会社設立のときに、思いつく専門家に行政書士がいます。しかし、普段の生活の中で行政書士に頼ることはあまりないため、行政書士がどんなことをしてくれるかを知っている方は少ないと思います。
しかし会社設立の際には様々なサポートをしてくれるため、起業を考えている方は依頼することを検討してみても良いでしょう。
ここでは会社設立の際に行政書士に頼ることで得られるメリットを解説します。
行政書士を選ぶ3つの方法についてもお教えしますので、スムーズに会社設立を行うための参考にしてください。
目次
会社設立で行政書士のサポートが必要になる人
会社の設立登記だけであれば行政書士に依頼するメリットはそこまでありません。しかし、行政書士が必要になる場合があります。
行政書士ができること
行政書士は個人向けの業務から法人向けの代行業務まで幅広く行ってくれる業種です。法律に関する専門的な知識を持っているため、国民にとって最も身近な街の法律家とも呼ばれています。
行政書士の仕事は書類作成業務・許認可申請の代理業務・相談業務の3つに分類されます。書類作成業務は国や自治体に提出する書類や事実証明に関する書類などの作成を代行します。
許認可申請業務は書類作成業務にて作成した書類を提出し、申請する業務のことを言います。相談業務は書類作成についての相談を受けることです。
会社設立の際には設立に関するすべての業務で行政書士に頼ることが可能です。
設立に必要な書類の相談を行い、会社設立のための書類を作成してもらってから書類を提出・申請という流れになります。
許可認可申請の代理業務は許認可が必要な事業を行う場合、許認可申請に必要な書類作成と申請手続きを行うことです。こちらについては後ほど詳しく解説します。
相談業務は書類作成に関するものだけでなく、経営やコンサルティング業務についても相談可能です。
会社が抱える問題についてアドバイスを求めることもできるため、設立時だけでなく設立後も頼ることができます。
許認可事業を行う人は必要
許認可事業を行う方は行政書士への依頼が必要となります。許認可事業とは設立時に保健所や警察、都道府県に許可を申請する必要がある事業のことです。
例えば、飲食業や旅館業、医薬品製造販売業、中古品販売業などが該当します。
対象となる事業を行う場合は申請を行い、認可されない限りは事業を行えません。無認可で事業を行っていると刑事罰に問われる恐れがあるため注意が必要です。
行政書士は申請手続きを行うプロです。許認可申請のための書類作成から提出までの業務を一貫してお任せできるため、行政書士にお任せしておけばスムーズに業務を開始できます。
許認可事業は幅広いため、まずは自身の会社が行う業種が該当するかを確認しましょう。該当する場合は行政書士に依頼しておくことがおすすめです。
会社設立時に行政書士に依頼するメリット
行政書士に依頼するメリットをご紹介します。
許認可の手続きを正確&スピーディーに行える
前述したように行政書士は許認可申請に関するプロです。書類作成から申請まですべての作業を代行してくれるため、事業主が何かを行う必要もありません。
もちろん許認可申請は自身で行うことも可能です。しかし、申請行うには必要な書類をすべて作成しなければなりませんし、時間もかかります。
会社設立のための知識がなければ調べながら書類を作成していくことになるため、かなりの時間がかかるでしょう。書類を完璧に揃えたつもりでも漏れがあることもあります。
その場合は再度書類作りをしなければなりませんので、非常に手間がかかってしまいます。また申請も保健所や自治体などに足を運ばなければなりませんので面倒なことも多いのです。
どれだけ時間がかかるかによっては会社設立の時期が大幅に遅れる可能性もあります。早めに会社を設立したい方にとっては大きな痛手となってしまいます。
許認可申請は業種によってはプロでも苦労することがあるため、スムーズに設立を進めたい方にとって行政書士への依頼は大きなメリットがあるといえます。
本業に集中できる
会社設立は設立のための書類作成や許認可申請などを行えばできるものではありません。その他にも会社名を決めたり、オフィスを探したりとやるべきことがいくつもあります。
書類作成を自身で行うとなるとそちらに時間を取られてしまい、他のやるべきことが進まなくなるでしょう。
また設立後も許認可の更新を行わなければなりませんし、法律に関する悩みも出てきます。そうなるとまたそちらに時間を消費しなければならなくなるので、業務に支障が出てしまうかもしれません。
行政書士に依頼しておけばそういった心配もありません。
設立時から依頼しておくことで書類作成も許認可申請もすべてお任せできます。また設立時に法律に関する困りごとがあれば、そちらの相談に乗ってもらえます。
行政書士はコンサルティング業務も行っているため、課題の提示や課題を解決するためのアドバイスももらえます。経営に行き詰った時の相談役としても最適です。
設立後も行政書士の業務においてサポートをしてもらえるため本業に集中できるでしょう。
会社設立後にも行政書士が必要になるケース
許認可や設立が終わっても行政書士が必要になる場合があります。
