どんな会社かな?と調べることになった場合、多くの人が目を通すと思われる「資本金」。第三者的には「大きな額であればあるほどよい!」というイメージがありますが…実際のところ、大きな額であれば信頼度が高く立派な会社なんでしょうか?
また、会社設立をする立場の場合、どのような資本金設定にすればよいのでしょうか?そんな悩みを解決するために、ここから「資本金」の額決定や注意点、支払い方法など基本的な部分の説明をするので、ぜひ参考にしてください。
目次
会社設立に必要な「資本金」の基礎知識
そもそも資本金とはなにか?と問われたとき、意外と多くの人が答えに窮してしまいます。「なんとなく知ってはいるけど…明確に答えることができない」という人が多いからですね。
ということで、会社設立をする以上、資本金は必ず設定しないといけないモノです。まずは、しっかりと基本を抑えて理想的な額の資本金を決定できるようにしていきましょう。
資本金とは「運転資金」のこと
資本金とは、会社設立し事業展開をするときに、自身で確保している運転資金のことをいいます。したがって、資本金が多ければ多いほど、事業展開の資金繰りに関しては非常に楽になります。
その結果、銀行などから融資を受けずとも問題なく事業のやりくりができることも可能になるわけです。ただ、むやみやたら大きな額を設定すればよいものではありません。
後術するため、ここでは詳しくは記載しませんが、結局のところバランス良く資本金を用意することが大切になってきます。例えば、ノートパソコン1台あれば仕事ができてしまうような事業であれば、億単位の資本金は不要ですよね。
逆に、大規模な設備を用意しないといけないような事業の場合、100万円程度の資本金だと、やはり心もとないです。このように、設立する会社の事業内容によって資本金の額をコントロールする必要があります。
資本金は「会社の体力」と捉えることもできる
資本金は、その会社の規模だったり、体力だったりの目安になります。というのも…金融機関から借り入れをして運転資金を調達した場合…これを資本金にすることはできません。
資本金とは、あくまでも「自己資本」であり、返済する必要のないお金でなければならないわけですね。これが意味することは、自分自身で「どれだけ集めることができたのか?」と、その会社の実力といってもいい数字になるということ。
それだけのお金を用意ができ、それだけの資金力がある…いわば会社としての体力ということもできるのです。
例えば、大不況が発生し利益が上がらなくても「どれだけ持ちこたえることができるのか?」などの目安となる数字にもなるわけですね(もちろん、これがすべてではありませんが)。なので「体力」と比喩されるのです。
資本金の必要金額は?1円でも設立は可能?
以前であれば、株式会社を設立する場合は、資本金を1,000万円以上用意しないといけませんでした。もう設立することはできませんが…有限会社の場合は300万円以上の資本金が必要となっていました。
しかし、法改正が行われ、この決まりがなくなり、理論上は必要金額はいくらでも問題はないということになったわけです。極論を言えば、1円でも設立をすることができるのです。
ただ、あくまでも「理論上」の話であって、決して実行に移さないようにしてくださいね。例えば、目の前に資本金1円の会社と、1,000万円の会社がいたとします。どちらに就職をしたいですか?
前者の1円会社の方を選ぶ人もいらっしゃるかもしれませんが、多くの人が後者を選ぶのではないでしょうか?
