作成日:2020.12.19  /  最終更新日:2020.12.11

合同会社とは?株式会社と比べたメリット・デメリットを全て解説

近年、合同会社の形態を取る会社が増加しています。

特に、外資系の企業やプライベートカンパニー、マイクロ起業などで、「株式会社より設立が早く、組織形態も柔軟にできる」という点から、合同会社が選ばれている傾向があります。

ただ、株式会社より組織形態が柔軟でコストがかからない側面があるものの、合同会社ならではの課題や注意点もあります。

主に合同会社と株式会社を比較しながら、合同会社のメリット・デメリットをわかりやすく説明します。

合同会社と株式会社の違い

合同会社と株式会社の違いに関して、まず大まかな点がわかるように表にします。

一般的に多い株式会社を基準に、合同会社はここは違う、という切り口でまとめます。

特徴 株式会社 合同会社
設立費用 概ね25万円程度~40万円程度。

  • 登録免許税が最低15万円から
  • 公証人役場での定款認証費用52,000円
  • 専門家に依頼せず電子定款を作成しない場合は定款の印紙代4万円
  • 専門家に依頼する場合は報酬が4万円~10万円程度
  • 無料の専門家もいるが、1年以上の顧問契約など条件があるのでその点も理解
概ね10万円程度~25万円程度。

  • 登録免許税が最低6万円からで9万円安い
  • 公証人役場での定款認証が不要で0円、トータルで最低14万2千円近く安価になる
  • 定款の印紙代は、電子定款にしない限り株式会社と同様4万円
  • 専門家報酬は、定款認証の手間がない分株式会社より安価
設立期間 概ね2・3週間から一ヶ月 概ね1週間から3週間(定款認証のプロセスが省けるため)
信頼性 高い 書籍ではあまり関係が無いように書かれれているケースも多いが、一般的な経営者の見方としては、株式会社より信頼度は低くなる
役員の任期 2年~10年で設定し、任期満了後に重任の登記をする必要性。登記手続を怠ると、場合によっては休眠会社とみなされたり、過料などが科されるケースも 合同会社の場合は役員の任期を特に設定する必要がない
会社の決算公告 1年に1回以上、決算公告を官報などで行う義務 決算公告義務なし
出資者の責任 有限責任 有限責任
利益配分 出資額に応じて 出資額を問わず、業績の寄与などを加味して利益配分ができる
経営と資本の分離 経営者と資本を出す側は、同一のケースも、別々であるケースもある 経営と資本は一体である。

代表社員や社員(株式会社でいう株主)=経営者・実務者という立ち位置となる

以上を総括すると、合同会社は、「信用力は株式会社に劣るが、設立・運営にコストがかからず、プライベートカンパニーや小規模企業に向いている」といえます。

それでは、合同会社のより細かな部分に入っていきましょう。

出資者が社員となり経営に参加する

合同会社と株式会社の違いで特徴的なのは、前項でも述べた「経営と資本の分離」です。

株式会社の場合、お金を出す人と、経営や実務を実際に行う人は、同じケースと違うケースがあります。

一方、合同会社の場合は、「経営=資本」、つまり、お金を出す人が経営したり、実務に携わることが基本となっています。

出資者全員一人一票の議決権がある

株式会社の場合、資本の保有割合が大きいほど、意見が言いやすくなります。

一方、合同会社の場合は、出資額を問わず、出資者全員1人一票という形で、ある意味意思決定の側面で平等といえます。

補足:合同会社の「社員」と一般的な「従業員」の違い

ここまでの合同会社の説明で、「社員」という言葉が頻繁に出てきていますが、世間一般で思われている「社員」とは意味合いが異なります。

合同会社の社員とは、「会社に対し、お金を出し、経営にも参画する人」を指します。

また、出資者=経営参画者であれば、今後「従業員として」入社する正社員も、出資者にならないといけないのか?という疑問も出るかもしれません。

ですが、合同会社設立時に、定款に、「業務執行社員を限定する」旨の文言を入れる事で、業務執行権のある社員(業務執行社員)と業務執行権のない社員を分けて、いわゆる一般的な「出資をしない従業員」を雇うことは可能です。

逆に言うと、この点を定款で定めておかないと、後で定款を修正する手間やコストが生じますので、会社設立時に、専門家のアドバイスを踏まえ、「業務執行社員の限定」に関する文言を入れることは重要です。