許認可の更新を行うとき
業種によっては会社設立時に許認可申請を行います。認可されればその後業務を行えるようになりますが、この許認可は更新を行わなければなりません。
更新を行わないと認可時にもらえる許可証の期限が切れ、効力を失うため注意しておきましょう。
更新期限は業種によって異なります。例えば建設業や地質調査業などは5年間となっていますが、一般労働者派遣事業の最初は3年、次回から5年といったように期間が変わります。
申請してから更新されるまで多少の時間がかかるため、更新を行う場合は更新期限ギリギリに申請することはやめましょう。
更新している間に期限が切れてしまうと許可証の効力がその期間失われるため、業務を停止しなければならなくなります。これを防ぐためにはギリギリではなく余裕をもって申し込まなければなりません。
ただ本業が忙しいと更新期限を忘れてしまったり、余裕をもって更新手続きを行ったりすることが難しくなります。
行政書士に依頼しておけば更新期限までに更新手続きを行ってくれるため心配はありません。
更新が必要な許認可例
許認可が必要な事業の多くはある一定期間が過ぎたら更新が必要になります。更新期限はそれぞれで、更新のために必要な書類提出期限もバラバラです。
そのため自身の会社の業種の更新期限はいつか、更新のための書類提出期限はいつかも確認しておかなければなりません。
ここでいくつかの業種の更新期限と書類提出期限をご紹介しましょう。
- 飲食業:5~8年。書類提出期限は期限の10日前まで
- 医薬品販売業:6年。書類提出期限は期限の1か月前
- 一般労働者派遣事業:初回は3年、次回から5年。書類提出期限は期限の3か月前
- 建設業:5年。書類提出期限は期限の30日前まで
- 旅行業:5年。書類提出期限は期限の2か月前まで
このように業種によって更新までの期間は変わります。また書類提出期限も業種によって異なるため、期限を間違えないよう注意しておきましょう。
書類提出期限に定めがあるのは、更新申請が行われてから現地調査を行ったり許可証の更新手続きを行ったりする必要があるからです。
期限を過ぎてから更新手続きを行うと更新された許可証が届くまでに現在持っている許可証の期限が切れる恐れもあるため注意しておきましょう。
飲食業は5~8年と期限に幅がありますが、これは保健所によって定められている期限が異なるからです。そのため飲食業を行う人は期限と書類提出期限をきちんと確認しておくことが大切です。
業種によっては更新許可が必要ない場合もあります。リサイクルショップなどの古物を販売する業種や旅館業、特定労働者派遣事業などは更新しなくともOKです。
更新の必要がなければ行政書士に頼る必要もないのではと思われるかもしれませんが、設立後に行政書士に頼ることでのメリットは更新業務だけではありません。
会社設立後に行政書士と顧問契約を結ぶメリット
行政書士にも顧問契約というのが存在します。行政書士と顧問契約をするとどのようなメリットがあるのでしょうか。
法律に関する相談ができる
行政書士は法律の専門家であるため、設立後は法律に関する相談にのってもらえます。大学で法律に関する勉強をしていたという人であれば設立後に行政書士に相談せずとも、自身で問題を解決できるでしょう。
しかし、法律に関する知識がなければ不明点がいくつも出てくるため、自身で解決できないことも多々あります。
行政書士は民法・行政法・商法・会社法など様々な法律の試験科目をクリアすることで取得できる国家資格です。
商法(商売に関する法律)や会社法(会社組織や設立などに関する法律)は会社設立に大きく関わることなので、設立時に困ったことがあれば頼りになります。
設立後は行政法や民法の知識が必要になります。行政法とは道路交通法や特許法、食品衛生法といった行政に関わる法律の総称です。
様々な法律があるため、行政法に詳しい行政書士ならどんな業種の相談にも対応できます。民法は不動産問題や商取引などの契約書作成時に取り扱うことが多い基本的なルールを定めたものです。
業種によって必要な知識は異なりますが、行政書士は多方面でカバーしてくれるため多くの職種の方のサポートをしてくれます。
ただし、相談している問題が大きくなり、裁判にまで発展した場合は弁護士に依頼しなければなりません。裁判に発展しない問題の相談や役所との交渉や同行が必要な問題は行政書士がカバーしてくれます。
単発で相談に乗ってもらうことも可能ですが、会社を長く経営していくと色々な問題が次から次へと出てきます。
単発だとひとつの問題につき料金を支払わなければなりませんが、顧問契約を結べば月額の顧問料でいくつもの問題の相談にのってもらえますよ。
許認可の申請や管理がラクになる
会社設立時に許認可申請を行っても、業種によっては5~6年毎に許認可の更新が必要なケースもあります。
自身で許認可の更新と管理を行ってもいいのですが、本業と同時に行っていくのは非常に困難です。業務に支障が出る恐れもあるため、行政書士に許認可のことをお任せしておいた方が楽になるでしょう。