というのも、先ほど説明をした通り、資本金は会社の体力と捉えることができるため…1円の会社はまったくもって体力がないと判断ができます。やはりリスクの面を考えると、このような会社に入社するのは勇気がいりますよね。
他にも「借金を抱えている会社と思われる」「銀行からの融資を受けることができない」「取引先との契約を結ぶことができない」など、大きな弊害を生みます。これは、資本金は多ければ多いほど信頼されるからです。
結果、1円設立は、あまり現実的な話ではないため、辞めておくことを強くおすすめします。ちなみに、リスクの面に関しては、後ほど、掘り下げて説明をするため、気になる場合は、そちらも参照ください。
「借入金」は資本金にすることはできない
資本金は…「投資をしてもらう」「自分自身の資産を使った」…このように、さまざまなお金の集め方があります。よく勘違いしてしまうのが「金融機関から融資されたお金を資本金にする」という考え方です。
残念ながら、これは…いわゆる借金となるため、借入金扱いとなって資本金にすることはできません。そもそも、返済義務のあるお金に関しては、法律て資本金にしてはいけないと定められています。
もし、借入金を資本金にした場合、最悪「詐欺罪」が適用され逮捕されてしまう可能性もあります。モラルの側面でも、他人から借りたお金を、自分のお金!とアピールしていることになるため「当然ダメでしょう」となりますしね。
ともあれ、借入金は絶対に資本金にしないようにしましょう。
資本金の増減方法は会社形態によって異なる
資本金は会社設立時に決定するわけですが…後から増やすことも減らすことも可能です。ただし、株式会社と合同会社では、方法が異なってくるため注意が必要です。
また、増資・減資をすることは可能ではありますが…気軽にできるものでも、やるものではありません。特に株式会社の場合は、出資してくれた人たちの利益に直結するため、いい顔をしないケースもあります。
よって、株主総会などで決定する必要があるわけです。ここでは、具体的な増減方法は記載しませんが…いろいろと手順を踏まないといけないことは理解しておきましょう。
繰り返しになりますが、特に株式会社の場合は安易に実施することはできません。(合同会社はラクにできると言っているわけではありません…誤解なきようお願いしますね)
資本金の利用使途は「運営資金」をするためのもの
資本金は「会社の体力」「会社の運営資金」のように説明してきましたが…実際のところ、どのように使うのか?使用用途はなにか?と気になるところですよね。
先に説明をした通り、会社の運営資金となるため、運営するために使っていけばよいだけです。言い方を変えれば、使用用途は会社を運営するためのものであれば何でもよいとなるわけですね。
会社設立後、この資本金は「使ってはいけない」と勘違いをしている人もいらっしゃいますが、全然、使っても問題ありません。むしろ使うためのものです。
もう少し掘り下げて、利用用途を説明尾すると…例えば、商品を作成するための部品を仕入れるだったり、商品を作るための設備を購入する…事務所で働ける環境を作るための備品を購入するなどです。
ただし、資本金を使う場合は、必ず「払込」の証明書を作成するようにしておきましょう。このお金の動きが曖昧になってしまうと、厄介なことになることは言うまでもありません。
資本金を集めるための4つの方法とは?
では、資本金自体はどのように集めればよいのか?について触れていきます。さまざまな方法がありますが…ここでは、代表的な方法4つを紹介しますね。
ただ、1つは株式会社だけのお話となるため、合同会社を設立した場合は「3つの方法」となるため、ご注意ください。
地力でコツコツ貯めておく
一番確実で、一番安心で、一番スムーズに資本金にすることができる方法が「自分自身で用意をする」ということです。したがって、会社設立を視野に入れて数カ年計画でコツコツお金を貯めておく方法になります。
もちろん、退職金などまとまったお金を手にしたとき、これを充てて問題はありません。余談ですが、脱サラして起業する人も多いので、退職金を充てることは多いです。
複数人で会社を立ち上げ各々で出資をする
毛利元就の「三本の矢」のお話は有名ですよね。1本の矢は折れやすいが3本が束になれば折れにくくなる…3兄弟で協力し合いなさい!という格言。