合同会社として会社設立するメリットは5つ

それでは、合同会社として会社設立をするメリット5つを見てみましょう。

株式会社と比べた場合のメリットは3つ

株式会社と比較した場合の主なメリットは3つです。

14万2千円安く会社設立できる

最初でも触れたとおり、株式会社に比べ、最低14万2千円安く会社設立できます。

法務局に納める会社の設立登記費用が9万円安く、株式会社で必要な公証人役場での定款認証で5万2千円を支払わなくてよいからです。

短期間で会社を設立できる

短期間で会社を設立できるというのも強みです。

株式会社の場合、定款認証のプロセスで、書類のやりとりや資本金の入金タイミングを揃えるなど配慮が必要なため、合同会社よりも時間がかかってしまいます。

会社設立後の維持費が安くなる

会社設立後も、株式会社と合同会社では、維持費に差がでます。

役員の任期が満了した場合は、次の役員の登記手続が必要になり、登記費用・司法書士報酬が数万円かかります。

また、毎年の決算公告義務があるため、官報などへの掲載費用を、官報公告を扱う会社に依頼する必要があります。

行数や枠などにより異なりますが、普通1枠で37,165 円(2020年10月現在)の費用がかかります。

また、電子公告という方法もありますが、こちらは貸借対照表の全文を5年間公開する必要があります。

個人事業主と比べた場合のメリットは2つ

ここまでは、株式会社と合同会社という観点で比較をしてきましたが、次は個人事業主と比較してみましょう。

大まかに、個人事業主と合同会社の違いを表にした上で、重要なトピックを個別に説明します。

違い 合同会社 個人事業主
信用 個人事業主より高い 低い
設立費用 最低限で、法人登記費用6万円万円、印紙代4万円の計10万円+ハンコ作成費などの雑費が2万円程度かかる 0円。

開業届を税務署に提出するだけ

融資 受けやすいが、代表者の信用力や決算などが好ましいものであることが前提 法人よりは受けにくいケースがある
責任 出資の範囲内で責任を負う有限責任。

ただし、融資を受けるときは代表者が連帯保証人にならざるを得ないケースも多い。

ただし、違法行為などで会社が第三者その他に損害などを与えた場合は、経営者など個人が民事で訴えられたり、刑事責任を問われるケースはある

無限責任
税制優遇 一定(概ね個人事業で年収400万円)を超えると法人の方が有利になるケースが多い 赤字の場合、法人だと赤字でも均等割という形で7万円の税金がかかる
社会保険 社会保険への加入義務が発生し、万一の保証が手厚くなる分、社会保険料の負担も大きくなる 国民年金・国民健康保険など基本的なものが多い。

国民健康保険は収入が多いほど負担も大きくなる

会社と個人の財布 会社と個人の財布を厳格に分ける必要がある。

また、一度決めた役員報酬は1年間変えられず、原則として会社のお金を事業用以外に使うことはできない

原則としては事業用と個人用の財布を分けるのが一般的だが、実際は同一になっているケースが多く、好きなときにおろせる
助成金・補助金 法人を前提とした補助金・助成金は種類が多い 個人事業主向けの補助金・助成金は限定される

まだまだ違いを述べていくと様々な項目がありますが、合同会社と個人事業の壁は、株式会社と合同会社の壁以上に大きいといえます。

上記のトピックも含め、重要な部分をより深掘りします。

法人格を得られるため信用度が増す

法人格があるか否かというのは、特にBtoB(対法人)の取引の際に大きく影響します。

企業によっては、個人事業主とは取引せず、合同会社・株式会社など法人とのみ取引するケースもあります。

なぜなら、法人は設立時に登記を行うので、実態や所在地、資本金(出資金)、役員の住所・氏名がわかりますが、個人事業主の場合は、事業実態が法人と比べ確認しにくいという点があるからです。

また、法人としても、個人事業主(フリーランス)に仕事を任せて、逃げられてしまったとなると問題になりますが、法人の場合は所在や役員情報など様々な事項が明らかにされています。

対個人事業主(フリーランス)と比べると、「逃げられることは少ない、万一の際も相手を探す情報が法務局で取れる」というメリットがあります。

加えて、信用度という点では、「株式会社>合同会社」という点はあれど、合同会社と個人事業主では、法人化がされている合同会社の方が圧倒的に信用度が高いと言えます。

節税の恩恵を受けられる

節税の恩恵というのは、会社設立における大きなメリットと言えます。

具体的に、どのような節税ができるのかを表にしてみましょう。

節税手法 具体例
法人から自身に給与を支払うと、節税になるケースが多い 会社役員・サラリーマンは、もともと給与所得控除という形で、一定の額が控除されている。

個人事業のままだと控除のメリットが得られないが、法人化すると、給与所得控除など各種控除が適用でき、概ね年収400万円以上の事業主だと、法人化した方が節税になる。

額に関してはケースバイケースだが、数十万円~百万円単位での節税になるケースも

家族が仕事を手伝っている場合、家族へ給料を多くすることで税金が安くなる 個人事業の時と比べ、給与所得控除を活用したり、個人に入ってくる金額を複数人で分けることで、代表者個人で全額を受け取るときよりも課税額が減る。

日本の所得に関する税制は、累進課税という、収入が上がるほど税率も上昇するというタイプ。

社長個人で1,000万円を受け取るよりも、社長と仕事に大きく関与する配偶者で500万円ずつ分けた方が税負担が減る

法人化することで、原則として2年間、消費税の免税事業者になる 2020年現在のところ、資本金・売上等の条件はあるが、最大2年間、消費税の免税業者となる。

3年目以降は、2期前の課税売上高が基準となる

赤字の繰越控除の期間が延びる 個人の場合は3年までしか赤字を繰り越しできないが、法人の場合は10年まで延長される
その他経費の幅が伸びる 住宅を一部役員の社宅にできる、社内規定の整備で経費に当たる者を増やせる(税理士などと要相談)

