会社設立時の社会保険の節約方法が気になりませんか?
どうすれば社会保険料をおさえることができるのか、もしくはおさえることは難しいのか…悩みは多いと思います。
そこで当記事では、社会保険の節約方法について詳しく解説いたします。
最後まで読むと、はじめて会社を設立する方でも社会保険の節約方法が分かりますので、ぜひ参考にしてください。
目次
会社設立すると社会保険の加入が必須
会社設立すると社会保険の加入が必須です。
フリーランス(個人事業主)は国民健康保険と国民年金に加入しますが、会社設立後は健康保険と厚生年金(以下、社会保険)に入ります。
社会保険は任意ではなく、必ず入らなければならない制度ですが、フリーランス時代の国民健康保険料よりも大幅に節約できる可能性があります。
自治体によっても国民健康保険料は変わりますが、基本的に世帯人数の少ない高齢者の保険料は低く、世帯人数の多い現役世帯の保険料は高くなります。
1人世帯よりも2人世帯、2人世帯よりも3人世帯、3人世帯よりも4人世帯と、家族が多ければ多いほど高額になるのが国民健康保険です。
一方、会社設立後に加入する健康保険に関しては、世帯数によって保険料が跳ね上がることはありません。単純に本人の収入が多ければ保険料は上がり、収入が少なければ保険料はおさえられます。
また健康保険は、年収130万円以下など一定条件をクリアすれば、家族を被扶養者に入れることができます。被扶養者が増えても保険料は変わりません。
会社設立時の社会保険の節約方法
ここから具体的に、会社設立時の社会保険の節約方法について解説します。主な方法に次の2点があります。
- 最適な健康保険に加入する
- 役員報酬を抑える
節約方法(1)最適な健康保険に加入する
最初の節約方法は「最適な健康保険に加入すること」です。
会社設立後に加入できる健康保険には複数の選択肢がありますが、最適な選択をすることで保険料の節約に繋がります。
次の2パターンでそれぞれ見ていきましょう。
- サラリーマンを辞めて会社設立するケース
- 個人事業主が法人成りするケース
サラリーマンを辞めて会社設立するケース(健康保険)
サラリーマン時代は勤務先の健康保険に加入していましたが、退職翌日に被保険者資格を喪失します。その後すぐに会社設立しても、状況によって下記に分かれます。
- 役員報酬の支給開始前 → 国民健康保険 or 任意継続
- 役員報酬の支給開始後 → 設立した会社の健康保険に加入
国民健康保険
国民健康保険の加入手続きは、居住地域の役所で行います。
期限は退職翌日から14日以内です。多少遅れても問題ありませんが、保険証の切り替えなので、早期に手続きを行いましょう。
会社設立して一定以上の役員報酬が支給されるまでは、基本的に国民健康保険に入ることができます。
任意継続
同じく役員報酬が支給されるまでの選択肢として、任意継続があります。任意継続とは、退職前の勤務先の健康保険に任意で加入できる制度です。
加入期間は退職後2年、手続きの期限は退職翌日から20日以内です。国民健康保険と異なり、20日を過ぎると任意継続できなくなるので注意してください。
保険料に関しては、会社員時代の健康保険料の2倍かかります。会社員時代は会社との折半でしたが、退職後は全額自己負担になるからです。
ただし国民健康保険料よりも安くなるケースが多いため、役員報酬が支給されるまでは任意継続を選ぶ方もいます。
設立した会社の健康保険に加入
会社設立後に一定以上の役員報酬が支給されれば、会社で健康保険に入る必要があります。
その場合の保険料の基礎は役員報酬なので、役員報酬を低く設定することで、国民健康保険や任意継続よりも保険料をおさえやすくなります。
サラリーマンを辞めて会社設立するケース(年金)
次に年金についても見ていきましょう。
サラリーマン時代に加入していた年金は国民年金の第2号被保険者と厚生年金です。国民年金に加えて厚生年金も支払っているとイメージしてください。
しかし退職翌日に被保険者資格を喪失するので、新たに加入する必要があります。
- 役員報酬の支給開始前 → 国民年金の第1号被保険者
- 役員報酬の支給開始後 → 設立した会社で厚生年金に加入