会社設立でも同様のことが言え、1人で資本金が用意できなければ、複数人で用意をすればいいだけです。発起人を複数人にして各々で出資し合うわけです。
いろいろと「しがらみ」や「誰がいくら出すのか?」など、面倒なことに発展するケースもありますが…。1人で資本金を用意するよりかは、多くのお金を集めやすい方法と言えるでしょう。
クラウドファンディングを活用する
インターネットが普及した現在、新たに生まれたお金の集め方として注目されているのが、このクラウドファンディングです。クラウドファンディングでも、いろいろと種類があって「寄付」「投資」などに分類されます。
寄付は言葉通りで、お金を寄付してもらいます。投資も言葉通りで、お金を出す代わりに見返りもちょうだいね…というお金の集め方になります。
具体的には、起業する会社の将来性やユニークさなど、強みをアピールすることでお金を集めることができるわけです。
不特定多数の人に向けてアピールすることができるため、魅力のある事業内容であれば、思っている以上の大きな金額を手にすることも可能です。逆も然りですが…魅力がなければ、まったく集めることはできません。
つまり「プレゼン能力」「先見性」「独自性」のような手腕が問われる方法になるため、ここで転んでいては会社運営もままならないことに!?したがって、起業前の前哨戦と捉えて頑張ってみるのもよいかと思います。
株式会社の場合は株式発行し出資してもらう
最後に紹介するお金の集め方は、株式会社のみのお話です。いわゆる「株式」を発行して、出資者に投資してもらってお金を集める方法です。
スタンダードな方法のため、こちらもきっちりと会社自体のプレゼンができれば、大きなお金を手にすることができます。
ただし、株主(株券を手に入れた人)に、さまざまな権限がつくため、会社の中で大きなことを決めるときは、この出資してくれた人たちから同意を得るなどをしていかなければなりません。
複数人で起業する場合の資本金の注意点
株式会社を設立した場合の話になりますが…。複数人で起業するとき、出資する資本金の割合に注意する必要があります。株式会社の出資とは、すなわち株式の保有数となります。
例えば3人で出資する場合、比率が「4:3:3」だったとしましょう。比率が「4」出資した人は、当然、発言力があります。が「3」の二人が結託した場合、あっという間に立場が逆転してしまうわけです。
単純に「4:6」になってしまいますからね。このように筆頭株主が他人の力によってコロっと変わってしまう危険性があることは理解して複数人で出資するようにしましょう。
資本金の額についての決め方はいろいろある!
資本金の基本を理解したところで、続いては「どうやって資本金を決めればよいのか?」について触れていきます。ケース・バイ・ケースではありますが、やはり目安だったり、考え方だったりと、指針となるモノはあります。
これを踏まえて、自分自身が設立しようとしている会社に当てはめて最適解を出せるようになれば幸いです。
会社設立金額の相場は「300万円」~「500万円」
あくまでも目安ではありますが、会社設立の相場は「300万円」ぐらいとしている場合が多いです。そこから少し余裕をもたせて500万円までぐらいで設立する人も意外と多くいらっしゃいます。
設立した会社の業種によりますが、小規模の場合は、月100万円ぐらいの運転資金で3ヶ月程度を見て設定するわけです。なぜ「3ヶ月か?」ですが…大体、利益が上がってくるのが3ヶ月後からだからです。
こちらも、あくまでも目安の数字であり、状況によりけりで利益が上がってくる時期はことなります。ともあれ、会社設立する人たちで多いのが、小規模であれば300万円を1つの目標値にしておくとよいでしょう。
余裕があれば、500万円程度まであれば、より安心です。
目安は…運転資金をベースに「3ヶ月から半年」見据えた金額
先に相場を記載しましたが…この相場の数字は、実際のところ「3ヶ月~6ヶ月までの予想運転資金」をベースにして導き出された数字でもあります。では、具体的に運転資金とはなにか?という部分が気になってきますよね。
以下に、4つの代表的な運転資金について説明をします。これを参考に自分自身の会社に当てはめて、どれくらいの金額が必要になるのか?を算出してみてください。
契約費用及び家賃(事務所や店舗を借りる場合)の支払い
まず1つ目は、事務所となる場所が賃貸の場合のお話になります。したがって、自宅を事務所にするような場合は不要の運転資金になると理解していただければと。
