会社を設立するときに依頼する専門家としておすすめなのが司法書士です。
会社という存在を認めさせるためには必要書類をすべて揃えた後に会社の本店所在地管轄の法務局に「登記」を行う必要がありますが、司法書士はその設立登記のプロです。
自分でも会社の設立の手続きを行うことは可能ですが、手続きが煩雑で手間がかかってしまうため、本当に自分で行うことがよいのか、司法書士に依頼したときとどのような違いがあるのか、よく考えることが大切です。
今回は司法書士に会社の設立の手続きを依頼したときにどのくらいの費用がかかるのか、そして司法書士が行うことができる業務について詳しく解説します。
目次
司法書士は会社設立のプロ
司法書士と聞いてもあまり聞きなれないかもしれません。司法書士は登記手続きを専門に行っている法律のプロです。
登記というのは簡単に言うと「自分の権利を第三者に認識させる」手続きというイメージを持ってください。
例えば土地や家を購入したときに、不動産登記を行いますが、これは購入者のものであるということを周りに公示することを指します。
会社も同じく、設立登記を行うことで初めて法人格を持つことができます。法人格を持てば、会社名義で契約することができ、銀行口座を作ることが可能になります。
このような登記手続きを専門に行っているのが司法書士です。
会社設立を司法書士に依頼する3つのメリット
会社の設立を司法書士に依頼することによって様々なメリットがあります。特に起業家にとっては司法書士の存在は大きな手助けになってくれます。
会社設立の手続きを丸投げできる
起業し始めた人は人脈作りのために出かけたり、売り上げを伸ばすための経営戦略を練ったりと本業でとても忙しいと思います。
そんな中、会社の設立の手続きも自分で行わなくてはならないとすると、手間がかかってしまいます。過去に会社の設立手続きの経験があるのであれば、問題はないと思いますが、多くの方は初めてです。
手続きが何もわからない人が1から調べて書類を作って申請をするまでには早くても1か月~2か月ほどかかります。
会社の設立の手続きという、いわば「自分がやらなくてもよい業務」に時間を割くというのは本業のために使うべき時間を今後の会社の発展に影響を及ぼしてしまうかもしれません。
そのため、会社の設立の手続きはすべて司法書士に丸投げして本業に専念しましょう。
自分で行うより正確&スピーディー
登記申請書に記載した情報は登記事項証明書に載るため、審査が厳格で、当然ミスは認められません。
書類に少しでも不備があれば、申請書に記載した皆さんの連絡先に電話が来て、訂正または取り下げ・却下という結果になってしまいます。
初めて手続きを行うのであれば、時間がかかるうえに、正確に書類を作れるとは限りません。
また、定款認証の段取りや申請書の作成など手続きの流れもスムーズに行うことが難しいため、司法書士に依頼するのがおすすめです。
会社設立登記のプロである司法書士ならば、発起人の情報や実印など投機に必要な情報さえそろっていれば、最短1~2日で申請することができます。
<ポイント>
登記簿謄本は別名「登記事項証明書」とも呼ばれており、登記をした会社の情報が細かく記載されます。記載される内容は主に以下の項目です。
- 会社名(商号)
- 本店所在地
- 事業目的
- 官報公告の方法
- 役員
- 資本金の額
- 株式に関する情報
この情報は誰でも取得することができ、万が一情報に不備があったまま登記をされると、訂正することは可能ですが、訂正履歴が残ります。
このように誰しもが取得・閲覧できる登記簿謄本は原則ミスは認められません。
設立後もサポートしてくれる
会社を経営すると様々な問題に直面します。
税金を安くするための資本金の設定や企業間でのB to Bのやり取りの法律的問題の解決などには司法書士はとても助けになってくれます。
設立手続きを行った司法書士は役員の任期や資本金の増加など、設立後の相談にも乗ってくれます。
会社設立を司法書士に依頼する1つのデメリット
司法書士に依頼をするとメリットが多いですが、1つだけデメリットがあります。
別途費用で司法書士への報酬がかかる
会社の設立の手続きを代行する1つのデメリットは初期費用がかさむという点です。
自分で会社を設立するよりも専門家に依頼をして報酬を支払うわけですから、当然といえば当然なのですが、実はあまり費用が変わらないということをご存じでしょうか。
司法書士の報酬は事務所によって異なりますが、例えば株式会社を設立する場合で司法書士の報酬と5万円とすると、設立費用は以下の差になります。
自分で設立 | 司法書士に依頼 |
---|---|
登録免許税(15万円)+紙定款(4万円)+公証役場の認証(5万円) | 登録免許税(15万円)+電子定款(0円)+公証役場の認証(5万円)+報酬(5万円) |
