返して(買い取って)といわれる可能性はあります。

また、出資に関しては、後ほど説明しますが、会社の意志決定を大きな出資者に左右されたり、出資比率(特に過半数・3分の2)によっては、経営権を出資者の側に握られることになります。

身近な人に出資してもらう発起設立がベター

このように、知人などいつ関係が悪化するかわからない人に出資してもらうより、近い親族や親など、身近な人に出資してもらう、「発起設立」という形を取ることが望ましいです。

(ベストなのは、自身で全額出資できることですが)

ちなみに、会社の設立方法としては、「発起設立」と「募集設立」があり、会社設立に使われるのは大抵「発起設立」ですが、念のため「募集設立」に関しても概要を説明します。

発起設立:設立時発行株式の全部を、発起人(出資者)が引き受ける。株式会社であれば、お金だけ出して、実際の実務はしない「発起人」という形でお金を出してくれる親族に入ってもらえばよい

募集設立:不特定多数から出資を募る形式。ただし、一般的な会社設立で使われることは少ない

上記のような違いがあります。

出資で資本金を調達する際の注意点は1つだけ

出資に関しての注意点は1つだけです。

「本当に信頼できる、裏切らない人から出資してもらう」

ということです。

出資比率によっては「他人のものになる」

会社設立に関し、親族や友人からお金を出してもらう場合でも、

  • 代表取締役ができるだけ出資の3分の2以上を占めること
  • 3分の2を下回る場合でも、最低過半数の株式は占有すること

これは、代表取締役(社長)が決定権を握る上で、重要な事項です。

詳細を説明すると複雑になりますが、出資の過半数・3分の2は、創業者が経営に関する様々な事柄を自主的に意志決定をできる、大きな分岐点です。

よほどの事がないかぎり、出資の過半数から3分の2の部分は、自身と信頼できる身内で固めることが望ましいと言えます。

クラウドファンディングで調達するのもアリ

近年、インターネットをあらゆる人が使うことになったことにより、「クラウドファンディング」という手法が一般的になってきました。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングは、「インターネットのクラウドファンディングプラットフォームを用い、事業の趣旨に賛同する不特定多数からお金を集める」という方式です。

クラウドファンディングを用いて、

  • 社会にはこのような課題があるから、こういうことをやりたい
  • こういう製品を作りたいので、お金を出して欲しい

などの形でお金を集めることができます。

代わりに、出資者には何らかのリターンを約束する必要があります。

インターネット上のPRや、第三者が協力したくなるリターン・ストーリーが重要ではありますが、第三者から広くお金を集め、その分を「借りたお金でも出資金でもなく」、資本金として組み込めるのはメリットです。

調達したお金は、法人化する前であれば資本金にしてOK

クラウドファンディングで調達したお金は、個人の場合は設立する会社の資本金にしても問題はありません

一方、既に会社にしている場合は、集めたお金を資本金にすることはできませんので、違いについては注意する必要があります。

クラウドファンディングを利用して資金調達する際の注意点は2つ

クラウドファンディングを活用して資金調達をする場合、急ぎで会社設立をしたい、魅力あるリターンや、明確なビジョンを掲げられないという場合は不向きです。

資本金を手に入れるまでに数ヶ月かかる

クラウドファンディングで募集をかけ、お金を集めるまでのプロセスを表にします。

クラウドファンディングプラットフォームへのアカウント開設、相談 クラウドファンディングで始めようとするプロジェクトに関して、プラットフォームに相談。

この際、反社会的勢力に該当しないか、募集内容が公序良俗などに反していないかなどの初期チェックが行われる可能性もある

クラウドファンディングコーディネーターとの打ち合わせや必要書類提出 クラウドファンディングは不特定多数からお金を集めるという特性上、より詳細な反社チェック、バックグラウンドチェック(過去に詐欺など不正行為をしていないか)、プロジェクトが本当に適切なものであるかなど、方向性の確認などのために、打ち合わせや必要書類提出が必要
プロジェクトページの考案・作成 申請者に問題がなく、プロジェクトの方向性に問題がないことがわかると、プロジェクトページの考案・作成のフェーズに入る。

各種法規などに照らし合わせ、過大な表現がないか、リターンが適正なものか、実現可能なのもかなどが問われる

プロジェクト公開 プロジェクトを一定の期間定めて公開。

目標金額をに達しないとキャンセルになるオールオアナッシング設定と、目標金額に達しなくても資金調達ができる、オールイン設定の2種類がある

資金調達完了(もしくは失敗) ここで、募集・資金調達という面では一区切りがつくが、この後の報告義務やリターンの義務がある
活動報告・リターンの準備 活動について詳細に報告し、リターンに関しても順位する
応援金額の送金 一通り資金調達と活動の中途報告が終わった時点で、システム手数料を引いた応援金額が送金される
リターンの提供・活動報告等 お金を受領したあと、活動報告・リターンの提供を行う。