事務所なり店舗なりを借りる場合、まずは「契約」を結ぶことになります。その際に発生する敷金・保証金、仲介手数料が発生するため、この資金をまず用意します。
これに加えて、家賃と共益費について3ヶ月~6ヶ月を想定した金額を用意するイメージです。
設備を始め備品や消耗品の購入費用
事務所を構えたり、店舗を構えたりする場合、当然、設備が必要となってきます。事務所であれば、デスクや椅子、パソコン、コピー機、プリンタなど、細かいところも見ていくとキリがないほど、いろいろと用意をしないといけません。
ちょっとした店舗であれば、お客さんがくつろげるようなソファーだったり、必要な設備だったり、業種によって内容は異なりますが、多くの設備・備品が必要となることは、容易に想像することができます。
その購入資金も会社設立時の資本金に組み込んでおくとよいです。
業種によっては「商品」「原材料」などの仕入代金費用
設立した会社の業種が、何かしら商品を販売するお店だったり、飲食店だったりした場合「仕入れの費用」も考慮して資本金に組み込んでおくと、より安心です。
仕入代金に関しては…会社設立直後はちょっとした注意点があります。それは、取引先から「現金で支払ってほしい」とお願いされることがある…ということです。
会社設立直後は、どうしても会社の信頼度的には低い立場となるため、取引先も慎重にならざるを得ないわけです。ましてや初めての取引となるため、リスクを回避するために「現金払い」を要求するのも納得できる話です。
したがって、業種的に「仕入」が発生する場合は、ある程度の現金を用意しておくとよいでしょう。
その他に多種多様の経費が発生する
上記以外にも、その他、さまざまな費用が発生することも理解しておきたいところです。例えば、人件費・広告費・光熱費・通信費・消耗品費など…挙げればキリがありません。
ただ、その他の費用を細かく見すぎてしまうと、逆に精神的に疲れてしまうため、ある程度の金額を予想するぐらいの気持ちの方がよいでしょう。
あくまでも「会社設立直後というのは…何かとお金がかかってしまう」ということを念頭においた金額予想をしておくと、より確実です。なかなか予想することは難しいところではありますが…。
この先、事業展開をしていく上で、「予想の金額を立てる」というのは役立つスキルになるため、勉強の意味も含めて算出してみるといいかもしれませんね。
取引先もきっちりと資本金をチェックしている
企業によっては、初めて取引する会社に対して「資本金はいくら?」「利益はいくら?」「従業員は何人?」「創立何年?」などのアンケートととる場合があります。
というのも、取引先として問題のない企業か?を確認したいからです。もし問題のある企業であれば、支払いをしてくれない可能性があるため、少しでもリスクを軽減したいわけですね。
で、例によって「資本金」も判断材料になっています。ということで、資本金は取引先もチェックしており、それなりの数字になっていると見栄えがよくなり、取引をしやすい状況を作ることができます。
許認可に資本金の要件がある場合は要件を優先する
業種によっては必要な認可だったり、必要な届出だったりなど、法律で定められた要件を満たさないと起業することはできません。
例えば、バーだったりクラブを開店するのであれば、公安委員会へ風営法に則って届出をしないといけません。そして、このような要件に関して…資本金は○○万円以上でないと会社設立は認めませんよ!というものがあります。
また、一般労働者派遣事業であれば、資本金は1,000万円以上が要件となります。このようなケースは、もちろん要件を満たすために嫌でも資本金を用意してクリアをしていかないといけません。
結果、資本金の決め方として「要件を優先する」という方法があるわけです。
金融機関から融資を受けたい場合は…より重要になる資本金の額
明確なルールがあるわけではありませんが…金融機関は設立から間もない会社に対しては、資本金の2倍までであれば融資OKとしていることが多いです。
あくまでも目安であり、必ずも、このルールが適用されているわけではないので注意が必要ではありますが。
ただ、資本金が100万円の会社に対して1,000万円の融資となれば…やはり、二の足を踏んでしまうようなリスクを直感的に感じてしまうわけです。
(もちろん、利益が上がる見通しがあり確実性があれば、2倍以上の融資をしてくれる可能性はあります)
