作成日:2020.12.19  /  最終更新日:2020.12.11

副業中のサラリーマンが会社設立するメリット【生活面から見てもお得】

副業中のサラリーマンにとって、売上がある程度増加すると、「法人成りをするかどうか」で迷う人も出てくるのではないでしょうか。

「ある程度の売上になると、法人化したほうがいい」ということはよく聞くかもしれません。

ただ、それが具体的にはどれくらいの売り上げなのか、加えて自分がサラリーマンとして、副業をやっている立場だと、「立場上会社設立してよいのか」、「リスクはないのか」など、気になる点も多く出てくるかと思います。

そこで、当記事では、会社員としての本業は続けつつ、副業のために会社を設立するメリット・デメリット・注意点(会社設立や副業がNGのケース、またその対処法)を考えていきます。

サラリーマンが副業で会社設立するメリット

まず、サラリーマンが会社設立をするメリットを端的に挙げると、「信用向上・節税・責任の軽減」というポイントとなります。

この会社設立の一般的なメリットに加え、2020年になってから、副業が「本業のリスクヘッジ」という側面も大きく出てきました。

新型コロナウイルスの蔓延により、様々な業態において、経営が転換期を迎えています。

給与や人員削減などを行ったり、テレワークの推進により残業が削減されるなど、会社側としても、これまでのように「仕事一本に専念して」といえなくなっている状況があります。

こんな状況でも、副業がある程度軌道に乗っていれば、「本業に何かあっても副業がある」という心持ちで対応できます。

また、副業の種類にもよりますが、副業をすることによって、本業で接する人たちとは異なる層と関わるようになります。

本業とも異なる経験をすることで、結果的に本業の方にも活きるケースがあります。

社会は、これまでの「同じ仕事一筋」から「副業によるパラレルキャリアの推進」に舵を切っています。

そんな現状において、サラリーマンが副業を行う、そして会社を設立するということは、以前よりも違和感なく受け取られるようになりました。

ビジネス面でのメリット

ビジネス面でのメリットは、節税・責任の限定化・信用力の向上が大きなポイントです。

ご存じの方も多いかと思いますが、副業での会社設立に関して、改めて整理していきましょう。

節税効果が高い

個人事業主で行うより、節税効果が高くなるケースが多いです。

特に、売上が1,000万円を超える時(消費税の免税の関係)や、会社の利益が年間400万円~800万円を見込めるようになったら、会社設立を早く検討した方がよいでしょう。

また、会社にする前に税理士と相談し、「現状の事業を会社にすることによるメリット・節税効果」を十分に検討することも重要です。

有限責任になる

法人化することで、ビジネスが個人から法人という「ハコ」に移動します。

個人事業の場合は無限責任であったものが、法人の場合は「出資額の範囲内で責任を負う」という有限責任になります。

ただ、金融機関などから借入をする場合は、代表者が連帯保証をせざるを得ないケースがあります。

その場合は連帯保証の範囲で責任を負うこととなります。

ただ、現在は経営者保証に関するガイドラインという制度が存在し、会社に万一のことがあっても、できるだけ代表者の信用情報や財産に影響を与えないよう、穏やかな事業の幕引きができる制度も整備されています。

(経営者保証に関するガイドラインの活用の際は、認定された弁護士・税理士など専門家や金融機関の関与が重要になります)

信用力が得られる

会社として登記することにより、信用力が得られます。

大手の会社ほど、個人事業主ではなく法人と取引をする傾向があります。

また、個人の立場としても「(個人事業の)代表」と「会社の代表取締役」では、外部からの見え方に大きな差があります。

生活面でのメリット

副業に関し会社設立を行うことは、生活面でもメリットがあります。

家族旅行も慰安旅行として経費で落とせる

まずこれは、全ての場合で慰安旅行として経費で落とせるわけではない、ということはあらかじめ注記しておきます。

加えて、原則家族が仕事を手伝ってくれていること、法人で旅費規程などを定めておくこと、帰省など、明らかに慰安旅行ではなくプライベートとみなされるものは控えることが必要です。

家族経営をしていて、会社の役員・専従者などである家族とともに、年1.2回の頻度で行くのであれば、慰安旅行扱いとしてもさほど問題はないでしょう。

(あとで税務署に否認されないよう、一般的に慰安旅行として認められる範囲を、事前に顧問税理士に相談することが重要です)