許認可の更新が遅れてしまい、許認可の期限が切れているにも関わらず業務を行うことで罰則が設けられるリスクがあります。
懲役刑や罰金が科せられてしまう上に業務停止となる可能性があるので、許認可の更新は必ず行わなければなりません。
許認可の更新が遅れても申請は行えますが、新規での申請となり、提出する書類が増えてしまうため手間が多くなります。
行政書士は許認可の管理を行ってくれるため、期限が切れる前に確実に更新をしてくれます。これによって罰則のリスクがなくなるため、事業主にとっては大きなメリットとなります。
また法律は改正されることもあり、改正されたことで許認可の取得や更新方法などが変わることもあります。
行政書士はそういった情報もいち早く取得して教えてくれるため、常に最新の情報を仕入れることも可能です。
顧問契約を結ぶことでいつでも行政書士に相談することができますので、素早く悩み事を解決できるようになります。
業務を遂行する上で発生するリスクも軽減できるため、良い行政書士を見つけたら顧問契約を結ぶことがおすすめです。
行政書士を探す3つの方法
街を歩けば行政書士事務所は数多くありますが、どの行政書士が自分に合っているかわかりません。そこで行政書士を探す3つの方法をご紹介します。
知人からの紹介
実際に行政書士に依頼している知人から紹介してもらう方法があります。紹介してもらう前に行政書士の人柄や知識量などを知人に聞くことが可能です。
また業務をきちんと遂行してくれるかも確認できますので、依頼後に後悔することもないでしょう。
行政書士に気軽に相談できるかはその行政書士の人柄や事務所の雰囲気などによって異なります。
実際に依頼している人であればそれらのことがすべてわかっているため、事前に聞いておけば依頼後に「相談できずに困った…。」なんてことはありません。また行政書士の顧問料についても確認できます。
知人とは相性の合う弁護士であっても、自身と相性が合うかどうかは実際に話してみないとわかりません。そのため依頼前に事務所に出向き、きちんと面談することが大切です。
面談せずに依頼してしまい、相性が合わなかったなんてこともありますので注意が必要です。
また知人に紹介してもらったこともありすぐには契約解除がしにくいというデメリットもあります。
事前に面談しておけば相性の良し悪しが判断できるため、デメリットを避けるためにも依頼前に行政書士と話をしておきましょう。
ネットで調べる
インターネットで評判の行政書士を探す方法もあります。インターネットはスマートフォンかパソコンがあればすぐにアクセスできるという手軽さが魅力です。
検索すればたくさんの事務所が出てきますので、選択肢が多いこともメリットのひとつでしょう。
サイトによっては実際に行政書士に依頼した人の口コミも確認できますので、行政書士を選ぶときのさんこうにできます。
インターネットは非常に手軽な方法ですが、ネットに掲載されているすべての情報が性格とは限りません。
例えば行政書士のホームページに記載されている顧問料の部分ですが、顧問料の他に記載されていない料金が発生し、請求されることもあります。
また口コミ内容も人によって異なりますので、どの口コミを信用していいのかわかりづらいというデメリットもあります。
これは知人に紹介してもらう方法と同じですが、良さそうな行政書士を見つけたら必ず依頼前に面談を行いましょう。良い口コミ通りの人物かどうかを自身の目で判断することが大切です。
ビジネスマッチングサービスを使う
インターネット上のビジネスマッチングサービスを活用する方法もあります。
ビジネスマッチングサービスとは事業主が希望する条件などを入力することで、行政書士探しのプロが条件に合う行政書士を紹介してくれるサービスです。
インターネットで検索すればいくつものサイトが出てきますので、いずれかを利用して探すと良いでしょう。
ビジネスマッチングサービスは手間がかからないという大きな魅力があります。こちらが希望する条件などを入力して後は待つだけです。
プロが確かな目で合う行政書士を探し出してくれるため、紹介してもらった後は面談をして依頼をすればOKです。
ビジネスマッチングサービスはひとつだけでなくいくつもあります。サービスによって紹介してもらえる行政書士が異なりますので、どのサービスを利用するかが重要になります。
用者が多いところや口コミ評価が良いサービスを利用すると良いでしょう。
またこちらも条件があっても人との相性が合うかはわかりません。相性はプロであっても見抜けませんので、紹介してもらったらまずは面談をしてみましょう。
まとめ
行政書士は法律のエキスパートともいえる存在なので、会社設立時から設立後まで幅広く事業主をサポートしてくれます。
特に保健所や都道府県への許認可が必要な事業を行う方にとっては力強い存在となります。許認可に必要な書類作成作業から申請まですべてお任せできますし、許認可の更新も行ってくれます。
事業主が本業に集中できるようしっかりとサポートしてくれるため、設立時から顧問契約をしておくことがおすすめです。
ここで紹介した行政書士の選び方を参考に、相性の良い行政書士を探して会社設立をスムーズに進めましょう。