作成日:2021.03.13  /  最終更新日:2021.03.05

ミャンマーにおける「会社設立費用・手続き」をやさしく解説

成長著しい東南アジア諸国の中でも、ミャンマーはこれから開発が進む国とされており、今後の経済成長に関し、大きく伸びしろが期待できます。

大規模都市であるヤンゴン周辺は、「アジア最後のフロンティア」と称されることもあり、多くのアジア諸国が経済発展を遂げる中でも、非常に伸びる余地がまだ残されている国と言えます。

衣料品など一部分野では、ミャンマー製の製品を見かけることは珍しくなくなりました。

今後も発展が期待できるミャンマーについて、進出・会社設立を行う際の費用や必要手続きなどの概要をまとめます。

ミャンマーに関しては、後述しますが、手続に関し明文化されていない部分が多いです。

加えて、制度全体を説明すると非常に複雑かつ長い文章になるため、あくまで「概略」を主体にお伝えします。

なお、当記事は原則2020年12月時点のデータを元に作成しておりますが、制度改正等で今後費用・手続が異なってくる可能性もあります。

具体的な手続は現地事情に通じた専門家に依頼することをぜひおすすめします。

ミャンマーで設立できる法人

日本企業がミャンマーに進出する場合は、

  • 全額日本企業出資による会社設立
  • 日本とミャンマーの現地法人の合弁企業設立
  • パートナーシップによる事業
  • 海外法人や支店、駐在員事務所設立
    の4種類が存在します。

現実的には、最初にあげた、「全額日本企業出資による会社設立」が大半と言えます。

当記事では、「全額日本企業出資による会社設立」ケースを主体に説明します。

ミャンマーで法人設立すると掛かる費用

ミャンマーでの法人設立に関しては、一般的にこれくらいかかる、という費用が特定しにくい制度の複雑さがあります。

そのため、「あくまで明文化されている範囲でわかる一般的な話」として、資本金や諸費用など、この手続でこれくらいかかるということに関して、説明します。

(1)資本金

会社設立に要される最低資本金は、業種により大きく異なります。

一般的には、サービス業が5万ドル、製造業が15万ドルの資金を必要としますが、これはあくまで最低限です。租税における優遇措置を受けるためには、30万ドルを超える投資が必要とされています。

他にも業種によって要される資本金に大きく幅があります。

専門家に「自身の業種・進出形態・場所の場合どれだけ資本金が必要か」は確認する事が必須といえましょう。

(2)オフィス賃料

オフィス賃料に関しては、物件・所在地により相当幅があります。

メジャーであるヤンゴンであれば、1平方メートルで30ドル~40ドルなどとも言われており、2020年現在は下落傾向にあるようです。

(3)従業員の給与

ミャンマーは、日本を含めた海外諸国と比べ、人件費が安いです。

平均では、日本円で30,000円程度の月給ですが、地区や学歴・専門分野により大きく幅があるのが現状です。

地域や労働形態によっては、月給10,000円に満たないケースもあるなど、現状では雇用する側としては非常に優秀な人材が安価に雇用できる反面、賃金高騰の気配もあるようです。

雇用後に、賃金水準が上昇する可能性もふまえて考えておく必要があります。

(4)ビザ申請手数料

新型コロナウイルスの関係もあり、在ミャンマー大使館によると、全てのタイプの入国ビザの発給停止措置が2020年3月28日より行われており、2020年12月現在も継続しています。

ビザ発給停止措置がいつ解除されるかは、記事作成時点では不明確ですが、参考までに商用ビザの費用を記載すると、最低の70日間が50ドル、一番期間の長い1年間のビザは600ドルとされています。

こちらも、今後コロナウイルス回復後に料金が変更される可能性もあわせ、考えておく必要があります。

(5)その他の費用

この他にも各種費用がかかり、例えば、会社の登記にかかる費用に関しては、15万チャット(日本円で約12,000円)を、のちほど述べるDICA(国家計画経済開発省・投資企業管理局)に納める必要があります。

その他の具体的な費用に関しては、ミャンマーの事情に通じた専門家に相談する事により、実費や現地でのランニングコスト、その他諸費用も含め、どれくらいかかるかを確認することが確実といえます。

ミャンマーで会社設立する際の必要書類・手続の概略

ミャンマーの会社設立は独特であり、手続の大まかな点は解説できても、詳細については説明が難しい面があります。

なぜなら、会社法・投資法などの各種法制度はあるものの、多くの手続が内部規定やこれまでの慣行に基づき行われているためです。

日本でよくある「許可申請の手引き」というものが存在しない手続も少なくありません。

紙ベースや電子媒体などで明文化されていないため、手続の時は現地の担当者とコミュニケーションを取って、という形となり、必然的にミャンマーでの申請手続に通じた事業者の力を借りないと、事実上手続が困難と言えます。

ミャンマーの会社法に基づく会社登記

DICA(国家計画経済開発省・投資企業管理局)が、会社登記を管轄します。

プロセスとしては、

・必要書類の準備及び必要事項の決定
・定款作成(必要に応じて)
DICAに対して、オンライン登記システムを通じて登記申請・登記料支払い手続を行う
・DICAの承認を通して、法人登記が完了

という4つのステップになります。

ただ、この後の「投資法に基づく投資許可申請」が必要な企業は、この後も手続が必要です。

投資法に基づく投資申請許可を行う場合の手続

投資法に基づくMIC( ミャンマー投資委員会)許可又は是認の取得を必要とする企業の場合は、大まかに下記の手続が必要です。

・MIC に対して自社の業種に関して照会を行う(ただし、回答については変更されるケースもある)
・事業を行う土地に関し、賃貸借契約書を作成する
・MICが要求する必要書類を作成する
・MICへ投資許可申請を行う(投資金額が一定以下の場合、州・管区委員会へ申請)
・MICの承認を受け、許可もしくは是認を受ける
・土地契約に関し、正式な調印手続を行う

また、DICAのWebサイトでは、投資法に基づく各種ひな形が英語で掲載されています。

輸出入者登録・銀行口座開設、保険契約・その他手続き

輸出入を行う場合は、輸出入者登録を商業省貿易局や経済特別区内に存在するワンストッ
プ・サービス・センターに対し行う必要があります。

また、法人登記完了後に、現地銀行口座の開設が必要になるとともに、ミャンマー政府が認定した保険会社と保険等契約を行う必要があります。

さらに、工場を設立する場合は、ヤンゴン・マンダレイなどの、日本で言う「市役所にあたる、City Development Committeeに許可申請を行う必要があります。

まとめ

以上、ミャンマーにおける会社設立に関して、できるだけ概要を掴んでいただけるように、複雑な部分を廃して説明をしました。実際の手続は、非常に複雑です。

会社設立手続は「明文化されていない」、外部からはわかりにくい部分が多いため、ミャンマーの現地法人設立に通じた専門事業者に依頼する事が重要といえます。

また、雇用・土地貸借などミャンマー独自の制度などもあり、例えば経済特区法に基づく会社の場合は、一定割合のミャンマー国民の雇用が義務づけられているなど、注意すべき点が多くあります。

新型コロナウイルスが落ち着きを見せ、ミャンマーへの進出を検討する際は、是非ともミャンマーの事情に通じた、会社設立事業者への相談を、強くお勧めします。

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