専ら事業に使う車であれば、車を全額経費にできる、生命保険を経費にできる、退職金を経費にできる・・など、税理士の指導を受けることが前提だが、個人事業主の時より経費にできる幅が広がる

合同会社として会社設立するデメリットは3つ

合同会社として会社設立する場合のデメリットについても、改めておさらいするとともに、合同会社だからこそ想定しうるトラブルについても抑えておく必要があります。

株式会社と比べた場合のデメリットは3つ

株式会社と比べた場合の大きなデメリットは3つで、「信用度の問題」、「内紛の時に資本の原理で押し切れない」「資金調達の選択肢が狭まる」という点になります。

株式会社に比べて知名度と信用度が低い

これまでも書いたとおり、合同会社は近年でこそ名前が知れ渡るようになり、大手外資企業も合同会社の形態を取っていますが、やはり株式会社と比べると、「合同会社?なぜ合同会社なの?」となることはあります。

例えば、賃貸業や節税のためのプライベートカンパニーなど、あまり会社の存在を外に出す必要が無ければ関係はさほどないですが、一般的には株式会社の方が信用度が高いといえます。

社員同士の対立が起きやすい

合同会社に関する説明で、株式会社は出資比率で発言権が決まるが、合同会社は出資比率を問わず、一人一票のような仕組みになっていると書きました。

例えば、社員一人という完全なプライベートカンパニーであればともかく、複数人が社員として出資をすると、多数決で数の多い方の意見が通るようになります。

株式会社であれば、代表取締役が100%、3分の2、過半数というラインを維持することで発言権を保てますが、合同会社の場合、あくまで出資額ではなく、人数が多い方が勝ちなのです。

完全に1人の会社である場合は別として、複数で運営するときは注意する必要があります。

補足:定款で工夫すれば対立を回避できる

ただ、ここまで述べてきたことも、定款で代表社員の議決権を過半数(51%以上)になるよう定めておくことで、出資する社員が増えても、最後は代表社員(社長)の意志で物事を決定できるようになります。

ただ、その点に関しては、定款作成を業とする行政書士、登記を業とする司法書士双方(司法書士・行政書士の両資格を持つ人も多いです)に相談し、代表社員が議決権を確保できるよう定款を考案してもらう、また利益配分に関しても、出資額に応じたものにしたり、制度として可能な範囲内で、代表社員に有利な仕組みにするなど、工夫することが重要です。

上場ができない

合同会社は、株式会社と異なり上場ができません。

しかし、これもシンプルな解決法があります。

後から株式会社に変更すればよいのです。

補足:後から株式会社に変更は可能

合同会社として当初設立しても、株式会社に変更することは可能です。

ただ、諸経費がかかりますし、上場を見据える場合は定款・内部規定・監査体制・コンプライアンス遵守等、株式公開のための準備に関し、様々なプロフェッショナルの力を借りることになります。

資金調達の方法が限られている

株式会社の場合、事業には参加しないが、お金を出資するという人・会社を集めることは可能です。

一方合同会社の場合、出資=社員となり、経営・運営に参加するということが前提となるため、ベンチャーキャピタルからの出資など、株式会社を前提としたいくつかの資金調達方法が使えなくなります。

合同会社の設立に向き・不向きな事業

それでは、合同会社に向く事業・不向きな事業とはどのようなものがあるのでしょうか。

合同会社が向いている事業

  • プライベートカンパニー・個人が節税のために作る会社など、あくまで節税のための手段として会社設立を行うケース
  • 毎年の決算公告義務を負いたくないケース
  • 不動産賃貸管理業・インターネットビジネス・1人でマイクロ法人を設立し行うビジネス
  • 「あくまで地道に、こぢんまりとやっていく」という場合

<h3>合同会社が向いていない事業

  • 会社として急成長をしたい・株式の上場を果たしたい
  • 外部から資金調達を積極的にしたい
  • BtoBの比率が高く、株式会社の方が信頼してもらいやすい業種

以上のケースの場合は、合同会社ではなく株式会社を選んだ方がよいといえます。

まとめ

以上の通り、合同会社を株式会社、個人事業と対比し、メリット・デメリットをできる限り解説しました。

合同会社のメリットは、迅速に設立でき、小回りがきき、制度設計にも柔軟性がある所です。

ただし、その良さを活かすには、設立する側が合同会社に関してより理解を深めることと、専門家である、税理士・行政書士・司法書士・社会保険労務士などとのコミュニケーションにより、「どうやったらより制度を活用できるか」という観点でアドバイスや制度作りをしてもらう必要があります。

ぜひ、この点は専門家の知見を活用しながら、合同会社という制度をしっかり活用して下さい。