であれば、200万円程度であれば、リスクも小さく様子見をすることができようになります。で、問題なく返済をしてくれれば、徐々に最大融資額の上限を上げていってくれるのです。
ということで、何度もお伝えしていますが、資本金は融資を受ける場合、融資額の大小を決定づける情報となります。
最終手段であり…手っ取り早い方法は「税理士に相談」
餅は餅屋…という格言がある通り、資本金の金額が、もし決めることができない、自信がないというのであれば…プロである「税理士」に相談してみるのも1つの手と言えるでしょう。
やはり、会社設立に精通しているため、きっちりと相談に乗ってくれて最適な資本金を提示してくれる可能性があります。
もちろん、税理士の中でも、会社設立が得意な人と苦手な人がいるため、相談先は、じっくりと吟味することが大切になっています。
そもそも、会社設立のお手伝いを税理士にお願いするケースもあり、その流れで相談するのもありです。
プロに相談するわけですから、その分の報酬を支払わないといけないデメリットはありますが、より確実性を求めるのであれば、良い選択肢の1つだと言えます。
資本金を1000万以下にするメリット
資本金はバランスの取れた額を設定することが大切ですが…知っておくと得をする情報があるので、ここで紹介をしておきます。それが…ズバリ「資本金は1,000万円以下にするとお得」ということです。
例えば、1,010万円の資本金にしようとしている場合は、直ちに「1,000万円以下」まで下げましょう。10万程度の差額であれば、大きな問題になることはないと思われるため。
というのも、1,000万円以下であれば、大きく2つの恩恵を得ることができるからです。ちなみに、1,000万円ではNGで、あくまでも1,000万円よりも少ない金額にするようにしてくださいね。
会社設立をした年度から最大2年間も消費税が免除される
言葉通りで、会社設立後、2年間も消費税が免除されることになります。ただし、ちょっとした条件があるため注意が必要です。
1年目は、1,000万円以下であれば消費税の免除対象となりますが…。2年目は1年目の上半期の売上高、または支払いした給与の金額によって、恩恵が受けられなくなってしまう可能性があります。
法人住民税均等割の納税額が優遇される
2つ目に紹介する恩恵は、法人住民税均等割の納税額が、最低限の金額となるというものです。具体的には、資本金が1,000万円だけでは条件を満たしたことにはなりません。
というのも、従業員数が50人以下となっていなければ「最低限の金額」にはならないので。少々、わかりにくいかと思うので、以下に「東京都23区」の中に本店所在地を構えた場合を例にとって紹介します。
- 1,000万円以下
- 従業員数「50人」超
- 《市町村民税》12万円
- 《道府県民税》2万円
- 従業員数「50人」以下
- 《市町村民税》5万円
- 《道府県民税》2万円
- 従業員数「50人」超
- 1,000万円超-1億円以下
- 従業員数「50人」超
- 《市町村民税》15万円
- 《道府県民税》5万円
- 従業員数「50人」以下
- 《市町村民税》13万円
- 《道府県民税》5万円
- 従業員数「50人」超
最低限の金額であれば、合計7万円で済みますが…1,000万円超で従業員が50人以上となれば、20万円にもなります。その差額は13万円のため、非常に大きな差となることは言うまでもありません。
また、1,000万円以下であっても、従業員の人数によっては、7万円もの差になります。従業員数に関しては、なかなか調整が難しいところではありますが…このような線引があることは知っておいては損はないはずです。
可能な限り、調整をして余計な出費を抑えたいところです。
小中規模なら資本金1,000万円以下がベスト
念押しになりますが…結局のところ、規模が小さな会社を設立する場合は、1,000万円以下にしておいた方がよいケースが多いです。先の話を読めば分かる通り、それくらい恩恵が非常に大きいです。
もし1,000万円以上にしたい場合は、まずは2年は我慢して、その後で増資をして資本金を増やすという手もなくはありません。
(おいそれと簡単に資本金を変えられるわけではないため…本当に増資する場合は注意が必要ではありますが…)
ともあれ、特別な理由がない限りは、この1,000万円以下も目安に資本金の設定をするとよいでしょう。