法人契約すれば家賃も会社の経費にできる

住居が、「事業として使っていいですよ」と大家さんが認めてくれる物件であれば、法人として自宅を賃貸借契約することで、家賃を会社の経費とする事もできます。

ただ、これも実態等によっては、後で税務調査があった際に否認される可能性もあるので、顧問税理士にしっかりと相談することが重要です。

副業サラリーマンが会社設立するデメリット

ここまで、サラリーマンが会社設立するメリットについて触れてきました。

それでは、副業としてビジネスを行うサラリーマンが、会社設立を行う場合は、どのようなデメリット・注意点に留意する必要があるのでしょうか。

ビジネス面でのデメリット

一言でいうと「いろいろ手間がかかる」という点があります。(ただし、専門家の力を借りることで、負担がかなり軽くなります)

具体的に、どういう所が大変かを挙げてみましょう。

設立の手続きが難しい

会社設立を行う場合、株式会社と合同会社の2種類があります。

専門家に任せている場合は別ですが、株式会社・合同会社を、副業サラリーマンが自分の力だけで設立しようとすると、

  • 株式会社の場合は公証人役場と法務局
  • 合同会社の場合は法務局

に、平日の昼間に行かないといけません。

また、印鑑登録証明書など必要書類を、市区町村役場で取得する必要があります。

(マイナンバーカードがあれば、休日でもコンビニエンスストアで印鑑登録証明書が取得できます)

印鑑登録証明書取得のように、書類を取りに行くだけならまだ良いです。

しかし、公証人役場・法務局では、それぞれ「非常に」細かい書類を作成・確認し、事前に「平日」公証人役場・法務局に確認する必要があり、非常に負担感があります。

正直、副業を行うサラリーマンにとって、平日に何回も休むというのは大変でしょう。

会社設立と維持に費用がかかる

会社設立には、合同会社で最低10万円程度から、株式会社で最低25万円程度からの費用がかかります。

具体的に表にすると、以下の通りです。

費用 合同会社 株式会社
登記費用 60,000円~ 150,000円~
印紙代(自分で設立する場合のみ) 40,000円 40,000円
公証役場での定款認証費用 不要 52,000円
雑費 3,000円程度 3,000円程度
合計 103,000円程度 245,000円程度

なお、専門家に頼まず、自分だけで設立しようとすると、定款に印紙を貼る必要があります。

この場合、定款のための印紙税が4万円かかります。

ですが、専門家に頼むと、定款に電子署名を付与し、電子定款を作成してくれるため、印紙税4万円が無料になります。

専門家に頼む費用は、概ね4万円~10万円の価格帯が多いです。

そのため、専門家に依頼しても、さほど費用は変わらず、手間が大きく減るため、専門家に頼んだ方がずっと効率がよいです。

また、毎年の維持費用もかかります。

 

費用 内容
毎年の決算公告費用(株式会社のみ) 官報に決算を公告する。7万円程度かかる。

インターネット上での公開もできるが、決算内容全体の掲載や5年分継続した掲載など、条件がある

毎月・毎年の税理士費用 株式会社・合同会社にかかわらず、決算や毎月の記帳などで、20万~50万円前後の、業務量や売上などに応じた報酬が必要
必要に応じ、各種会社の登記費用 会社・役員の住所変更や会社の目的変更等、様々な変更をする際に、法務局に登記を行う必要があり、数万円がかかる。

また、株式会社の場合は2年~10年の役員の任期ごとに、重任登記が必要

法人住民税 赤字でも、最低7万円を納入する必要がある

 

以上の通り、会社は設立後も、いろいろ費用がかかると言うことは心得ておく必要があります。

会計処理で専門知識が求められる

法人の会計は、個人事業の会計と異なり、複雑です。

率直に、自分でやろうとするよりは、手続自体は税理士に一任することが望ましいです。

副業の場合は特に忙しいので、実作業は税理士に一任し、自身は決算書等会計書類、いわゆる会社の業績報告を読むための知識をつけることにエネルギーを使うべきです。

生活面でのデメリット

会社設立をする上で、デメリット・注意点も出てきます。

特に、自身が所属する組織の体制や雰囲気によって、

  • 副業が容認されている
  • 副業に関する規定はない
  • 副業が禁止されている
  • 公務員なので、農業や小規模なアパート経営等一部の業務以外を行うと、懲戒処分を受ける

など、相当幅があります。

公務員の場合は、特に副業は控えた方がよいでしょう。

(議員などの兼業が許される特別職は別です)

