作成日:2020.12.20  /  最終更新日:2020.12.11

外国人が会社設立する際の必要書類【在留資格で難易度が変わる】

近年、外国人が日本に来る機会が増え、日本で仕事をする外国人も増えてきました。コンビニのアルバイトは外国人の方がほとんどであることがあります。

中には専門分野での技術をもとに、起業を考えている外国人も多く、社長が外国人だという企業も珍しくありません。

しかし、外国人の方が日本で初めて会社を設立しようと思っても、どんな書類が必要かわからないことが多いと思います。

日本人の会社設立でさえ、必要書類がわからないことも多いうえ、外国人は「在留資格」が大きな壁となります。

今回は外国人は日本で会社を設立するために必要なことを詳しく解説します。

外国人でも会社設立の必要書類は同じ

まず結論からいうと、外国人の会社設立の方法は、日本人の会社設立の方法とほぼ同じです。

定款作成から始まり、公証人の認証が終われば、資本金を払い込んで、登記申請を行います。しかし、外国人の方は注意すべき点が1つあり、それは「在留資格」です。

在留資格によっては、会社の経営をすることができないため、注意が必要です。

設立に必要な在留資格とは

下記の在留資格を持つ場合は、在留資格変更などの手続きをすることなく、会社経営が可能です。

会社経営可能な在留資格 内容
日本人の配偶者 日本の配偶者・実子・特別養子
永住者 法務大臣から永住許可を受けた者
定住者 日系3世・中国残留邦人配偶者や子・外国人配偶者の連れ子等
永住者の配偶者 永住者・特別永住者の配偶者 本邦で出産し引き続き在留している実子

これらに該当しない場合は後述する「経営管理ビザ」を取得する必要があります。

会社設立に必要な書類一覧

会社の基本事項を決定し印鑑を作成したら、下記の書類を揃えましょう。

発起設立は募集設立に比べて書類が少ないです。しかし、会社を作ったことがない人は書類そのものが難しく感じると思いますので、簡単に説明します。

また、書類に対して、必要な印鑑も付け加えておきますので、照らし合わせてください。

書類や印鑑を間違えると設立の登記ができなくなってしまうので、注意しましょう。

定款

株式会社の設立手続きは発起人による定款の作成に始まります。定款とは、会社の組織や活動に関する根本規則をいい、会社内でのルールブックのようなものです。

発起人の過半数の一致又は全員の同意があったことを証する書面

実務では「発起人決定書」とも呼ばれていますが、定款に以下の事項を記載していなかった場合に必要となります。

就任承諾書

役員を決めた後はそれぞれが本当に就任する意思があるのか確認が必要です。そのために就任承諾書に署名又は記名及び実印の押印が必要になります。

印鑑証明書

発起人の印鑑証明書に加えて、取締役会を設置する場合は代表取締役の印鑑証明書、取締役会を設置しない場合は取締役全員の印鑑証明書が必要になります。

外国人で印鑑証明書を用意できない場合はサイン証明書になります。

本人確認証明書

本人確認証明書は住民票や運転免許証のことです。

払い込みがあったことを証する書面

払い込みがあったことを証する書面とは、発起人が株式の割当てを受ける際に支払う金銭を証明するものです。

印鑑届出書及び印鑑カード交付申請書

会社の実印の登録と会社の印鑑証明書を取得するための印鑑カードを交付してもらうための書類です。

登記申請書

法務局に申請する際に、必要となる申請書です。法務局のホームページにテンプレートがあるので、そちらを利用しましょう。

海外居住している外国語の場合は居住国の署名証明書が必要

日本ではなく海外に移住している外国人の方が、日本で会社を設立する場合は、移住国の署名証明書が必要になります。

会社設立には、発起人と役員に就任する人の「実印」と「印鑑証明書」が必要になりますが、海外に移住している、または会社準備のために短期で日本に滞在しているという場合は、その2つを用意することができません。

移住している国が、日本と同じように印鑑文化のある国であれば、その国の印鑑登録証明書を使用することができますが、そうでない場合は印鑑の代わりとして「サイン証明書」を提出します。

日本に滞在しているのであれば、本人の国籍である大使館や領事館で「サイン証明書」の申請をします。日本に滞在していない場合は、母国の行政機関や公証役場で手続きを行います。