24万円 | 25万円(1万円の差) |
自分で設立した場合には「紙定款(4万円)」が余分にかかっています。
電子定款を自分でやろうとすると、電子署名の登録やソフトウェアの設定、カードリーダーやマイナンバーカードの発行など、費用や手間がとてもかかります。
紙定款での定款認証とした場合、司法書士の報酬を合わせても1万円の差しかありません。
仮に自分で電子定款を作成するとした場合、機材をそろえるだけで1万円を超える可能性も出てきます。
1万円の差で間違えのない完璧な設立手続きを行ってくれるのであれば、専門家に代行をお願いするほうがお得に感ます。
司法書士に依頼する前に知るべき4つの事実
さっそく司法書士に依頼をしたいところですが、その前に司法書士に関するポイントや注意点をご紹介します。
登記の手続きのほとんど行ってくれる
冒頭で説明した通り、司法書士は登記手続きのプロです。登記と名の付くものはすべて行うことができます。
会社の設立登記は司法書士にとっては基本中の基本ともいえる手続きなので、できない司法書士はいないでしょう。
後述しますが会社の基本情報を司法書士に伝えれば、設立登記手続きをすべて行ってくれます。事務所によっては会社の実印も発注してくれるため、自ら足を運ぶのは実印の押印や公的書類を渡すときのみです。
許認可申請に関わる手続きの代行はできない
1つだけ注意が必要なのは、司法書士の職務には「許認可」の代行は入っていません。
会社を設立した後に、計画している事業によっては国や市区町村の許可を得ないとできない業務があります。
例えば家を建てる「建設業」のうち建設業法に定められた工事を行う場合には、許認可を得ずに業務を行うと行政処分を受けてしまいます。
許認可申請は、司法書士が業務として行うことができません。もし許認可に該当する事業を行おうとする場合は行政書士に依頼をしましょう。
設立後の税務に関する届出は自分で行う必要がある
会社設立後は法人設立届出書や青色申告の承認申請書など、様々な書類を税務署や各都道府県の税事務所へ各種税務届出書を提出しなければいけません。
税務申告の届出の代行は司法書士は行うことができず、代行をお願いする場合は税理士に依頼をしましょう。
会社の基本情報などは自分で決めないといけない
登記手続きはすべて司法書士が行ってくれますが、あくまで会社を作るのは皆さんです。登記手続きにおける情報は皆さんが決めないといけません。登記にかかる必要情報は以下の通りです。
発起人
会社設立までの手続きをしていく中心人物で、1名以上でもOKです。設立後は出資をした発起人は株主になり、1人会社であれば代表取締役になります。
また、法人も発起人になることができ、その場合は登記書類に登記事項証明書が必要になります。
商号
会社の名前を決めます。「〇〇株式会社」または「株式会社〇〇」にする必要があります。漢字、ひらがな、カタカナの他に、ローマ字やアラビヤ数字などの一部符号も使用できます。
本店住所
商号と本店住所を決めたら、同じ場所に同じ商号がないか調査をしなくてはなりません。
商業登記法においては、同じ本店の所在地に、同じ商号(会社名)の会社の登記があることが禁止されています(商業登記法第27条)。
調査は司法書士が行うため、まずは希望の住所を伝えましょう。また、定款には最小行政区画のみの記載を推奨しています。「当会社は、本店を東京都港区に置く。」
目的
どんな事業を行いたいかを考えましょう。目的は設立当初の事業だけではなく、今後行う可能性のある事業はすべて記載することをおすすめします。
設立後に会社目的に記載されていない事業を行う場合には、目的を追加する登記に、登録免許税が3万円かかってしまいます。
資本金
平成18年の会社法改正により、1円から設立が可能となりました。
しかし、登記簿謄本に記載される資本金に1円と書かれいる会社はペーパーカンパニーと疑われることがあり、会社の信用も得られません。
実際1円で設立する会社はなく、実務上は50万円以上で資本金を設定している会社が多いです。
役員構成
初めて会社を作る人は発起人が取締役になることが多く、1人会社も可能です。主な役員構成は以下の通りです。
- 取締役のみ (取締役1名以上)
- 取締役+監査役 (取締役1名以上、監査役1名以上)
- 取締役会+監査役 (取締役3名以上、監査役1名以上)
決算期
会社の事業年度は1年以内であれば自由に決めることができます。
決算期を適当に決めてしまうと、決算期がすぐに来てしますので注意しましょう。消費税の課税を考慮して設立日の直近の月末をおすすめします。
例えば6月に設立予定であれば、決算期は5月末にしましょう。
会社設立を代行する司法書士の探し方
司法書士は数が多く、2019年4月1日時点で日本司法書士連合会に登録している 司法書士の人数は22,632人います。