副業が会社にバレる可能性がある

副業が会社バレするということは、意外と発生する可能性があります。

会社バレする典型的なケースを検討します。

会社設立の登記で身バレする

会社設立登記を行うと、第三者でも登記事項証明書を取得する事により、役員の住所・氏名が確認できます。

また、地域によっては地元経済誌に、「今週はこのような会社の設立登記などがありました」と掲載される地域もあります。

このように、登記情報が意外なところで出てきますので、その結果身バレすることも、想定できます。

役員報酬をもらうと住民税の金額でバレる

役員報酬を受け取ることで、住民税が上がり、副業バレするというケースもあります。

この場合、配偶者など家族がいて、家族が主婦(主夫)か副業可の仕事をしている場合に限られますが、役員報酬を自分でもらわず家族でもらうことで、自身の住民税が上がり、副業バレすることを避けることができます。

会社に副業がバレないようにするためのコツ

他にも、会社に副業がばれないためのコツとして、後で紹介する名義の他にも、「あれ?あいつ最近やけに金回りが良くないか?」と思われないように、地味な生活を心がけることも重要です。

副業がうまく行くと、どんな人でも、調子に乗る可能性があります。

高い腕時計を買う、ブランド品を買う、車をいい車に買い換える、マンション・家の購入など・・・。

同じ会社であれば、大体誰がどれくらいの給与をもらっているのかはおおよそわかります。

その中で、少し派手な生活をしていると「あいつ大丈夫か?」と思われることがあります。

あるいは、SNSにいろいろ遊んでいる写真を載せることなども控えるよう注意が必要です。

副業バレ以外にも、あらぬ疑いをかけられては大変です。

家族の名義で設立する

前述の通り、家族の名義で会社設立し、実務は自分、名義上の代表者は家族にすることで、自身が表に出ることなく、会社設立ができます。

家族に役員報酬を支払う

同時に、役員報酬も家族に払うということで、自身の住民税などが上昇することを避けられます。

これも、副業バレを防ぐ上で、有用な裏技といえます。

余談ではありますが、現代において、今でも副業を禁じている会社というのは、旧来の「社員は自社の仕事にフルコミットすべきで、副業など余計なことはするべきでない」という考えを持った会社といえます。

現在、副業推進の流れができ、社会の意識が変わりつつありますので、上記のような古い考えをもった会社は減っていくでしょう。

本来、社員に対し仕事にフルコミットさせたい場合は、副業をする必要が無いくらいの十分な給料を払うのが筋であり、「仕事に専念しろ、しかし給与は安い」では、経営者側が労働力を搾取しようとしているととられても仕方ありません。

会社設立したほうが良いサラリーマン

会社設立をした方が良いサラリーマンに関して、2パターンをピックアップします。

課税所得が最低330万円以上~800万

課税所得が330万というラインを超えると、個人事業より会社設立をし、法人化した方がお得になってきます。

 

課税所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4796,000円

 

上記の通り、課税所得金額が330万を超えると、税率が20%と急激に上がってきます。

参考:国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率

330万円という課税所得金額は、会社設立を検討する一つのターニングポイントと言っても良いでしょう。

売上高が1000万円を超える

別記事でも言及していますが、「売上高が1,000万円を超える見込みが出たら、法人化を検討した方がよい」としているのは、「消費税が存在しているから」です。

副業の売上高が1,000万円を超えると、「消費税」がかかります。

そこで、個人事業として行っていたものを法人化をすると、個人事業で売上が1,000万円を超えていようが、設立した会社としての2年前の売上は0円だったという扱いになります。

それゆえ、最長2年分、消費税が免税され、税負担が軽減されます。

他記事でも触れたとおり、売上が1,000万円を超えたら会社にしようと言われるのは、消費税負担を最大2年、0にできる可能性があるからです。

まとめ

当記事では、副業中のサラリーマンにとって、会社設立をするメリット・デメリットは何か、そしてどういうタイミングで会社設立をするのが望ましいかを検討してきました。

副業に関しては、副業をする事がオープンに認められている会社と、そうでない会社で差があります。

また、そもそも公務員のように、法律で副業が禁止され、副業が判明すると最悪懲戒や懲戒免職になり、新聞沙汰になるパターンもあります。

会社の副業に対する考え方を見据えた上で、自身は副業サラリーマンとしてどう立ち回るべきかを慎重に考える必要があります。

それを踏まえ副業に関し、会社設立など様々な手法について検討する必要があるといえましょう。