ラオスは東南アジアのインドシナ半島に位置し、人口は691万人あまりと、日本の埼玉県(734万人)より若干少ない程度の人口です。経済面ではまだ発展途上にあり、主要産業も農業等が主体と、はまだ成長の余地を大きく残しています。
このように「これから」の国であるラオスにて、会社設立・ビジネスを行っていきたいという方に対し、ラオスでの会社設立に関する流れ、注意点を解説します。
ラオスでの会社設立に関して特徴的なのは、外国からは参入できない事業が多いことと、事業の投資形態により会社設立の手続が異なることです。
事業としては、下記の3種類の形態が存在します。
- 一般事業(非ネガティブリスト事業及びネガティブリスト事業)
- コンセッション事業
- 特別経済区における事業
通常の会社設立では、一般事業を行うケースが多いかと思われますので、一般事業を主体に、非ネガティブリスト事業に該当する会社設立の流れを紹介します。(他のケースの場合は複雑ですので、ぜひ現地事情に通じた専門家に相談下さい)
また、支店設立や駐在員事務所の設立など、現地法人設立以外の方法も存在しますが、他のアジア諸国同様、支店設立で業種が大きく限られます。駐在員事務所の場合は営業活動ができないため、実質的に営業活動を行う場合は、多くの業種で現地法人設立を行うこととなります。
目次
ラオスでの現地法人設立について
まず、ラオスは参入できない事業や、参入に関し規制がかかる事業が多いことを理解する必要があります。ラオスでの禁止事業・ラオス国籍者のみが関与できる事業、参入規制があるネガティブリスト事業についてまとめます。
ラオスの禁止事業
ラオスへの参入が禁止されている事業は、元々他の国でも制限がかかる事業は当然として、下記の事業も制限対象です。
- 危険な化学物質を扱う事業
- 放射性鉱物を扱う事業
他にも禁止事業はありますが、化学物質を扱う事業に関しては制限があることに注意が必要です。
ラオス国籍者のみが参入できる事業
大きく14分野、36業種になり、代表的なものをピックアップします。
- 生薬の採集
- 加工:機織り、刺繍、小規模な木工・彫刻・カゴ編み、陶器の製造等民芸品
- 15MW以下の水力発電事業
- 建物内の電気工事、水道管・エアコンの設置
- 40億キープ以下の自動車・バイクの修理
- 陸上乗客輸送
- 3つ星未満のゲストハウス、リゾート、ホテル
- 新聞・雑誌の印刷、歌詞の印刷・録音、コミュニティラジオ局・コミュニティテレビ局の設立等
- 非貯蓄型マイクロクレジット、融資組合、等
- 歴史・自然・文化に関する調査、設計、建設、ラオス語翻訳、等
- 職業斡旋、建物のクリーニング等
- 技術職業訓練教育、外国人向けラオス語教育
- 民間の診療所(クリニック)
- 靴、革製品の修理、洗濯・ドライクリーニング、散髪・美容、葬儀等
診療所・電気工事や空調・水道設備の工事、陸上における顧客輸送など、幅広い業種に参入規制を行っています。
担当省庁の承認が必要なネガティブ事業
ラオスは、他国からの参入を抑制したい「ネガティブリスト」を定め、ネガティブリスト事業に関しては、規制を設けています。ネガティブリストは、14分野44業種が定められており、主に下記の業種となります。
- 農林業
- 鉱物採掘、加工業
- 加工業(石油精製、レアアース精製、医薬品生産など)
- 水道、排水、廃棄物処理業
- 輸送・倉庫業
- ホテル・レストラン業(4星以上のホテル)
- 情報通信業(出版所、メディアの設立)
- 金融、保険業(商業銀行、株式市場サービス、保険、宝くじなど)
- 職業訓練、科学技術系事業(法律、会計、監査業務など)
- 職業斡旋サービス業
- 治安維持と捜査など警備業
- 教育関連事業(就学前、初等・高等教育、職業訓練など)
- 保健衛生、社会セクター事業(民間病院、医科歯科治療)
- 芸術、娯楽(エンターテイメント、賭博、遊園地、総合観光)
このように、ネガティブリスト事業に該当する可能性のある事業は、幅広く定められています。
上記の「ネガティブリスト事業」であるか、「非ネガティブリスト事業」であるかで、会社設立の窓口が異なります。
ネガティブリスト事業に関しては、当然厳しい審査もありますので、できることならネガティブリスト事業以外の事業で進出できることが望ましいと言えます。
ネガティブリスト事業の手続
ネガティブリスト事業の企業登録は、計画投資省もしくは都・県の計画投資局内の投資ワンストップサービス室に「投資申請」という形で承認願いを提出します。
その後、投資省・ワンストップサービス室→関係機関・地方の承認→投資奨励管理委員会での審査→承認後、投資許可証・企業登録証が付与されます。(承認されない場合は、文書で非承認の通達があります)
参入に条件がある業種も多い
ネガティブリスト事業以外でも、参入に条件がある業種が多く、卸売り・小売・建設・ショッピングセンターなど様々な分野で外資、つまり日本からの出資比率上限および出資条件が定められています。この点は非常に細かいので、現地事情に通じた専門家に相談することが必須といえます。
ラオスでの非ネガティブリスト事業会社設立
ラオスにおいての会社設立手続は、非ネガティブリスト事業である場合、他国に比べ非常にシンプルです。
外資企業および登録資本金が5億キープ以上の会社は商工省企業登録管理局へ、それ以外は都・県商工局に下記の必要書類を提出します。
- 企業登録申請書
- 事業内容リスト
- 宣誓書
- 合弁事業の場合は、合弁事業の契約書
- 企業設立会議議事録
- 投資家の履歴書
- パスポートコピー
- 証明写真(3×4センチ)
- 委任状(投資家以外が申請を代行する場合)
他の諸外国と比べ異例なのが書類審査の早さです。1時間以内の審査、10営業日での企業登録証の発行と、非常に迅速な手続となっています。なお、日本の許認可のように、ライセンスが必要な業種もあります。ライセンスが必要な場合は、企業登録証発行時にライセンス取得が必要な旨が記されます。
企業登録証発行後の手続
ラオスにおける企業登録証発行後、企業登録証を公安省に提出すると、社印を取得できます。
また、ラオスの特徴的な点としては、企業登録後に、企業看板を設置する義務があります。企業看板には決まりがあり、企業名、企業登録番号、納税者番号、連絡先を記載することが必要です。その他ロゴを左上部分に掲載することが可能なのに加え、スマホの普及した現代ならではの、QRコードの掲載も可能となっています。他にも表記などのルールがあるので、こちらも専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
ラオスでの会社設立については、業種によって参入のしやすさ、参入の可能性が大きく異なります。
特に、ネガティブリスト事業や参入条件のある業種、ラオス国籍者しか参入できない業態などがあり、事前の調査は極めて重要と言えます。
そのため、参入を検討する段階での専門家への相談を十分に行い、ラオスで会社設立を行おうとしている事業が問題ないかについて、しっかりと打ち合わせをされることを強く推奨します。
ラオスでは他のアジア諸国で存在するカンパニーセクレタリー(会社秘書役)制度は明確に定められていません。しかし実務上は、現地事情に通じ、日本に拠点を置く専門家に、会社設立・現地への進出からオフィス・税務などの手続を一括してお任せすることが重要といえます。