オランダで会社設立する場合に気になるのがメリットとデメリットではないでしょうか。
メリットに納得できれば進出しやすくなりますし、デメリットを正確に把握すれば余計なリスクを避けられます。
そこで、この記事では、まずオランダの基本情報を解説した後、会社設立のメリットとデメリットをお伝えします。
デメリットとメリットの双方を比較することで、オランダでの会社設立を現実的に検討できますので、ぜひ今からお話しする内容を参考にしていただければと思います。
目次
オランダの基本情報
まずはオランダで会社設立する際に気になる次の情報について解説します。
- 概要
- 治安
- 慣習
- 政治的なリスク
概要
オランダはヨーロッパ北西部、ベルギーとドイツに隣接する立憲君主制の国家で、運河やチューリップ畑、風車で知られています。
人口1,700万人、面積41,256平方メートルと、これは九州に近い数字です。
そんなオランダですが、かつて日本とオランダ間で交わされた日蘭通商航海条約の見直しにより、日本人の起業が簡単になりました。
オランダで個人事業を始める場合、70万円ほどの費用でビザを申請できます。実際に支払うお金は15万円~20万円ほどです。
BV(株式会社)の場合は手数料の上乗せがありますが、最低資本金は個人事業と変わりません。
実際に起業する際は、大使館・外務省・移民局・市役所に行ったり、公認会計士にバランスシートを用意してもらうなど多少手間はかかりますが、日本で会社を設立しても時間と手間はかかるので大きな差はないでしょう。
治安
オランダの治安ですが、首都アムステルダムを中心に、観光地特有の軽犯罪として、地下鉄・ショッピング・休憩時のスリの事例が報告されています。
しかし周囲に注意して行動すれば、そこまで危険は高くない地域と言えるでしょう。
慣習
オランダの慣習として、まずはワークライフバランスの良さが挙げられます。
仕事と私生活のバランスを重視する国民性のため、正社員で働く男性でも、子供が産まれれば週3日は休むケースが多いようです。
日本でも少しずつ、育児休業を取る男性が増えていますので、心情を理解しやすいのではないでしょうか。
そのような国民性もあり、オランダの子供は幸福度が世界第1位となっています。
他の慣習として、公用語はオランダ語ですが英語を話せる国民が多い、という特徴があります。
英語を話せれば生活には困らないようですが、役所関係の書類はオランダ語で記載されているため、オランダ語への理解も必要になるでしょう。
また、上司への口調はフランクで、仕事中の服装は自由、常に音楽をかけて仕事を行う国民性だそうです。その辺りは日本と異なる部分ですが、一方で合理性重視の国民が多いため、ビジネスを進めやすい、という特徴もあります。
政治的なリスク
オランダには緊迫した政治的なリスクはないようです。
日本との関係で言うと、長年に渡って貿易が継続していますし、起業のしやすさで考えても良好と言えるでしょう。
オランダで会社設立するメリット
次に、オランダで会社を設立する2つのメリットについてお伝えします。
- 理想的な事業環境が用意されている
- EU進出への足がかりになる
理想的な事業環境が用意されている
オランダで会社設立することで次のようなメリットを享受できます。
- 税制上のメリット
- ビジネスプロセスのデジタル化
- ネットバンキングと電子支払いの普及
- Eコマースプラットフォームとツール
- 開かれた市場
まず税制上のメリットとしては、法人税の低さが挙げられます。
オランダの法人税はフランスやドイツよりも低いため、資金面で余裕を持つことができるでしょう。
他にも製品の輸入が必要なビジネスを手掛ける場合は、「製品輸入時の輸入VATの一時払いが不要」という税的な優遇もあります。
デジタル化・支払いシステムの普及・Eコマースプラットフォームは事業をスムーズに進める上で大切な要素です。日本と同じ感覚でビジネスを行えるのではないでしょうか。
また、オランダは移民に優しく、市場が開かれているので、小規模な事業でも継続しやすいです。
このようにオランダには理想的な事業環境が用意されています。
EU進出への足がかりになる
オランダでの会社設立はEU進出の足がかりになります。
シンガポールがアジアのハブであるように、オランダはヨーロッパのハブという見方が一般的です。地政学的にもヨーロッパの玄関口であり、アクセスしやすい状況にあります。
EU全体をターゲットにした展開が考えられるので、特にソフトウェアのようなワールドワイドな製品を手掛けていれば、よりメリットを享受しやすいでしょう。
かつてはイギリスを拠点にEU市場へ進出する企業がありましたが、ブレグジット(イギリスのEU離脱問題)以降は、オランダを選択する会社が増えているようです。
オランダで会社設立するデメリット
オランダで会社設立することで生じるデメリットもおさえましょう。
- オランダの市場だけだど事業の拡大が難しい
- 税金申告義務が生じる
オランダの市場だけだど事業の拡大が難しい
オランダの人口と面積は九州と同程度なので、オランダの市場のみをターゲットにしても事業の拡大は難しいと考えられます。
オランダのGDPはドイツの5分の1、フランスとイギリスの4分の1程度ですし、オランダよりも経済的に恵まれているヨーロッパ主要国は複数あります。
フリーランスや個人事業で小さく継続する、という選択肢もありますが、拡大路線を狙う場合は、前述したようにEU市場でのビジネス展開が大切になるでしょう。
税金申告義務が生じる
オランダで会社を設立すると、事業活動の有無にかかわらず税金の申告義務が発生します。
税金の種類には下記があります。
- セールスタックス(売上税)
- 所得税
- 給与税
- 市税
セールスタックス(売上税)
オランダ語でBTW、英語でVATと呼ばれる税金で、売上に対して課税されます。通常は4半期ごとに1回の申告義務があります。
所得税
個人事業主とパートナー事業は個人所得税、BVは法人所得税を申告します。
給与税
従業員を雇用している場合は明細を作成して申告する必要があります。
市税
事業所などを構えている場合は市税の申告が必要です。
このような税金は申告期限が過ぎるとペナルティーが課されるので注意しましょう。
まとめ
この記事では、オランダで会社設立するメリットとデメリットを解説しました。
オランダは九州と同じくらいの人口と面積の国家で、移民しやすいことで知られています。
特に日本人は条約の関係で起業が簡単なので、個人事業も法人もスタートしやすいでしょう。
のんびりした国民性で治安も悪くありませんし、英語を話せる国民が多いというのも特徴的です。
会社設立の主なメリットとしては、事業環境の良さ・EU市場への展開しやすさが挙げられます。
税制上のメリットだけでなく、デジタル化の進行によってビジネスを進めやすい国と言えますし、ヨーロッパのハブ的な存在でEU市場へのアクセスも容易です。
デメリットとしては、オランダ国内の市場の狭さ・税金の申告義務があります。
市場の問題はEUを見据えれば解決できますし、法人税や所得税の申告義務は日本でも変わりません。
以上、オランダで会社を設立する際の参考としていただければと思います。