実際にリターンの提供などの義務を怠ると、クラウドファンディングプラットフォームでのペナルティや、最悪民事・刑事(詐欺など)で訴えられる可能性も

以上の流れを考えると、資金調達には数ヶ月かかると考えた方がよいでしょう。

資金が全く集まらない可能性がある

クラウドファンディングを行おうとしても、アピールの仕方、内容によっては資金が集まらない可能性があります。

クラウドファンディングで資金を調達するための「共感を得る・メリットを感じてもらう」ためのポイントを集約します。

実行者の情報発信や、事業で何をするかなど理解・共感を得て、積極的に資金提供を呼びかける 事業資金を集めるためのクラウドファンディングの場合、「事業を通してこれを行いたい」「その結果社会の問題や不便をこう解決できる」など、一般の人が「それならお金を出して協力しよう」という共感、そしてお金を出して行動してくれるための呼びかけが重要
出資側に「これは欲しい」と思わせるリターンを提供する クラウドファンディングのリターンは、物品・サービスその他様々だが、魅力的なリターンがないと人は動かない。
共感を集め、拡散をしてもらう(ある種の祭り感覚) プロジェクトに対し、共感を得るだけでなく、様々な人に拡散してもらうことで取り組みを知ってもらうことも重要。

取り組みが幅広く認知されることで、会社設立時からサービスの存在を認知してもらえ、協力者も得やすくなる

このように、クラウドファンディングは資金調達だけでなく、事業のプレ宣伝の効果も期待できます。

ただし、数ヶ月単位で時間がかかることと、しっかりとした準備を行わないと、時間をかけたわりに資金調達・共感が得られなかった・・・という可能性もあるので、徹底的な準備が必要です。

資本金を1円にすれば借入せずに済む

資本金は、必要とされる初期投資や運転資金を元に決まります。

逆に考えると、資本金をさほど要しないビジネスモデルであれば、資本金が1円でも問題ない訳です。(後で増資する必要はありますが・・・)

ビジネスモデルによっては資本金が少額でも問題ない

初期投資・運転資金がほとんどかからないビジネスモデルであれば、資本金が少額でも、当初は問題ありません。

たとえば、どのようなビジネスモデルが小資本・ローコスト起業に向いているのでしょうか。

受託型ビジネス 法人・クラウドソーシング経由で、労働集約型のビジネスを受注。

各種制作受託の他、アプリ制作・プログラミング、デザイン・Webサイト構築・Webライティングなど様々なものがあるが、できるだけ高単価で受注、高付加価値のサービスを提供することが要される

代理店ビジネス 各種法人から、商材の営業代行を請け負う。

営業力、根性が問われる

アフィリエイト・ノウハウ販売・オンラインサロン 現在はアフィリエイトも、検索環境の問題で難しくなったが、まだ余地がある分野もある。

ノウハウ販売は、以前「情報商材」という形で悪質かつ高価なものが出回ったので、社会的イメージが分かれる。

オンラインサロンも賛否両論あり、メンバーに継続するだけの価値を感じてもらうかがポイント

コンサルティング これまでの仕事のノウハウを活かして、業務改善・コスト削減など、「クライアントの直接の利益に繋がる」提案・改善・現場での活動を行う

このように、大半が労働集約型です。

ちなみに、アフィリエイトに関しては、初期は労働集約型の要素が特に強く、必ずしも「投下した労力に見合うリターンがある保証はない」ということは念頭に置いておく必要があります。

資本金を少額にした場合のリスク

資本金を少額にした場合のリスクは、下記のものが想定されます。

すぐに債務超過に陥る

資本金を少額にすると、帳簿上すぐに債務超過に陥る可能性があります。

専門家と相談した上での現物出資で資本金を手厚くすることや、適用できるものがある場合は、補助金・助成金などの制度活用を行うことも重要です。

そして、ともかく一番重要なのは口座の現金といえます。

帳簿上黒字でも、口座の現金が尽き支払いができなくなればおしまいです。

口座の現金は温存するよう、支出を当初は極力抑えていきましょう。

資本金の調達方法のまとめ

以上、資本金の調達方法に関し、

  • 出資
  • クラウドファンディングの活用

の活用、あわせて「小資本・ローコストビジネスの重要性」を説明しました。

資本金が限られるなら限られるなりに、最初は地道に活動することで、「無駄な出費のない、足腰の強い会社」を作ることができます。

確かに、最初は泥臭い局面が度々出てくるかもしれません。

ですが、初期の段階で地道に努力・実績を積み、成果を出せる、つまりゼロイチを生み出せる会社は強いです。

資本金が限られる場合でも、その中でとりうる方法や堅実なビジネスを模索して、地道に事業に取り組むことが重要です。