資本金の金額を低すぎる場合の3つのリスク
繰り返しになりますが、資本金の設定は「バランス」が重要となります。極端に多くてもだめですし、極端に少ないのもだめです。特に極端に少ない場合は多くのデメリットが生じるため、可能な限り避けたいところです。
先ほど、説明をしましたが…昨今、法改定が行われ「資本金1円」でも会社を設立できるようになりました。だからといって「資本金1円で設立してもいいのか?」と問われた場合は、絶対にノーと伝えたいところです。
その理由は大きく3つ…以下より、説明をしていきます。
リスク(1):信用が得られず取引・契約を断られる
極端な例ではありますが…資本金が1円だった場合、率直に「大丈夫な会社なのか?」と漠然と感じてしまうところです。その結果「この会社とは取引をしないでおこう」「この会社とは契約をしないでおこう」となってしまうわけですね。
資本金が多ければ多いほど、比例して信用度は高くなる傾向です(業種によっては極端に資本金が高い場合…逆に怪しまれてしまうケースもありますが)。
ともあれ、安心感・信頼度という点で言えば、資本金はある程度の金額を用意しておいたほうがよいです。
リスク(2):金融機関が融資してくれない
「お金を貸す」行為は「貸した人に返済能力があるからこそかせる」という絶対的な条件があってこそです。
したがって、カードローンや住宅ローンなど、ローン関係は「安定した収入があるのか?」ときっちりと調査した上で融資をしてくれます。会社経営の場合は、その1つの指針となるのが「資本金」です。
この額が小さければ小さいほど、それだけ会社としての資金力がないという証明になってしまうわけですから…お金を貸す側にとっては大きなリスクになってしまいます。
ちょっとした赤字が続けば、あっという間に倒産へ追い込まれてしまうことだって否定できませんからね。となれば、金融機関からすれば、そんなリスクのある会社に融資したくないと考えるのは当然のことです。
リスク(3):会社設立後に債務超過になる
極端に資本金が少ない場合は、ちょっとした出費が発生しただけで直ぐに債務超過状態になってしまいます。例えば、開業の準備をするために、必要な設備を購入した場合、あっという間に赤字へ転落です。
これに加えて、運転資金として活用できる現金預金が少ないことも意味します。結果、資金が少ないわけですから、役員が個人的に立替を行って、経費や仕入れなど、さまざまな支払いを行うことに。
であれば、最初から資本金をある程度の金額にしておいた方がよっぽど良いことは言うまでもありません。債務超過状態になってしまうと、当然、金融機関からの印象は悪く融資をしてくれる可能性は限りなく低くなります。
これは先の「リスクが大きいと判断するため融資してくれない」でお話をした通りです。
資本金の払込み方
最後に紹介するのは、資本金の額を決定したあと…どうやって払込みをするのか?の部分について説明をします。行う作業自体は、さして難しい作業はないため、サクサクと進むかと思います。
ただし「大きなお金を動かす」「会社のお金となる」など、いろいろと注意するべき点はいくつかあるのも事実です。ここで失敗をしてしまうと、せっかく頑張ってきた会社設立が水の泡にもなりかねません。
特に一人ではなく複数の発起人で設立をする場合は、最悪「仲違い」の状況に陥ってしまう可能性も否定できません。そんな最悪な状況にさせないためにも、以下の手順を踏んで、スムーズな払込みをしていきましょう。
発起人名義の個人口座を用意する
まずは、発起人名義の個人口座を作ります。普通に考えると「会社専用の口座を作るべきでは?」と思う人も多いかと。その気持ちはよく分かりますが…資本金を払い込むときには、まだ会社は設立されていない状態です。
したがって、一時的にお金を預けておく専用の口座を作っておきましょう!というわけです。もし発起人が複数人いるのであれば、代表者の銀行口座を使って、各々入金してもらうようにするのがスタンダードな方法です。
銀行口座の種類に関しては、普通銀行口座で問題ありません。ただし、後ほど、説明をしますが「通帳コピー」が必要となります。それを見越して、通帳が発行される銀行口座で用意することが重要になってきます。
もし、既に銀行口座を持っているのであれば、そちらを流用しても何の問題もありません。あくまでも一時的なお金を預ける場所になるだけですから。
用意した口座に資本金を入金する