国民年金の第1号被保険者
設立した会社から一定以上の役員報酬が支給されるまでは国民年金の第1号被保険者になります。保険料は一律で、令和2年度は16,540円です。
設立した会社で厚生年金に加入
一定以上の役員報酬が支給されれば、会社で厚生年金に加入します。
サラリーマン時代は会社と折半でしたが、自身で設立した会社ですから、自身の保険料は全て自己負担です。
そのため厚生年金の加入による節約効果はないでしょう。
個人事業主が法人成りするケース(健康保険)
次は個人事業主が法人成りするケースです。
個人事業主は基本的に国民健康保険に加入していますが、会社設立後は下記に分かれます。
- 役員報酬の支給開始前 → 国民健康保険
- 役員報酬の支給開始後 → 設立した会社で健康保険に加入
国民健康保険
会社設立に伴って社会保険に加入しなければ国民健康保険のままです。前年の所得をベースに保険料は決まります。
設立した会社で健康保険に加入
一定以上の役員報酬が支給されれば、会社で健康保険に加入します。役員報酬を低く設定することで、国民健康保険よりも保険料をおさえやすくなります。
個人事業主が法人成りするケース(年金)
次は年金です。
個人事業主が加入するのは国民年金の第1号被保険者ですが、法人化すると下記になります。
- 役員報酬の支給開始前 → 国民年金の第1号被保険者
- 役員報酬の支給開始後 → 設立した会社で厚生年金に加入
国民年金の第1号被保険者
法人化後に社会保険に加入するまでは国民年金のままです。
設立した会社で厚生年金に加入
一定以上の役員報酬が支給されれば、会社で厚生年金に加入します。最低でも月16,000円程度かかるため、サラリーマンを辞めて会社設立するケースと同様に節約効果はないでしょう。
会社設立すると社会保険は絶対に加入する?
ここまで最適な社会保険についてご説明しましたが、「社会保険に入らない方が節約できるのでは?」と思われたかもしれません。
状況によっては確かに節約効果があるかもしれませんが、会社設立後に一定額の役員報酬が支給されれば、社会保険に加入する義務があります。
国民年金と国民健康保険の方が安いからと言って、法律に反して社会保険に加入しないのはデメリットが大きいでしょう。
ただし現実的には、「従業員数名の会社に対して、年金事務所が調査に入るケースは少ない」と言われていますから、自己責任で社会保険に入らない、という選択肢もあるのではないでしょうか。
節約方法(2)役員報酬を抑える
社会保険の節約方法の2つ目として、「役員報酬を抑える」という方法があります。
健康保険も厚生年金も役員報酬に対して一定の割合で掛かりますので、たとえば役員報酬をゼロにすれば出費もかかりません。
ただし役員報酬をゼロにすれば収入もゼロになりますし、途中で勝手に役員報酬を上げれば税金面で不利になります。
そのため、社会保険料だけで役員報酬を考えるのではなく、「生活に必要なお金はどのくらいか?」を考えた後、「現実的にその金額を役員報酬として支給できる事業かどうか?」を考えると良いでしょう。
ただし役員報酬を支給しない状態で、配偶者の被扶養者になることができればコストメリットがあります。
たとえば、違う会社で働く妻の健康保険に、会社を設立した夫が被扶養者として入る、という選択肢です。
夫の年間収入が130万円未満かつ、妻の年間収入の2分の1未満なら被扶養者になれますが、この場合ポイントになるのが妻の健康保険の運営主体です。
全国健康保険協会(けんぽ協会)の場合は被扶養者になれる、健康保険組合(組合)の場合は難しいケースが多いようです。
その辺りはケースバイケースなので、税理士や社労士に相談する機会があれば聞いてみてはいかがでしょうか。
まとめ
最適な社会保険を選択することで一定の節約効果がありますし、役員報酬を低くおさえれば、やはり節約効果を見込めます。
役員報酬を支給しないで妻の被扶養者に入ることができれば、節約効果は大きいのではないでしょうか。
最も効果的な節約方法は社会保険に加入しないことかもしれませんが、会社設立に伴って加入の義務が発生するので注意してください。
以上、当記事では会社設立時の社会保険の節約方法について解説しました。