その中で自分に合った司法書士を探すにはどうすればよいのでしょうか。そこで司法書士を探す方法を3つご紹介します。
知人からの紹介
司法書士に依頼したことがある知り合いがいれば、どのような司法書士だったのか聞いてみましょう。
話を聞く人のポイントとしては、「会社設立」または「相続の手続き」を代行した司法書士です。
会社設立は当然自分も依頼するため参考になりますが、なぜ相続手続きを行った司法書士が良いのでしょうか。
実は相続手続きはすべて完了するまでに時間がかかります。よい司法書士は相続人とこまめに連絡をとり、戸籍の取得など時間がかかる手続きもスムーズに行ってくれます。
手続きが面倒である相続手続きをしっかりと行ってくれる司法書士は会社の設立の依頼もおすすめできます。
ネットで調べる
多くの人はインターネットで司法書士を検索すると思います。ホームページに出てくる自宅から近い司法書士がいれば、一度話を聞きに行くのもよいでしょう。
注意点としてはホームページに載っている情報をすべて鵜呑みにしてはいけないという点です。
報酬に間違いはないと思いますが、追加で費用が掛かることがあるので、事前にしっかり確認取りましょう。
ビジネスマッチングサービスを使う
周りに司法書士を利用したこといない場合に1番おすすめなのがビジネスマッチングサービスです。
司法書士に依頼したい人と仕事を請けたい司法書士をインターネット上で結びつけてくれます。
ビジネスマッチングサービスの良いところは、皆さんの住んでいる地域・依頼目的(今回であれば会社設立)・司法書士の年齢や得意分野などを絞って自分に合った司法書士を選ぶことができます。
司法書士は歳を重ねればよいというわけでもありません。
もちろんキャリアとして長く続けていれば、その道の専門家ですが、大きすぎる事務所や年齢が高い司法書士の事務所の多くは補助者(書類を作成する事務員)が作成しています。
例えば起業したばかりの人は年齢が若い人も多く、同じ世代の司法書士のほうがかしこまる必要がなく、話しやすいということもあります。
また、ホームページを作っていない司法書士も多くいます。
実はホームページがない司法書士事務所は良い司法書士に巡り合えるチャンスです。その理由は、インターネット上で営業をしていないため、地域密着で仕事が定期的に舞い込んでいることが多く、そういった司法書士はホームページを作っていません。特に厳格な銀行から依頼を受けている司法書士は安心さがあります。
おすすめのビジネスマッチングサービスをご紹介
最後にインターネットで司法書士を探すためにおすすめのビジネスマッチングサービスをご紹介します。探し方やメリット・デメリットも解説するので是非参考にしてください。
比較biz
比較bizは2020年現在で15年も続く日本最大級のBtoBマッチングサービスです。
専門業者が約5万8千社も登録しており、利用する人はすべて無料で利用でき、たった120秒で一括検索を行うことができます。
士業だけでなく、集客や人材サービスの業者も探すことができるので、新しく会社を設立する人にとっては運営準備がすべて整います。
また、利用した人の口コミが見ることができるというのは、今後利用を考えている人にとって司法書士を選ぶ良い判断材料になります。
①業種②分野(会社設立)③地域の3つを設定するだけで、おすすめの司法書士に一括で見積もりを依頼することができます。
デメリットは司法書士の数が少なめという点です。しかし、司法書士はオンライン申請をすることが可能なので、全国対応している司法書士が多いです。
士業ねっと
士業ねっと全国の士業・経営コンサルが約1万5千人登録しているマッチングサイトです。
士業ねっとの良いところはマッチングサイトによくある一括検索だけでなく、士業ねっと運営事務局からヒアリングを受けておすすめの士業を紹介するコンシェルジュサービスがあるという点です。
一括検索の場合は、①都道府県・市区町村の決定②司法書士を選択③目的(会社設立)④趣味⑤年齢⑥性別⑦動画の有無
を指定すれば、該当する士業が表示されます。
会社設立を司法書士に依頼したいと考えている方に向けて、上記の参照先のサービスも紹介してください。
デメリットとしては、士業の登録、掲載が無料であるため数多くの業者が登録しており、一括検索をかけても数が多く選びにくいという点です。
まとめ
会社設立を代行する業者は数多くあり、税理士や行政書士でも請け負っています。しかしこれらの士業は登記業務を行うことができず、結局は提携している司法書士に依頼をしています。
どのみち司法書士に依頼をするのであれば、会社設立後の登記相談も含めて、自分に合った司法書士を選んでみましょう。
人づてで司法書士に話を聞くことができればよいですが、インターネットで探すのであれば、ビジネスマッチングサービスを利用してみましょう。