次のステップは、実際に資本金を用意した口座に入金します。注意点としては「発起人が複数人いるときは、必ず振り込みで入金をする」ということです。
というのも、会社設立するとき「誰がいくら資本金を用意するのか?」が決まっているわけですから、本当にその人が入金してくれたのか?と確かめる必要があるわけですね。
となると、振り込みにしておかなければ「誰がいくら振り込みをしてくれたのか?」が分からなくなってしまいます。結果、預け入れではなく振り込みでなければならないのです。
発起人が1人の場合は、特に振り込みでなくても、特に問題はありません。もう1つの注意点としては、この作業は必ず定款認証日よりも後の日付になるように手続きすることです。
定款認証日よりも前の日付で作業をしてしまうと、法務局で登記するときに、受理してもらえない可能性があります。
通帳のコピーを作成する
3つ目のステップは「通帳のコピーを作ること」です。これは、発起人がきっちりと銀行口座に決められた資本金となるお金を確かに振り込んだ!という証明をしたいからです。
したがって、先で説明をした「発起人名義の口座を用意する」と伝えたのは、このときのためです。発起人以外の口座では、意味がなくなってしまうので。
では、どこの部分をコピーすればよいのか?ですが、以下の3つポイントに作成をしてください。
- 表紙
- 表紙裏
- 振り込み内容が記帳されているページ
よくある質問として「コピーする用紙サイズはどれにしたらよいのか?」が挙がります。基本的には、どのサイズでも問題はありません。ただし、個人的に強く推奨したいのは「A4」です。
というのも、登記するときに作成する書類がA4だからです。統一しておいた方が、管理がラクですし、見栄えもきれいですので。特にこだわりがなければA4にしておくことをおすすめします。
また、振り込み内容が記帳されているページは、分かりやすいように「発起人の名前と金額にマーカー印」を付けておくとよいでしょう。
払込証明書を作成する
続いては「本当に払込をしたのか?の証明書」を作成していきます。払込証明書には以下の7つの項目を記載する必要があります。
- 払込があった金額の総額
- 払込があった株数(※)
- 1株の払込金額(※)
- 日付
- 本店所在地
- 代表取締役氏名
(※)株式会社を設立する場合で、合同会社設立時は不要です
ここで記載する内容は、必ず定款とイコールになるようにしてください。例えば、払込があった株数だったり、金額の総額だったりです。日付に関しては、証明書を作成した日ではなく、資本金が振り込まれた最も遅い日付以降となります。
払込証明書の作成ができたら、最後の仕上げとして、会社の代表印を「払込証明書の左上」「代表取締役の名前の右側」の2つに押印します。ちなみに、代表取締役の名前の右側に押印する印鑑の種類は「会社の実印」です。
ついつい個人の実印を押印したくなってしまいますが…違うので注意してくださいね。
通帳コピーと払込証明書を綴じる
最後は、作成した払込証明書と通帳コピーを製本します。ページは以下のような順番にしてください。
- 払込証明書
- 通帳コピー(表紙)
- 通帳コピー(表紙裏)
- 通帳コピー(振り込み内容が記載されているページ)
上記の順番にしたらホチキスで綴じます。その後、各ページの境目に代表者印を押印してください。この押印作業をする必要があるため、ホチキスで綴じるときには邪魔にならないようにすることがポイントです。
まとめ
会社設立の資本金について、いかがでしたか?「結局のところ、どれくらいの金額にすればよいの?」と気になるところですが…敢えていうのであれば300万円です。
もちろん、状況や設立した会社の規模、発起人の人数によって大きく異なってくることは理解しておいてくださいね。
また、資本金とは「会社の運用資金」が基本的な役割となりますが…一般公開される情報となるため、さまざまな人からチェックされる金額でもあります。入社しようとしている人、取引先・契約先、金融機関など。
そして、これらは会社の行く末を決めてしまうことも、なきにしもあらずです。
というのも、融資を受けられなければ事業展開ができないでしょうし、取引先と契約ができなければ運営ができないでしょうし、誰も入社してくれなければ会社運営もままなりませんからね。
したがって、1円のような極端な資本金に設定することはやめ、適正な額にするようにしましょう。