外国語で作成された書類は和訳文が原則必要

必要書類に記入する場合は、日本語でなくとも構いませんが、原則として、その全てに日本語の訳文を添付する必要があります。

ただし、申請する書類に関係のない部分については、翻訳の省略ができます。

実は、翻訳文の添付は日本の登記官が英語だけの書類だと理解ができないという背景から来ています。

商業登記に限らず、不動産登記の登記原因証明情報(売買契約書)でも英文と並列して翻訳文を明記して提出します。

外国人の在留資格によっては会社設立前に「経営管理ビザ」が必要

平成26年の法改正により、「投資経営ビザ」から改正され、「経営管理ビザ」と呼ばれるビザが誕生しました。

会社設立登記自体は経営管理ビザがなくとも可能ですが、このビザがないと経営をすることができません。

「経営管理ビザ」とは「日本において、貿易やその他の事業の経営や当該事業の管理に従事する活動」を行う外国人に付与される在留資格の1つです。

日本で経営ができるビザが「経営管理ビザ」

日本で会社を設立して経営する際、必要となるのが「経営管理ビザ」です。

しかし最初から「経営管理ビザ」の在留資格を持たなければいけない訳ではありません。

例えば、就労ビザによる在留資格での滞在中に、会社設立をしたいと考えた場合には、要件さえ満たせば「経営管理ビザ」に変更し、会社を設立して経営することが可能です。

留学ビザや短期滞在などには、更にそれぞれ手続きが加わり複雑にはなりますが、「経営管理ビザ」に変更は可能です。

このように、要件がビザの種類や状況により変わるうえ、リスクも伴いますので、在留資格の変更の際には正確性と慎重さが求められます。

「経営管理ビザ」の手続きが必要になる在留資格一覧

下記一覧は「就労可能な在留資格(就労ビザ)」であり、会社設立をする際には、在留資格を「経営管理ビザ」へ変更する必要があります。

在留資格 具体例
外交 外国政府の大使・公使・総領事代表団体構成員や家族等
公用 外国政府の大使館・領事館などの公の用務で派遣される職員や家族等
教授 大学教授等
芸術 作曲家や画家等
宗教 外国の宗教団体より派遣される宣教師等
報道 外国からの報道機関の記者やカメラマン等
高度専門職 外国からの優秀な高度人材
法律・会計業務 弁護士や公認会計士等
医療 医師・歯科医師・看護師
研究 政府関係や私企業等の研究者
教育 中学・高等学校などの語学教師等
技術・人文知識・国際業務 機械工学の技術者・通訳・デザイナー・マーケティング業務従事者等
企業内転勤 海外事業所からの転勤者
興行 俳優・歌手・ダンサー・プロスポーツ選手等
技能 調理師・スポーツ指導者・航空機の操縦者・加工職人等
特定活動

(*就労が許可されていないものもある)

介護福祉士候補者・外交官等の使用人・インターンシップ・ワーキングホリデー等

「経営管理ビザ」の申請で外国人が用意する必要書類

「経営管理ビザ」の基本的な申請書類は以下のものになります。ただし、法務局が指定しているカテゴリー別に書類が大きく変わってきますので、確認しておきましょう。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 証明写真(縦4cm×横3センチ)
  • パスポート及び在留カードの提示と写し
  • 履歴書及び履歴を証明する資料
  • 登記薄謄本(法人の登記完了がされていない場合、定款その他法人において当該事業を開始することを明らかにする書類の写し)
  • 事業計画書の写し
  • 会社案内・パンフレットなど
  • 事業所の賃貸借契約書の写し
  • 常勤の従業員(申請者除く)名簿
  • 従業員の雇用契約書または内定通知書の写し
  • 従業員の住民票または外国人登録証明書の写し
  • 従業員の直近の雇用保険納付書控などの写し
  • 事業所の内外の写真
  • 株主名簿・出資者名簿
  • 日本への投資額(500万円以上)を明らかにできる資料
  • 招聘理由書
  • 返信用封筒

見てわかる通り、書類がとても多いことがわかります。これらを1人で用意するのは手間と時間がかかるため、専門家に相談するのがおすすめです。

「経営管理ビザ」の取得はハードルが高い

「経営管理ビザ」の取得には、思わぬリスクも存在します。リスクの存在を知らずにいると、ある日突然、本国への退去を言い渡されたり、大きな損害を被る結果になりかねません。

例えば、現在取得している在留資格から「経営管理ビザ」への変更は、会社設立前にしなければなりません。事業を始める時には、変更を終えている必要があります。

事業開始後、暫くたってから申請しようとすると、入管法違反という理由で「経営管理ビザ」への変更ができないうえに、在留資格の取り消しとなる可能性すらありえます。

このように、申請の時期を間違えるだけでもかなりのリスクがありますので「経営管理ビザ」の取得は、予想以上にハードルが高いです。

無事に取得できたとしても、その後の更新の際に書類作成の不備や申請者の在留資格の状態や申請時の状況により、いくつもの追加書類を求められることもあり、かなりの日数や時間を有することは珍しくありません。

外国人が会社設立するなら専門家に依頼したほうがベター

「経営管理ビザ」の申請ができれば、許可が必ずおりるわけではありません。 たいへんな思いをして申請ができたとしても、不許可になることもあります。

1人で全ての手続きをやろうとしてしまった結果、経営管理ビザ変更が認められず、膨大な時間と調達した資金すらもすべて失ってしまう可能性があります。

このようにならないためにも、専門性が高いものは、専門家に任せた方が確実です。

最初の相談や見積もりは無料というところも多いので、どのようなサポートをしてくれるのかなど、一度話を聞いてみましょう。

専門の事務所にお願いする場合のメリットはこちらです。

  • 時間のロスがなくなる
  • 実質的な会社設立準備を、計画的に集中して行うことができる
  • リスクの心配がなくなる
  • 問題や不安なことがあっても、相談・解決しやすい

「経営管理ビザ」への変更を希望されるのであれば、是非、専門の事務所にお任せすることをおすすめです。

まとめ

外国人が会社を設立する場合、「サイン証明書」や「宣誓供述書」などの書類を除けば登記の申請書類は日本人とほとんど変わりません。

しかし、外国人の場合に立ちはだかる壁は「経営管理ビザ」です。行う事業によって書類が変わり、種類も豊富です。

会社の設立のために経営管理ビザの取得を考えている方はぜひ専門家に依頼しましょう。